カイリューといっしょ! 作:カイリューはいいぞ
「メェ~~~!」
「お前が来てくれて助かったぜデンリュウにユウリ!おかげで研究所が動くかもしれねぇ!」
「まだ喜ぶには早いでしょうけど、とりあえず良かったですね」
「しっかし広い研究所だよい」
「おっ!海賊マーク!」
「あ、それ押すと多分また研究所吹き飛ぶぞ」
絶対触れないでくださいね、と私は青ざめた顔でエースさんに釘を刺した。そりゃ第一研究所に自爆装置があったなら第二の方にも自爆装置があって然るべき……そんな然るべきがあってたまるか!なんで当然のように爆発させたいんだ!マルマインか!だいばくはつはポケモンにもそれなりに負担がかかるんだぞっ!ぶちのめされて瀕死になるよりはましなんだけどさ。
しかし、この研究所はイヤに近代的だ、ともすれば……ポケモンの研究所に迫れるかもしれない。ただ……人工ポケモンを作るための培養槽やその他悪の組織で見たような吐き気がするおぞましい機械は今のところない。兵器的な研究とは言うがそこら辺は安心してもいいかもしれないけど個人的にベガパンクは嫌いだ。
なぜかと言えば単純、改造人間、改造動物……どれも「ユウリ」の世界で行われていた一部の非倫理的な行為と余りにも一致しすぎているから、私ではなく「ユウリ」の記憶が拒否感を示しているのだろう。500年先を先取りしている天才科学者といえど、躊躇なく人体実験を行うところは好みじゃないかな、動物でもね。ポケモンにやったら島ごとクレーターにしちゃうぞ。
「ついたぜ、これがバッテリーだ!」
「でっかいな!部屋一つ分か!」
「あー、だめだ。それなりにインテリなつもりでいたが、さっぱり構造が分からんよい」
「あれが、電極で……これ最大容量いくらです?」
「わからんが、フルで充電できれば3日研究所が動くらしい。ノートにはそうある……作られてから軽く50年は立ってるだろうが」
「……充電した途端どかんといきませんかね」
こえーこと言うんじゃねえよ!という黒焦げフランキーさんの突っ込みをよそに、私はバッテリーの容量を脳内で弾き出す。詳しくはないけど雷から直で充電するなら電圧とかの変換機を嚙ましてあるべきなのだろうけどそこら辺が見当たらないんだよねえ。どうしよ、野生の個体ならともかく私のデンリュウの発電量は落雷程度は軽く凌駕する。具体的には停電したポケモンセンターの予備電力として2週間発電し続けたことがあるくらい。それは休み休みだったけどね。ミスってぱーんがおそろしい。悪夢2回目はちょっとね。
「デンリュウ」
「メェ、メェ」
「ん、わかった。フランキーさん!」
「なんだ!?」
「デンリュウが充電してくれるって言ってるのでどうすればいいのか教えて下さい!」
デンリュウがどん!と胸に手を当てて任せとけと言ってくれたのでやればできる精神で頑張っていこうという結論に私は至った。フランキーさんは真っ黒の顔をパッと明るくしたような感じでむき出しの歯を笑みの形にするとよし待ってろとブーメランパンツから工具やら説明書らしき紙の束を出してバッテリーの外装を素手で引っぺがしたのだ。金属が引き裂かれる音と舞い上がる積みあがった埃、フランキーさんの盛大なくしゃみと悪態が聞こえる。
「だー!これちゃんと動くのかベガパンクさんよぉ!」
「保証期間はとっくに過ぎてるんじゃないですかね……」
「このまま充電してたら出火するところだな……おいあんちゃんたち、ちょっと手伝ってはくれねえか」
「構わねえよい」
「いいぜ」
フランキーさんは度胸が据わってるのかどうなのか分からないけど、マルコさんにエースさんを顎で使い始めた。えー、その人たち泣く子も黙る白ひげ海賊団の隊長たちなんですけど。デンリュウが仕方のないなあという顔をしてフランキーさんがそこら辺にばらまいた工具を摘まみ上げて中をどれどれと覗き込む。
「おいヤギ、お前の出番は後だ後。今はこいつを修理してやらねえと」
「メェ~。モメェ、メ」
「あぁ!?なんだお前分かってんじゃねえか!そうだそこ抑えてろよ……っし!」
「デンリュウはヤギじゃなくて羊です、もう」
「ユウリ、何でアイツあのサイボーグのやること分かるんだ?」
エースさんがフランキーさんに指示された通りに外装の金属を手の炎で溶かして鋼線に加工しながら訪ねてくる。デンリュウ、大概のことはノリと勢いで何とかするタイプなんだけど実はメカ関係に強いのだ。というのもその2週間のポケモンセンター停電事件ってカロスのアレソレに端を発する話が原因なんだけど、フレア団のゴタゴタが解決して万々歳とは終わらなかったんだよね。
そう、つまり後片付け、後処理だ。あんな地面から出てきた最終兵器のせいでインフラはズタズタ、電力は届かず、けが人はチョモランマ。そしてちょうどよくいるクソツヨトレーナーだった私、というか当事者。駆り出されるわなそりゃ。それでデンリュウはやってきた技師の人に電気を提供しながら電子製品のイロハを学んでしまったわけだ。そんなわけで、デンリュウは意外とインテリなのです。
ふーん、と溶接をするエースさんと武装色で硬化した腕で釘を打つマルコさんというこの先いつ見れるか分からない光景を目の当たりにしながら私はそこら辺にあった古ぼけた箒で舞い上がる前に埃を集める。そうして小一時間ほどかけ、古ぼけていたが最新のバッテリー設備はリニューアルを遂げた。
「よーし完成だ!頼んだぜデンリュウ!」
「よし、デンリュウ!とりあえず10まんボルトから!」
「メェェ~~~!!」
バリバリビリビリ!と赤と青の鋼線を両手に持ったデンリュウが体を震わせて電気を発する。指向性なく放たれたそれはフランキーさんが突貫で改造した鋼線を伝ってバッテリーの中に吸収されていく、そうするとバッテリーが低く唸ってから引っぺがされた側面が光って画面が映った。ふむ、今ので20%……あ!
「明かりがつきましたね」
「使えたな!とりあえずフルまで頼む」
「よし、デンリュウ!かみなり!」
「メッ!」
行けた、ということでテンションの上がったデンリュウが全力で放電をする。鋼線が熱されて赤熱するほどの雷がバッテリーに叩き込まれる。さっきの10まんボルトで研究所の電気は通ったらしく、廊下の電気が付いて、研究所の機能がそれぞれ動き出したみたいだ。2分ほど全力で放電したデンリュウが放電をやめる。バッテリーは、100%満タン状態だ。
「やったぜ!いやー、電気を操る能力者には会ったことねえが、こんな感じなのか?」
「ゴロゴロの実、っつーのはあるがよい。能力者は聞いたことねえな」
「ルフィがあったことあるっつってたぜ、空島でよ」
「空島!?なんですかそれ!?」
「何だお前知らなかったのか?」
空島なる興味をひかれまくりな単語を耳にした私がぶおんっ!と音がしそうなほどに振り向いて話し合うアダルト3人を見る。空島、空島とな!?名前だけ聞くと空にある島、つまり浮島ということになるんだろうけど、そんなのポケモンの世界でも聞いたことないよ!?ふへ、ふへへへ!これはいいこと聞いた、と同時に探す範囲も増えた……いや、冒険してこそポケモントレーナー!
「ルフィみたいな目の輝かせ方してんなぁ……」
「だって字面だけ聞くだけでも面白さマックスじゃないですか!行かずして旅人は名乗れませんよきっと!」
「記録が空島に吸われたら行くか?エース」
「だな、別に急ぐ旅じゃねえし。妹の可愛いお願いだ」
そっか、
「あー……どうすっかなこれ……」
「お、どうしたサイボーグ」
「バッテリーの減りが予想以上に速い。こいつ自身が古いのもあるだろうが、この研究所を動かすのに使うエネルギーも多いんじゃねえかと思う。ったく問題が解決したと思ったら次から次へとよぉ」
「メメ!」
「あ、残るのデンリュウ?ん、わかった」
「は?」
私が空島に夢中になっている隙にいつの間にか研究所のアレソレを確認していたフランキーさんが焦げた髪をボリボリ大きな手でかき混ぜながらこっちにやってきた。その言葉に私はさっき充電が完了したばっかりのバッテリーを見る。ちょっと音が高くなったバッテリーの側面の表示パネルには100%だった充電がすでに98%に減ってるのが見える。確かに減りが早いような……それともこれだけでかいバッテリーを一瞬で減らす研究所がすごいのか……どっちだこれ。
困った、と工具を片付けながら言うフランキーさんに、じゃあボク残るよ!とかなり軽い調子で言ったデンリュウに、何となく予想出来ていた私も軽く返す。それについていけないフランキーさんは何言ってんだという顔をしているけど、うちの子たち、私も含めて強くなりたいから、それに叶った場所があれば残りたいって言ってるんだ。もうそれは話し合っているから私も納得の内。
「デンリュウの一番の武器は電気です。この減りなら毎日充電が必要でしょう?沢山発電すると、デンリュウの発電できる電気が増えるんです。それはつまり、デンリュウが強くなるってことなんですよ」
「メェェ~~~!」
「それに、デンリュウ……武装色わけわかんないんだよね?」
「メ゛ッ!?」
「気づかないと思った~~?ずっと首傾げてたじゃない」
「覇気はまあ……資質に左右されちまうからな……わかんねえ奴は分かんねえんだよい。こればっかりはどうしようもねえ」
「メェェ~~~……」
そう、デンリュウは武装色の糸口を今一つ理解できなかったらしい。他にもイーブイやサーナイト、シャンデラなんかも武装色については完全にちんぷんかんぷんみたいでどうやって強くなろうか悩んでるっていう感じ。だけど、デンリュウの場合は話は変わる、彼のでんき技の威力はスリラーバークで見た通り、発電量が上がればそれだけ強くなる。だったら、小細工よりもゴリ押しすればいい。武装色を貫くイカヅチを見せて欲しいんだ。
「そんなわけで、デンリュウにバッテリーの電気補充の任務に就かせてあげてください。それが、この子を強くします」
「……アウ!よしよしよし!おめぇ~~の気持ちはよ~~く分かったぜコノヤロウ!こいつは!俺が!預かるっ!」
「メェェ~~~!!!」
「ああ!よろしくなデンリュウ!」
「よかった……ありがとうございますフランキーさん」
「みなまで言うな!お前の気持ちは受け取った!」
オロロォォン、と目から大粒の涙を流したフランキーさんは親指をグッと立ててデンリュウを預かってくれると宣言してくれた、私はそれに一安心して胸をなでおろし、腰からデンリュウのボールを取り出してフランキーさんに渡す。この子のお家なので絶対にパンツの中に仕舞わないでくださいね、と釘をさすとあたりめえだろと返されてフランキーさんはお腹をドアのように開いてそこの中にモンスターボールを仕舞った。そんなところまでサイボーグなんだ……。
「これでまあ、燃える霊獣の話はユウリの仲間じゃなかったっつーことになっちまうのか。どういうやつが他にいるのか心当たりないか?」
「じつは……どの子が来てるのかまだ分からなくて……見れれば一発なんですけど」
「そうなのか……気長に探すしかねえよい。そう気を落とすな」
マルコさんの慰めに私は頷く。そう、飛ばされる直前の手持ちを私は記憶していない。ボールから推測もできない、個体を見れば私のポケモンだとは分かるんだけど、ちょうど手持ちの整理作業をしているところに飛ばされてしまったので手元から離れたスマホロトムからいくつかのボールが吐き出されるのは見た。そしてロトムはどうやらこっちに来れなかったみたいだけどね。
「うし!決めた!お前ら船で来たんだよな!?俺に見せてくれ!」
「あ、ああ……構わんが……なんでだ?」
「何って俺は船大工だぞ!一番ちいせえ仲間と船長の兄貴、ついでにその仲間が乗る船をそのまま送り出せるか!メンテナンスくらいさせろ!」
「お、そういうことなら大歓迎だよい。まだ出港してまもねぇから痛んではいねえだろうが……専門の話を聞けるのはありがてえ」
「なら案内してくれ!」
「虎の敷物はかぶったままなんですね……」
少なくともここにきっと私のポケモンはいない。見聞色がそう告げている、なら名残惜しいけどここに残って体を改造しつつ修理するというフランキーさんとはお別れだ。デンリュウともね。行っちまうなら船をピカピカにしてやるぜ、というフランキーさんの申し出を受けた私たちは、そのまま研究所を後にする。私はまた、デンリュウにおんぶしてもらう。暫くはもう、そうできないから。
デンリュウ君、離脱。ご察しの通りだと思いますが仲間一人につき一匹修行のために残る感じなります。新ポケモンももうちょっと後ではありますが予定しておりますのでお楽しみに