カイリューといっしょ!   作:カイリューはいいぞ

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霊灯と私と手足長族

「あのサイボーグ、滅茶苦茶すげえ船大工じゃねえか!っく~~~!オヤジが健在なら絶対船乗せたな俺は!」

 

「はは、確かにな。一人でこんな風に船を改造しちまう男だ。モビーがこうなったら俺は困るけどなあ」

 

「シャンデラ、平気?」

 

「シャンッ!」

 

 シュゴオオオオオッ!と音を立ててまるで電動機付きのボートのような速度で船が進んでいく。帆は畳まれているにも関わらず、私たちの小舟がそんな速度で進んでいくには理由がある、船の後部にフランキーさん特製のメカが付いたからだ。さらに全木製だった船はところどころベガパンクの研究所で見つかった試作品の金属で補強されて強度が上がり、あとキッチンにオーブンが付いた、料理の幅が広がるぅ~~!

 

 フランキーさんがいたバルジモアにデンリュウを預けて、既にもう5日経っている。また軽くなった腰に頼もしさと寂しさを覚えながらも船は進んでいく。エースさんとシャンデラのパワーで。今回フランキーさんが船に取り付けた装置は簡易的な蒸気機関……のような物体だ。具体的には私には分からないんだけど、頑丈さを優先したらしく、フルで使い切っても3年は修理不要の代物だとか。

 

 この世界では悪魔の実の能力を有効利用しようという技術者たちの並々ならぬ努力によりある程度解明された悪魔の実の力は利用することができるようになっているんだとか、技術革新、すばらしい。それで今回主軸になるのがエースさんのメラメラの実の能力、つまりは炎だ。ファイアー!睨みつけられた時は背筋が凍るでおなじみ。それはともかくとして。

 

 現在炉心の中にはシャンデラがいてその炎のエネルギーを存分に発揮して船を進めてくれている。ごうごうと燃え盛る炎は私にとっては頼もしさと温かさの証。そして、冬島の海域を抜けたらとても暑くなってしまった。むぅん、どうしたもんか。エースさんとシャンデラが交代でエネルギー源になってくれてるんだけど、酷使しすぎてもなあという感じだし。

 

「マルコさんの炎じゃダメなんですか?」

 

「不死鳥の炎は普通の炎と性質が違うんだよい。ほれ」

 

「おお~~、熱くない!あれ?水仕事のあかぎれが治ってる!」

 

「まぁ、戦いに使えなくはないが……熱はないんだよい。代わりにこうやって再生力を高めることができるわけだ」

 

「へぇ~~~!!!」

 

 この世界、スキンケアとか二の次なので私の手は結構荒れていた。女の子としてガサガサハンドは思うことあるのだけど、まあ恋人がいるわけでもないし、そういうこともあり得ないので正直痛い以外は気にしてなかったんだけどマルコさんが私の手に蒼い炎を灯すといつの間にか手のあかぎれが治っていつもの私の手に戻っていた。すごーいっ!熱くないし!

 

「よし、次はあの島に行くぞ。俺も知らん島だがとりあえず食料の補給と情報収集だな」

 

「あ、そこおれ知ってるぜ。確かナマクラ島のハラヘッターニャっつー国だ。一回通った。あんまり期待しない方がいいぜ」

 

「何というか、もうちょっといい名前付けしたほうがいいんじゃないですかね?」

 

「期待しない方がいい、ってどういう意味だよい」

 

「貧しいんだよ、国全体が。明日のメシも事欠いてる状況だ。記録溜まったらすぐ抜けたほうがいい。強盗だって日常茶飯事だしな、あぶねえんだ」

 

「強盗ごときに負ける戦力ではないですけどねぇ、私直で狙われたらそりゃ危ないですけど」

 

 それを心配してるんだよい、と言われた私は縮こまる。お前になんかあったら俺はオヤジに顔向けできねえし、エースが何するか分からん。といわれた。エースさんそんなこと、あ、しそうな顔してる。まだ見ぬ強盗さんがヒヒダルマがごとく火だるまになる光景が予想出来てしまった。大丈夫ですエースさん、今のところ私は元気です。

 

「とりあえずご飯にしちゃいましょう!シャンデラが煮込んでくれたビーフシチューですよっ!」

 

「お、いいねえ」

 

「甲板で食う飯は乙なもんだよい」

 

 空気を払しょくするために私はシャンデラが入ってる炉心に一緒に突っ込んだ鍋をエースさんに取り出して鍋敷きの上に置いてもらう。シャンデラがいい感じに圧力と熱をかけて煮込んでくれたお肉山盛りビーフシチューは好評で、また作ろうかなあとスプーンを咥えながら私は心のメモにそれを書き込んだ。

 

 

 

 

「確かに、あまりいい雰囲気ではないかもしれませんね」

 

「だなぁ……こりゃ、補給は諦めたほうがいいかもしれねえな」

 

「村に泊まるのもやめた方がいいぜ。ここ確か、定期的に手長族が略奪にくんだよ」

 

「この人たち自身は足長族なんでしたっけ」

 

「シャンシャン」

 

 目の前に広がる光景は、何とも如何ともしがたいものだった。足の関節が人より一つ多い、足長族という人種の人たちの村なんだけど、どの家もあばら家で、商屋と思われる家も店主は座っているものの、売るものがないらしく棚はすっからかん、あちこちからため息や子供の泣き声が聞こえてくる。そして、見る人見る人例外なく痩せている。

 

 船を隠したあとシャンデラを出しっぱなしにしているんだけど彼はどうやらこの近辺にはさまよえる魂がわんさかいることを察知してしまってちょっと元気になってしまった。私の方針で人の魂を喰うのはやめなさいという風に躾けてあるのでいきなりランチビュッフェをしたりはしないだろうけど、ちょっと心配だ。具体的にはシャンデラを見ても全然驚かない、驚く気力がない村人の人たちとかも。死に近すぎるんじゃあないだろうか。

 

「サタン様……?」

 

「え゛!?」

 

「その後ろのおどろおどろしいナニカは……!?サタン様の使いですか!?」

 

「えっ!?、あのまずサタン様とは何ですか……!?」

 

「私共が召喚に成功した悪魔王サタン様です!パンツを触媒にしてないのに召喚できるなんて……!」

 

「え、パンツですか!?」

 

 ちょっとまって目の前の女の人が何を言っているのか全く分からないんだけど!?悪魔王サタン様!?パンツが触媒?!パンツってあれだよね!?私も今履いてる所謂下着というやつだよね!?え、何この村怖いんだけど!?いやだよ下着を触媒にして召喚される悪魔だなんて!混乱して頭がグルグルしてる私を見かねたエースさんがお姉さんに話しかける。

 

「あー色々待ってくれ。まずその悪魔王ってのはなんだ?」

 

「はい!数週間前に私たちは貧困と手長族の略奪に嫌気がさして悪魔召喚の儀式を行ったのです。そうして、成功したのです!白骨の死体のお姿をした悪魔王サタン様の召喚に……!」

 

「……それで、それがウチのこれと何の関係があるんだよい」

 

「え、ですからそのまがまがしい炎を見る限り、私たちがまた召喚に成功したということではないんですか?サタン様のしもべに違いないかと」

 

「多分違います、はい」

 

「そんなぁ……」

 

 いやそんなあって私が聞きたいよ!何、この世界!?悪魔の実があるなら確かに悪魔がいてもおかしくはないと思うんだけど、だけどいくらなんでも私のシャンデラを悪魔の遣い扱いするのは流石に私としても腹に据えかねるものがあるぞ!見てよこのつぶらな瞳!悪いことするようには見えないでしょう!?たまに魂を抜こうとするけど!

 

 ん?今このお姉さんなんて言った!?白骨の死体の姿をした悪魔王サタンっていったよね?白骨の死体……なーんか、既視感があるような、というかとても見知ってる音楽家さんのような気がしてならない。数週間前っていうのがちょうどそれ、私たちがシャボンディからくまによって飛ばされたのと同時期じゃない?この島、どうやら新聞を取るお金にも困窮してるみたいで、戦争のことも知らないみたいだし、私たちにもノーマークだから、知らずにブルックさんをかくまってたりして。

 

「つかぬことをお伺いしますけど、その悪魔さんって骸骨でアフロでした?スーツ着てたりとか」

 

「はい!はい!その通りなんです!」

 

「ほほう、なるほど。ヨホホホって笑ったりとか」

 

「ええそうです!それだけ御詳しいってことは、やっぱりサタン様の御使いであらせられて」

 

「ません。おそらく、十中八九知り合いですけど。他にガイコツ人間がいなければですが」

 

 確定だ、ブルックさんだそれ!あの人いつの間にか音楽家から悪魔にジョブチェンジしたのか!?というかパンツってもしかして見せろって言ったのか!?やったのか!?この人たち相手に、目の前のお姉さんとかによかったらパンツ見せてくださいって言ったのか!?あのガイコツお爺さんはもー!でも、この島にいるってことだよね?!ブルックさんが!

 

「なんだなんだいきなり色々聞きだして」

 

「えっと、飛ばされた一味の仲間の中に悪魔の実の能力で骸骨状態のまま生きてる人がいるんです。特徴がとても酷似していましてまず間違いないかなと」

 

「ってことはルフィの一味か!そりゃあいいじゃねえか!会いに行こうぜ!」

 

「はい、えーとその悪魔さんは今どこに?」

 

「それが……」

 

 マルコさんとエースさんは悪魔の召喚の下りから凄い胡散臭い顔をしていて話半分だったんだけど、パンツが云々のあたりで完全に聞いてなくてそらを見てほけーっとしていたので私が目の色を変えて質問しだしたのを見て面食らってしまったらしい。しょうがないよ、こんなのいくら何でもわからないって。まさか骸骨のまま生きてる人間がいるなんてね。

 

 それで、お姉さんにお話を聞くんだけどなんでも召喚されたサタン様、つまり暫定ブルックさんは略奪に来た手長族の人たちをほとんど〆て懲らしめてしまったらしい。流石はキャリアの長い剣士でもあるブルックさんだけど、それで終わらなかったのが手長族。足長族が信じていたようにブルックさんのことを悪魔だとは信じてなかったらしい手長族の人たちは、一瞬の隙をついてブルックさんを縛り上げてしまい、そしてそのまま逃げてしまったのだとか。

 

 それで、そのおかげなのか何なのかは分からないけど日に一回はあった手長族の襲撃は今はなくなっているのだけど、それもいつまで続くか分からないから新しい悪魔を召喚してパンツを見せて村を守ってもらおうと画策しているとかなんとか……とりあえずパンツで言うことを聞く悪魔なんて碌なものじゃないと思うのでやめた方がいいと思います。はい。

 

「それで、手長族の集落ってどこなんですか?」

 

「山を越えてすぐの麓にあります。ああ、サタン様……」

 

「だめだこりゃ」

 

「お前んとこの一味はどうなってるんだよい」

 

「……個性的なんですよ、皆」

 

「お前も含めてな」

 

「うるさいですエースさん。夜ご飯抜きますよ」

 

「おいそりゃ反則だろ!」

 

「知りませーん」

 

 つーん、と頬を膨らませてそっぽを向く私におろおろするエースさんをよそに、私はカイリューを呼び出した。うーん、と伸びをする彼女に私はばふっと抱き着いてから彼女に抱きかかえられるような形で収まる。マルコさんもそれで察したのか不死鳥に姿を変えて両脚でエースさんを掴んで飛び立った。目の前でいきなり超常現象に近いことが起きたお姉さんは目を回してしまった。あ、ごめんなさい。

 

 カイリューはもう片手でそこら辺をふよふよしていたシャンデラをひっつかむとマルコさんに倣って空を飛ぶ。目を回したお姉さんに幸運がありますようにとのことできんのたまを握らせてあげておいた。うーん、悪魔崇拝から立ち直れるといいんだけどね。

 

 

 

「今度は腕の関節が2つあるんですね、これが手長族ですかあ。カイリュー、ビンタしちゃって」

 

「りゅっ」

 

「何というか、慣れすぎだろお前」

 

「私のポケモン、それなりに珍しい子も多いのでポケモンハンターっていうポケモン版人攫いに狙われることもあるんですよ。慣れてるのは事実ですね」

 

 ばちこーん、と村の中に入った瞬間に金を出してその生き物置いてけといった手長族の強盗の一人にカイリューのビンタが叩き込まれる。顔を真っ赤に腫らして人相が分からなくなった強盗は気絶して、カイリューがそれをぽいっと捨てるとそれを狙っていたらしい手長族の子供が気絶した人の懐を漁って金目のものを盗んでこっちを警戒しながら逃げて行った。うん、治安がとても悪いね。

 

「まだやる?」

 

「りゅ?」

 

「シャンッ」

 

「「「「やりませええええんっ!!!!」」」」

 

「情けないですねえ。私の所の人たちなら喜び勇んでポケモンバトルを挑んでくるのに」

 

「お前の所も俺らのとこと大概変わらねえな」

 

 じりじりとこちらを包囲しようとしながら隙を伺ってた手長族の人たちに圧をかけるとまるでコラッタのように分散して逃げて行ってしまった。うーん、何というかこれはこれで酷いような。こんなチンチクリン相手に何を怖がっているんだろう?私のポケモン達もかわいいじゃないか。それに……襲い掛かってきた人たちを全て能力も覇気も使わずにワンパンで倒して積み上げてそのうえで腰掛けているエースさんとマルコさんの方がよっぽど怖いような気がします。ねえ?

 




 お次はハラヘッターニャです
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