カイリューといっしょ!   作:カイリューはいいぞ

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霊灯と私と骸骨

「あの……何をやってるんですか、ブルックさんは」

 

「45度!……ってユウリさん!?どうしてこんなところに!?」

 

「うーん、色々と複雑な事情があるんですけど……檻の持ち主さん居ますかー?」

 

 あれから手長族の人たちに襲われること2回、それを全て蹴散らした私たちは結構広い手長族の人たちの村の中心部に足を進めていた。中心部に行くにつれて治安はだいぶ良くなっていくみたいで、建物は貧しさはあれどそれなりにしっかりしたものに変わり、中心部から外周部を分かつようにぐるりとちょっとした塀があって、裕福層と貧困層を分けているみたいだ。

 

 そして、その中心部に大きな、大きな檻があってその中にはパンツで召喚された悪魔王サタン様ことブルックさんが斜め45度の角度でつっかえ棒のように斜めっていた。目の前に立った私と空っぽのブルックさんの眼窩が交錯すると私に気づいた彼はずるっと地面に顔をぶつけると慌てて私の目の前にやってきた。シャンデラはふよ~~とゴーストタイプらしく檻をすり抜けて中に入ってしまう。最悪全部とかせばいいや。

 

「凄いでしょうお嬢さん!骨にもかかわらず喋り、生きている!さあ貴方のお気持ちをここに!」

 

「この人私の仲間なんで、解放して欲しいんですけど」

 

「は?何言ってんだクソガキ。金払わねえんなら帰れよ」

 

「面白いこと言うなあ、お?」

 

「りゅう?」

 

「え?は?……え?」

 

 ただの子供とその保護者と侮っていたらしいサングラスをかけた手長族の男は穏便に済ませようと上空に行っていたカイリューが私の後ろにどしんと勢い良く降ってきた挙句喉を震わせ牙を剥いて恐ろしい睨みを聞かせるのと同時に片手をメラメラと燃やして圧をかけるエースさん、無言だけど一番怖いマルコさんに詰め寄られてがたがたと震え出した。さて、いいかなあ。

 

「解放して、欲しいんですけど?」

 

「は、はい!今すぐにぃ!!!」

 

「わー、ありがとうございます!」

 

「物分かりが良くてよかったよい」

 

 うんうん、正直仲間にこんな扱いをされて怒り心頭だったのだけど、物分かりがいい人で助かったよ。裏返った声で袖口から鍵を取り出した手長族の人は、鍵を開けてくれる。開いた鍵の扉を勢いよく開けてブルックさんが出てきた。彼は相当心配してくれていたみたいで地面にひざまずいて私を抱きしめてくれた。

 

「よくぞ……よくぞご無事で!新聞にてニュースを拝見いたしましたが、こうして会うことができたのは望外の喜びです!ほんと、ほんとに……よかった……!」

 

「はい、ブルックさんも御無事でよかったです。まったく……パンツは見せませんからね?」

 

「今も前もユウリさんにはお頼みしてませんよォ!?」

 

「でも足長族の村では頼んだみたいじゃないですかぁ~」

 

「それはその……目の前に素敵なフロイラインがいたものですから……それよりも、そちらの御二方は?」

 

「あー、積もる話はここじゃちょっと。どっか部屋貸してもらおうかな。ねえおじさん、これで人払いと建物一つ、借りれる?」

 

「これは……金か!?ま、まかせろ!すぐに用意する!だから他のやつに頼むんじゃねえぞ!」

 

 頂上戦争については無知でも、どうやらここにも新聞は伝わっているらしい。なら新聞に載った名前を外で連呼するのは良くないだろう。良くも悪くも欲望に忠実らしい手長族の男は私が見せたきんのたまを見た途端にサングラスの奥の目の色を変えて脱兎のごとく走り出した。程なくして息を切らして戻ってくる男の案内で私たちは寂れた宿屋らしき建物の一室に案内される。男にきんのたまを渡すと、彼は揉み手をして出て行った。ちゃんと人払いもしたようで周りには人っ子一人いない、店主さえも。見聞色には引っかからなかった。

 

「さて、改めて自己紹介をば。私はブルック、麦わらの船長の旗の下、音楽家をやらせていただいております」

 

「ああ、マルコだ。白ひげ海賊団の1番隊隊長、元だがな」

 

「ポートガス・D・エースだ。弟が世話になってる」

 

「やはり……!新聞では貴方方の生死は取り扱っていなかったので確証が持てませんでした。白ひげ、というと小耳にはさんだ程度ですが……」

 

「そりゃあ、オヤジが死んだのは隠せねえが、目的を果たせませんでしただなんて言えるわけもねえやな。海軍にとっちゃ、敗北宣言だ。新聞に載せられるわけもねえ」

 

 そうなんだよねえ、私、新聞だと生死不明扱いされてるの。センゴクに返り討ちにされたって感じで。ルフィさんエースさんもそれは同じだったんだけど、ルフィさんはあの通り思いっきり表舞台に出てメッセージを発信してしまったのでもう情報統制の意味はないよね。

 

「正直なところ、ユウリの懸賞金が10億超えねえのは意外なところだ。間違いなく政府の上から圧がかかった。だから、2億5千って感じなんだろうな」

 

「私はもうこれ以上上がらなくていいんですけどー?」

 

「新世界じゃ手ごろな額だから狙われるよい。ハエを無視したいならまあ、5億は欲しい所だな」

 

「それはもういいですっ!とりあえずブルックさん、いつ出発しますか?」

 

 私の懸賞金の額なんて正直どうでもいいんだけど、こんなところで見世物になっているブルックさんを放っておくわけにはいかないので、折角だし一緒に旅をしようじゃないかと誘ってみる。ゾロさんやフランキーさんは師匠がいたり、その島その物に用があったりしたので一緒に行くことは出来なかったんだけどブルックさんには今のところそういうものはないみたいだし、見世物にされるよりはそっちの方がいいと思う。

 

「申し出は嬉しいのですが……今回は遠慮させていただきます。きっと皆さんは今もなお、強くなるために奮闘しているのでしょう。私はこの島で見世物にされるうちにあることに気づきました」

 

「……あること、ですか」

 

(テャマスィ)です。私の悪魔の実……ヨミヨミの実の能力には、まだ先がある。手長族と足長族の皆さんの戦いに介入するうちにそれに気づきました。死んで、生き返るだけの能力ではなかったのです」

 

「魂……ブルックさんは今それだけで動いてるって感じでしたよね」

 

「ヨミヨミの実……死んで生き返った結果がそれってわけか。文字通りの命拾いっていうことかよい」

 

「ええ、もう死んでいますがね!ヨホホホ!手長族に襲われる足長族にご助力した際に、私の奏でる音楽が彼らの(テャマスィ)を輝かせた。なんでしょうね、それを磨けばきっと音楽家として、果ては剣士として……お役に立てるのではと思うのです」

 

 ああ、そういえば足長族のお姉さんが言ってたな、サタン様の奏でる音楽を聞いたら体から力が沸いて、にっくき手長族を追い返すことができたって。そうか、ブルックさんのヨミヨミの実とその音楽家としての手腕が合わさるとそういう風に、魂に直接届く音楽になるのか。あれでもそれって……

 

「私たちと一緒には出来ないんですか?」

 

「ああ、はい。できるでしょう。ですが、ここからは完全に私の我がままなのです。この島を、島民が楽しめる島にしたい。私の音楽で」

 

「はっは!そりゃいいじゃねえか!ユウリ、やめとけやめとけ!男が魂込めて決めたことだ、てこでも動かねえよ!」

 

「流石はルフィさんのお兄さんです、物分かりがいい。ユウリさん、音を楽しむと書いて音楽と読みます。いがみ合う二つの種族が互いに心通わし魂から楽しみ合ったその時……私も進化しているはず。今は、それを目指したいのです」

 

「なんか私が悪みたいです。海賊だから確かに悪者なんですけど」

 

 むっすー、とむくれた私の言葉に呵々大笑していたエースさんとブルックさんは慌ててフォローを入れてくれるけど、まあ何となく誘っても来ないだろうなってのは一回断られた時に何となく理解していたので諦めきれなくて粉をかけた私が悪い。そこまで覚悟が決まっているのならば私は素直に引き下がるべきだろう。それにしても魂か……私はちら、と上でシャンデリアのふりをして遊んでるシャンデラに目を向ける。

 

「シャンデラー、ここに残ってブルックさんに教えてあげて欲しいんだけど、いいかな?」

 

「シャンッ!」

 

「ユウリさん、いったい何を……!?」

 

「実はですね、ブルックさんに朗報が出来ました。シャンデラが、魂について教えてくれるそうです。この子は性質上魂を扱うのに最も適していると言えるでしょう。何せ、恒常的に他の生物のさまよえる魂を吸って生きてますからね」

 

「ええっ!?しかし、それではユウリさんが……」

 

「平気ですよ。シャンデラもそれで強くなることができるでしょう。ルフィさんの所にはメタグロスが、ゾロさんの所にはザシアンが、フランキーさんの所にはデンリュウがそれぞれ残って修行のお手伝いと自分のレベルアップに励んでいるんです。ですので、おそばにおいてあげてくれませんか?」

 

 私は腰からシャンデラのボールを取り外してブルックさんに差し出す。ブルックさんはそれを見て、私の意思を理解してくれたのだろう。しっかりとその骨の手でボールを受け取ってくれて、そして頭蓋骨を開けてその中にボールを入れた。マルコさんとエースさんはそれにぎょっとしているけど、私は知っている。

 

 ブルックさんの頭蓋骨の中は彼がいっとう大事にしているものが入っていることを。グランドラインの入り口、双子岬にいる鯨ラブーンに聞かせるために最後の力を振り絞って音貝に録音した魂の合唱が入っているところと、同じところにいれたということはブルックさんにとってシャンデラのボールはそれだけ大事な物として認識されたってことなのだろうから。

 

「誓いましょう。不肖ブルック、必ず2年後にシャボンディ諸島でこのボールを貴方にお返しすると。それまでは、命に代えてもお守りしますとも」

 

「ええ、ですけどシャンデラもきっとあなたを守ります。ですから、二人で守り合って無事に私に返してくださいね」

 

「承知いたしました!さて、よろしくお願いしますよシャンデラさん!」

 

「シャンシャンッ!」

 

「あ、シャンデラ。ブルックさんの魂抜いたらボール封印してもう出さないからね」

 

「シャンッ!?」

 

 そんなことするわけないじゃん!という不服そうなシャンデラだけど君ペローナさんの魂抜こうとしたのは私忘れてないからね?信じてるけど、私の手を離れるわけだからちゃんと釘を刺しておかないといけないや。特にゴーストタイプって扱いが難しいからねえ。まあ、ブルックさんには年の功があるからあまり心配してないんだけど。えっちなのはそうだけど、ちゃんと大人だから。

 

 

 

 

 

『イエエーーーイッ!それでは聞いてくれロックンロール!BONE TO BE WILD!』

 

「イエエーーーイッ!」

 

「やるなあ、あのガイコツ」

 

「おもしれえやつばっか仲間にしてんなルフィのやつ」

 

 一夜明けてこの島の記録が溜まったことを確認した私たちは今、あのサングラスの手長族の人と何と正式に音楽家として契約を結んだブルックさんが行うファーストライブを見ていた。いつもはバイオリンとピアノを嗜んでいたブルックさんが手に取るのはギター!エレクトリックなロックンロールが会場に鳴り響き、シャンデラの演出の炎が空高く舞っている。

 

 私はカイリューと一緒に飛び跳ねて音楽に乗る。いやー、麦わらの一味でちゃんと航海した日数は少ないけれど、それでも毎日ブルックさんが奏でる音楽が途切れることはなかった。どこで聞いても盛り上がることができる音楽があって、暇を持て余しがちな航海に花が添えられていた。誰も気づくことなく、さりげなく、それでいて気配りをして。

 

 空中を舞って音楽に合わせて炎を噴き上げるシャンデラは、思いのほかブルックさんと相性がいいらしい。彼の食い扶持は頑張って自分で稼げという感じで言ってあるので演出として暫く頑張るのだそうだ。もちろん自分の修業をして、ブルックさんにゴーストとして魂のことをレクチャーしながらね。

 

「そういえば、補給どうしましょう?」

 

「いや、さすがに無理だろ。この島なんもないぞ。さっき問屋除いたけど足長族の村とそんな変わってなかった。特に食糧なんて空っぽだったぜ?」

 

「ですかぁ。海王類とか出たら仕留めてもらえません?解体は……私じゃ無理ですけど」

 

「ああ、まあそりゃおれがやるよい。暫くは魚だな」

 

 結局、この島での補給は諦めたほうがいいのかな。私は書き換えられた記録指針の3つの針を眺める。けど今はロックに浸ってたいとパチンと記録指針の蓋を閉めて、カイリューに肩車してもらう。ブルックさんがギターをかき鳴らすのに合わせて発射された大文字が空に花火のように打ちあがる。私はそれに、歓声を上げるのだった。

 

 

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