カイリューといっしょ! 作:カイリューはいいぞ
「えー、お二人にお知らせがあります」
「お、どうした?」
「あー、なるほどな」
「はい、マルコさんはお察しの通りなんですが……食料が切れました。そしてミロカロスさーん」
「ふる?」
「なんかいた?」
海面から顔を出したミロカロスはふるふると首を横に振る。はい、ハラヘッターニャを出港して数日、補給なんぞ水くらいしかできなかったので遂に食料の在庫が付きました。私のバッグの中のものを併用してだましだましやっていたんだけど、流石に大人の男の人の食欲には勝てなかったよ……分からされちゃった、エースさんはルフィさんのお兄さんだってことを。
食べ過ぎなんだよルフィさんほどじゃないにしろ!ゴム人間のルフィさんはどんどん体が膨らんでいくからどれだけ食べても納得感があったけどエースさんはどこに収まってるの?食べてる端から中で燃えてるんじゃないよね?それに、エースさんほどではないにしろマルコさんもそれなりの量食べるから、食糧管理は大変なのです。
そして、最後の希望とばかりにお願いしたミロカロスの姐御によるポケモン漁は、スカに終わってしまった。さあ、壮絶サバイバル生活の始まりである。まあ、保存食はあるよ、かさばらない干し肉にかったい岩みたいなパンが。でも、味見して分かった。これ美味しくないやつ。パンは歯が欠けそうなほど硬くて口の中の水分全部持って行っちゃうし、干し肉は塩辛過ぎでお肉の美味しさがわかんないもん。
「えー……マルコ、記録書き換わってもいいから島があったら上陸しようぜ」
「あー、そうするか。お子様の成長によくないよい」
「むー!私だって旅慣れてますから保存食に文句言ったりしませんー!」
「俺は保存食いやだ」
「ガキよりガキなこと言ってんじゃねえよエース」
むっかー!とマルコさんの言い草にムカついた私が反撃を試みるが頭を押さえられてしまい私のぐるぐるパンチは届かない。ハリーセンのごとく頬を膨らませた私はちらり、とミロカロスを見る。ミロカロスはそのアイコンタクトで分かったらしく、極々威力を絞ったみずでっぽうをマルコさんに発射する。不意打ちに顔面を水浸しにされたマルコさんとそれをはやし立てる私とエースさん。
「あっはっは!マルコ!水も滴るいい男じゃねえか!」
「いえーい!ミロカロス!ナイスみずでっぽう!」
「……子育てってのは難しいなぁ、オヤジ……」
流石に哀愁が漂い過ぎな気がするんですけど?
「3日で進退窮まったんですが!?」
「文句はエースに言えよい」
「食べすぎ!です!」
「だって腹減るんだもんよー」
「言いながら干し肉を炙って食べない!」
3日後、洋上にて何とか硬いパンを美味しくしようと頑張っていた私、干し肉を水で戻して塩抜きをして、硬いパンを衣にして揚げてみたらどうだろうと試そうと思って干し肉のある場所を探せば、なんか異様に少なくて、元凶を見ると自分の能力で大切な食料を炙って食べていた。どかーんと爆発して怒ってみても、私じゃどうやら迫力が足りないらしい。むむ、こうなったら……
「ばっ!?お前こんなことであれ呼ぶ気か!」
「呼びますよ!ええ呼びますとも!船上での食料の大切さを3匹と一緒に叩き込んであげますとも!」
「わかったわかった!俺が悪かったから呼ぶな!船が沈む!」
「クァ?」
「あ、出てきた」
「出てきた!?」
「ごめーんカイオーガ、近くに魚とかいないー?食い出がありそうなの」
いい加減に堪忍袋の緒が切れた私は口に指を突っ込んで指笛を吹こうとするとそれを見たエースさんが私を必死に止める。伝説3匹に出張願って物理的に分からせてやろうと画策したんだけど呼ばれる前に対処するとは流石は白ひげ海賊団2番隊隊長……!でも一歩遅く、カイオーガが呼んだ?とばかりに首を出した。ついでに魚でもいないか聞いてみると、カイオーガがくいくいと顎を動かして先導し始める。
マルコさんにお願いしてエースさんにゲンコツをしてもらってから船でカイオーガを追いかけるとなんと島が見えてきた。緑豊かで、なんか植物みたいなんだけど悪くない感じ!行きましょう行きましょう!と私が飛び跳ねて主張するんだけどマルコさんがすっごい渋い顔してる。なんで?
「カイオーガ!ありがとう!今度カレー作るから食べて!そんでマルコさん、どうしたの?」
「いや、まさか
「ストマックバロン?なんだそりゃ」
「世界最大の肉食植物だよい。あの島が全部植物だ、ちょっと見てろよ……今まで振動がなかったってことは……きたよい!」
「うわわわわ!?」
ずごごごご!と目の前の島が鳴動し始めたと思ったらまるで手が沢山あるヒトデのようだった島の端がゆっくり持ち上がったと思ったら一瞬で上まで持ち上がり、まるで花のつぼみのようになってしまった。それと同時になんか甘い匂いが漂ってくる。うん、これあれだね。甘い匂いのする木に塗りたくった甘い蜜の香りだ。ポケモンが吸い寄せられる気持ちが分かるなあ。
「おー、すごーい」
「こいつがストマックバロン、甘い匂いで海王類や海獣を呼び寄せて、バクン!と食らう植物だよい。ま、島としちゃ優秀だ。何せ獲物をおびき寄せるための餌は、うまいからな」
「じゃあ上陸しましょうすぐしましょう今しましょう!」
「ウチの妹は全然躊躇とかないんだな……」
「こんなのワイルドエリアとそう変わらないですからね!」
最終進化系が当然のように歩きまわっててダイマックスも頻発するガラルの魔境と同じくらいだよ私にとっちゃ!あー、でも船どうしようかなあ。係留してもあれだよね、あの食事に巻き込まれて壊れちゃう。カイオーガの鼻先に抱き着きながら私がどうしたもんかと考えてると、カイオーガがいったんとぷんと潜ると船の周りの海水が持ち上がって、船をぐるっと囲って水のバリアを形成した。もしかして……
「ここで、守ってくれるの?」
私の問いかけにまた海面から顔を出したカイオーガはこくんと頷く。うおおおありがとうカイオーガ!残ってる渋いポフィン全部あげちゃう!よし行くぞストマックバロン!どんな島なのか楽しみだなあ。それよりも……私はクゥとなったお腹を押さえる。むむ、お腹が減った。いやそれも今だけだ!マルコさんの話を聞く限り、ストマックバロンは餌となる動物を差し込むためにわざと滅茶苦茶美味しいものを実らせていると教えてくれたから!
「よし行こうカイリュー!」
「りゅっ!」
「なー、マルコこの運び方何とかなんねえか?」
「文句があるなら自分で飛べ。できるだろうが」
「船燃えちまうんだもんよー」
せめて背中載せてくれよ、というエースさんの懇願を黙殺してマルコさんはエースさんを獲物を捕らえた鷹のように足で掴んで空を飛ぶ、私もカイリューの背中に掴まって船を後にする。カイオーガは水のバリアに穴をあけて私たちを通してからまた船をバリアで包み込み、盛大にしおふきして私たちを送り出してからまたちょっと波を起こして水の中に潜っていった。何かお礼をしなきゃなー。
少し待つとストマックバロンのつぼみみたいになった島の端の結合が解かれてまた海の上に戻ってくる。私たちはその中の一つに着地した。おおー、これはまさに熱帯雨林のジャングル!草ポケモンとノーマル、そして水タイプのフェスティバルだ!普通だったらここで何かいるハズなんだけど、さっきのストマックバロンの食事でそのまま全部食べられちゃったらしい。
「ストマックバロンの食事は1日数回、そんな頻繁にああはならねえし、俺らだったら飛べば問題ねえだろう。何だったらエースが食われて中から焼き払えば安全だな」
「やるか、アレに対処すんのは面倒だ」
「出来ない、とは言わないあたり凄いですねぇ。カイリューなら食べられた状態でりゅうせいぐん?まあまだ何も起こってないわけですし殺しちゃうのはやめましょ?」
いやー、甘い匂いがしてて気候的にも過ごしやすくて、それでいて割と食べれそうなものがそこらへんに実ってる。私の知識の範囲で言うなら下の地面、というかストマックバロンの皮膚というか皮というのはいわゆるふかふかの土というやつなんだろう。ずんずんと中に分け入っていくと、あれ?思ったより植物の植生が変だ。食べられそうな実はあるけど、なんか食べたらヤバそうな感じする。
「結構中まで来ましたね。うーん、どこ拠点にしましょうか」
「拠点作んのはやめとけ。どうせお食事でパァだ。ああ、そうそう言い忘れてたんだが」
「なんだよ?」
「戻るときめんどくさいから気をつけろよ?」
「具体的には?」
「後ろ振り返ってみろ」
マルコさんに言われて後ろを振り返ってみると、なぜか来たときにはいなかった巨大な生物が後ろにジャンジャカいた。あれま、見聞色使ってなかったから気づけなかった。そこで見聞色で島を探ってみると、いるわいるわ巨大な海獣とかどこにいるのか分かんない虫とかそういうの。カバのような巨大生物が私たちが見ていることに気づいてああん?といった感じでガンをつけてくる。
「ストマックバロンの上の森は中に入るのが容易いんだが出るときは強い生物が道を塞いでストマックバロンの餌を逃がさねーようにするんだよい。海獣たちはストマックバロンが栄養豊富になるとうまい餌を貰えて、ストマックバロンは餌をたくさん食える。ウィンウィンの関係ってやつだよい」
「はぇー。テッポウオとマンタインみたいですね」
「あれうまそうだな。食うか!」
「はい、どうぞ」
エースさんの火拳!の掛け声とともに放たれた火球みたいな炎の拳は哀れ捕食者から被食者に成り代わった海カバの顔面をこんがりウェルダンに焼いてただの食肉に……なってない!?顔面を焦がされた海カバはむしろ怒り狂った感じで瞳を真っ赤に染めてエースさん、ひいては私たちを見る。それなりの巨体だけど、ダイマックス個体とかには遠く及ばない。まあ、大きいだけかな。
「エース、加減したろ」
「わり、前海王類真っ黒こげにしたからな」
「じゃあ、次私でいいですか?いい加減お腹がすきました」
おう、と言われて私はカイリューに目配せ。それなりに彼我の距離があるので時間がある。カイリューは集中して右手を弓の弦を引くように引いてから拳を握り締めて、力を籠める。すると目に見えない力が右拳を覆っていくのが感じられた。硬化して黒くはなっていないけど武装色の覇気だ。そして、もう一度拳に力を籠めるとバリバリと稲妻が走る。
「カイリュー!武装、かみなりパンチ!」
「りゅうっ!」
「ぐぎゅううううっ!?」
どうっと音をさせて飛び立ったカイリューが目にもとまらぬ速度で突進する海カバに対してカウンターを入れるようにおでこど真ん中にかみなりパンチを叩き込んだ。武装色の覇気を併用した一撃は硬化してなくとも今までのかみなりパンチの威力を大幅に上回って、上から殴りつぶされるような形になった海カバは足を折ってスライディングでもする様に顎を地面にしたたかに打ち付けた。
「いやいやタフすぎるんじゃないですかね!?ホエルオーですか!?」
「いや、あと一撃だ。うし、最後は俺が……なんだっ!?なんか来るぞ!?」
「えっ!?」
「シャァァァァッ!!」
マルコさんが手を翼に変えてもう一撃見舞おうとしたときに、後ろから猛スピードで迫りくる何かが私たちの頭上を飛び越えてカイリューを踏み台にし、海カバに留めの一撃を叩き込んだ。両手の岩でできた斧のキレ味はまるで黒曜石の打製石器のようで、一撃で海カバの頭を両断して命を刈り取る。ぶんっと斧手についた血を振り払ってこちらを静かに見つめる生き物、知っている。知っている!ポケモンだ!
「バサギリっ!!」
「シュアアアッ!」
駆け出したバサギリと私はその場でハグし合う。斧が私に触れあわないようにしつつも加減をして腕で私を支える彼の出現に冒険でテンションが上がりまくった私のテンションはさらに有頂天になる。まさかこんなところで出会えるだなんて!この子との出会いはストライクの時にジョウトで出会ったの!だから割と古参なんだ!
メタルコートがその時には手に入らなくて、それで冒険しているうちにシンオウの古代遺跡で出土したくろい輝石に触れた時に偶然進化しちゃったの。なんでも、シンオウがヒスイって呼ばれていたころにはストライクの進化系として存在してたんだけど今は絶滅しちゃったんだって。当時は研究所だなんだと言われて殿堂入り権限で全無視して逃げたりしました、ごめんなさい。
3.6mもある超大型の体を揺らして喜ぶバサギリに今一度強くハグをしてから私は二人とカイリューに向き直った。
というわけで新仲間、バサギリくん(キング個体)です。なんでそうなったか、作者にもわからん。ヒスイ出身じゃないですし