カイリューといっしょ!   作:カイリューはいいぞ

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岩蟷螂と私と狙撃手

「というわけで私の離れ離れになってた友達の一人、バサギリです!仲良くしてあげてください!」

 

「お、おう。なんだユウリの友達か、道理で強そうなわけだよい」

 

「へー、中々でっかくてかっこいいじゃねえか」

 

「でっしょー!バサギリは普通の個体の2倍くらい大きいんですよ!」

 

「シャッ!」

 

「りゅー!」

 

 バチン、と斧手の側面と手をハイタッチのようにたたき合い再会の喜びを噛み締めるバサギリとカイリュー、私はバサギリのモンスターボールを出して彼に見せると正解だったようでうんうんと頷いてくれた。いやーまさかこんなふざけた島にバサギリが飛ばされてただなんて。会えてよかった本当に!これでまた一匹友達を見つけられた!

 

 中々でかい、とエースさんは評したように古い文献のバサギリの平均的な大きさは大体1.8m、対して私のバサギリは大体3.6mと少し。そう、実に2倍もの差があるのだ。何でも大昔、ヒスイ地方ではポケモンと人間は私の時代ほど仲良くなくて人間にとっては脅威でしかなかった。ポケモン同士の縄張り争いも過激で戦争じみていたらしい。

 

 それで強さによる淘汰が極まってくると、強いポケモンほど大きくなる。そうして親分と呼ばれる大きさを手に入れた個体がいて、そのさらに上にキングという階級がある。バサギリがまさにそれで、掘り出した黒い輝石が悠久の年月をかけて蓄積したエネルギーを一匹ですべて吸収した結果、強さに加えて大きさまで手に入れたわけなのだ。あー!かっこいい!

 

「バサギリ、ありがとうね。ご飯作るから食べよっか!解体しちゃいましょう!腕のお肉とかあばら肉とか美味しいんじゃないですか!?」

 

「焼き斬るか!久しぶりの干してねえ肉だ!」

 

「シャァッ!」

 

 バサギリが飛び立って、斧を振るう。特性のきれあじにより研ぎ澄まされた威力抜群の岩の斧は海カバを見事に四肢、胴体の大名おろし、さらに首を切断して分解せしめた。エースさんは待ちきれないのか腕を一本取って皮ごと焼き、さらに炎上させてウェルダンに焼き上げて一足先にかぶりついた。

 

 私はカイリューとバサギリと目配せ、カイリューは尻尾を振り回して周りの木をなぎ倒し、打ち上げる。そしてバサギリは空中で斧を振るい、木々を見事な薪にカットしてしまう。そしてカイリューの火炎放射で火をつけて、即席の削った木の串にマルコさんが切り分けた部位のお肉を指して火の回りにおいておく。即席BBQだ、焚き火の扱いなら任せて欲しい、火の加減までバッチリだ!何せ旅してる時はこれでご飯を毎日作ってたわけだからね!

 

 バサギリは手がないので必然的に犬食いしかできないわけだけど、私のパーティーにいるときは誰かがそういう子は食べさせてあげるのがルール。今回は私、私はバサギリ用の大きな串を手に持って、彼にあーんと食べさせてから、自分も食べる。繊維っぽくてワイルドなお肉だけど、それがまた美味しかった。

 

 

 

「いやー、久しぶりに美味しいご飯でした!」

 

「やっぱ魚もいいけど、肉もだな!」

 

「ごっそさん、綺麗に消えたな」

 

「シュアアアッ」

 

「りゅ~~」

 

 少なくとも私の手持ちと私、大人二人では入るはずもないほど大きな海獣だった海カバは骨と食べられない内臓を残してきれいさっぱりなくなっていた。というか7割くらいエースさんが食べた、どれだけ入るんだ。やっぱりルフィさんのお兄さんなんだな、食欲的な意味でも。大食漢なお兄ちゃんだなあ。食後のコーヒーを啜ってると、バサギリが斧の手入れを終えた。そこで私は情報収集に入る。

 

「ねえバサギリ、私たちこのまま補給するんだけど良かったら美味しい果物とかあったら教えて欲しいな。お肉は帰るときまた狩ればいいしね」

 

「しゅぁ」

 

「へぇぁ!?」

 

「何だユウリ、変な声出して」

 

「イヤだってバサギリが、この島人がいるっていうから……」

 

「はぁぁ!?ストマックバロンの上に住んでる奇特な奴が……いや、中に押し込められて出れねぇのか。そんで中で生き残ってるわけだな。ある意味でレアな奴だよい」

 

「へー、ヘラクレスンって名前なんだ。もう一人が、ウソップン?もしかして鼻長い?」

 

「シャァ」

 

「うそぉ……」

 

 バサギリの話を詳しく聞くと、バサギリはこの島にそのまま放り出されて暫くは一人で生きてたんだけど、そのうちヘラクレスンっていう名前だけならあのかくとう、むしのポケモンとよく似た人と合流して一緒に暮らしてついで力を磨いてたんだけど、生活して空地にちょうどひと月と少し前あたりになんか鼻の長い人が降ってきたんだとか。

 

 鼻の長い人はヘラクレスン曰くウソップンというらしくて、それが私にとっては既視感ありまくりの人選なわけです。あれー?知ってる人だぞー?というかここまで聞いて確定した。多分くまのやつ、偉大なる航路(グランドライン)のいくつかある航路の内一つに一直線になるように私たちを吹っ飛ばしたな!?じゃあなんで私は新世界なんだ!戻ってくるの大変だったんだよ!?

 

 でもこれで、ある意味で希望が持てた。多分だけどこのまま遡っていくと散り散りになった仲間に会える可能性が非常に高い。何か問題があったら助力をすることができるだろう。それは私にとっては非常にうれしいニュースでもあるし、こうしてバサギリにも会えた以上、いろんな島をめぐる理由も増えた。力がもりもりわいてきた!

 

 そんなことを考えてるとずごごごご!とまた地面が揺れ出す。あ、これ食事だ。えー、ととりあえず飛んで退避しようと思ったら海上から、つまりはカイオーガがいる方向からプレッシャーが解き放たれて、地面の揺れがピタッと収まる。げ、カイオーガ……プレッシャーだけでストマックバロンの食事を止めちゃった。多分食ったら沈めるぞって直に伝えたのか。過保護だなあ。

 

「カイオーガのおかげでストマックバロンの食事は無視できそうですね」

 

「あいつ何なんだよほんとに……」

 

「私の故郷だと、海をつかさどる神様です。本気を出したら海が増えて島が沈みますよ」

 

「間違っても喧嘩を売るべきじゃねえよい……味方で助かった」

 

 なお、旅途中で黒ひげに会ったら私は今持ってる全ての戦力を注ぐ予定なのでホウエンの3匹にもご出張願った上でくろいまなざしのあとメガシンカ&Zワザパーティーを開催する予定である。でも、マルコさんとの約束があるので探し回ったりはするつもりはない。お父さんにアホンダラ、といわれても困るからね。

 

 バサギリにとりあえず案内して、というとバサギリはこくんと頷いて先導を開始する。後ろの海カバのホネに手を合わせた後私たちはバサギリの先導に従って奥地に向かうルートから少し外れた場所に向かって歩いていく。途中で引き返そうとしていると勘違いしているらしい猛獣が襲い掛かってきたけどもう殺す理由はないのでエースさんが覇王色で追い払ってしまった。

 

 そうして暫く進んでいくと広げっぱなしだった見聞色に誰かが移りこんだ。知っている気配ではないのできっとこれがヘラクレスンという人なのだろうか?ガサガサと気配が近づいてきて、目の前の藪から飛び出してくる。当然エースさんもマルコさんも気づいていたのでノーモーションだ。迎撃準備だけしてるけど。

 

「ノブシン!何があっただん!?急に島が食事をやめ……人がいるぅぅぅぅぅ!?」

 

「……メガシンカしてる?」

 

「あー、わりいな。さっきの島の食事は俺らの仲間が島を脅して止めたんだ」

 

「島を脅しただん!?」

 

 開口一番私は失礼なセリフを吐いてしまった。いや、その、ね?あまりに恰好がメガヘラクロスにそっくりだったから名前のインパクトのせいで野生のメガシンカが飛び出してきてしまったのかと思ったんだ。多分目の前にいる手足が細いわりにかなり胴体が大きいヘラクレスオオカブトを模した兜を被っている人がヘラクレスンなのだろう。

 

 というかノブシンってもしかしてバサギリのこと!?野武士ってことか?!いやそれはドドゲザンとかであってバサギリは……いや確かに頭ちょんまげっぽいかも。でも野武士はないよ、こんなにカッコいいのに。ダメだ、私は自分の手持ちに関しては親バカを発揮してしまうので客観視できない。みんな大好きだし。

 

「バサギリ、もしかしてこの人がヘラクレスンさん?」

 

「シュアアアッ」

 

「そう!私こそが森の勇者!ヘラクレスン!そしてその相棒!ノブシンだん!」

 

「バサギリは私の手持ちですよ?」

 

「なぬん!?もしや、君がノブシンの言っていた探し人だん!?」

 

「はい、バサギリがお世話になりました。ヘラクレスンさん」

 

 ヘラクレスンさんはどうやらバサギリとはかなりイイ感じに打ち解けていたみたいだけど、バサギリのトレーナーは私なのです。それだけは絶対に譲れないの。だからそこだけは主張させてもらうけど、お世話になったのは事実なのでそこはきちんとお礼を言わせてもらう。ヘラクレスンさんは手を差し出した私に快く応え、握手をしてくれた。鍛えられてて力強い手だなあ、あと植物のいい匂いがするよ。

 

「まさかボーイン列島に人が上陸してるだなんてん……この森は追いはぎの森グリンストン!島に入るは容易いが出るものは森の獣が許さない!ノブシン……バサギリンのおかげで私たちはかなり安全に過ごせてただん……」

 

「知ってるよい。俺たちなら入って出るのも余裕だ。それよりも、こいつの仲間……ウソップっつーやつがここに居るって聞いたよい。会わせてくれ」

 

「ウソップンに!?それは、何というめぐりあわせだん。分かったん、こっちにくるだん」

 

「森の勇者か!イカスな!俺もどうだ?火拳の勇者!」

 

「お前は海賊だろうよい、倒される側だ」

 

「魔王エースですか、強そうですね」

 

 たわいのないことをあれこれ話しているうちにここが拠点だんと案内された場所では生えてる木を組み合わせるように地面に固定したような感じの建物があって、食事対策なのかいくつも掴まる場所がある場所だった。そうしてその拠点を見るとなんか丸々とした何かがぜーはーと息を荒げながらもわんもわんと汗の湯気をあげてた。誰だろ。

 

「おーウソップン!今戻っただん!」

 

「おー、ヘラクレスンお帰り。さっき急にノブシンが出て行ったもんだから何が起こったかと……島の食事も中断したしなあ」

 

「え、まさか……ウソップさん、ですか!?」

 

「あ?そりゃあおめあれだよ、おれこそは!勇敢なる海の戦士ウソップ様だ!ってお前!?ユウリか!?」

 

「そうですユウリですよ!どうしたんですかウソップさん!病気ですか!?悪い意味で見違えましたよ!?」

 

「えっ!?ああいや、これはだな……」

 

 私の目の前にいた人は、私と一緒に船旅を楽しんでいた腹筋の割れた長っ鼻の狙撃手ではなく顔も、お腹も、身長が変わるほどにぶっくぶくに肥え太ってしまった人だった。余りの変貌ぶりに自己紹介を聞くまで私は全く彼が彼だと気づくことが出来なかった。だってさ、声も野太くなっちゃって、そんでだるだるのお腹、まるでカビゴンのよう!

 

「あー、マジかお前。アラバスタで出会った時はもっとちゃんとこう、シュッとしてたじゃねーか」

 

「こ、これはだな……」

 

「私とルフィさんが戦争で大変な時にウソップさんは暴飲暴食で富の象徴になってただなんて」

 

「いやそれは違うだんユウリん」

 

「ああ、ストマックバロンに生えたもん口にしちまったんだろ。海獣を狩るんじゃなくて」

 

「どういうことですか?」

 

 まさか離れ離れになってる状態で暴食に耽っていたのかとウソップさんに失望しかけていた私にストップをかけたのは知識人のマルコさんとこの島のスペシャリストのヘラクレスンさん。ストマックバロンが餌として実らせる食料は栄養豊富、というか豊富すぎて飢えた状態だろうとそれを口にすれば一瞬でこのように太ってしまうのだそうだ。つまり、ウソップさんはそれに引っかかってしまって太っているだけで今は痩せる為に頑張っているのだそう。よかったー……。

 

「情けねえ姿を見せてすまねえユウリ!けど!お前が無事で俺は嬉しい!ルフィが大変だった時に俺は、俺たちは誰一人としてあいつの傍にいなかったんだ!お前があいつを救けに行ったおかげであいつがどれだけ救われたか……!ありがとう!」

 

「ウソップさん……はい、どういたしまして。ウソップさんもきっと色々頑張ったんですね」

 

「ああ、バサギリンの力を借りて外に出たはいいが、船がなかったん。ニュース・クーが新聞を落としていなかったらきっと、泳いでいくつもりだったん」

 

「当たり前だ!俺はあいつの、麦わらの一味のクルーだぞ!船長のとこに行くのがまず第一だろうが!」

 

 どん!と地面を叩いて悔しさを表現するウソップさん、その目には現場に行けなかった悔し涙が光っている。それを見たエースさんはおしっ!と腕をパンと叩いてそれを見たマルコさんが頷く。その意を察した私は仰向けに寝転がっているウソップさんに向けて決定的な一言を放った。こうなればとことんやってやろう!行くよウソップさん!私たちと……!

 

「ダイエットしましょう!今から!」

 

「おう!……って、え?」

 

 ウソップさんは鳩が豆鉄砲を食ったように、ポカンとして涙を引っ込めるのだった。

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