カイリューといっしょ!   作:カイリューはいいぞ

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旅立ちと私とドラゴン 

 「改めて礼を言わせてくれ、友人たちを助けてくれたこと感謝する」

 

 「りゅっ」

 

 「ちょ、カイリューそんな気安く……」

 

 「構わねえ。変に畏まられるより生意気な方が慣れてらァ。俺相手にそんなことする竜なんざ初めて見たがな。グララララ……!」

 

 白ひげさんのお礼、頭を下げることなく普通に見下ろした状態で口だけで言われたそれ。白ひげ海賊団のメンツとかいろいろあるだろうからこんなチンチクリンに頭を下げるわけにはいかないのだろう、それでも普通にこの場に呼んでお礼を言ってくれるだけで相当な譲歩をしたことになる。ここら辺は白ひげさんの矜持なのかな?そこまでしてお礼を言ってもらえるほどこの街は彼らにとって大事なのだろうか?

 

 それよりも、気にすんなよとばかりに片腕をあげたカイリューに私は真っ青になる。待ってカイリュー、目の前の人すごい人!偉い人!私なんてデコピンで頭がボンッてなるんだよきっと!いや、島一つ滅茶苦茶にできるなら息をふーーっとされたくらいでこの貧弱ボディは死ねるかもしれない。なんせ普通のお子様の体だ、寸胴だし。

 

 気にすることはない、と豪胆に笑っているけれども私の背中には冷や汗がタラりと垂れてしまう。カイリューは我関せずといった感じでドスン、といつも通りに足を投げ出した感じでミロカロスのとぐろの上に座った私の隣に腰を下ろして、相変わらずニコニコとしだした。そこで思う存分炎を吸い込んで満足したらしいシャンデラがゆら~~とやってきた。メタグロスは動かないし、ザシアンは興味なさげでそのまま足の上に顎を置いて眠りだしてしまった。デンリュウは盛り上げるのが好きなので変な踊りを踊る集団の中でミラーボールみたいに光りだす。

 

 「しかしまあ、こんな動物たちは見たことないよい。それでいてそんじょそこらの海賊じゃ相手にならねェほど強い。百獣のアホどもに見られたらめんどくさいよい」

 

 「百獣、ですか?」

 

 「カイドウのハナッタレか。ここ最近妙に兵器だのを集めてるって話があらぁ。欲しがるだろうな、あのアホンダラァ」

 

 首を傾げる私に、この海にいて百獣のこと知らねえなんてどんな生き方してきたんだよい、とマルコさんはつらつらと色々教えてくれる。まず四皇っていう4つの海賊団があって、その中にあるのがまず目の前の白ひげ海賊団、次に赤髪海賊団に唯一の女海賊ビッグ・マム海賊団、それで最後に百獣海賊団があるのだとか。ほぇー。

 

 「町長から聞いたが、お前旅してるんだって?その年で。家族はどうした?」

 

 「……今は、会えない場所にいます。なので、故郷を探すために旅をしてるんです」

 

 「そうなのか、そりゃあ……悪いこと聞いちまったよい」

 

 「気にしないでください。お友達がいますから」

 

 一応の目標だけど、ポケモン世界に帰ることが今の目標だ。なぜ現実世界の方じゃないかと言われれば手持ちのポケモンたちのためと、この体は9割ユウリのものだからだ。「わたし」の部分はまあ、何となく諦めがついている。ぽりぽりと頭を掻くマルコさんが申し訳なさそうに謝ってくる。意外だ、普通に子供相手に謝るだなんて。

 

 「ルォン」

 

 「ザシアン、ありがと」

 

 「あー……お前さん、いつまでここに居るつもりなんだ?町の連中がいうにゃすっかり酒場の看板娘になってるみてーだけどよい」

 

 「そろそろ出ようかと思ってるんですけどね……何分海を越えたことが無くて」

 

 「どうやってここに来たんだよい?」

 

 「飛ばされたんですよ、元居た場所から……」

 

 ザシアンがすくっと立ち上がって私に歩み寄って頬を舐めてくれる。まるで慰めてくれてるかのようで、嬉しかった。続いて飛んできたマルコさんの質問に逆に私が頬を掻くことになる。この世界の地理については詳しくないし、なぜか入ってたポケモン図鑑のマップを見る限り、一つの地方の水道とは比較にならないほどに島と島の距離が離れている。半日程度ならともかく、普通になみのりでポケモンに乗っていくには辛い距離だ。

 

 私が旅立ちを考えてるという話が出た途端、船員と酒を酌み交わしている町民の人たち、特に酒場に入り浸ってる呑兵衛の人たちから一斉にブーイングが飛んだ。何でもマスターとバーテンだけじゃむさくるしくて敵わないから私がいたほうが華やかで酒が進むのだとか。こんな子供捕まえて何言ってるんだろう……?あ、奥さんたちに引きずられてった。

 

 「とばされたってーと、悪魔の実か」

 

 「あー、多分違います。えーっと、私のいたところだと、この子たちを総じてポケットモンスター、縮めてポケモンって言ってるんです。ポケモンの中には単独でテレポートをしたり、空間を捻じ曲げたりするポケモンもいて……多分偶発的にそういうことに巻き込まれたのだと思います」

 

 「ポケモン……きいたことねーよい」

 

 「でも目の前にいますよ?」

 

 「シャンシャン」

 

 「信じてねーわけじゃねえよい。ただ、俺も長い事海にいるが、そんなもんがあったら普通に耳にしてると思ってな」

 

 いやその多分別の世界から来ましたーとはとても言えなくて、私はふよふよしてるシャンデラを両手で捕まえてずいっとミロカロスの尻尾に持ち上げられつつマルコさんの眼前に突き出す。無機質なシャンデラの瞳に見つめられたマルコさんは聞いたことがない話だと言う。確か白ひげ海賊団ってかなりのベテラン海賊団だよね、そうなればこの世界にポケモンがいる可能性は低いかなあ……

 

 「おい、ハナッタレ」

 

 「え、はい何でしょう!?」

 

 「俺たちゃ補給を済ませて明後日にはここを出る。付いてくるか」

 

 「え、よろしいんですか!?」

 

 「ふん、帰る場所を探すガキのおもり程度ならないも同然だ。今のままじゃてめぇ、危なっかしくてしょうがねえ。この海のことを教えてやる。それに船がねえ癖にどうやって島を渡るつもりだ?」

 

 シャンデラを押し付けようとする私とそれを躱すマルコさんという構図を笑いながら眺めていた白ひげさんが唐突に私に船旅での同行の許可をくれた。危なっかしいかあ……いやそんなことなくない?確かに海賊には一回騙されたけど……あれ?危なっかしいじゃん、ポケモンいないと私ただのお子様だし。船についてはまあ……カイリューに掴まって飛んでいけばいいかなって。カイリューって16時間で地球を一周できるみたいだし、3時間くらい飛べば島から島に移ることはできるんじゃないかなって思ってたけど……もしかしてこれ、見通し甘い?

 

 「カイリューに掴まって飛んでいく気でいました」

 

 「りゅっ!!」

 

 「偉大なる航路、特に新世界の気候を舐めちゃいけねえ。船よりでかい雹や、槍みてーな雷が降ることもあるよい。空は確かに安全だが、勧められねえな」

 

 「そんなふざけた気候があるんですか!?」

 

 「先入観は捨てておくこった」

 

 まかせろ!と胸をドンと叩くカイリューに頼もしさを感じていたら、マルコさんがとんでもないことを言い出した。船よりでかい雹ってそれ最早氷山なんじゃ……?槍みたいな雷ってなに?ひらいしん効くかな……?あかん、本格的に情報不足だ、だけど……なんかワクワクしてきた。きっと私は、未知のものが好きなんだ。それが「わたし」か「ユウリ」のどっちなのかは分からないけど、見てみたいなと思う。いやでもグラードンやカイオーガとか出せば似たようなことできるのかな……??

 

 「それでも、いいんですか?私がいたら邪魔なんじゃ……」

 

 「ガキがいっちょ前に気にしてんじゃねえ。独り立ちできるようになってからそういう生意気なことを言え。できねえんなら甘えとけ、グララララ……!」

 

 「……よ、よろしくお願いします!」

 

 な、なるほど……!町の人たちが白ひげの親父さんは器が途方もなく大きくて物凄く優しいと言っていたことがよく分かった。町長さんのお話を聞く限り、白ひげさんがこの街を縄張りにして名前を貸して守ってくれてる理由は「友人だから」というもので見返りは一切貰ってないのだとか。そして訳の分からない子供一人をあっさりと船に乗せる器量、動物付きで。海賊にとって船に部外者を乗せるってそう簡単にできることじゃないんじゃ……?

 

 「どうしても礼がしてぇなら……酌でもしな」

 

 「分かりましたっ!ミロカロス!」

 

 「ふーるっ」

 

 差し出された大きなジョッキ、私では持てないのでカイリューに受け取ってもらいミロカロスと一緒に移動、酒なら何でもいい、という白ひげさん。なら町の人に大好評だったキンキンに冷えたビールがいいかも。ミロカロスのこごえるかぜを利用してビールの樽をキンキンに冷やす。ミロカロスの尻尾で樽の蓋を叩き割り、メタグロスのサイコキネシスで樽を持ち上げてもらって樽を傾けてカイリューが持っているジョッキに注いだ。樽半分が注がれたジョッキがカイリューによって白ひげさんに手渡しされる。

 

 「冷えたエールか……悪くねぇ」

 

 「ほー、氷を使えるのかよい。多彩だな……どれ、俺にも」

 

 ぐびぐびぐび、と迷いなく一気にビールを飲み干し、ドン!とジョッキを膝に打ち付けた白ひげさんの感想に興味を惹かれたらしいマルコさんがジョッキ片手にやってくる。それを皮切りにわーっと船員の人たちが集まってきて、あっという間に冷やしたビールはなくなってしまった。一応この時代、冷蔵庫はあるみたいなんだけどまだまだ性能が悪くて、氷を作れるレベルじゃないみたいなの。船にも積める冷蔵庫はあるみたいなんだけどね……だからきっと冷えたものは貴重なんじゃないかなあ。アイスとかシャーベット作ったら受けるかな?

 

 白ひげ海賊団にも冷えたビールは大人気で、お代わりの要求がそこかしこから。しょうがないのでミロカロスにこごえるかぜで樽のビールを全て冷やしてもらうとわーーっと歓声が沸いて我先にとビールの争奪戦が始まった。うわ、殴り合いしてる。そこら辺荒っぽいのも海賊って感じだね。だけど街を襲った海賊に比べたらなんだか温かい雰囲気がして、嫌いじゃない。家族みたいだ。殴り合いもじゃれ合いといった感じで笑顔が溢れているし。

 

 「綺麗だな、その子」

 

 「ミロカロスですか?そうなんですよ、私のいたところだと世界一美しいポケモンだって言われてます」

 

 「世界一か、それは大きく出たもんだ。ああ、おれはイゾウ、白ひげ海賊団16番隊の隊長だ」

 

 「ユウリです、お世話になります」

 

 「ふるぅ」

 

 やってきたのはおちょことちろりを持った花魁みたいな恰好の男の人……見た目は完全に女性っぽいけど、声で男だとわかった。ミロカロスは確かに美しいと思う、「ユウリ」の記憶だとテンガン山の地下の湖でヒンバスを捕まえて必死こいて渋いポフィンを与え、何とか進化させたという感じらしい。ポケモンについては普通に思いだせるんだよね。どうなってることやら。でも努力の甲斐あって、ミロカロスはひいき目抜きでもかなり美しく育ったと思う。

 

 イゾウさんを皮切りに、次々に白ひげ海賊団の隊長格だという人たちが挨拶に来てくれて、私はあっぷあっぷしている。一度になんて覚えられないよお~~~。えーっと、ビスタさんでしょ、ジョズさんでしょ?あれ、4番隊と2番隊の隊長さんは……?え、2番隊は不在で4番隊は……殺されたぁ!?こんな屈強で強そうな人たちと同じ立場にいた人を殺せる人がいるの!?この世界怖いよぉ……全員キテルグマだよ私にとっちゃ。ベアハッグじゃなくても死んじゃう。

 

 「うっうっ……ユウリちゃん行っちゃうのか……」

 

 「行かないでくれ……ずっとここに居てくれ……」

 

 「町長さん……」

 

 「よしんば孫の嫁に……」

 

 「お世話になりました」

 

 町の人たちは私の出立が決まったからか悲しんでくれる……と思いきや一部の呑兵衛の人たちは冷えたビールが飲めなくなるからと言った感じだ。それもう私いなくてもいいじゃん、ミロカロスいればいいやつじゃんかなしい。町長さんに至ってはお孫さんの嫁に私が欲しいのか。こういうこと言いたくないんだけどあんまり好きじゃないんだよね町長さんのお孫さん、2つ年上なんだけどスカートめくってきたりとかするし……。

 

 一応ちゃんと別れを悲しんでくれる人たちもちゃんといてくれるし、その人たちにはちゃんとさよならを言おう。お世話になりました、と。ところで一番お世話になった質屋のおばあさんとマスターさんは……うげっ!?マスターさん潰されてる!?おばあさんに至っては逆に船員さんを潰してる!?うわあああおばあさんウイスキーを一気飲みはあぶないよおおお!?

 

 何となく、寂しさを覚える出立の予定が決まって、私はお世話になった町の人たちにそれぞれお酌をして個別に礼を言って回ることにした。白ひげさんはそんな私を豪快に笑い飛ばし、船に乗る許可をくれるのだった。

 

 

 




 というわけで何話か常識を教えてもらうために白ひげ海賊団に同行します。まあ、普通なら乗せないと思いますけど、さすがに危なっかしいので特別扱いです。カイリューで新世界を行くには危険すぎますしね。次回で出港になります。

 手持ち紹介

 ミロカロス ♀

 DP、Ptより。テンガン山で釣ってポフィンをあげまくって進化させた。性格はおっとり、水技&おぼれた時対応してもらえる。とぐろを巻いてその中に主人公を収めてのんびりするのがお気に入り。美しさをあげ切って進化したので当然美しさの補正はマックス。


 では次回に。感想評価をくださると励みになります
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