カイリューといっしょ!   作:カイリューはいいぞ

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空島と私と突き上げる海流 

「空島!?空島って言いました!?行けるんですか!?行けるんですね!?」

 

「りゅっ!りゅっ!」

 

「あー、分かったから落ち着け。偉大なる航路(グランドライン)じゃあ記録指針は何があっても疑っちゃいけねえ。指す先に、必ず島はあるよい」

 

「まあ、どうやって行くかは別なんだけどな」

 

「え、行けないんですか……」

 

 空島とかいう胸躍る心躍る、ポルカオドルカな単語と新鮮な冒険の匂いを前にしてテンションがぶちあがりマックス状態だった私はエースさんの注釈を前にテンションが下がりしょぼんと体育座りをする。私のテンションの下降具合が想定外だったのかエースさんは気まずげに頬を掻いて、炉心の制御に戻った。代わりに頭をガリガリ掻いたマルコさんが海図を手に私を膝に抱き上げて説明を始める。

 

「空島っつーのはな上空10000mにある浮島のことだ。細かい説明を省くが、海雲っつー水の性質を持つ雲の上に、個体の性質をもつ島雲が重なってることでできるよい」

 

「へー!気体なのに水とか、土とかと同じようになってるんですか!?凄いです!」

 

「ああ、まだまだ詳しくは分からんがな。んで、これが海底火山の爆発やハリケーン、ジャヤ島近海で起こる突き上げる海流(ノックアップストリーム)なんかで生き物や植物が上に運ばれて、生態系を作るんだ」

 

「つまり、突き上げる海流(ノックアップストリーム)っていうのに乗れば、行けるってことですか?」

 

「ちょっと違うな。空島は無数にあるよい、ジャヤから行けるのはジャヤと同じ海域にある空島だ。今俺たちの上にある空島に行くにゃ、別の手段を探す必要があるよい」

 

 なるほど、空島は一つじゃなくて無数にあって、その島にもそれぞれ記録指針が記録する磁気が放出されてる。それで例えばたまたま上空10000m上にある空島の下を通過するときに記録指針の磁気が書き換えられてしまって空島を指すというのが今回私の記録指針に起きたからくりというわけだね。そして、余計に楽しみになった。何とかして船ごと上に行けば、空島に行けるってことだね!

 

「私一人ならすぐ上に行けるんですけど……」

 

「りゅっ!」

 

「ん、まあ俺もな。何だったら俺ら待ってるからお前だけ空島行くか?」

 

「……寂しいじゃないですかぁ」

 

「あー、そっか、そうだよな。分かった分かった、行く方法を探すよい」

 

 カイリューにお願いすれば多分私だけ運んで空島に行くことはできるんだけどそれは違う、と別の方法を考えようとして頭をひねるがマルコさんは別に一人で行ってもいいぜ、といった。折角ならみんなで行きたいなぁと考えていた私はちょっとスン、と鼻を鳴らしておでこをマルコさんの胸板にぐりぐりして抗議するとマルコさんはグシャグシャと私の頭をかき混ぜてから一緒に行こうと言ってくれた。

 

 どうやら今回の空島は移動しているらしく、ちょっとづつ記録指針の針が移動していっているのでそれについていくようにエースさんは船を操ってそれを追いかけるように進んでいく。そういえば突き上げる海流(ノックアップストリーム)とはなんだろな?と私の頭に疑問符が浮かぶ。それを予想していたのかマルコさんから解説が入った。

 

突き上げる海流(ノックアップストリーム)ってのはな、平たく言やあ海底で起こる水蒸気爆発だ。海底の深い所にある大空洞に低温の水が流れ込んで、地熱の影響で蒸気になる。それがたまりにたまって……海流になって柱のように空につきあがるんだよい」

 

「……何ですかそれ凄い面白そうですね」

 

「島の真下で起こったら島が消し飛ぶがな」

 

「……おっかないですねえ」

 

「それをお前が言うのか?」

 

 マルコさんの返しに私の唇がつんと尖る。まあ、確かに今私の近くにはそれぞれが単騎で島を沈めて余りある存在が3体ほどいるんだけどそれは完全に私の、私の手持ちの力かといえば違うからなあ。例えば私があの3匹をゲットしていたとしたらまあ確かにと頷くんですけどね。あくまであの子たちは自由だもの。あれ?

 

「……つまりこの場で突き上げる海流(ノックアップストリーム)を再現すれば空島に行けるという解釈でいいですか?」

 

「ああ、そりゃ確かに……できんのか?」

 

「その、ちょうどよくあの3匹がつかさどってるのが陸海空なものでして」

 

「…………」

 

 マルコさんがまるで頭痛が痛いみたいな感じでこめかみを抑え込んで黙り込む。何だろう、行ける気がしてきた。きゅうけーいと炉心の火を落としたエースさんがこちらに合流する。いける、あれこれ行けるのでは?3匹にお願いしたら普通に船ごと空に吹っ飛ばしてくれちゃうのでは!?あー、でもそう何度も都合よくお手伝いしてもらうのも気が引けるなぁ。

 

「多分だが、あの雲だな。他の雲より重そうで風に逆らって移動してやがる。ま、行けるんなら行ってみればいいんじゃねえの?」

 

「ま、それもそうだがな。やるか?」

 

「はいっ!やりましょう!とりあえず船上にあるものは船室に避難させて……」

 

 とりあえず頼んでみるべし、というわけで準備に取り掛かる私たち。ハンモックとか、細々したものとかを船室に詰め込んで、捧げもののポフィンがあることを確認し私は指を輪の形にして口に突っ込んで指笛を吹いた。そうすると頂上戦争の時のようなプレッシャーはないにしろすぐさま反応があった。

 

 まずはカイオーガが海の中から顔をだし、そしてグラードンがまるでエレベーターとかで上に運ばれてきたみたいな感じで小規模の陸地と共に海の中からせりあがって登場、そして雲の切れ間からレックウザが静かに姿を現す。頂上戦争ぶりのレックウザとグラードン、と海だからよく顔を合わしていたカイオーガ。3匹とも普通に姿を現してくれた。なんかグラードンとレックウザ、心なしかジト目でカイオーガを見てるような?あ、カイオーガ目を逸らした?やめてよ貴方たちがじゃれ合うだけで仲裁が命がけになるんだから。

 

「えーと、3匹ともちょっと協力してほしいんだ。あの大きくて分厚い雲に、この船ごと私たちを運んでほしいの」

 

「ゴォォォォ……」

 

「クァァ……」

 

「キュィィィィ……」

 

「……オッケーだそうです」

 

 3匹が現れて私があれそれこうで説明した後に協力のお願いをして締めくくると、あっさりと了承の返事が3匹から返ってくる。それに振り返って許可が出たというとマルコさんとエースさんは軽いなあ、といわんばかりの顔でよかったと頷いている。そりゃそうだ。タクシー代わりに使うのに普通にいいよって返ってきたんだもの、私も驚いている。

 

「それじゃあ、先にこれお礼をあげるね。はいあーん」

 

 袋に詰めたそれぞれのお礼のポフィンを3匹の口の中に纏めて放り込む。ボリボリと音を立ててポフィンを食べる3匹、美味しそうに食べてくれてて作った方としてもとても嬉しい。カイオーガは割とすぐに飲み込んだんだけどレックウザとグラードンは長めに咀嚼して喉を鳴らして飲み込んでぺろりと口元を舐める。お口に合ったみたいだ。だから、カイオーガをジト目で睨むのはやめて差し上げて。

 

「じゃあ、お願いしますっ!掴まっててくださいマルコさん、エースさん!」

 

「ゴォォォォッ!」

 

「クァァァァッ!!」

 

 カイオーガとグラードンが気合を入れて吠えると、すぐさま海流の動きが変わる。濛々と湯気が出るほど熱くなった海水と冷えたままの海水がまじりあって、海の下の深いところで一度大きく揺れる。グラードンが海底火山を噴火させて爆圧を加えたのだ、そしてカイオーガが海流の向きを全て変えて収束させて上向きにする。きた、再現された突き上げる海流(ノックアップストリーム)が!

 

「いっけええええええ!」

 

「りゅうううっ!!!」

 

「うおおおおおおっ!?」

 

「おわああああっ!?」

 

 一拍ののちに海面が爆発して船が持ち上げられる。噴水のちょうど頂点にいるような形で吹き飛んだ私たちの船は、突き上げる海流(ノックアップストリーム)の勢いに乗って空島めがけて打ちあがる。送り出すような二匹の咆哮を聞きながら私たちはとんでもないスリルに歓声を上げて船にしがみつく。そしてレックウザが船の周りの風を操って方向を調整する。

 

「おいエース!帆を広げろ!」

 

「よしきた!」

 

 風を掴むことを優先したらしいマルコさんとエースさんが慌ただしくメインマストとサブのマストに取り付いて帆を広げて風を捕まえた。それを確認したレックウザがまた風の向きを変えてマストが折れないように最大かつ加減された風で方向を調整していく。2分もかからず私たちは目標の雲に真正面から突っ込んだ!

 

「あははははっ!!!」

 

 私はこんな状況にもかかわらず、おかしくって大笑いする。戦争で忘れていたけど本来私がやりたい旅、冒険そのものだったから。思いっきり笑った後、いつの間にかどこかに行ったレックウザが最後に放った風が船をさらに押し上げて、突っ込んだ雲の上に飛び出して、もふんという独特な感触で船が雲の上に落ちる。すっごい!雲が、雲が真下にある!しかも船で立ってるよ!

 

「あー、久しぶりにあんな無茶な航海したよい」

 

「でも、面白かったじゃねえか、な!」

 

「はいっ!スリル満点でした。それで、ここが海雲の上ですか?」

 

「だな、目の前にあるのが空島だよい」

 

「わぁ……」

 

 マルコさんが私の後ろを指さす。私は急いで後ろを振り返るとカイリューと一緒に感嘆の息を漏らした。だって、目の前にあるのはまさにファンタジー!フェアリータイプが沢山生息していそうなほど幻想的な風景だったから。とんがり屋根の建物、雲の道!そして見たこともない機械や装置に初めて見る植物!どれも私の興味をそそるのに十分だった。

 

 いそいそ、と私は恐る恐る船から顔を出して海雲を眺め、一息にジャンプして飛び込む。確かに雲で、感触はもふもふ、ムシャーナの煙のようだ。敢えて言うなればポポッコ、ワタシラガなどのコットンガードの感触が近いかもしれない。そして、マルコさんの説明の通りに気体でありながら液体その物の感触で、服や体が濡れているわけでもない。好奇心を煽るには正直十分以上だった。

 

「目が輝いてやがる」

 

「はは、満足してるんならいいじゃねえか!ユウリ―!船に戻ってこーい!」

 

「はーいっ!」

 

 エースさんの呼びかけに答えて私は船に戻る。カイリューに引き上げてもらった船は上空10000mにも関わらず空気が薄いわけでもなくさらには航海には十分な風が吹いているので久しぶりに帆を使った船が島雲の目立たないところに留まる。そうして打ち上げられたせいで若干感覚がふわふわしている。島雲の感触は何だろう?硬い、マシュマロ?

 

「なんか、騒がしいよい」

 

「そうですね、どうしたんでしょう?」

 

「おいおいおい、まさかお前さんたち青海からやってきたのかい?さっき突発的に起こった突き上げる海流(ノックアップストリーム)に乗って?」

 

「ああ、そうだぜじいさん」

 

「ほほう、とりあえずようこそといっておこう。ここはウェザリア、天候を科学する空島だよ」

 

 にわかに島が騒がしいと思ってたらいきなり建物からお年を召したお爺さんおばあさんがたが慌てた様子で出てきて一つの建物の中に飛び込んでいくところだった。皆魔法使いが着るようなローブに身を包んだりして、とんがり帽子を被っている人もいる。その中の一人、白髪のお爺さんが私たちを見つけて話しかけてきたので素直にエースさんが応える。なるほど、天候を科学する島……見た感じファンタジーだけど科学なんだ。

 

「空島、初めてきましたけど暢気なところなんですね、気に入りました」

 

「ああ、ウェザリアは人工島でね。ただ、島雲を分けて作られたから磁気は持っているがね、もしやだが……」

 

「ん、ああ。記録はこの島に吸われてな。立ち往生してたら突き上げる海流(ノックアップストリーム)ってわけだよい。運がいいんだか悪いんだか」

 

「はあ、そりゃ悪いことをしたのお。ウェザリアは風に任せて世界を旅しておる。故に記録が奪われるのは稀なのだが……運が悪かったみたいじゃの。お前さんがた海賊か、白ひげの所の」

 

「……知ってて話してんのか。狸だよい」

 

「年の功じゃ。それに、その気なら既にこの島は滅んでおる。ましてや白ひげ海賊団の人間がむやみに略奪にくるとは思えん。理由はそれでいい」

 

 お爺さんはどうやらエースさんとマルコさんのことを知っているみたいだ。私の手配書はまだ全世界を回っている最中なんだけど空にある島に届くのかどうかは不明だ。予め上陸の時にカイリューをボールに戻しておいたから、ただの子供として扱われてるっぽい。

 

「ちょうどいい、お嬢さんや。ちょうど二月程前に、青海の人間がウェザリアに飛ばされてきたんじゃ。良かったら会って話してやるとよかろう」

 

 そう言ってお爺さんはみんなが入っていく建物の隣にある建物を指差す。わしはこれでと言って建物にいそいそと入っていくおじさんを見送り、皆で首を傾げつつもその建物に入っていく。建物の中に入るとすぐにカリカリと何かを書く音が聞こえてくる。椅子に腰かけて此方に背を向ける人の後ろ姿を私はよく知っていた。その人は、こちらに気づいて振り向くとその瞳を丸くして驚く。

 

「ナミさんっ!」

 

「え、うそ……ユウリなの?」

 

 私は何も言わず、彼女に向かって頷いた。

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