カイリューといっしょ! 作:カイリューはいいぞ
「ユウリー!次ジャガイモの皮剝いてくれー!」
「はーい!」
「いやー、むさくるしい中に女の子が一人いるといいなぁ!」
「お前まさか……」
「何勘違いしてんだ馬鹿野郎!父性だ父性!」
白ひげさんの船に乗って数日、私はいまモビー・ディック号のキッチンの中でお野菜の下処理に励んでおります!え、なんでそんなことをしているのかって?実は……私航海してるとき何もすることないんです。日がな一日マルコさんのお部屋でお勉強に耽るか、甲板に出てポケモンたちと戯れるかしかやることがなくって。あ、でもエレファントホンマグロを捕ったことは褒められて、ミロカロスとカイリューにお願いして漁をすることはある!
白ひげさん、エレファントホンマグロの酒盗が好きなんだって、お酒が進むって。見たこともない、しかもポケモンじゃない魚たちがカイリューとミロカロスによって次々と甲板に打ち上げられていく様は中々面白かった。デンリュウを膝枕してる状態で動けずに海水被ったりしたけど。おかげで感電したよ、悲鳴上げてごめんねデンリュウ。
結局、何もしなくていいって白ひげさん直々に言われてはいるんだけど……それじゃ私も申し訳ないので、何かお仕事ください!ってマルコさんにお願いしたらコック部隊らしい4番隊を紹介された。揺れる船の上での調理は難しいけども、マスターさんから餞別にもらった包丁は私の手に合わせて作られてて、すごく使いやすかった!
なので、私はお昼の時間を4番隊のお手伝いとして働くことにしたのだ。凄いよ4番隊の人、あっという間に材料が料理に変わるの。私がショリショリ剝いているお芋が一瞬で蒸かされてマッシュポテトに変わるさまは感動すら覚える。何だったら私の包丁さばきもここ数日でメキメキと上達してるの。これでもっと美味しいカレーが作れるなあ。
「ユウリちゃんこれやつらに運んどいてくれ!」
「はいっ!」
「ユウリちゃん、働きものね」
「あ、エリーさん!」
「ハァイ、お昼食べに来たわ」
大皿に乗った骨付き肉をよいしょよいしょと運び終わったくらいのタイミングで私に声をかけたのは白ひげさんの身の回りのお世話をしているナースの中でも一番偉いナース長のエリーさん。とでも40代には見えないほどの若さと美貌をお持ちのとってもグラマラスな大人の女の人だ。共同部屋で寝るハズだった私を気に入ってくれて自分の部屋に招いてくれるくらいいい人、優しいし、美人だし、褒め上手だし……凄いな白ひげさんの海賊団。何でもありだ。
さっき、コックさんの一人がむさくるしい職場だって言ってたけど、実際その通りらしくて白ひげさんの方針として戦闘員として女性は乗せないってルールがあるんだって、ナースさんだけは例外みたい。だから、この船には私とナースさん以外女の人はいないのだとか。結婚してる人もいるみたいだけど奥さんは陸に置いてきたんだって、ひどくない?それを良しとするほど白ひげさんのカリスマ性が高いってことなのかな?
で、私の実際の立場なんだと言えば客人なのか雑用なのか見習いなのか……いまいちよくわからないし、何だったらどうしてこんなに良くしてくれるのかもわからない。航海上大切なはずの食料も、私にもポケモンたちに惜しみなく与えてくれるし、忙しい筈のマルコさんは夕方になったら仕事を全て片付けて私のお勉強を見てくれるし、白ひげさんはたまに甲板に出てきては私を膝の上に乗っけてお酒飲んでるし。首を傾げるしかない。
正直言えば、貰い過ぎなんだ。白ひげさんたちにとって私が結果的に助けてしまったあの町がどれだけ大切なものだったとしても、やり過ぎな気がする。ここまでされてしまえば私には返せるものがないのだ、だからせめてこうやって一生懸命に働くことがこの人たちへの恩返しなのだと思っている。
「ユウリちゃん!ご飯食べちゃいな!ほら!」
「あら、じゃあ私と一緒に食べましょう?今日のお仕事お話聞かせて欲しいわ」
「いいんですか!?それじゃあ、ご一緒させてください!」
エリーさんがやってきたことが合図になったのか、厨房の中から私の分のご飯が一瞬で作られて投げられて近くの机の上にガッシャンと落ちた。あんなに乱暴に投げられたのにセットになってるスープが一滴すらこぼれていない……!?凄い、これが四皇白ひげのクルーの実力……!あ、やっちゃいけなかったんだ。やった人めっちゃ怒られてる……!
苦笑したエリーさんに私は何故か頭を撫でられてからエリーさんの隣に座らせてもらって今日のメニューであるビーフシチューにありつくのだった。聞いてエリーさん!えっとね、私今日ジャガイモ2ケース剥けたの!昨日が1ケースと半分だったから!新記録!……あれ?私そんなに面白いこと言ったかな?エリーさ~ん?何でそんなに笑ってるの?ねーってば!
「平和だな~」
「りゅ~~」
「メェ~~~」
「平和なのはお前らの中だけだろうよい」
失礼な、と考えたが実際に平和なのは私だけなのかもしれないし声には出さないことにした。冬島の海域を抜けて今度は夏島の海域に行くらしいのだけれど、その境目の場所である今この場所は春島の時のように過ごしやすい天気になっているのだ。だから今、私は仰向けに寝転んだカイリューのお腹の上で一緒に日向ぼっこをしている。これがとっても気持ちいい、カイリューのお腹……ふにふにぃ……。
ミロカロスとデンリュウは私の隣で同じく日向ぼっこ。メタグロスとシャンデラは今日はモンスターボールの気分、ザシアンはマストの一番上あたりで同じくお昼寝してるんじゃないかな?私の隣で椅子にすわって海図とにらめっこしているマルコさんは鋭い突っ込みを入れてくるものの、その口元は緩んでいるので航海は順調なのだろう。そういえば
「マルコさんたち、用事があるっておっしゃってましたけど、何の用事か聞いてもいいですか?」
「グララララ、とある小僧と話がしてえと言われてな。仕方がねえから先の進路を教えてやったら会いに来ると来たもんだ。おかげでおちおち進路も変えられねえ」
「待ち合わせですか?白ひげさんを呼びつけるだなんて凄い人もいるもんですねえ」
「そりゃ、赤髪だからよい。オヤジ、今日はいいのか」
「ふん、俺を心配するなんて20年は早えよマルコ。ま、てめえが気にするもんじゃねえ、どうせ会えやしねえしな」
「赤髪……ってことは四皇の?大物に会いに来る人は大物なんですね」
私の上に影が差したと思ったら、それは白ひげさんだった。今日もまた、甲板にお酒を呑みに来たらしい。部屋の中じゃ息が詰まるって言ってたから、外の空気を吸うのはきっと健康にいいだろう。にへら、と白ひげさんに私が間の抜けた顔で笑いかけると白ひげさんは何締まりのねえ顔をしてやがると言って私の頭をぽふぽふ叩く。それがまた絶妙な力加減で、私の頭なんかぐしゃりだろうに凄くて加減してくれてるんだなあって感じた。
お酌しますね、と私の体くらい大きな酒瓶をカイリューと協力して持ち上げて白ひげさんの杯に注いだ。9割カイリューのパワーだけど私もやったと言っていいだろう、うん。がぶがぶとすごく早いペースでお酒を呑む白ひげさんに合わせてお酒を注いでいくと、あっという間に酒瓶の中身は空っぽになってしまった。一応はそれで満足したらしい白ひげさんはドカッといった感じ椅子から降りて甲板に胡坐をかいた。そういえば今日は点滴のチューブとかがない。調子がいいのかな?
「るおおおおおおおんっ!!!!」
「ザシアン?どうしたの?」
「グルッ!!」
「っ!敵襲~~~っ!!!」
突如として、マストの上で休んでいたザシアンが私の目の前に降ってきて遠吠えをあげる。同時に放ったエアスラッシュがこちらに迫ってきていた砲弾を空中で真っ二つにして爆発させる。それを皮切りに見張りをしていた船員さんから敵襲の報告が、目がかすむほど向こうに黒い煙と船の影、そして……海の底からシャボン玉に包まれたような船が浮き上がってきた!?
「コーティング船か……!ユウリ!中に入っとけ!」
「……いや、ここに居ろ」
「オヤジ!?」
「ちょうどいい。この先、この海で生きていくにゃ何をするにも腕っぷしが必要だ。身を守るにも勿論、我を通したいときもな。もうてめえは一度経験してるだろ、海賊ってやつを。俺らはてめえに対して何もしねえ、生き残って見せろ」
「……わかりました。手伝ってくれる?皆」
カイリューとザシアンをはじめみんなが応えてくれる。ポケモンの技を人に向けるのは実は結構抵抗があるのだけれど、生き残るためには背に腹は代えられない。何せここは大海賊時代、弱肉強食を地で行くこの時代で自分を、ポケモンを守るためには人を傷つけることをためらってはいけない。最低限気を付けることは、出来るだけ殺さないようにすること。
「白ひげええええ!お前の首、この海賊青髭様が頂くぞ!」
「デンリュウ、ばくれつパンチ」
「メェェェェ!!!!」
「ぼへええええっ!?」
シャボン玉みたいなものに包まれた船からモビー・ディック号の甲板に飛び乗ってきた確かに青い髭のおじさんの口上の途中に割り込んだデンリュウの短い手が見事に鳩尾を捕らえ、爆発と一緒に逆に船に押し込んだ。なんか、お腹が一瞬黒く変色してた気がするけど何だろう?デンリュウも感触に違和感があったのか手をプラプラしてるし。
ぱっちん!といつかやったように自分の頬をはたき、気持ちを入れ替える。かちりとスイッチが入ったかのように思考が澄み渡り、こちらに飛んでくる砲弾や乗り込んでくる敵、さっき吹き飛ばした青いひげのおじさんが酷く咳き込みながら立ち上がる様子まで鮮明に見えるようになった。とりあえず、モビー・ディック号に取り付こうとしているコーティング船?というらしいヤツを何とかしよう。
「カイリュー、ミロカロス!たつまき!」
「りゅうう!」
「ふるうう!」
「うわああああ!?」
「た、竜巻!?何が起こってるんだ!?」
ミロカロスが海から、カイリューが空からたつまきを放ち、コーティング船がまるで洗濯機にぶち込まれたかのようにしっちゃかめっちゃかになり、シャボン玉のようだった膜が弾けて、沈み始めた。浮力がなくなったのかな?よくわからないけど。
「ガキイイ!お前かっ!」
「グルッ!」
「ありがとザシアン!行って!メタグロス!アームハンマー!」
「メッタ!!」
命からがらといった感じでこちらに乗り込んできた敵船の人が私が何かをしているということに感づいたらしく、私に向かってカトラスを振り下ろしてくる。そのカトラスが一瞬で黒く変色する。なんだそれ!?と思ってたらザシアンがカトラスを噛み砕いてタックルをかまして体勢を崩してくれた。その隙にボールからメタグロスを出してアームハンマーを指示する。振り下ろされたメタグロスの腕は敵を捉えるけど、敵は腕を黒くしてメタグロスのアームハンマーを受けた。受け止めきることは出来ずに海に吹き飛ばされたけど、全く意味が分からない。あれも悪魔の実!?
バスバスバス、と私に向かって銃弾が撃ち込まれるけど、メタグロスが盾になってくれて私には傷一つない。一陣の風になったザシアンのきりさくが相手の銃をバラバラにして行動不能にしていく。て、手強い!町で戦った海賊の20倍くらいは手強いんですけど!?え?木っ端って言ってたけど比喩じゃなくて事実だったの!?
そうして甲板の上では乱戦が始まる。シャンデラも出して敵に向かってマジカルシャインと弾ける炎をモビー・ディック号に当たらないように連発して弾幕を張る。けど、敵がみんな体の一部や全身を黒く染めて攻撃を受けてくる。さらにはこっちの動きを先読みしてくるやつもいる。ポケモンバトルじゃ先読みなんて当たり前の技術だから私も逆に撒き餌を撒いてひっかけたりするけど、相手の読みがまるで頭の中を覗かれたみたいに正確過ぎてなんか気持ち悪い!ナニコレ!?
「え!?何なのこれわかんない!?うううう!デンリュウ!でんじほう!ミロカロス!みずのはどう!カイリュー!ドラゴンテール!」
「メェッ!」
「ふるっ!」
「りゅうううっ!!!」
デンリュウのでんじほうが密集してた相手を纏めて吹き飛ばし、ミロカロスのみずのはどうが海に落ちた相手を追撃し、カイリューのドラゴンテールがコーティング船に今度こそ完全に止めを刺す。舳先をペッちゃんこに潰されたコーティング船は最後の力を振り絞り終えたかのように力なく水底に沈んでいく。降参するという海賊たちを白ひげさんは助けてやれ、と指示をして泳げる船員さんが海に飛び込んで助けていく。青髭と名乗ったおじさんも、助けられたみたい。
「オヤジ、こっちも終わったよい」
「ああ、見てた。ユウリ、てめえもよくやった。まさか覇気を使うやつ相手にここまでやるたぁな。ハナッタレは返上しといてやる」
「覇気、ですか?」
どうやら砲撃がいつの間にか止んでいたと思ったらマルコさんが空を飛んで砲撃してきた船を制圧してしまったらしい。海賊旗が白旗に変わっている。そして白ひげさんが発した聞き覚えのない単語に、私は首を傾げるのだった。
武装色の覇気を発動していてもノックバック等もするし、多少はダメージが通るみたいですね。ONE PIECE本編にいるのが化け物ばっかりなので忘れがちですが、ザコの方が圧倒的に多いんですね、きっと。登場するやつらがおかしいんです、はい。
では次回に覇気に関してのお話をば。感想評価をよろしくお願いします