カイリューといっしょ!   作:カイリューはいいぞ

8 / 52
覇気と私とドラゴン

 突然の海賊団の襲撃を切り抜けた白ひげ海賊団、最終的には此方の船員に怪我はあれど死者はなし、対して向こうの海賊団は船一つ潰されて船員は敵船に救助される始末。大敗北だろう、とりあえずもう危険はないということでスペースを取ってしまう私のポケモンたちをボールに戻し、私はどっかりと座り込む白ひげさんの横で神妙に正座して後処理を眺めていた。

 

 覇気については後で説明してやる、といった白ひげさんだけど……今は捕虜になった人たちに向かって恐ろしいほどの眼光と威圧感を醸し出しており、捕虜全員が気絶してしまった。というか船長らしい青髭さんも気絶してしまっていて、訳が分からない。ただ、何となく体が覚えてる類のプレッシャーな気がする。私に直接向けられれば思い出せそうな感じ……。

 

 「オヤジー!こいつらしけてやがる!なんもねえ!」

 

 「だろうな。手ごたえも歯ごたえもねえ奴らだ。いつも通りにしておいてやれ、俺はユウリに用事がある。マルコ!」

 

 「あいよ、オヤジ。あとは任せとくよい」

 

 「はぇ!?歩けます歩けます~~~!」

 

 「黙ってぶら下がってろォ」

 

 襲ってきた敵海賊団全員がいつの間にか気絶してしまっていて、私が首を傾げていると白ひげさんは後のことをマルコさんに任せて、私の首根っこを掴んで持ち上げるとそのままどすどすといった感じで船長室に一緒に連れて行かれた。途中で降ろして欲しいと多少抗議してみたけど、結局聞き入れてもらえず、そのまま船長室に連れ込まれた。待っていたナースさんを人払いした白ひげさんは、私をでかいソファに降ろして自分は向かいのソファにドスンと座る。

 

 「色々聞きてえことはあるが、お前の疑問にとりあえず応えてやる。覇気についてだ」

 

 「聞いたことないです。何なんですか?それ?」

 

 「気配、気合、威圧……例えばてめえ気合を入れたらいつも以上の力が出せただとか聞いたことぐれえはあるだろ。覇気ってのはそれを突き詰めたもんだ」

 

 白ひげさんの言葉に、私は少し考える。そういう話は聞かないわけじゃない。実感としてはないが「ユウリ」の記憶の中で例えばジムリーダーを前にしたとき、四天王を前にしたとき、チャンピオンを前にしたとき……ポケモンたちが想像以上の力を発揮してあと一歩のところを持ちこたえるとか、そういったことがなかったわけじゃない。

 

 「心当たりがあるみてえだな?てめえに分かりやすく言うなら心の強さってやつだ。とある男が言うには疑わないこと……だそうだがな!グララララ……!」

 

 私の頭に疑問符が浮かび上がっているところを目にした白髭さんは一通り笑うとおめえが気になってるのはこれだろ、と言って大きな拳をぐっと握りこむと手が真っ黒になって見た目にもカッチカチに変わってしまった。それ!さっき戦った海賊の内結構な奴が使ってたの!デンリュウに聞いた話だと不自然に硬いとか言ってたし!カイリューは気にしてなかったけども。

 

 「覇気には3つの種類がある。こいつはそのうちの一つ、武装色の覇気だ。見えねぇ鎧をまとっているようなもんだ。一定の水準に達すると使用した部位はこうやって黒く硬くなる」

 

 「武装色の覇気……!じゃあ、私の指示を妙に先読みされていたのも?」

 

 「あぁ、そうだ。それは見聞色の覇気。相手の気配をより強く感じる力、相応に使いこなしゃ相手の頭の中だって覗ける」

 

 それでか!だからあんな風にやることなすこと先回りされて対処されたんだ!とりあえずの対処方法は、対処できない物量で仕掛けるか、上回る速度、そして先読みを返して先手を打つことかな?ポケモンたちの力押しが通じた武装色の覇気も、きっと白ひげさんのような強い海賊が使えばそれこそ山を割るとかできるんだろう。リアルバンギラスだ、こわい。

 

 「そしてこれが3つ目……!」

 

 「っ!!!……はぁっ、はぁっ……」

 

 「やっぱり耐えるか、お前その年でいったいどんな人生送ってきやがった、面白れぇ。グララララ……!」

 

 白ひげさんが3つ目、といった瞬間にまるで部屋の重力が何十倍にもなって、そのうえで極寒の冷気に襲われたような錯覚が、実体を伴って私に襲い掛かってきた。一瞬クラッときて気を失いそうになってしまったけど、体の記憶がこれに心当たりがある、というか慣れてしまっているほどに知っていることを思い出した。これは……伝説のポケモンが本気で向かってくるときに感じるプレッシャーに酷似してるんだ……!

 

 例えば、初めて会った時のザシアン、ザマゼンタ……そしてムゲンダイナ。一番きつかったのはディアルガ、パルキア、ギラティナ……死を覚悟したアルセウス。「ユウリ」のポケモンに関する記憶の中にあるそれは、明確に死ぬかもしれないと思いつつ仲間たちと共に潜り抜けたそれだ。私が気を失わなかったのは、それを知っていたからなんだ。

 

 「これは覇王色の覇気という。手っ取り早く言やぁ、ハナッタレ相手に格の違いを強制的に教えてやるもんだ。武装色と見聞色と違ってほんの一握りの選ばれたやつにしか持てねえもんだ」

 

 「もしかして、さっきの敵の海賊の人たちが次々気絶していったのって……」

 

 「あぁ。おれがやった。ガキなんか向けなくても気絶するもんだが、お前はけろっとしてるもんでな。なかなかどうして、骨がある」

 

 得心がいった。正しくレベルが、格が違う。街を襲った海賊なんて天と地、いやバチュルとダイオウドウくらい差があるだろう。もちろんさっき襲ってきた海賊なんかとも。ザシアンを見れば分かるのだけれど、伝説のポケモンの被害はどれもこれも天変地異を引き起こす。たまたま人を愛しているザシアンだからこそ、うまい事手加減してくれてるけど、人間を文字通り路傍の石としか思ってない伝説のポケモンなんかだとひと睨みでミンチだ。そして、それと同じくらいの強さをただの人の身で手に入れたのが目の前の人なんだ。凄いなんてもんじゃない。

 

 「それで、だ。お前何もんだ?さっきの戦いといい、加減したとはいえ俺の覇気を耐えることといい、不可思議な点が多すぎらぁ」

 

 「そう、ですよね。お話します。内緒にして、欲しいです」

 

 私がそういうと、そのつもりでこの部屋にいれたんだアホンダラ。と白ひげさんは返してくれた。流石に正体を隠し続けるのにも限度ってものがあるし、ある程度真実を話しておいた方がいいだろう。というわけで私は白ひげさんに「ユウリ」としての経歴を話すことにした。ポケモン同士を戦わせるポケモンバトルのこと、それで各地方のチャンピオンに勝ち殿堂入りを果たしていること、いくつかの伝説のポケモンと出会っていること。そして……何らかの手段でこちらに飛ばされたこと。あらかた話し終わると、白ひげさんはフン、と鼻を鳴らした。

 

 「なので、ほぼ確実に私は別の世界の人間です。多分、空間の神、パルキアあたりに何かされたんだと思いますけど……詳しい記憶は飛んでいて分からないんです」

 

 「……難儀なもんだ。神ってやつはどこの世界でも理不尽てわけだ。いいだろう、納得がいった!それも含めておれはお前を歓迎しよう!ようこそ、大海賊時代に!」

 

 「信じて、くれるんですか」

 

 「道理は通っている、嘘もついてねえ。そもそもつく必要がねえ。そしてまず……俺はてめえを気にいった。だから信じよう」

 

 受け入れてもらえた。それだけのことなのにこんなにも嬉しい。もちろんまだ話してないこともあるが、実際の所「わたし」が存在していた証拠なんてないんだ。ポケモンがゲームだったなんて妄想の可能性すらある。けど「ユウリ」が存在していたのは事実だ。ポケモンたちも。だからこうやって信じて受け止めてくれる人がいたことがこんなにもありがたいことだなんて思わなかった。

 

 「それでお前の仲間は武装色も見聞色もものともしない戦いをしていたわけか。武装色相手にそれなしで何とかするのは中々できるもんじゃねえ」

 

 「バトルの後、地形が変わっていることなんて上級者のバトルじゃ日常茶飯事ですし、攻撃力が高いのがうちのパーティの特徴ですから」

 

 「それにお前もだ、ユウリ。気づいてるかは知らんが、てめえ見聞色を使ってるぞ。無意識か?」

 

 「え?そうなんですか!?」

 

 「ふん、いいか。見聞色ってのはな……」

 

 白ひげさんの説明によると、見聞色というものは相手の感情や気配を見抜き、先読みすることができたり、生物の心の声を聞くことが出来たり、相手の覇気を感じ取れたりできるものらしい。極めれば数秒先の未来を予知することすら出来て、音速や光の速さでの攻撃も対処できるようになるのだとか……なんか、心当たりありすぎるんですけど。

 

 ポケモンバトルの応用で敵の次の手をいくつも先読みすることとか、カイリューたちの言ってることが何となくわかるとか、バトルの時やってほしいことが完璧に伝わることとか、バトル中に感じてた物凄い違和感が覇気だったことを考えれば覇気を感じ取れてることにもなってしまう。あれ?私ホントに見聞色使ってたりするの?よくわからないんですけども。

 

 「覇気は本来なら長ぇ時間をかけて習得していくもんではある、がごくまれに生まれつき覇気に目覚めていたり、強いショックで覚醒することもある。心当たりは……」

 

 「この世界にやってきたこと……!」

 

 「だろうなァ。そう考えりゃ全部辻褄が合うだろう。害のある力じゃねえ、むしろお前らの戦い方なら利が多いだろう。儲けもんだ」

 

 「なるほど……」

 

 当面はてめえのその覇気を何とかコントロールすることに専念すべきだな、といわれた。武装色の覇気は~と聞いたらお前自分で殴んのか、といわれて確かにこのほっそい腕でパンチしてもパンチした私の腕が折れそうで、とても直接的に戦闘するだなんて考えられなかった。ポケモンたち頼りかあ~~~。愛想尽かされないように頑張らなくちゃ。

 

 なるほどなあ、自覚はなかったけど私覇気を使ってたんだ。むーん?でもそれで何か変わったのかな?バトルの腕前は、きっと自前のものだから見聞色はプラスアルファでしかない、つまり……私たちはもっと強くなれる!?ポケモンとトレーナーは一心同体!ポケモンたちと一緒に強くなっていつかパルキアを見つけ出してバカヤロー!って怒鳴ってやろう!いやパルキアのせいかどうかまだわからないんだけどさ。

 

 とりあえず話は終わりだ、という白ひげさんにぺこりと頭を下げて、私は大きすぎる扉を……開けれずに眉を下げる。もう!この世界のものって何でもかんでも大きいし重いしどうなってるの!ポケモン世界の自動ドアに慣れ切った身からしたら地獄だよ!それに噴き出した白ひげさんがひとしきり笑った後にドアを開けてくれて、私は外に出るのだった。看護師さんが腰を入れないと開けられない扉かあ……白ひげさんサイズなんだよねきっと。

 

 

 

 

 

 「んーーーーっ!んーーーっ!」

 

 「……ぴぇっ……」

 

 「あっやべえユウリきた!隠せ隠せ!」

 

 「さっさと流せ!見せんなこんなもん!」

 

 もう遅いよ見ちゃったよ!白ひげさんに笑いながら見送られた私が甲板に戻ってくると、ぐるぐるの簀巻きにされた敵船の人たちが猿轡代わりの荒縄を嚙まされてマルコさんが占領した船にすし詰めにされて今まさに流されようとしているところだった。その地獄絵図ともいう光景に思わず喉の奥から干上がるような悲鳴が漏れてしまった。海賊だから当たり前なんだろうけど、怖いものは怖い。殺さないだけ有情なのだろうけども。

 

 ふるふると頭を振って意識を入れ替える。彼らは敵なのだ、私は彼らを攻撃したし彼らも私たちを攻撃した。結果彼らは負けて身ぐるみ全部剥がされた。命だけは助けてもらえるだけいいじゃないか、次また来るなら多分……殺されちゃうんだろうけど。

 

 「ユウリ、話は終わったかよい」

 

 「はい。色々参考になりました。やっぱりすごい人ですね、白ひげさんは」

 

 「俺らのオヤジだ。当然だな……嫌なもん見せたな」

 

 「いえ、海賊って考えれば優しいんじゃないですか?さっき初めて見た時はびっくりしましたけど」

 

 「最低限の食料、武器は残してやってる。俺らに向かってきたらひでー目にあうぞっていう見せしめだ。殺っちまったら伝わらねえ。2度目はないがな」

 

 やっぱり、いくら優しいって言っても海賊は海賊なのだ。それも海の皇帝と称される四皇なら、舐められただけでメンツは丸つぶれ。顔に落書きされてボッコボコにされる程度なら安いものだ。命を拾えるだけで丸儲けなんだから。連日のマルコさんに教えてもらってる世界情勢のおかげでこの世界の常識を何とか理解しつつある私は、全員を詰め込んだあとにマルコさんの蹴り一発でぶっ飛ばされた敵海賊の船を見ながら、ちょっと身震いするのだった。正直、超怖い。助けてカイリュー。

 

 




 覇王色を根性で耐える女、ユウリちゃん。なお本体は弱いので直接殴られると死ぬ、ついでに荒い見聞色が覚醒済み。武装色?無茶を言ってはいけない。一般海賊を殴ると殴った方の手が折れるぞ、お子様ボディなので。スーパーマサラ人でもないし。

 次回もよろしくお願いします。感想評価も下さるとうれしいです
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。