ブルアカ世界に大人たちの特殊部隊がいたら、という妄想を膨らませて書きました。
この話の時系列としては、先生着任初日の夜です。
「なんなのよ、もう!」
思わず罵声を発してしまった。セミナーの会計としてあるまじき行為だと思われてしまうかもしれないけれど、この状況を見たら皆納得してくれるはずだ。
周りは、不良、不良、不良。私達は完全に包囲されていた。
──連邦生徒会長の失踪とそれに伴う混乱について、ハスミさん、チナツさんと一緒に連邦生徒会を訪れたのが今日の昼。そこで新任の『先生』と出会い、なんやかんやあって不良たちに占領されていたシャーレを奪還……したまではよかった。
けれど、そのあとが問題だった。
報復と息巻く不良集団に、帰り道を奇襲されてしまったのだ。
昼間はうまく制圧できたけれど、それは先生の戦術指揮があったおかげだ。
「ユウカさん。ハスミさんの応急処置、できました。右腕の骨折は流石に治せませんでしたが……」
「チナツ、ありがとうございます。ユウカ、私はまだ戦えます。正義実現委員会の副委員長たるものが、不良ごときの弾に倒れるわけにはいきません」
一緒にいるのは、シャーレから最寄り駅まで一緒に歩いていた、チナツさんとハスミさん
ハスミさんは右腕を押さえ、端正な顔立ちは腕の痛みに歪んでいる。さっき、私を庇って敵弾を受けたのだ。
「ダメよ!ハスミさんは私の後ろにいて!」
焼けるような焦燥感が湧き上がってくる。
最大の問題は、敵が持つ異常な火力だった。
昼間の戦いの同等以上の数のオードマタ、クルセイダー戦車がいることに加え、不良たちが持つ武器は、昼間の違法JHP弾とは比較にならないダメージを私たちにもたらしていた。
(明らかに今までのキヴォトスにはなかった武器が使われている……!)
「あの大人がくれた武器はつえぅな!正義実現委員会の副委員長に怪我させたぜ!」
「ねぇ大丈夫かな。この武器危なすぎない?」
「え、ええ?そうか?やっぱりそうかな?」
「そうだよ!」
「まぁいい!昼間の報復で来てんだ!あいつらに痛い目見せる分には良いじゃねぇか!」
「ユウカさん、聞きましたか?」
チナツさんが小さな声で尋ねてくる。
「『大人』って言ったわよね。……まさか先生が?」
瞬時に自分の想像を打ち消す。今日初めて会った人ではあるが、あの優しさにはどこか特別なものがあった。そんな先生が武器の横流しなんてしてるはずがない。
(だとしたらどこが?カイザー?)
思考はそこで断ち切られた。
不良が放った一発が左肩に命中したからだ。
「痛いッ!」
「ユウカさん!」
激痛が走る。
幸い、弾ははじかれたが、左腕が痺れ、ぴくりとも動かない。派手に脱臼したようだ。
不良達は、それを好機とばかりに、交差点の真ん中で孤立した私たちへの包囲の輪を狭めてくる。
「ユウカ、チナツ。下がっていてください。貴女たちは会計と救護担当です。本業は戦闘ではありません。ここは私が……!くッ!」
ハスミさんが無理にでも前に出ようとする。
「ハスミさん、その怪我ではインペイルメントは撃てません!患部に響きます!もしかしたら取り返しのつかないことに……」
「構いません!腕の一本や二本、正義のためなら……」
「ちょっと静かにして!」
私の強い言葉に、2人は一瞬キョトンとした表情になった。
それを見て、しまった……と思ったが、構わない。かすかに
私たちは耳を澄ます。そして顔を見合わせた。
ヘリコプターにしか奏でられない独特な飛行音──ローター音だ。
それも、急速に近づいてくる。
ヘリは現れた。
高層ビルの影からアクロバット飛行さながらに飛び出し、1機が私たちの上空で滞空した。もう1機は不良集団の上空を旋回し始める。
風圧があたりの街路樹を揺らし、砂埃を上げる。不良たちのどよめきが聞こえた。
(どこの機体?ヴァルキューレ?)
ヘリからライトで照らされているため、機体マークは見えない。
ロープが地上へ垂らされた。同時に、不良らの頭上にいたヘリが機載ガトリング砲を撃ち始める。
味方機の援護射撃の元、人がロープを伝って降りてきた。数は7名。全身黒ずくめで、かつカイザーPMCにも劣らない完全武装。背中には、白字で『S.I.S.U.』の文字が記されている。
「シャーレ
真っ先に降り立った若い男が落ち着いた声で言った。
「シャーレの……」
「特殊部隊!?」
3人の声は見事に唱和した。