こちらシャーレ特別介入保安部隊   作:ZakuSen

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5. S.I.S.U.vsワカモ

 

 

『“ナイトナイン”へ。こちら”クイーン2”。ターゲット・デルタは184号線を東へ移動中。貴隊との距離、約50メートル。まもなくそちらの視界に入るはずだ』

 

「“ナイトナイン”了解。航空攻撃の効果は?」

 

(かんば)しくない。こちらのガトリング砲弾は全て奴の皮膚に跳ね返される。済まない』

 

「”クイーン2“、大丈夫だ。……対戦車ヘリを持ってくるべきだったな」

 

『バカ言え。あれは今頃木更津(きさらず)だ』

 

「キヴォトスには無いか、だろうな。……目標視認(タリホー)

 

『……幸運を、“ナイトナイン”。戦闘後は死んでも回収してやる。回収地点は“サターン5”』

 

「“サターン5”了解。よろしく頼む、“クイーン2”。俺に女子高生に殺される趣味はないからな。オーバー」

 

『交信終了。グットラック』

 

 

 

 

 

 

 

「あらあら?」

 

 ワカモは首を捻った。

 そこにいたのはヴァルキューレの警官隊などではなく、完全武装の特殊部隊だったのである。しかも、大人。彼らは路上にバリケードを築き、完全な迎撃態勢だった。この事実は、ワカモにさらなる興味を抱かせた。

 

「あの、名も知らぬ素敵な殿方はいらっしゃるのかしら」

 

 バリケードで自分の接近に備える大人たちをざっと見る。

 昼間に会った大人は……。

 

「あら、残念ですわね。いらっしゃいませんの。なら」

 

 ライフルのボルトを操作し、弾丸を薬室に送り込むか

 

「破壊あるのみ、ですわね」

 

 ワカモは愛銃を軽々と扱い、銃口をバリケードの中央に向けた。

 バリケードの大人たちが射撃を開始したのはその時だった。発射炎がきらめき、無数の弾丸がワカモの身体に殺到した。

 

「甘い狙いですわね」

 

 だが、ワカモはそれを軽々と回避した。跳ね上がり、空中で身体を一回転させたのだ。特殊部隊の放った弾丸は、何もない空間を貫いた。

 ワカモは羽根のように柔らかく着地する。照準をバリケードに合わせ、すかさず引き金を絞った。放たれた弾丸によってバリケードの一部が吹っ飛んだ。大人たちの悲鳴が耳に届く。

 

 その刹那、ビルの中層階から凄まじい勢いで突進してくる物体が目に入った。

 ワカモは反射的に愛銃をそちらに向け、発砲。弾丸に撃ち抜かれた物体は空中で爆発した。破片と火焔がワカモの周りに降り注ぐ。

 

「対戦車ミサイル?物騒なものをお持ちで。……ッ!」

 

 ワカモはそこで自身のミスを悟った。撃墜したミサイルの影から、新たなミサイルが向かってきていたのだ。

 これは流石のワカモもかわせなかった。自身の脇腹に命中し、爆発した。

 

「くっ……!」

 

 凄まじい鈍痛に、一瞬息が詰まる。

 

「……1発目が撃ち落とされる前提で、その影に2発目を忍ばせておくなんて。なかなかのやり手ですわね」

 

 ビルからの攻撃はそれだけではなかった。機関銃が銃弾を浴びせてきたことに加え、重い一撃が、ミサイル直撃の痛みから立ち直っていないワカモを襲った。

 

「がはっ!」

 

 肩に走る鋭い痛み。ワカモには知る由もないが、ハスミのインペイルメントから放たれたものだった。

 ワカモはビルに向かって発砲した。ビルの窓ガラスが割れ、砕かれたコンクリートが四散した。ダメージを与えることができたのか、射撃が停止する。

 

 ここで、ワカモは自身の周囲に白煙が充満し始めていることに気づく。

 

「発煙筒……!」

 

 煙幕によって、視界がかなり悪い。

 

 ここではっとなる。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ワカモは愛銃を構え直すと、バリケードの方向に弾丸を撃ち込んだ。煙幕が充満しているため、概算方向だ。発砲の影響で煙幕が少し晴れる。

 

「!」

 

 ぬっと、煙の中から手が現れた。その手は、ワカモの愛銃を手にかける。

 

「小癪ですわよ!無名の特殊部隊員!」

 

 ワカモは掴みかかってきた手を振り解くと、大人の顎に膝蹴りを喰らわせた。喰らった隊員は堪らず背中から地面に倒れる。

 

「怯むな!」

「体格じゃこっちが上なんだ。抑え込め!」

 

 煙の中から響く大人たちの声。

 

 ワカモは敵の作戦を悟った。

 

 ビルからの攻撃に意識を向けさせている隙に、煙幕に紛れて距離を詰めてきたのだ。

 大人たちは、銃ではワカモを倒せないと悟り、数と体格で締めにかかってきた。

 

「なんて無粋な!」

 

「それが大人だよ。狐のお嬢さん」

 

 背後から聞こえる若い男の声。

 咄嗟に愛銃で防御の姿勢を作ると、案の定銃床が振り下ろされてきた。

 自身のライフルが敵の小銃を受け止める。二つの銃が十字に交差し、火花が散った。

 

 若い男はニヤリと笑うと、グレネードのピンを抜き、足元に落とした。その側面には『閃光』の二文字。

 凄まじい爆音と閃光が発生し、視覚と聴覚が数秒間遮断される。

 

 刹那、それを見計らったかのように大人たちが飛びかかってきた。

 

「掴んだぞ!」

 

 背中から肩に腕を回され、自由がきかなくなる。

 顔に火傷痕のある男が叫んだ。

 

「今だ、GA-17!」

「了解。打ち込む!」

 

 もう1人の男の左手が変形し、注射針の形になる。そこに充填されている薬品が、生物を鎮静化させる類のものであることをワカモは一瞬で悟った。

 

「させません!」

 

 愛銃を振り上げ、若い男を小銃ごと突き飛ばすと、注射針を今にも刺さんばかりの男の左腕に、渾身の手刀を繰り出した。

 機械の腕が切断され、破片が宙を舞う。

 

 ワカモは、返す刀で愛銃を火傷痕のある男にぶん投げた。

 銃床が男の顔面に直撃し、防弾ガラス製のバイザーを砕いた。男は短い悲鳴とともに倒れた。

 

「ふぅ」

 

 ワカモは大きく息を吐いた。

 

 自分に挑んでくる大人はもういない。距離を詰めてきた大人たちは、全員倒したようだ。

 

 煙幕が風で散り始める。

 あたりは、横たわる大人たちのうめき声が充満していた。

 

「なんて無茶苦茶な人たち。でも……」

 

 ワカモは妖艶な表情を浮かべた。

 

 「こんな熱く、(たぎ)った夜はいつ以来かしら……」

 

 身体の火照りはまだまだ抜けなさそうだった。

 

 「動かないで!狐坂ワカモ!」

 

 背後から届く鋭い声。

 聞き覚えがある。確か……。

 

「早瀬ユウカ」

 

 ワカモはぼそりと名をつぶやいた。

 振り返ると、青髪ツインテールの少女が立っている。足は震えているが、その眼差しは真っ直ぐワカモの目を見ていた。

 二丁のサブマシンガンをこちらに向けている。

 

「チナツさん、今のうちに早く皆さんを……!」

 

 メガネをかけた少女が、倒れた大人たちを私から少しでも離そうと引きずってゆく。

 さっきミサイルを撃ち込んできたビル中層階からは、正義実現委員会の羽川ハスミが地上に降り立ち、こちらに向かってきていた。

 

 それを見てワカモは口角を上げた。

 

「今夜は、まだまだ楽しめそうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでだよ。ワカモ」

 

 その時、落ち着いた男性の声が響いた。

 その言葉を聞いて、ワカモの心臓は跳ね上がった。

 

 昼間、シャーレの地下にいた男性の声だったからだ。

 

 咄嗟に振り向くと、『S.I.S.U.』とペイントされたセダンの脇に、身に覚えのある男性が立っている。

 

「先生!」

 

 ユウカが喜びに満ちた声を上げた。

 

 

 

 

 

 

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