「いたっ!アールゴちゃーん!」
始まりの町のある路地裏、デスゲーム開始から5日経ってある程度落ち着きを取り戻してきたこの世界で、ゼットとメテオラ以下5人はある人物と会っていた。
「その声はゼー坊カ!それにメー坊たちも久しぶりだナ!」
「どうも、あーさん。ベータ以来だな。」
「……彼女は?」
「彼女はアルゴ。情報屋をしてて私の知り合い。」
普通の人は5分話しただけで100コル分の情報を抜き取られる、らしい。
逆に情報抜き取ったときのあの悔し顔は、まだ忘れられないがな。
「もう職業を決めたのですか!?」
「ベータからそれを通してるからナ。そういうことは得意なんだヨ。」
「なるほど……あ、申し遅れました。私はKANZAと言います。今日はよろしくお願いします、アルゴさん。」
「そんな固くなくていいヨ。KANZAだから……かーちゃんだナ!」
かーちゃんて……アルゴのネーミングセンスはどこか捻ってくるよな。キー坊とか。
「それよりモ……随分とモンスターの湧き潰し、頑張ってるそうじゃないカ。」
「だが、流石にクエストで必要なモンスター残してるぞ?」
アニールブレードもらうための植物とかな。
湧き潰しすれば原っぱとかでモンスターと遭う確率減るから、まだこの世界慣れてない人がやられにくくなるし、こっちはレベル上がって攻略の速度上がるしでwin-winじゃないか。
「やることないだけだしな!つーか、これ何か見てー!」
「この装備ハ……一つはわかル。確カ、仮面ライダーというものだったはずダ。」
仮面ライダー?あの何十年も続いてるアレか?
「普通はベルトだけでいいはずなんだガ……ヘルメットがあると考えると、服もある気がするんだよナ……」
「それなら、《かつての友と出会い、話をする》とかいうミッションでもらえたぞ!」
そういってゼットは『特殊防護服』というアイテムを取り出して俺たちに見えるようにする。持ってんなら先に言えよな……
「となるト……これは『シン・仮面ライダー』で間違いなさそうだナ。」
「「「シン・仮面ライダー?」」」
ネットで話題になった初代の復刻版の「シン・仮面ライダーは2023年3月18日に上映された仮面ライダー五十周年を記念して作られた2時間程度の作品。原作アニメと漫画を参照にして、現代を舞台にした新たな物語が面白い。」
おうふ、カンザはアニメ大好きなのか……
「それで出演者は……」
「わかったわかった……それ以降は後で聞こう。それで俺の方は、誰か手に入れた情報でも入ったか?」
「それハ……オレっちにはお手上げだヨ。VNがなにを表しているかもわからなイ。」
アルゴは机の上に置かれたそれをコンコンと叩き、「こいつを装備したときの能力変化もわからないしナ。」と付け加える。
誰も持ってないようで良かった……これの使い方間違えたら大惨事になるしな。
「ほーん……キリト、こいつ持ってみな。」
「分かった……って重っ!?」
キリトが汗を流して持ち上げるが、両手で抱えるのが精一杯のようですぐに降ろした。
「言うほどか?これナックルだから振り回せないじゃないか。」
「それはメテオラの筋力値がおかしいだけダ……メテオラにレベルングをしてもらってる、キリトが全アイテム無い状態でもこれなんダ。分かレ。」
さよけ……
「本来は、もっと上の方で手に入るもんじゃないのか?」
「それは一理あるわね……ゼットにしては、いい推理するじゃない。」
「なんでいつもボケてるって言い方するんだよエースちゃん……」
「いつもボケてるじゃないか。」
うんうん、いつもボケてるとこしか見たことない。ごもっともなこと言うじゃないか、キリト。
「いつも真面目ですぅ!黒ボッチ!」
「んなっ!?言ってくれたなぁ〜?」
「言ってやりましたよ〜だ!」
「あぁ〜ん?」
「お〜ん?」
「あんたらガキかっ!?」
「「フガッ!?」」
と、ここでエースの鉄拳が二人の頭に落ちる。
このまま放置すれば、確実に辺り一帯更地になってたな……
「というカ、VNのステータスはどれくらいなんダ?」
「……本当に見るのか?」
「あア、見せ、て…………」
【VN:ナックル(クロー)/片手武器 レンジ:ショート、攻撃力:5300+使用者の意思、重さ:3000、タイプ:打撃、斬撃、耐久値:N/A、要求値:80+条件達成、防御:+350(防御使用時4230)、敏捷性:-300、力:+400】
……俺だけ別ゲーでもしてるんですかね?
重さ3000て、回復ポーションでも0.1だぞ?これ右手に持ってるとき片手に30000個持ってるのと同じだぞ?
通りで黒ボッチが持てないわけだ。
「私……オレっちの知ってる一番威力高いメイスでも200だゾ?」
呆けて一瞬素がでるアルゴ。
「ずるくない……?」
「いや、俺は仮面ライダーの方が良かったな……だってこっちこれだけだぞ?そっちは身体のステータスが上がるし、なんせかっこいいし……」
「メテオラも、やはり仮面ライダー教に入らないか?」
「どうしたの、かんちゃん……?」
いかん、カンザが某戦闘狂の鬼さんになりかけとる。
「まぁそれはそれとして……こいつを見てくれ。」
「「……開いた!?」」
ナックルがガバっと開く……その中に見えるのは、物々しい棘や爪の数々。
「「震えた!?」」
そしてそれらが振動を始め、残像を帯び始める。
「さてさて……こいつをどう思う?」
「「……すごく……かっこいいです。」」
よだれを垂らして右手についたソレを二人が見つめる。
一見すれば、こいつはロマンの塊だからな。
というか、まじでキリトとゼットの乗りいいな……
「ほんとにそれどうなってるのよ……」
「知らん。渡したたば……あいつに文句行ってくれ。」
「ということは……振動する爪で、バイブロ・ネイル?」
「……かもネ、かーちゃん。」
ドンピシャで半分びっくりしてるが……よくわかったな。
……どうしたゼット、そんな考え込んで?
「閃いたぁ!!」
「どうした急ニ……なにか嫌な予感がすル。」
「俺も……というか、何を閃いたんだ?」
不思議がるキリトとアルゴを通り過ぎ、こちらが今手に持ってるVNを指差す。
「クローを閉じたまま振動できるか?」
「ナックル状態で、か?できなくはないが……」
「そうそう、それをメテオラが持ってここに―――」
まさか、こいつが……
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、き゛も゛ち゛え゛ぇ゛ーー!」
まさか、肩たたき機としても使えるとは……ゼット、すごい顔になってるぞ。
いやいや、使い道絶対間違えてる。間違ってるとはいえ、これはこれであり……なのか?
多分これ渡した人、泣いてるよ?
「……ガンダム?」
「どうしたかーちゃん?」
「色は違うけど、どこかで見たことあるような……」
「それって……
『……え(え゛)?』
なんで急に二年前のタブーを話すんだエースさんや?
「確か、その時ガンダムそっくりのISがそれを持ってたような……?」
「その搭乗者、いま行方不明のはずなんだがナ。」
「も゛し゛か゛し゛て゛、か゛や゛は゛か゛も゛な゛!」
「声が凄いことになってるぞ?というか、茅場は男だから乗れないんじゃ……」
「……難しいことは後で考えようか。それよりも他にやりたい人いるか?」
その後、順番に肩叩きを施したが……全員の顔が蕩けていた、とだけ伝えておこう。
―――――
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―――
――
―
「皆!今日は俺の呼びかけに応じてくれてありがとう!俺の名はディアベル!職業は、気持ち的にナイトやってます!」
ちなみにさっきの言葉で空気は和んだ。
「今日、俺たちのパーティーが迷宮区の最上階で、ボスの部屋を発見した。」
が、この一言でまた空気が締まる。
「1ヶ月、1ヶ月もかかった……!でも、俺達が第一層のボスを倒して第2層に到達して『はじまりの街』のプレイヤー達にこのデスゲームはクリアできるってことを示さなければならない!それが今の俺達トッププレイヤーが果たすべき義務なんだ。そうだろ、皆!」
その呼びかけには、拍手や口笛の返事が返っていく。
なかなか、できるやつだな。
「よし!それじゃあ6人パーティーを組んでくれ。」
「……と言っても、もう6人いるんだがな。」
顔を横に向けると、いつも通りの4人と追加の1人。
この1人はアスナというプレイヤーで、ミトというこれまた別のプレイヤーとモンスターに襲われているところを俺達が救助した。
ミトというプレイヤーは別のグループにいる。そして……
「ワンチャン、キリアスあるか?」
「まだくっついてないから変なこと言うな、恋愛プレイヤー。」
キリトとアスナがなんとも言えない関係になる見込みがある。半年もすれば入籍しそうだな。
「よしっそろそろ組み終わったかな。じゃあ……」
パーティーを組み終えたのを確認したディアベルは、ボスの情報を皆に伝えようと口を開く。
「ちょお、待ってんか、ナイトはん!」
しかし、今まで観客としてディアベルの話を聞いていたとあるプレイヤーの野次で止まる。
振り返れば、その声の主であろうサボテン頭のプレイヤーは、階段を飛び越えて、ディアベルの居る壇上へと乗る。
「ワイはキバオウってもんや! ボスと戦う前に、言わせてもらいたいことがある! こん中に、今まで死んでった1000人に、詫び入れなアカン奴らがおる筈や!」
「……キバオウさん、君の言う奴らとは、βテスターの事かい?」
「当たり前や!β上がりの奴らは、ビギナーを見捨てて消えおった!美味い狩場やクエストを独占しておる!そいつらに土下座させて、溜め込んだコルやアイテムを吐き出させて貰わんと、パーティーメンバーとして命は預けられんし、預かれん!」
ということは、きぐるみ剥げって言ってるのと同じじゃないですかやだー。
そんなこと、聞き流せないなぁ……
「なぁメテオラ?」
「……俺も行こう。」
俺たちは、キバオウの元に歩み寄る。
「何やお前は!」
「名乗るもんでもねぇよ。強いて言うなら通りすがりの風来坊……風来坊兼仮面ライダーさ。」
「俺は、そうだな……アレス……いや、白い隕石と名乗ろう。」
「仮面ライダーに白い隕石ぃ?」
「それはただの前置き……あんた、さっきのは本気で言ってるのか?」
「そらそうやろがい!今まで死んでっだ1000人は、何もせんかったβテスターのせいやろがい!ちゃうか!」
「あぁ違うね。断言して言えるぜ……それによぉお前さん、さっきの発言は、βテスターには生身でボスと戦えって言ってんのと同じ意味だぜ?」
「そ、そうやないわ!」
「……じゃあ、「溜め込んだコルやアイテムを吐き出させて貰わんと、パーティーメンバーとして命は預けられんし、預かれん!」という言葉については、どう説明もらおうか?」
「ぐっ……」
その言葉に言い返せなくなるキバオウ。
「よし勝った。」
声に出てんぞ、ゼット……
その後、エギルというプレイヤーがベータテスターも死んだだの、ガイドブックがどうだのという話を持ち出して、キバオウをけちょんけちょんにした。
そして話が終わり、各々の席に戻りゆっくりと腰を下ろそうとする。
が……
「……あの〜、その手はなんですか?」
「……わからない?」
「……えっとエースちゃん、この腕が意味するのはいったい?」
「言わなきゃわかんないかな?」
とても黒い笑みを浮かべるエースとカンザ。
これは……まずい。
「こぉんの大馬鹿野郎めがぁぁぁぁ!!」
「目立ちすぎぃぃぃ!!」
エースは掴んでいた腕をゼットの腰に回し、そのままブリッジの要領で真後ろへと反り投げ、簪ドラゴン・スープレックスを俺相手に出してきた。
「ぎょえぇっ!!」
「アプサラス!?」
二人仲良く犬神家になったのは言うまでもない。
次はボス戦ですね。もうちょい続くのでお楽しみに。
最近、小説の頭に乗せている誰かの1幕は……
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アリ
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ナシ