side メテオラ
ヨルコさんとカインズさんが生きている情報や、その二人がシュミットを狙っているという考えでキリト、アスナ、アルゴ、カンザ、ゼータからなるなんちゃって探偵団なる者たちは……ふぅ、とそれぞれの座っていた椅子にもたれ掛って、事件解決の余韻に浸っていた。
……あくまでも、完全に答えまではたどり着けてないようだが。
このなんちゃって探偵団、圏内で起きた初めの時にいた者達で成っている。
カンザとアルゴは飲み物を飲んで一息つき……ゼータに至っては、頭から黒煙を上げて、「もうむりぃ……」って言いながら椅子からずりずり落ちていく。
ふと、キリトが、なぁ……と誰に訊ねるでもなく、朧気に口を開いた。
「アスナって結婚してたことあるの?」
キリトがそんなデリカシーのない発言をすると、アスナは深く座り込んでいた椅子から飛び跳ねて、キリトにありったけの右ストレートをお見舞いしていた。それを見たキリトが、「うそ、なし、今のなしなし!!」と両腕を上げながら懇願する。それを見ているアルゴは、苦笑しながら何かを書いている……今回の事件のまとめか?
……いや、多分何かの情報だろうな。
「結婚がなによ?」
「ロマンチック……いや、プラスチックだったっけ……?それだなーともって」
「プラグマチックよ!因みに意味は、実際的、だからね!」
すると、ふと書く手を止めたアルゴがアスナに尋ねる。
「……実際的?どういう事だアーちゃん?」
「うん、だって、ストレージの共有化なんて、あまりに直接的過ぎない?」
「……ストレージの共有化…じゃあ、離婚した時はどうなるんだ?」
「え……ええっとね……確か、幾つかオプションがあるのよ。自動分配とか、アイテムを一つずつ交互に選択していくとか……全部は覚えてないんだけど」
……どうしてキリトは結婚のシステムについてこうも深刻そうに訊ねてるんだ?
……もしかして、アスナと結婚して離婚するまでの流れを予め想定しているのだろうか。
サチとか、それこそリズもキリト狙ってるはずだが……
それに、離婚のことなんて、視野に入れなくてもいいじゃないのか?
そうこう頭の中で考えていると、キリトが何気ない様子で、俺にヤバすぎる質問をしてきた。
「メテオラは、もう誰かと結婚してたりするのか?」
「「「「それは気になる」」」」
なんでこういうことに限って、四人とも食いつきいいんだよ。
期待を裏切らないわけにはいかないので、一応答えておく。
「……それに該当する人はいないし、それに近い人はいないと思う」
それに、結ばれるなんて……そんな資格は持ち合わせていない。
「……なんか、素っ気ない答えだナ〜」
「つまり今は彼はフリー……!」
「……なるほどね」
……本当の意味を捉えれているかは定かではないが。
だが、キリトだけは、心ここにあらずのまま、虚空を眺めて「この朴念仁め……」などと、わけのわからないことを言っている。そしてキリトが、またまた更にヤバすぎる問いかけをする。
「やっぱり、詳しく知りたいな。どうするか……そうだ、アスナ、試しに俺と」
──結婚してみないか?キリトがそこまで言葉を発することが無かった理由は、アルゴ達と嬉しそうに抱き合っていたアスナが、キリトの言葉を聞いた瞬間、急激に冷徹なニッコリスマイルをその顔に張り付けて、腰に帯刀している細剣を引き抜く態勢を整えたからだろう。
「試しにあなたと、なあに?」
アスナ、体中の至る所から、見えちゃいけないものが出てるぞ……
「……お、俺と……質問メール書いてみないか、ヒースクリフ宛の」
脈あると思ったんだがな……これホントにあるか?
流石のキリトもアスナが醸し出す笑顔の憤怒を無視することが出来なかったらしく、恐る恐るアスナにそう告げた。アスナに、離婚システムについてヒースクリフにメッセージで訊ねてもらうと、僅か一分ほどでその返事が返って来たらしい。
その内容には、アスナが先程述べた方式以外にも、慰謝料を発生させるパターンや無条件での離婚の場合には、アイテム分配率を自分ゼロ、相手百パーセントに設定した場合にのみ可能となるパターンがあるらしく。離婚成立時に持ちきれなくなったアイテムは、全て足元にドロップする、と言うシステムのようだ。
……流石このゲームの開発者といったとこか。すべての答えを知っている。
SAOの全てという題名の本でも書いてもらうか、などと冗談事を考えている中、キリトは更に深く思考していた……そして十数秒後、キリトは椅子から飛び退き、俺達の方を見やる。
その表情は、驚愕と恐怖を孕んでいるように見えた。
「……自分百、相手ゼロ。必ずそうなる離婚の仕組みが、ひとつだけある……死別だ。結婚相手が死んだ瞬間、収納し切れないアイテムは全て足許にドロップするはず……つまり……つまり、グリセルダさんが殺害されたその瞬間、彼女にストレージに入っていたレア指輪は、犯人ではなく…結婚相手であるグリムロックの元にドロップしたはずなんだ」
……やっと、キリトも真相に辿り着いたか。
キリトの発言を聞いた瞬間、ここにいる俺を除くほかの皆はこの驚くべき事実を認識すると同時に、恐ろしい真実に辿り着き、戦慄した。
「だったら、指輪はグリムロックに奪われた、ということ……?」
「そんな……じゃあ、物欲しさでグリセルダさんは?」
「グリムロックが殺したのカ……でも、どうしてダ……?」
「……動機は、俺にも分からない……だけど、ヨルコさんが言うには、グリセルダさんはギルドの中で一番強かったらしい……それを加味するなら、グリムロックはPK専門のレッドプレイヤーに依頼して、間接的にグリセルダさんを殺したんだろう……」
「……だったらどうして圏内事件の演出に手を貸していたの?二度とギルメンに会わなければ、事件も闇に葬れるはずなのに……?」
ここまで来たら、助け舟を出してもいいか。
「……圏内事件の演出が、あまりに派手すぎる。多くのプレイヤーが見てた……そしてグリムロックは思ったはずだ。これでは何者かが、死別の場合の結婚解消に関するシステムに気が付いてしまうのではないか、と」
「ならいっそ、彼らに協力するふりをして、今度こそ関係者の三人を消してしまおう……ってことなの!?」
「……シュミットがいきなり聖竜騎士に入れたのも、その計画を手伝った報酬で……?」
「……ならやばくない?」
ゼータがそういった後の、キリトたちの行動は早かった。
壁にかけてあった各々の武器を取ると、直ちに扉を蹴破って走り出す。
すぐさま宿を飛び出した5人を確認したら、今まで隠れていたある女性に声をかけた。
「……そろそろ出てきてもいいぞ」
すると、部屋のクローゼットのそばに置いてあった大きなダンボールから、一人の女性が現れる。
「ダンボールってバレにくいけど、ずっと座ったままは疲れるわね……」
その女性はウ~ンと一伸びしたのを確認してから、まだ誰も手の付けていなかった飲み物を手渡す。
「結論を纏めるに……シュミットっていうやつが、カインズとヨルコから命を狙われている……さらに、グリムロックがその3人を狙っている。それで違いないな?」
「あまり信じたくありませんが……あの時に、指輪を売ることに反対派していた二人が、彼に恨みを持っていてもおかしくないと思います。」
まぁ、彼女にも色々あるとは思うが……
「……夫と、仲直りする準備しといてくださいね。」
キリトからどこにいるとチャットで言われたので、準備をしていたと返信する。
そしていざ行かん、グリセルダさんのお墓へ。
「……自分のお墓を見に行くと思うと、なんか変な感じするわね。」
それはそうだ……だが、俺は何度もここが墓場だ!ってこと言われてきたからあんまり感じないんだよな。
―――――
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―――
――
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side カンザ
「確実に殺るためにこっちは三人で来たのによぉ……そっちはそれ以上で来るとはこっちの事情わかってないなぁ?」
「お前だけには、言われたくない!」
「KoBの副団長様をこんなとこで殺れるとは、なんという好機!」
「そんなに、私はヤワじゃないわよ!」
キリトとPoHが戦いながら、アスナはザザ……どっちもレッドプレイヤーと戦闘を繰り広げていた。
というのも、グリセルダさんのお墓の近くで刺されたシュミットさんをアルゴとゼータが一緒に庇いながら、事情をあまり知らないヨルコさんとカインズさんと一緒に避難させている。
「シュミットさん……治療をして、市街地まで!」
「いそいデ!戦闘に巻き込まれる前ニ!」
彼女たちが逃げ切るまで、私達が時間を稼ぐ。
「よそ見をしている場合か?」
「……見えてるっ!」
というのも……私も、ジョニー・ブラックと戦っている。
今は、薙刀のリーチとレベル差の俊敏値の大きな差でなんとか攻撃をしのいでる……けど、相手の持っているあのナイフ……当たれば絶対にデバフがつくであろう得物に当たったらどうなるかはわからない。
そして、さっきまでいたメテオラは……どこに?
「時間稼ぎのつもりだろうが……お前の相手をせずに目標を叩けばいいだけのこと」
「……っ!」
そういった相手は取り出した煙幕玉を地面に投げつけると、そのまま姿をくらます。
見失った……この隙にジョニー・ブラックは、アルゴ達の方に……!
「いっ!?」
「ツー、ダウーン」
突然腹部に鋭い痛みが走り、体が思うように動かなくなる。
やっぱりあのダガーは麻痺の……
「さっきのはブラフ……読みが浅かったな」
騙された……ここでやられたら、アルゴ達に被害が及ぶ。
けど、体が動かない……
「さて……高レベルプレーヤーは刺しがいがありそうだ」
私の身体から引き抜いたダガーを握り直した相手は、ダガーを喉元に突き刺そうとしてくる。
だけど、その刃は私に届くことはなく……
「ゴハァッ!!?」
そのダガーはとある白い塊と激突し、根本から折れた。
そして、そのまま速度が乗っている塊はジョニー・ブラックを殴り飛ばす。
その塊の持ち主は、私に向けて何かを握り潰した。
すると……体の感覚がまた戻ってくる。
「ちとまずかったようだな。もうちょい早いほうが良かったか?」
「……そうだね、メテオラ」
もうちょっと早かったら、ピンチにはなってなかったし……
「ちっ……ビーターだと!?」
「お前がつけた名前だろ、ジョニー・ブラック?」
「wait……今やるのは良くない。だろ、最強のビーター?」
PoHからの待てで、二人の動きはピタリと止まる。
「……PoH、また身ぐるみ剥いで追い掛け回してやろうか?」
「それは勘弁……人数不利に、君のお出ましのダブルパンチはこちらが劣勢。今日のとこは引いておこう。」
「―――、――――――――?」
「……言っとけ」
そう言い残して、PoH達はその場を後にした。骸骨仮面の男は去り際にメテオラに何かを言い残してから、ローブの男の後を付けていく。三人のレッドプレイヤーが索敵スキルの範囲内から消えてから、ようやく私達は息をついた。
「メテオラぁ〜……どこ行ってたのよ?」
「野暮用でな……ある人を呼んでたんだ。」
ゼータからの疑問に答えたメテオラの後ろから現れたのは、女性……この人は?
「う……そだろ?
グ……グリセルダ……?」
『……えっ!?』
半年前に、グリムロックに殺されたはずじゃあ……
「あなた……
こんの、大バカ野郎ぉぉおお!!」
グリムロックに掴みかかったグリセルダさんは、ドラゴンスープレックスを炸裂させた。
「ぐもっ!?」
『えええぇぇええっ!?』
「……なんで、グリセルダさんは生きてたの?」
「簡単だ……俺も昔、同じ手口を使ったんだよ。」
……同じ、手口?
半年前に、グリセルダさんの死亡を偽装したってこと?
「……メテオラは転移結晶とデスしたときのエフェクトが、似ていることを知っていたのカ?」
「まぁ……今回はそれに似た事をしてたから、それが不具合じゃないことを確認できればそれで解決したんだ。」
「そういうことなら早く教えなヨ〜……」
アルゴはポカポカとメテオラを叩き、「悪い悪い……」と答えながらその攻撃とも言えない軽い打撃を甘んじて受けている。
「なら、なぜお前が消えたときに、アイテムも、ドロップしたんだ!」
「転移直前に、急いでアイテムを、ドロップさせたのよ!」
ジャイアントスイングをしながらも、夫婦の言い合いは止まらない。
「グリムロック、あんたはちと焦りすぎたんだ……たまには、彼女の自由にさせてやってもいいんじゃないか?
あんたたちはまだ、やり直せる。」
グロッキーな状態になったグリムロックに、メテオラが近づいて話す。
……この感じだと、丸く収まりそうだね。
「そう、か……」
ヨルコさんたちとも和解した後、黄金林檎が再結成されてその飲み会があった。
初めてお酒を飲んだけど……苦くてわからなかった。
メテオラがまた途中でいなくなってから、戻ってきた。
さっきと違ってちょっと疲れた顔になってるのは……気の所為、なのかな?
―――・・・―――
side イーライ
「うぅっ……おえっ……」
「大丈夫か、兄弟?」
ふとソリッドの様子を見に来たら、いきなり吐いている現場に遭遇した。
とりあえず水を差し出し、ソリッドはそれをラッパ飲みする。
「何かよくわからん食べ物でも食って、あたったのか?」
「だと良かったんだが…………そろそろ限界かもしれない。」
限界……なにか堰き止めてる?
もしや……いや、こいつがなるとは思えないが……
「
「だと良かったんだがなっ……クソ……まだ聞こえる……」
幻聴……精神が不安定なのか?
「……こっちもいるか?」
「もらおう…………ングッ」
ハーブ……現実で言うところの精神安定剤を渡すと即座にそれを飲み込み、水で押し流した。
「ふぅ……少しはマシにはなったか……このハーブのコルは……」
「いや、これくらいなら兄弟の為だ。」
安くはないが、兄弟の為なら安いも同然だからな。
「……恩に着る」
そう言うと、ソリッド……メテオラは飲み屋へと戻っていった。
「メテオラ……お前がそこまで苦しむとは……一体何人殺したら、そんな事になる?」
圏内事件終わりっ!熱帯低気圧は今後結構続きます。やがて……
次はキリトの装備作り……ユウキの装備も作ります。
そこで……
PON!
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=305283&uid=427875
どじょ。一緒に作りましょうや。
最近、小説の頭に乗せている誰かの1幕は……
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アリ
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ナシ