『降りた途端倒れたと聞いてたが……大丈夫かいリュウセイ特務大尉? ヘルメットも……吐瀉物でまみれてるみたいだが……』
『大丈夫です、キシリア閣下…………出撃前に食い過ぎて、着艦のときに酔っただけですよ。わざわざ来て心配していただきありがとうございます』
『……メンタルケアを怠らないように』
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side メテオラ
「アダッ!? ……あっ片太刃鋏!?」
「いまどこから出てきた……?」
なんか一瞬歪みが見えたかと思ったら、ゼータの横に赤い片方だけの鋏が音を立てて落ちた。
「耐久ちょっと減ってるけど……まぁ見つかったからいいか!」
頭の上にたんこぶを作ったゼータが頭をかきながら、武器を収納する。
誰かが盗ってた……わけじゃないよな。あんなの使ってたらすぐわかるし……
「おーし! みんな集まったな? じゃあこれからブリーフィングを始めていくで!」
第55層、グランザムに各上位ギルドのリーダーやら、上位プレイヤーが揃った……
今喋っているディアベルとその横にいるキバオウ率いる関西衆にヒースクリフとアスナ麾下の血盟騎士団を始めとする多くのプレイヤーに加えて、キリトやイーライの姿も見える。
「でさ、このモンスタードロップの盾なんだけどさ……」
「……随分と装飾派手だね」
「……これだけは!」
「譲れないよ……!」
「ぐぬぬぬ……」
「ここのネジが緩んでるな……」
もちろん……うちのギルドからも、複数人集まっている。
ナフィラと楽しそうに話しているガラハドに、なぜか目から火花が出てそれをぶつけ合っているカンザとユウキにゼータ。ハンマーの手入れをしているパワー5……
既にこの場には四十名近くのプレイヤーが集まっており、四方から他愛の無い世間話が聞こえていたが、ディアベルの一声でしん……と静まる。
「気持ちナイトから役職のナイトになったと思うディアベルが今回の司会をさせてもらいます!」
……相変わらず、あいつはほとんどのプレイヤーからの人気が高い。
「いやー……第1層攻略から、気づいたらもう1年以上前になってますな。その時から時間が過ぎて……良くないことをする輩も出てきてしもた」
「プレイヤーをキルしたり、良からぬ行為をしたり……そんなことをしてるラフコフとか言う悪党を今回はしばく!」
キバオウがディアベルの話を補うように話してざっくりと、かつわかりやすいように話した。
……随分と仲の良いようで。
「でも……できる限り、あんちゃんたちは捕まえて罪を償わせたい。まとめて黒鉄宮に送り込んだろ!」
けど……とキバオウの続けざまにディアベルが交代して話し出す。
「はっきり言って……俺達は状況によったら、人殺しをしてまうかもしれへん。だが、意味のないものではない」
「メテオラはんも、何か言ってくださいな!」
キバオウに催促され、何故か俺の喋る役が回ってきた。
まぁ別に話しても構わないから、話すが……
「少し前、ラフコフの幹部であるジョニー・ブラックに言われた……『結局プレイヤーは死んだかわからないだろう?』と……そんなことはない。俺たちは、生きているんだ」
(『俺たちを殺しといて、よく言う……』)
(『ならどうして罪のない子供まで殺したんだ!』)
どうして今でてくるんだ……うるさい、亡霊め。
「だから……」
(『まだ人殺しを続けるのか?』)
もう、しゃべるな……
(『まだ、やりたいことがあったのに……どうしてあなたは……』)
(『ぼく、なにか悪いことしたのお兄ちゃん?』)
(『どうしてどうしてどうしてどうして!』)
うるさいっ!!!
「っ……」
「大丈夫かスネ……メテオラ?」
気がつくと、視界はかなり下に移動していた。その前にはイーライが手を差し伸べている。
……気づかないうちによろめいてしりもちをついたらしい。
「ちょっとめまいをした……大丈夫だ」
「体調が優れないのなら、無理するなよ?」
「ほんとに彼は最高レベルのプレイヤーか……?」
「メテオラ……」
「……ビーターも、年貢の納め時か」
イーライの手を取り、体を引き上げる。
何人かが俺に怪訝な顔をしたり、心配そうな顔をする。
別にどんなに責めてくれていい。だが、そんな心配とか、哀れみの心は俺にはいらない。
そんな事されていいはずがないことをしたんだから……
「周りの言うことは気にするな、聞くだけ無駄だ」
「……ああ」
「……ちょっとヒヤッとしたけど、問題なさそうやな。それじゃあどうやって討伐するか話していくでー!」
ラフコフを壊滅させるまではなんとか持つとは思うが……
いつの間にか、もう受け止めきれないほどの人の声が聞こえるようになったな。
(『おかあさん……どこにいるの?』)
(『なぜお前はのうのうと生きてるんだ!!』)
……せめてこいつらがぶり返す前には、俺は死ぬべきか。
周りに、迷惑かける前に……
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──―
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side イーライ
「シャア、お前は……メテオラの
場所は個室型の食事店。それも会員制の人があまり来ないような場所だ。
シャアにあいつがブリーフィングのときに倒れたと言ったら、君に伝えないといけないことがあるという返信があったからな。
ブリーフィングを終えて、いの一番にシャアを呼び出した。
「……そろそろまずくなってきたようだな」
「あいつの様態か?」
「ああ、まさかとは思っていたが……」
「どうぞ」と言って差し出された水を「どうも」と言って受け取り、一口つける。
そして二人で、座敷に座った。
「……なぜあのようなことになった?」
「…………彼が、宇宙に飛び立ったことは知ってるか? 3年前の『厄災』……」
「厄災……それは知ってるが、それと何が関係ある?」
隕石を、メタルギアよりも遥かにちっちゃなISとかいう機械がどかした一件か。
「それをやったのは彼……それが起こる前、9ヶ月ほど前の話だ──―」
あれは女しか乗れないはずだが……まぁあいつならやりかねんな。
──―
──―
──―
3年前、郵便局に用があった流星は、そこで強盗とばったりでくわしたことがある。
その強盗犯は拳銃を持っていたが……とある女の子がその強盗犯と取っ組み合いなってその拳銃を奪おうとしていた。
「……あんたが業を背負う必要はない、銃を渡せ!」
「は、はいっ!」
流星は、その女の子から銃を投げ渡すように指示し、その子はかろうじて銃を流星に渡した。
だがその渡す間、強盗犯との取っ組み合いで女の子に隙ができてしまったのだ。
「きゃっ!?」
「このガキめッ、こいつがどうなってもいいのか!」
そしてその後に、ナイフを女の子の首に押し当てた強盗犯を……
「動くなよ少女……」
「おい、それをさっさとパァンッ──―」
……その後の取り調べでは、流星の正当防衛が認められて何もなかった。その時には、特に問題はなかった。
…………はずだったのだが、取調が終わったその夜に……
「はは……そういや、18バンチでも部下から核弾頭取り上げて取り上げて、似たようなことしてたな……ウウッ」
家族が寝静まった後、トイレで一人嘔吐を繰り返していた。
「ゲホッ頭が……まただ。さっきのやつのことがっ……」
(『大丈夫か、流星……?』)
「一応ISの保護機能で思考抑制を頼む……」
(『今……起動したぞ』)
「助かる……やっぱニュータイプってのは、やっぱり便利なものじゃないな」
──―
──―
──―
「──―その時は、すぐに収まったものの……彼の中では、黒く渦を巻き始めていたようだ。キシリアやガルマが心配していたことが……今起こるとはな」
「……だいたい『厄災』のときに貧血でも起こしてあいつの脳みそが弱ったんだろう」
「……よくわかるな」
「人の構造には詳しいからな……殺したやつの意思がまんま入ってくる?」
「ああ、人によるがな……中にはそれによって精神崩壊を起こした者もいる」
考えてみれば、その殺したやつの今までの人生と考えていたことが頭に流れてくるのか……
それがニュータイプの特徴と……ナノマシンで操っていた少年兵をやった時にはどんな思いがあったんだろうな。
「メテオラ……いや、前世のリュウセイ
「……特務?」
「……スペースコロニーを落とす、核兵器を持つ部隊の指揮官だったんだ」
「スペースコロニー……破壊したそいつのデカさは?」
「全長6キロ前後、数千万人単位で住んでいていたものだ……数百個はあったと聞く」
アウターヘブンを十数個つないだ長さの場所に、多くの人が……
「で、それを破壊したと……」
「いや……彼が指揮して落としたのは、はじめの13バンチだけだ」
おおよそ1000万人を手に掛けた……ん? 宇宙なのに『落とす』?
なにか食い違っているな。破壊したわけではないのか?
「なぜ破壊するではなく、落とすという言い方を使ってる?」
「……地球に落としたからだ」
地球に……落とした!?
……なるほど確かに、質量兵器としてはもってこいの大きさだが。
「……その時の被害は?」
「オーストラリア大陸壊滅と衝撃波、津波で…………
推定、10億以上……その一回のコロニー落としで人は死んだ」
っ…………俺の予想の100倍以上……か。
「そいつらの意志を、あいつ一人が背負っているのか?」
「それだけではない。彼はどこの世界でも、ニュータイプだった……としたら?」
あいつがいた世界は、少なくとも10を超える……多分どの世界でも死は間近で見たことがあるだろう。
「本人は何も言ってないが、私は彼の近くで死んだ者も対象内と睨んでいる」
「……数えるのが、疲れるな」
まさか、それほどの業をずっと抱えていたとは……
「今回のラフコフ殲滅戦……必ず死者が出るだろう。彼は、いつ壊れてもおかしくない」
「……具体的には?」
「……わからない。良くて精神崩壊、恐らく自分で首をくくるだけでも御の字。最悪……死んだ者たちが彼を乗っ取るのかもしれん。そうなった時、彼を止めれるか……」
俺が間違えた道走ったら殺せと言っときながら……まさか逆の立場になるとはな。
「最悪の状況になった時、イーライはその覚悟はあるか?」
「……俺はあるぞ。せっかく仲直りしたんだが……それであいつが救われるのならな」
少なくとも、あいつが頼んだ瞬間……楽にしてやる。それであいつが救えるのなら……
「そうか……だが、私にはそうすることはできない……!」
だが目の前のシャアは、頭を抱えて座り込んでしまう。
「シャア……」
「教えてくれ、ララァ……アムロ…………どうすれば流星を助けることができる?」
「お料理をお持ちしましたー! ……ここに置いときますね」
AIを積んだNPCが空気を呼んだのか、店に入ったときに頼んだ酒とつまみが入口付近に置くと、そそくさと出ていった。
最近、小説の頭に乗せている誰かの1幕は……
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アリ
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ナシ