「主任ー? 今空いてる?」
「ハイハーイ……で、なんか用事あるのタバりん?」
「最近暇でしょ? 頼みたいことがあるんだけど……」
「そーだねぇ……最近はやることはない「じゃあちょっとりゅーくんのお手伝い逝ってきて!」ア゜ッ!?」
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side キリト
「ごめんね、アスナさん……突然お邪魔して……」
「いいよサチさん。最近ゼータとかユウキと全然話せてなかったから、ちょうど他の女性と話したいと思ってたし!」
自分で獲ったものと、メテオラからおすそ分けしてもらったラグーラビットを合わせてのフルコースを二人が作ったが……美味かったの一言に尽きる。
二人共、料理の腕が凄まじかった……何やら競っているように見えたのは、少し疑問に思ったけど。
食後のコーヒーもどきをすすりながら、もう一度食べた肉の味を想像する……また食べたくなってきた。今度もう一回メテオラに頼んでみようか。
「なにか聞きたいことでもある、サチさん?」
「じゃあ一つ……二人共すごいよね、ずっと攻略組でいて……キリトとアスナさんは、攻略組で危険が多いのに、どうしてここまで頑張れるの?」
かなり重い……サチから思ってたより、重い質問がやってきた。
「……具体的な理由」
「と言われてもなぁ……?」
よくよく考えてみれば、それほど大層な目標を掲げているわけでもない。ここを生き残るくらいのことしか……
「メテオラみたいに、全員を助ける……ためじゃないな。自分が生きるだけで精一杯だってのに、そこまではできないし……」
「あれはちょっとイレギュラーすぎるわよ……かといって、誰も死んでほしいわけじゃないものね?」
「「「……うーん」」」
3人の唸る声だけが部屋に聞こえ、時間だけがゆっくりと過ぎていく。
「ユウキが前に言ってたことを借りて言うなら……もし、この世界で死んだとしても俺が生きた証を残せるっていう理由があるかな」
「そんな後ろめたいこと言って……でも、多少形は違えど、それが今の攻略組全員の根底にありそうね。もっと考えるなら、更に時間かかっちゃうと思うからこんな答えでもいい?」
「いいよ全然! ……教えてくれてありがと、二人共」
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「ア、アスナ様、勝手なことをされては困ります……!」
……勝手なことをしてるのはどっちなんだか。
ラグーラビットのフルコースを食べた翌日、見送りをしてくれるために先に待っていたサチと一緒に待っていると……転移門から飛んできたアスナの後ろから現れたのは、自称アスナの護衛というクラディールという男……なにか胡散臭い。
「さぁ、アスナ様、ギルド本部まで戻りましょう!」
「嫌よ、今日は活動日じゃないわよ……大体貴方、なんで朝から家の前に張り込んでいるのよ!」
「護衛のためです!」
「そ、それ……団長の指示じゃないでしょ!?」
「もちろん、私の任務はアスナ様の護衛です! それにはご自宅の監視も……!」
「含まれないわよ、バカ!」
……これはもう、ストーカーの類になってないか?
「聞き分けのないことを仰らないでください……さぁ、本部に戻りますよ!」
そう言って、クラディールがアスナの腕を掴もうとした時だった。
「悪いな……お前さんのトコの副団長は、今日は俺の貸し切りなんだ」
「それに、嫌がる女性を連れていこうとするのは、いくら血盟騎士団とはいえ、許されないことではありませんか?」
「貴様ら……!」
キリトがクラディールの腕を掴み、それを制止し、サチはアスナを庇う様に前に立った。それに対し、クラディールは物凄い表情でこちらを睨みつけてくる。
「アスナの安全は、俺が責任を持つよ。別に今日ボス戦をやろうって訳じゃない。騙すわけじゃないけど……悪いが、本部にはあんた一人で戻ってくれ」
「ふ、ふざけるなよ! 貴様らのような雑魚プレイヤーにアスナ様の護衛が務まるかぁ!」
「……あんたよりはマトモに務まるよ」
「こ、このガキィ! そこまで言ううのならば……!?」
そう言って、クラディールはウィンドウを呼び出すと、俺の前にシステムメッセージが出現する。デュエルの申し込みだった。
「……受けても、いいのか?」
「大丈夫……団長には、私から報告するから」
アスナに視線をチラと送ると……意図を読み取ったアスナの言葉に俺はシステムウィンドウを操作した。
「……分かった。このデュエル、受けてやる」
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「……そこまでです、クラディール!」
「ア、アスナ様……!?」
後ろを振り向くと……リザインしたと言うのに、後ろから迫ってきているクラディールの持っている短剣をアスナが細剣で弾き飛ばし、かつて持っていた懐かしい盾を持つサチが俺の前に立ちはだかった。
「……そんなの、卑怯ですよ!」
「クラディール、血盟騎士団副団長として命じます。本日をもって、護衛役を解任。別命があるまでギルド本部での待機を命じます」
「そ、そんな……この……! コイツのみならず、あのメテオラとかいうバケモ「それについては団長から直々に箝口令が出ているはずですよ、クラディール! それについても言っておきましょうか?」……っ!」
アスナの言葉に呪詛を吐きながら、奴は再び何かをしようとするも……自制したのか転移門に向かい、グランザムへと転移した。野次馬は散っていき、俺たちだけが残された。
「ごめんなさい、嫌なことに巻き込んじゃって……」
「俺はそこまで被害を被ってないから大丈夫だよ」
「私も大丈夫……それよりも、アスナは大丈夫なの?」
「ええ……今のギルドの空気は、ゲーム攻略だけを最優先に考えて、メンバーに規律を押し付けた私にも責任があるから……」
「だけど、そういうアスナの頑張りもあったから、ここまで攻略が進んだだろう?
確かにやり方は問題があったのかもしれないけど、結果として、やっとここまで来たんだぜ? そんな自分ばっかり責めるなよ」
「……ありがとう、キリト君」
真剣な表情で、じーっと見つめ合う……あれ、ここからどうしたら……
どうすれば良いかわからない……!
「……オホン!」
「うわぁ!?」
「にゃぁっ!?」
サチの咳払いが入ると、俺とアスナどっちも変な声が出てしまった。正直、このなんとも言えない空気を変えてくれたことには感謝してるが……
「本来の目的、忘れてない?」
「そ、そうだったな。では早速冒険の旅へ「待って!」……どうしたんだ?」
「もう一度だけでもいいから……ラグーラビットの料理、キリトに作らせて。約束」
この言葉は……そういうことか。
「また今度、一緒に作ろうな。それまでは絶対にデスしない」
「……うん!」
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side メテオラ
「アイムシンカートゥートゥートゥートゥトゥー……」
今日キリトが84層を攻略すると言うから、ユウキとカンザ、ゼータにシャアなどを連れて迷宮区をとある曲を口ずさみながら、マッピングしてるが……
当の本人がどこにもいない。先にボス部屋に行ったのか……?
「……それはなんの曲?」
「ん? ……これは、昔の先輩に送りたい……レクイエムみたいなものだ、カンザ。話せばかなり長くなるから、ボスを倒してからゆっくり話すよ」
決してあのゲイブンの殺戮野郎のためではない。
願わくば……ジョシュアに、この曲が届いてると良いが。
「ゼータの鮮血無拍子って、便利だよね……攻撃を跳ね返せるスキルって少ないし!」
「そういうユウキのユニークスキル……二刀流も、めちゃくちゃ攻撃できて便利だと思うけど? あれどうやって手に入ったの?」
「あのスキルは…………ボクも正直分からないや!」
「えー! なにかちょっとでも手がかりとかかないの!?」
「無理もないよ……どうやって手に入れれるか知ってたら、多くのプレイヤーが狙ってると思うし?」
「……それもそっか」
「一つ、ALOの時から考えていたスキルはあるけど……まだ完成してないし、それはヒ・ミ・ツ!」
「もっと聞きたくなってきたぁーっ!」
ゼータとユウキは各々が使っているスキルの話で盛り上がり……
「シャアさんは、メテオラのお下がりの片手斧を使ってるけど……使い心地とかどう?」
「使い易いの一言に尽きるな……かなり長いこと使っているが、もとよりしっかり手入れされていて壊れるといった心配はしたことがない」
「ちょっと持ってみても?」
「構わない…………どうだ?」
「ほんとだ……軽いし、手にしっくりくる。メテオラとシャアの匂いもちょっとついてるし……」
「……カンザ氏?」
シャアとカンザが武器の話に花を咲かせている……すこし危険な香りがするが。
「そーいえばメテオラも、何かしらのユニークスキルとかありそうだけど?」
そっちのほうがなにか色々知ってそうじゃない? とゼータがさっきの話の延長線として、こちらを向いて訪ねてきた。
「俺は一つだけ知ってるが……それの入手条件も知らないし、なにより使ったことがないな。正直周りの影響がどうなるかわからない」
先日に、誰かから勝手に渡されていらいそのままにしている。試しにボス戦で今日使ってみるか……?
「メテオラの戦闘を見てる限り、あったらもっとすごいことになりそうだね……」
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「ここらへんが終点かな……あれ、クラインのギルド?」
「もうどうとでもな……あっ、メテオラ達だ!」
先をゆくカンザが見つけたのは、ボス部屋の入口のような所で頭を抱えているクラインと彼の率いるギルド『風林火山』の姿。
「クラインか。久しいな……で、今の状況を説明してもらっても?」
「軍のバカどもが忠告も聞かずにフロアボスに突っ込んで、それをアスナが追っかけていったのをキリトが追いかけたんだよ!」
「軍って……?」
「アインクラッド解放軍のことだ。第1層でたまにカツアゲに来るから追い返してるだろ?」
「あ、あー……あれが軍だったんだ」
年齢の故もあるが……ちょっと社会の情勢に疎いユウキに補足説明をしながら、フロアボスの部屋を除く。
「放っておけ、と言いたいとこだが……」
扉を少し開けて中の様子を見る限り、アスナがまるで正気じゃない。
あれじゃ正常な判断をできない可能性が高いだろう……それにやや苦戦気味に感じる。挑戦プレイヤーの絶対値が足りてないか。
「……割り込んだほうが良さそうか」
「転移結晶無効らしいから、後戻りはできないぞ……!」
「それくらいで怖気ついてどうする……敵が1体なだけ、随分とマシなものだ」
「これでビビらないって、どんだけ肝が太いんだよ!?」
肝が太いというよりかは、別にそんな事自体を思わないというのはさておき。
「アオ・バー・クーの時は流石に死ぬかもって思ったぞ。敵味方どこにいるか分かりづらかったからな……」
「ア……アホパーク? どこだそりゃ?」
……どう聞こえたらそうなる?
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「随分と、やつのレベルが高くないか?」
「ああ。クオーターでもないのに、この強さは……」
「今の攻略組にコイツの強さを合わせた感じか?」とシャアに聞いてみると、「だろうな」と首を縦に振った。
右手に持つアームドアーマーVNでさえ、今までのモンスターよりも通りが悪い。
回復ポーションを大量に使う人海戦術で、現在はグリームアイズと言う名のフロアボスのHPを少しずつ削ってはいるものの……行動パターンが変わったらすぐにできなくなるだろう……厄介なことだ。
「メテオラ……さっき言ってた、ユニークスキルは使わないのか?」
……そうだな、少し前のことなのにすっかり忘れていた。
「使ってみようか……準備が整うまで、攻撃を強めてヘイトを稼いでくれ」
「了解……スイッチッ!」
俺と入れ替わったシャアが、片手斧を持ちながらグリームアイズに吶喊していく。
あいつにあまり負担をかけさせないためにも、はやく準備を進めるとしよう……まずはウィンドウを開ける。
【黒い鳥】のスキル欄には
「こいつは……面白い」
スキルの一つを選択すると……手頃な
「……そこかしこにあるじゃないか」
キリトとユウキがスターバースト・ストリームでグリームアイズ攻撃し続けているが……一度のソードスキルよる攻撃で削りきれそうにない。やはり、早く手を打つべきか……?
「メテオラ、武器も持たずに……それはただのオブジェクトだよ?」
「それは……誰が決めたんだ?」
この石柱を……こうやって引き剥がして手に持てば!
先程まで壁についていた石柱が地面に落ち……ゴシャァッと言う音とともに地響きが起こる。
「「えっ……」」
怪力でこうやって持つだけで、
……紫電が走り、もとより燃えていた炎が石柱全体に広がる……この技は、増強系のものだったか。使い方は間違ってない……ハズ。
『システムに深刻な被害が発生……見せてみな、
聞いたことがある、システムボイス……じゃない?
この声は……『主任』か?
「そうだ! ……いやいや、ちょっとキミのお手伝いをね!』
仕事はどうしたんだ……?
まさかとは思うが……お前、スキルのボイス役のためにこっちに来たというのかよ……
『まぁそんなとこかな……タバりんに暇なら遊んできなって言われたからね」
束に送り込まれたと言ってるが……そんなホイホイと、簡単に来れるものなのか?
いよいよあんたの正体が分からなくなってきたなおい……
「そんなことより、証明してみせよう……まぁやるなら本気でやろうか! そのほうが楽しいでしょ!』
随分とおしゃべりなスキルだことで……ともかく、お前がそう言うなら全力で当たらせてもらう。言い始めたのはあんただからな?
『ギャハハハッ! いーじゃん、面白くなってきたねぇ!」
ユニークスキルin主任(ACV)参戦……証明してみせよう。すべてを焼き尽くす暴力で。
これは余談ですが……ニコニコ動画にある「不明な提督が着任しました」シリーズの動画……あのMMDは、いいぞ。
是非見やがれください。
最近、小説の頭に乗せている誰かの1幕は……
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アリ
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ナシ