サブストながらしっかり書かせていただきます。
というわけで茅場の演説が終わり、広場は阿鼻叫喚そのものと化していた。
この状況を飲み込めずに混乱する者、
どうしてこんな目に会わなければいけないのだと怒る者、
死が目の前に突然現れて泣き出す者、
この世界にいつまで閉じ込められるのかと絶望する者などでで溢れかえっていた。
そんな中、俺たち4人は裏路地に入る。
「とりあえず、次の町まで移動しようか。」
と、提案するキリト。
「そうするか。出来れば2つ先の町まで行くのがいいんだがな……」
「……どうして?ここで経験値を稼いだらいいんじゃないの?」
その考えは誰もがしているんだよなぁKANZAさん……
「二人ともよく聞いてくれ。この世界で生き残るには自分を強化しなくちゃいけない。だけど、この辺りの狩猟場はすぐに狩り尽されてしまうだろう。
だから、俺は次の村に拠点を移そうかと考えてる……もし……もし!よかったら、三人とも俺と来ないか?俺とメテオラなら危険なルートは全部わかるし、レベルが低くても安全に村に辿りつける……一緒に来ないか?」
「俺は別に構わんが……カンザはどうする?」
「……私はメテオラについていく。まだこの世界に慣れた訳じゃないから……」
確かにまだはっきり言ってここで生き残るためにはまだ未熟だろうし、ありだろうな。
「クラインはどうするんだ?」
「おれは……リアルのダチと合流したい。あいつらが心配でな……次、会った時には強くなった姿を見せてやるからな!簡単に死ぬなよ!」
それも一つの選択肢だろう。俺も知ってるやつがいたらそうしてるはずだ。
「達者でな、クライン。フレンド申請しとくからいつでもよんでくれよ。」
「俺もしとく!何かあったら、メッセージを飛ばしてくれ……また、どこかで!それまで元気でな!」
手を振りながら広場に戻っていくクライン。
「さて……僕たちも行動を始めるとするか。」
「次の町まで安全運転で暴れるとしようか!」
「……矛盾してない?」
してないしてない。ただ、斧を振り回しながら歩くだけだから。
―――――
「何でこんなに俺たちのレベル上がるのが速いんだよ……」
「3人でパーティー組んでて手当たりしだいに潰してるから?」
このゲーム内では、協力してモンスターを倒したり、パーティーを組んでいるとその仲間にも経験値がもらえる。
「そうだとしても、いまの段階でもうレベル15って……俺50も倒してないはずなのに。カンザさんは?」
「……私は今倒した敵でちょうど30かな。メテオラが倒しすぎてるからだと思う。」
β版では、そのフロアの階数プラス10以上が安全マージンとして知れ渡っていた。カンザさんもいまレベル12の後半に差し掛かっており、余程のことがなければHP全損はないだろう。
「そうか?1000を超えたあたりから数えるの面倒くさくなったからどんだけ潰したか分からねぇや。」
「「えぇ……」」
お二人が人外を見るような目でこちらをジトーっと見てくる。
そんな目で見ないで!
「……自分のステータスが高いほどやられにくくなるから別にいいじゃん。」
今のレベルアップにおけるフリーのステータスは、攻撃力と移動力にすべて振っている。
一切振ってない耐久値は追々上げる予定だ。
昔の同僚が言ってたよ。『当たらなければどうということはない』ってね。
まぁそんな上昇を振ってない耐久値だが、レベルが29にもなれば勝手に上がる数値のおかげで痛くも痒くもないがな。
「なんでフィールド走り回ってそんな爽快な顔してるんだよ、疲れないのか……?」
「確かに疲れてるぞ、何なら今すぐ横になりたいぐらいに。」
仮想世界でも疲れや眠気がやってくる。おそらく自分がいつも生活してるときと同じような……
「……次の町が見えてきた。」
やっとか次の町が見えたか。まだ周りにプレイヤーの姿は見えずはるか後ろの方でポツポツと見えるくらいだ。
中には、今この瞬間にモンスターにやられた、即ち今死んだプレイヤーも見えた。
「おーイ、お前達ー!」
こちらに近づいてくる一人の女性プレイヤーがいる。一番乗りに出た俺たちに追いついてきたのか。
だが、この世界の距離がリアルと同じなら、俺達が通った道の横幅400mはモンスターがいない状態だろうから通るのは容易だろうな。
「その声、アルゴか!?」
「そうだ。久しぶりだナ、キー坊にメー坊。」
「どうもあーさん。レベリングは大丈夫か?」
このプレイヤーはアルゴ。β版では情報の収集をメインに活動してたんだっけか。俺もよくβ版の攻略の最前線に立っていたのでよく情報交換した仲だ。
俺のことを名前の一番上から取ってメー坊と呼ばれている。
「道中モンスターを探しまわっテ、今は8ダ。その青髪のレディはどっちの連れダ?」
「……私はKANZA。メテオラについて行ってます。私のことは……好きに呼んでください。」
「よろしク、カンザさん……ンで何でこんなにもモンスターの数が少なかったんダ?」
「それはメテオラがな……」
「……そうカ。だいたい分かったヨ。メテオラ、今レベルいくつダ?」
「29だが……なくて困るもんじゃないだろ?」
「それはそうだガ……モンスターが少なすぎてバグかと思ったヨ……」
やれやれと呆れ気味に話すアルゴ。別にいいじゃない。第一層のモンスターのリスポーン回数が一回減っただけだから。
「まぁでも大量に倒していて分かったこともある。今の所6種類の敵を潰してきたんだが、どいつもベータと変わりないってことは分かったぞ。最もこれからのやつは変わってるかもしれんが。」
「そうカ……情報ありがとうナ。」
「そういやあれ作るのか?それなら手伝うが……」
あれとはβ版時代、アルゴが作ってたガイドブックのことだ。彼女一人であそこまで完成できたというのだから、情報収集能力の高さが伺える。
「ほんとカ!?それは助かるナ!」
手を合わせてパアアァァッと輝く。原理不明。
「もともと自分で出すつもりだったからな……この際統合するか。いまフレンド申請を……送った。メッセージにさっきまで書いてた20層までの情報を送る。」
「げっメテオラモンスター狩る片手間にそんな事やってたのかよ……」
後半作業ゲーになってたからな……暇つぶしだよ。
「今受け取っタ…………おお、この量はすごいナ。しかもわかりやすく編集されていル。こんなもの、いいのカ?」
アルゴが自分のウィンドウをまじまじと見つめ、別の場所に書き写していっている。
「今回はサービスだ。パンフレットの発行はそっちで頼むのでおあいこってことにしとくよ。」
「……メテオラ、そんなかんたんに情報あげていいの?」
やり取りを見ていたKANZAが質問してくる。
「彼女は信用できるからな。口がかなり硬いことで有名だったし。」
β版では何人か情報屋がいたのだが、一番信頼されていたのはアルゴだ。あとのやつは間違ってたり、嘘をついてたりしてたからな……
「……よし、あとはこの原稿を発行するだけダ。早速今から印刷所に行ってくる。ありがとナ、メー坊。」
コピーが終わって、こちらに視線を戻す。
「どういたしまして。死ぬなよ?」
「わかっているサ。そっちこそ、無茶してHPゼロになるなヨ?」
そして、彼女が町の中へと入っていった。
「俺たちも装備揃えますか!」
そう言ってキリトも町に入っていく。
「……そうするか。」
デスゲーム開始から2日、俺たちはさっきまで初期装備で戦っていたのだ。宿は野宿。
というのも、始まりの広場の次の町はついたらすぐに人でごった返していたのであまり滞在せず、すぐに移動を開始したからである。
いずれ、この町にもプレイヤーが溢れかえるだろうから、長くても一泊で別の町に移動したい。
「……」
「どうしたカンザさん?」
立ち止まって何やらずっと考え込んでいる。
「……生きてこのゲームから出れるかな?」
どうやらほんとにクリアして生還できるか不安になっているのか。
「……俺も正直不安だよ。
明日、モンスターので足を滑らせて死ぬかもしれない。
どこかでプレイヤー同士で争い始めてそれに巻き込まれるかもしれない。
誰もいつ死ぬかわからなくてビクビクしてるだろう。
それでも、俺は自分の全力をもってこのゲームを終わらせるために走り続ける。悔いが残らないようにな。
とりあえず、今はがむしゃらに進むことだけ考えとけばそれでいいさ。」
「……そうかな。」
「進んでたらきっとわかるよ。」
「早く来ないとおいてくぞー!」
町の入口からキリトの声が聞こえる。あいつ、待っといてくれたのか。
「さ、今はキリトに付いていって買い物するとしよう。ドロップ品はあるよな?」
モンスターを倒すといろいろな素材が手に入る。それを売り捌いてゲーム内通貨のコルを入手する方法の一つである。
「……うん!」
カンザさんの顔色もさっきより明るくなった。モチベーションは行動に直結するからな。
「んじゃ、行くとしようか。」
夕暮れ時、3人で装備や回復ポーションの購入をした。
流石に1000体以上倒したドロップ品を換金した額は序盤ながら少なくなかったのでいくつか購入したものを分けた。
そして、一夜を町の宿で過ごしたのだった。
アルゴ早めの登場。
次回は早速フロアボス戦です。レベルの暴力をお楽しみに。
最近、小説の頭に乗せている誰かの1幕は……
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アリ
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ナシ