悪役生徒になろうとしたけど出るタイミングを見失った   作:ミステイク

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第二話・泥だらけの聖人

 魔女教がどんな組織か、ですか?

 

 先生のことでしょうから深い意図はないのでしょうが、あまりそう言った質問は控えた方がよろしいでしょう。魔女様のことを探ってると思われて、彼女を信奉している生徒達に目を付けられるかもしれません。

 まあ先生なら大丈夫かもしれませんが。

 

 ……そうですね、連邦生徒会長の代行としての意見を言うなら手厳しくならざるを得ません。

 

 魔女教は表向き犯罪組織という訳ではありませんが、潔白な組織とも言い難いグレーな部分があります。他の学園の不良生徒や、退学生などを囲って面倒を見ているからです。

 

 そんなに悪くない? 良い事してる? ええ、私もそんな事は分かっています。

 個人的な意見ですが、各学園の悪質な不良生徒を更生させ、その暴走を抑えてくれている彼女には悪い感情はありません。

 ……この事は内密にお願いします、行政官として言って良い言葉ではありませんから。

 

 魔女教はキヴォトスのどの学園、自治区、企業にも属していない完全独立した組織で、他所の生徒を保護している以上は警戒も当然です。

 ……悪の組織っぽい名前は関係ありません。

 

 虚妄のサンクトゥム出現時にも大罪司教の多くが動き、その戦力が発覚してから他の自治区の生徒や、ヴァルキューレでも目を付けられているようです。

 とはいえ、飽くまでも様子見程度に留めているとかで……。

 

 どうしてそこまで知っているのか?

 心配しているの? と……。

 

 ……そうですね、これも行政官としての立場ではあまり良い発言ではないのでしょうが。

 

 今のキヴォトスがあるのは、彼女のお陰でもありますから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ、先生こんにちは☆! 今日は何しに来たの? 私に会いに来てくれたとか?

 えー、違うのー……トマレちゃん?

 

 うん、知ってるよ、友達だし。

 あの子あんまり人前に出てこないタイプだから、こっちから会うのは難しいんだー。

 

 コハルちゃんと同い年くらいなのに、シスターフッドみたいな教会を作って他の生徒達のお世話してるんだよー? 私ならそんな面倒臭い事、三日も持ちそうにないのに、良くやるよね。

 

 その癖、自分のこと魔女って呼んでさー。

 私の立場がないよねー? あ、本当に立場失った事とは掛けてないからね? 

 

 そ、そんな顔しないでよ先生……。

 

 他には? うーん、凄く優しいけど、凄くおバカなんだ。

 騙されてお金盗られても許しちゃうし、銃で撃たれても話し合いで解決しようとするし……私が酷い事言っても、なにも気にしてない顔して助けに来るし……。

 

 うん、カタコンベの時のことだよ。

 

 わざわざ私を助けに来て、謝らせてもくれずに帰っちゃったんだ……。

 え? 一緒に謝ってくれるって? あっはは! ……うん。その時はお願いするね。

 

 でも、きっと怒ってもいないんだろうなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 え? 私とトマレちゃんの関係?

 傲慢の大罪司教だから? ま、まだ船の時のこと憶えてたんですか!

 

 い、いやー、慕ってはいますけどそういう事を思うのは友達として変じゃないですか? 立場的にはトマレちゃんの部下って感じなんですけどね。

 

 いや、トマレちゃん魔女教の存在自体良い感情持ってないっぽいので、私達が勝手に下に付いてるって方が合ってるかな?

 

 魔女教はトマレちゃんが作ったんじゃなくて、周りの人達がトマレちゃんを助ける為に作ったんですよ。

 だってトマレちゃん、一人で放っておくと死んじゃうタイプですし。

 

 どんなに辛い仕事や戦いでも、全然私達に手伝わせないんですよー?

 

 だから私達が勝手にトマレちゃんを助ける会を作ろうとしたんです。

 呼び名も、最初は魔女教じゃなくてトマレ教とか聖女教にしようとしてたんですよ。怠惰さんが。

 

 でもトマレちゃん、案の定嫌がって、一人で戦うならトマレちゃんファンクラブを作る! って脅したら諦めてくれました!

 

 トマレちゃんの事が大好きなんだねって?

 

 当たり前じゃないですか先生! 私とトマレちゃんの大親友なんですから!

 

 時々、容姿がノア先輩と似てるのが偶に傷ですけど……ノア先輩いつからそこに!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うん、居場所がなかった私達に住む場所をくれた。

 ヒヨリとミサキも最初は怪しんでたけど、最近は慣れてきた。

 

 周りの人達も良い人ばっかりだから、此処ではゆっくり眠れる。

 ベッドもふかふかで、屋根に穴も空いてないから寒くもない。

 

 トマレのこと? あ、魔女様だっけ。

 

 あの子はね、無名の司祭の被害者だって他の人達は言ってた。

 ここはその人達と戦う為の組織でもあるんだって。

 

 詳しい話は聞かないけど、あの日、先生達が空へ行った時のと関係があるんでしょ?

 

 ……勘だけど、あの子は多分私と似てる。

 ベアトリーチェの時みたいに、先生とサっちゃん達のお陰で私は助かったけど……あの子には、どっちもいなかったみたいだから。

 

 ……お願いがあるの、先生。

 あの子を、トマレを助けてあげて?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この世界の常識を覆す、異能を持つ文字通りの魔女のような力。それは無名の司祭達による人体実験の果てにそうなったのです。

 その結果、魔女様は自分の存在を卑下して魔女と名乗り、光の世界を歩くことを戸惑う様になりました。

 

 魔女様は怪物となったご自身のことを魔女と呼び、卑下されています。

 

 しかし我々は魔女様が好きです。

 

 超人的な力を持ち、異形そのものと成り果てて、災害の如き力を持っていると言われても、それを含めて魔女様が好きなのです。

 

 彼女自身も、彼女が卑下する魔女の部分も含めて大好きなのです。

 故に、彼女もいつか自分を好きになってもらいたい、だから私達は彼女を魔女様と呼び続けるのです。

 

 な、なにせ我々は魔女様を、あ、愛して…………。

 

 こ、この話は良しましょう! まだ言う勇気がありません……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先生、ちょっとお時間……何してらっしゃるんですか?」

 

「“あ、うん。ちょっと気になる事があって調べものを”」

 

 シャーレの部室で当番をしていたユウカは、珍しく真剣な表情でパソコンの画面と睨めっこしている先生を見つける。

 

 勝手に人のパソコンを見るのは良くないが、偶々目に入ってしまったその内容が気になってついユウカは声に出してしまった。

 

「魔女教……ですか」

 

「“うん、知ってる生徒達にも話を聞いてたんだ。危ないものじゃないって分かったから、もう良いんだけどね”」

 

「ああ、なるほど。確かにセミナーでも怪しいカルト宗教だと調べていました」

 

「“え、そうなの?”」

 

 キヴォトスに来てから時々聞く魔女教や魔女という生徒について調べていた先生は、それがゲマトリアのような悪事を働く組織ではないかと不安に思い調べていた。

 

 直ぐに生徒の運営する部活の一つだと分かったので、もうそこまで不安視はしていないが。

 一際生徒に甘い先生が不安に思うほどの怪しい組織、他の学園の生徒達が調べてもおかしくはないだろう。

 

「うちのコユキが幹部の一人と判明してすぐにC&Cに調査を依頼したんです」

 

「あーなるほど」

 

 頭痛を感じるような顔をするユウカの表情を見て察する。

 ゴールデンフリース号でコユキと対峙した時のことを思い出す。

 

『私は魔女教大罪司教【傲慢】担当、黒崎コユキ。いざ尋常に勝負! いだッー!?』

 

 ミレニアム最高のエージェント、C&Cと先生の指揮で捕まえる事が出来たが。

 白兎のコードネームに違わぬ逃げっぷりと厄介さは今でも憶えている。

 

 まさか同校でも自他共に最強と認めるネルを相手に()()()()()()()()()()()()()()()のには、先生や他のC&Cも驚いていた。

 

「全くコユキったら、あんなに強いなら実働も任せておけば良かったかしら?」

 

「“それで、調査して何かわかったの?”」

 

「慈善事業やボランティアなど素人が調べられる程度のこと以外は何も……本当に名前以外は怪しさはないようです。囲っている周りの生徒達は別ですが」

 

「“そっかー”」

 

 魔女教なんて悪の組織っぽい名前、ゲマトリアよりもストレートに怪しい。

 だがリーダーの魔女様と呼ばれるトマレが善人らしい事は、集めた情報と出会った事のある生徒達と話をして分かった。

 

 それだけで十分だと先生は何も問題ないと判断する。

 

 しかし不安になる話も聞いた。

 無名の司祭、色彩と呼ばれる現象を利用して生徒達に害をなそうとする集団。

 ゲマトリアの敵対する勢力だという者達の手によって、トマレが酷い目にあったという。

 

「“……”」

 

 その話を聞いた時、先生は酷く胸を痛めた。

 思い出すのは、別の可能性を辿った砂狼シロコ。

 

 色彩の影響を受けた、プレナパテス、別の可能性の先生自身。

 

 人体実験を受けたというトマレも、その影響を受けているのかもしれない。異形そのものと成り果てて、災害の如き力と言われて、先生は嫌な予感がした。

 

 しかし、例えどんな状態であろうともトマレも生徒の一人。

 アツコに頼まれたからではないが、自分も何か助けになってあげたいと先生は思った。

 

 例え、本当に怪物そのものの見た目をしていようと、先生が導く生徒には変わりないのだから。

 

「“……私も会って話してみたいな”」

 

「そうですね、やっている事と言えば慈善事業が殆どでしょうから。でも、そんなに良い子がどうしてそんな悪そうな名前にしたのかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユウカの疑問に答えるなら、それは彼女が悪の組織を作りたかったからである。

 

「それで、先生が魔女様について聞きに来たの。会いたがってるみたい」

 

「そうですか……」

(その前に、凄く気になる話があったんですけど……。私……無名の司祭に改造されて、超能力手に入れたみたいな話になってるの? なんで?)

 

 訂正する必要もないだろうがあえて言っておこう。

 

 無名の司祭達とトマレの異能の力は無関係である。

 

 無名の司祭達本人が聴いていれば、無関係だと困惑することだろう。

 かつてのキヴォトスの主、白ローブ集団はとんだとばっちりである。

 

(無名の司祭、色彩と戦う為の組織? それどこのゲマトリアですか? 知らんよ私そんなの、私全然関係ないから!)

 

 計画していた魔女教の本部創設も、囲っていた仲間達の手によって勝手に作られた。

 魔女教の指揮権を含めた全ての実権は他の大罪司教のものとなり、実質的にトマレはお飾りのリーダー。

 執務も仕事も、命令する権利も彼女にはない。

 

 強いてあるなら命名権くらいか。

 

 トマレちゃんファンクラブなる組織名にならなかったことに安堵するべきと、当時のトマレは下唇を嚙みながら思った。

 

(誰が人体実験の被験者!? 司祭さん達冤罪だから! なに人に無い罪押し付けてんの!)

 

 悪役にも種類があるが、トマレは哀しき悪役など目指していない。むしろそういった過去とは無縁な、理不尽に暴力をばら撒くロクデナシの方。

 吐き気を催すような悪になりたいと思っている。

 

 ならず者を集めて巨悪と戦うなどという、どこぞの反逆皇子のような事はしていない。

 ギアスなんて持っていればすぐにでも自分は最低の悪役だと触れ回っていた。

 

(みんな一体、どういう思考回路してるんだろ……)

 

 本編が近づくにつれて段々と人数が増え、今では本編の登場人物達も少なからずメンバーに居る。

 

 良い人を演じ、仲間を集める為に他人を助け続けた結果、構成員の殆どは純粋に魔女であるトマレを慕うことになり。

 目的をキヴォトスを救うためと思い込んでいる。

 

 無名の司祭達がキヴォトス、というか生徒を滅ぼすという微妙に合っている部分もあるのがたちが悪い。

 トマレはその司祭達に改造され、怪人にされたという噂を真実だと思われている。

 

(ショッカーじゃないんだよ!? 誰が仮面ライダーだよ! 好きだけどさぁ! 一体全体どこからそんな話になった!?)

 

 信徒達とすれ違う度に心配そうな目を向けられる。

 

 まるで同じ宗教組織のシスターフッドの部長である歌住サクラコのようである。

 彼女と違うのは誤解される方向、人体実験の被害者的な扱いをされていること。

 

(色彩とか身に覚えがないし! そんなのと戦うとか言った憶えない)

 

 時系列は最終編を終え、カルバノグの兎が終わった頃。

 トマレは先生と敵対するどころか、未だに先生と接触したことがない。

 

 それは別にストーリーの邪魔をしないようにだとか、物語が破綻してバッドエンドを引くかもと思ったからだとかではない。その考えも少しだけはあったが。

 

 本当の理由は、出るタイミングが分からなかっただけである。

 

 信徒達の慕ってくれている感情を利用して、いずれ来る日まで聖人を演じた。

 先生と信徒達の間に作った信頼を裏切り、全ての黒幕登場みたいに出ようと計画して全部失敗した。

 

 彼女はその為の布石や伏線を先生の前で何一つ用意できていない。

 

 信頼を裏切らず悪行を成さず、善行に努めればそれは善人だ。

 聖人のふりを最後まで続ければ、それは聖人なのだ。

 

 故に全員がトマレの事を善人であると思い込んでいる。

 本当はただタイミングを見失っただけの、ポンコツであるとは誰一人気づいていない。

 

 トマレがアビドス編から、SRT編にほんの少しだけ介入した事はない、訳ではない。

 ストーリー外でのチャンスは幾度もあった。

 

 なのにこのバカはその幾度ものチャンスを見逃している。

 

(もういっそ、なんも考えず暴れ回ろうかな……)

 

 トマレはちょっと自暴自棄になりかけていた。




五人目に出てきた子はオリジナル生徒の怠惰ちゃんです。

ミカ、凄くおバカって本質突いてるのに正体には気付いてない。

前主人公との違いは先生と全力で関わろうとしてタイミングめちゃくちゃミスってるバカ。
共通点はヒーロー的行動をしてるということ。影響力はトマレの方が強いかもです。
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