悪役生徒になろうとしたけど出るタイミングを見失った   作:ミステイク

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第八話・勇者と魔女

 特異現象捜査部。

 キヴォトスで起きる今の科学では説明のつかない現象、事象を研究する、ミレニアムのビッグシスターによって作られた部活。

 

 苦手、という表現を超えて素直に嫌いと言える相手の要望で部長をしているヒマリだが、この特異現象そのものを分析することには興味がある。

 そして、今回調査するのは本来作られた目的とはあまり関係ないが、それでも特異現象と言えるもの。

 

 いや、特異現象というよりも特異現象を引き起こす者と呼ぶべき人物。

 

「凄いねこれ、年月が経って脆いとはいえ壁破壊して飛んで行った……」

 

 コンピューターの映像にあるのは、喪服の様な格好をした生徒が一瞬にして消える姿。

 

 スーパースローモーションで確認しなければ認識不能なほどの速度。

 初速から一瞬で音速まで到達し、75000メートル以上までカメラは観測。

 

 その後、ソニックブームを発生させ更に加速、方向を転換してカメラでは捉えることが出来なくなった。

 

「マイナス60度の超低気圧を受けてもなお、活動に支障がなく。更に加速するとは……慣性の法則どころか物理法則を無視していますね」

 

「どうするの部長? お話したいのに逃げたら意味がない」

 

 同部活の同僚であり後輩のエイミの疑問に、ヒマリもどうしようかと悩む。

 シャーレの先生、大人の協力もあって魔女教のリーダー、及びキヴォトス随一の特異生徒トマレの住居、とも言えない廃墟を見つけることに成功した。

 

 それまでトマレがどこで何をしていたのかさっぱり分からないが、恐らくはキヴォトスの何処かで人助けか何かしていたのだろうとこれまでのデータから分析している。

 先生は「喫茶店でお茶をしていたんじゃないのかな?」や、「誰だって休日は必要だからね」と言っていたが、微笑ましい考察だ。

 

「しかしどうしましょうか……こう軽々と移動されると追跡も困難、強引に捕らえるというのもしたくありませんし……」

 

「そもそもあんな事できる相手を捕まえるとか流石に無茶、それに何度も同じことを繰り返させるのはあんまり良くないと思う。相手は魔女教のリーダーだし」

 

 エイミの言う通り、キヴォトス最高位の謎に溢れた超人であるトマレだが、その一方で多数の危険人物を仲間に持つ表向き犯罪組織のボス。

 キヴォトスの事件に何度も介入し、良い方向に導いて解決するなどしている。

 立場に左右されず、思うままに他人を救う彼女に眩しい物を感じる者も居る。件のビッグシスターもその一人。

 

 話が逸れた。

 兎に角、特異現象捜査部、ヒマリ個人としても噂の英雄とは話をしてみたいと思っていた。

 キヴォトスで確認された最初の超能力者。噂ではトリニティのティーパーティーが予知能力を持つと聞いたことがあるが、確認が取れなかった。

 そういった事例を除けば、ヒマリが確認した限りで唯一の超人。

 

 少し前、エイミが異世界から来訪した異界の超能力者を連れて来た事がある。

 超能力者達は数日ほどで元の世界に帰った為、詳しい原理などは分からなかったが彼女達やエイミの後の説明から元居た世界よりも力が弱体化しているらしい発言をしていた事をヒマリは思い出す。

 

 これは証拠などないヒマリの直感に過ぎないが、トマレも異世界からやってきた異世界人である可能性がある。

 それならば、この世界の法則を無視した異能を行使していることも疑問はない。

 

「能力を使う度に寿命が減っていくという情報もありましたね」

 

 ある超能力者曰く、何度も使えないくらいには疲弊してしまうのだとか。

 それが力を使った事による代償だとするなら、トマレのそれは寿命という代償。

 

 多数の軍勢を吹き飛ばす力を持っていた超能力者のそれよりも遥かに圧倒的で多彩な力を持つが故の反動だとするならば。

 

「……」

 

「部長?」

 

「事実かどうか本人に確認を取りたいですが。事実であるなら、あまり刺激を与えるのは止めた方がいいですね」

 

「じゃあどうやって接触するの?」

 

 かなりデリケートな問題になってきたとヒマリは何時ものように余裕そうな笑みを浮かべながらも冷や汗を流す。

 

 あちらは自分を顧みない自己犠牲精神、究極の滅私奉公主義。

 何が理由か知らないが、接触しようとすると超能力を躊躇なく使って逃げ出した。

 

 正直、堪ったものではない。これではちょっとした話し合いすら困難だ。

 

「そもそも逃げた理由が不明です、他人と接触するのが苦手だというならどうやっても無意味でしょう」

 

 また超能力を使って逃げられるのがオチ、最悪寿命が来てその場で亡くなろうものなら彼女を慕う信奉者の手によってヒマリとエイミが殺される。

 

 それならばまだマシな方かもしれない。

 最悪、ミレニアムサイエンススクールという勢力がキヴォトスの歴史から消滅することになってもヒマリは驚かない。

 ヒマリも髪色と清楚系でキャラが被っているという点はあるが、善良なトマレには死んで欲しくはない。

 

 接触ではなく静観するのが良いか。

 それか、彼女が逃げ出すようなこともなく接触できる人物が居れば話は別になるのだが。かなり温厚な先生が接触を試みても逃げ出すほどだ。

 エイミは、初見で衝撃を受けるなと言うのは酷か。

 

「彼女と接触しても警戒されない、かつ友好的で打ち解けやすい方が……」

 

「パンパカパーン! ユウカに頼まれていた荷物を届けに来ました! アリス、サブクエスト完了です!」

 

「────高難易度クエストに興味はありませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 銀髪と白髪で近い色をしているのは兎も角、ヒマリは清楚系は被っていないので安心するべきだ。

 優れた知性を持つという意味でも、色々な意味で反対である。

 

「スランプだ……私は悪役の才能がないのかも……」

 

 問題児の天才は自らの過去を振り返り、自らの夢に悩んでいた。

 

 利己的で理知的、知性に優れた計画的な悪役、当然だがトマレには向いていない。

 暴力的、災禍を振り撒く理不尽な台風的な悪役、情に絆され易いトマレには勿論向いていない。

 

 邪悪の限りを尽くし、キヴォトスを地獄に突き落とす巨悪と成るにはあまりにも性根が腐っていない。

 いや、ろくでもない事を考えているのでちょっとは腐ってるかもしれないが、甘く評価して小悪党レベル。

 それでも多くの人々を救うという、凡そ目的とは正反対の成果をあげている。

 本当に悪事を成したいとは思っていないのでそれは別に良いのだが、悪事をしようとして失敗する、日和って諦めるなどは数知れず。

 

 トマレは自分がなりたい悪役が何なのか分からなくなる程のスランプに陥っていた。

 

「絶望的だ……」

 

 このまま真っ当な一生徒として、今からでもどこかの学園に入学して更生してくれないものだろうか。

 世界に意思があればそんなことを言ったかもしれない。

 

「…………というか此処どこ? 適当に降りちゃったからわけわかんないとこだと困るな……まあ迷子になっても気配探れば人は見つかるからそれで帰ればいい……か」

 

 そこで見た光景は、ある意味で全ての原点。

 物語の最初の舞台。

 

 世界を滅ぼした、あるいは消滅させた、そんな可能性を持つ者のいる場所。

 先生と、多くの生徒のお陰で、もうその可能性には至る事は限りなくゼロに近いが、狼の神の神秘を持つ者が居る学園。

 

「ホシノ先輩、あそこに誰か立ってる」

 

「ん~? ……」

 

「またヘルメット団じゃないでしょうね!? 見つけたらとっちめてやるわ!」

 

「ん、ヘルメット団じゃない。喪服みたいで……あの子に似てる」

 

 目が合った彼女と同じ銀髪の少女も、トマレの服装から同一の人物を想起していた。

 

 銀髪の少女の名前はアビドス高等学校二年。

 ブルーアーカイブの。

 

「銀行強盗さん」

 

「シロコちゃ~ん?」

 

「違う、知らない知らない」

 

「あ、間違えた」

 

 砂狼シロコ。

 並びに、アビドスの生徒達がそこに居た。




全裸より少ないんだね
銃持ってない人
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