夜を日に継ぐ 作:百三十二
思う様に話が書けない。語彙力が欲しいです
プログレッシブではなくIF準拠の場合ですが、想定ルートとの相違点は順次開示していくつもりです
「《幽霊》だなんて……モンスターの種類ですか?」
「それがなぁ……」
おそるおそる、と言った様に野武士面さんが話を続ける。
「第五層が解放されて直ぐにやってきたプレイヤーがな? がめついことに夜中まで宝探しにいそしんでたみてえなんだけどよ。プレイヤー表示のアイコンが出たり消えたりしたってんで、何かのクエストじゃないかって騒ぎになってるらしいんだわ」
「ああ、本物って訳じゃ無いんですね……」
野武士面さんが説明をすると、おねーちゃんがあからさまにホッとしていた。苦手だもんね、幽霊。
それよりも、あたしとしては野武士面さんの背後が気になるんだけど。
「ところがな? 話はこれで終わりじゃ無くて──」
「なーに話してるんダ?」
「うおぉぉぉぉぉぉっ!?!?」
「きゃぁっ!?」
あ、野武士面さんが驚いたのにおねーちゃんが釣られて悲鳴をあげた。
そんな情けない大人の背後に目を向ければ、誰か近づいてきてるとは思ったけどネズちゃんだった。おねーちゃんまで驚かせるつもりは無かったのか、ネズちゃんは罰が悪そうにしながら声をかけてくる。
「何か悪かったナ……サヨまで驚くとは思わなかったヨ」
「いえ……私が未熟なだけですから……」
「未熟って、何がサ……」
ネズちゃんの謝罪に対するおねーちゃんの返しにツッコミが入る。恥ずかしさで顔を赤くしてる姿は可愛いと思うけど、その返事は何処か斜め上じゃないかなとあたしでも思う。おねーちゃんらしいけど、流石に未熟で片付けるのは無理があるよね。
「ゴホン……それでアルゴさん? 何か用がありましたか?」
「見知った面子に野武士面が加わっていたからナ。変な組み合わせだと思って気になっただけだヨ」
あ、ネズちゃんもクラインさんのことを野武士面だと思ってるんだ。やっぱりそう思うよね。
「んだよ、情報屋じゃねーか。てか、おたくら知り合いだったの?」
「ゲーム開始二日目からの付き合いサ。で? 《幽霊》ってワードが聞こえた気がしたんだガ?」
「おうよ。このクライン様がそいつの正体を暴いてやろうって魂胆だったんだが、運悪くトラップに引っかかっちまってな。そんで逃げ回ってたところを助けて貰ったって訳よ」
「バカだろオメー……」
ネズちゃんが呆れた様に野武士面さんを白い目で見る。実際問題ソロでやることじゃ無いと思うけど、何か理由でもあるのかな?
「お前さん、どうしてまたソロでそんなことしてたのサ」
「一言で言っちまえば、『勇気』が欲しかったんだよ」
訝しむネズちゃんの問いに、野武士面さん改めクラインさんは真面目な表情でそう言った。
「仲間の野郎共と頑張って戦える様にはなったけどよぉ? 最前線まで行けるかってなったら、まだ足踏みしちまうってのが現状だ。元々は資金繰りの為に宝探しのつもりだったんだが、《幽霊》の話を聞いて居ても立っても居られなくなっちまった」
そう語るクラインさんの表情は硬い。相当な冒険だったという自覚はあったみたい。
「さっきのでバレたと思うが、オレはお化けが苦手だ。そしてそれは仲間も知ってる。だからよ、そんなオレが《幽霊》に立ち向かったって事実がありゃ、少しは勇気づけられると思ったんだよ。まぁ、自分でも無茶だったとは思うけどな」
ガハハと笑う姿は豪快で、見てて気分が良かった。
「それで死んじまったら意味ねーだろうガ。これに懲りて少しは自重しろってナ」
「そうさせてもらうぜ。自分でも勇み足だったことは理解してるしな」
ネズちゃんが諫めるけど、決して咎める様な物言いではなかった。仕方ないものを見る様な、生暖かい奴だ。
年下が年上にっていうおかしな構図だけど、多分クラインさんの人柄がそうさせてるんだと思う。
実際、危険な目に遭ったのも私欲じゃなくてお仲間さんを想ってのことで、そこに嘘は無さそうだった。この人は誰かの為に苦手を克服しようと決心したんだ。
行為そのものは無謀でも、そうしようと決意したこと自体はかっこいいと思う。それに騒動の解決には繋がらなくても、既に勇気は示せたんじゃないかな。後はそれが蛮勇にならなければ完璧なんだろうけど。そこは今後、これからのクラインさん次第ってことで。
「で? 情報屋のオメーさんの方はこんな所で油売ってていいのかよ?」
「言ったロ? 見知った顔が集まってたから寄っただけだってナ」
今度はクラインさんがネズちゃんに問いかけた。そう言われてみれば、情報のやり取りを生業にしてる彼女が遺跡エリアをワケも無く徘徊してるというのは疑問だ。訊かれた当の本人はあっけらかんとしていたけど。
「ま、野武士面のヤローと似たようなもんだヨ。βテストの時には存在しなかった《幽霊》、その正体を探っていただけサ。もしクエストの類だってんなら、情報屋としては見過ごせないしナ」
「《幽霊》に関する目撃情報から、何か絞り込めたりはしないのかね?」
ネズちゃんが目的を告げると、今まで静観していたおじさんが質問を投げた。おじさん的に何か気になることでもあったのか、茶化すような気配は一切無い。
「分かってることは『プレイヤー、或いはNPCである』『ゴーストみたいに実体化と透明化を繰り返している』ことくらいだナ。強いて言うなら『プレイヤーから逃げる様な行動を取る』くらいカ」
「ふむ。そもそもの話、プレイヤーが物理的に透明化出来るかどうかという疑問点がある。そこのところはどうなのかな?」
「あるヨ。この階層でしか効果は無いが、モンスターから襲われなくなるアイテムとしてナ。でもそれだとして、その場合は……」
「十中八九、元βテスターって事だよね」
二人の会話を聞いてあたしが結論を出すと、場の空気が一旦静まる。
発見された《幽霊》の姿は一人、つまりソロだ。
今、この最前線をソロで駆け上がっているフロントランナーは存在しない。精々がアスナちゃんと行動しているであろうキリトくんくらいだし、今はデュオというかペアというか、とにかくソロでは無い。
そうなると、仮にその《幽霊》がソロプレイヤーだったとした場合、踏ん切りがついて駆け上がってきた新進気鋭のソロプレイヤーか、それとも裏で暗躍を繰り返していそうなオレンジプレイヤーの仲間か、はたまたどちらにも該当しない誰かか。
第三の選択肢に当てはまる人が一人だけいる。だけどその人だったとして、何故そうしているのかが見当つかない。何にしても、《幽霊》の正体を暴くというのはプレイヤー間の安全面を考慮して早急に行われなければならないだろう。
「それだダ。今ここにいるヒナとサヨ、ヒースクリフにクラインの4人に情報屋《鼠のアルゴ》として正式に依頼を言い渡したイ。引き受けてくれるカ?」
ネズちゃんがあたしたちに依頼するという形でお願いをしてきた。
実のところ、今回の件はあたしたちにとっても無関係ではいられない事態だ。おねーちゃんがお化けを苦手にしているのは分かっているけど、それを押しても解決すべき案件だと思う。
それを理解しているからか、おねーちゃんの強張っていた表情が一転してキリッと真面目なものになっていた。正体さえ暴いてしまえば怯える必要も無いと開き直った可能性はあるけど、それならそれで大丈夫だと思う。
「私は構いません。《幽霊》が何者なのか、この目で見定めてみせます」
「あたしもいいよ。気になると言えば気になるしね」
「となれば私に異論は無い。元より二人の決定に従うまでだ」
おねーちゃんが受け入れ、あたしが追随し、おじさんが付きそう。そうなると残りはクラインさんだけど、特に問題は無さそうだった。
「へっ、ここに来て逃げるもんかよ。最初からそのつもりだったんだ、最後まで嚙ませてもらうぜ」
「ヨシ。じゃあオイラの作戦を伝えるゾ」
四者四様の返事を聞き届けたネズちゃんは満足そうに頷き、その口端を得意げにニィッと吊り上げた。
(《幽霊》だけにゴーストバスターズ結成! あ、これだと消滅させちゃうからハンターくらいが良いのかな?)
ちょっと不謹慎だけど、あたし的にはワクワクする展開になった気がする。勿論、油断や慢心は絶対にしないけどね。
☆
《幽霊》の正体を看破するべく、アルゴの作戦に乗っかった紗夜たち4人。
以下、アルゴの作戦はこうである。
1.第五層は《地上遺跡エリア》と《地下墓地エリア》、そして《地下ダンジョンエリア》に分かれている。その為、《幽霊》の捜索に当たってはチームを複数用意する必要がある。一つは紗夜、日菜、ヒースクリフ、クラインからなるパーティーであり、アルゴの計らいでエルフクエストを兼任する地下墓地へと赴くことになった。
なお、もう一方のチームはキリト、アスナを筆頭にエギルのギルドに依頼する手筈になっている。キリトとアスナの二人であれば既にエルフクエストをある程度進めており、地上遺跡に割り当てて丁度いいくらいだろうとはアルゴの言である。
2.《幽霊》の正体はβテスト上がりのプレイヤーという前提で動くこと。あくまでもNPCであるか否かが最優先事項であり、《幽霊》が悪意あるプレイヤーだった場合は即時撤退を心掛けること。
3.透明化マントについてはアルゴが該当クエストの攻略を担当するが、βテストと変更点が無ければ遺跡での進行になるため、先にキリトらへの接触と協力を取り付けてからにすること。
4.合流は二日後となる12月30日の正午に、第五層迷宮区入口前の噴水広場で。成果が無くても合流することを厳命し、地下ダンジョン探索は2チーム合流後に行うものとする。
5.いのちだいじに
となっている。言わば地上と地下の二正面作戦ということになるが、ここ第五層は地下墓地エリアや地下ダンジョンの存在によって外見以上の広さを有しているので、捜索範囲を全面的にカバーするには圧倒的な人手不足である。それを理解しているアルゴは、《幽霊》がβテスト出身者でなければまず知りようのない攻略ペースを維持していることに賭けて、紗夜たちをエルフクエストの
もし既に攻略しているというのであれば、これから会うキリトらが何か見ているかもしれない。そういうアテも兼ねた情報屋としての手腕には紗夜は勿論のこと、β時代から知っている日菜も舌を巻いていた。
なお、5項目目に関してはゲーム好きならば誰でも知ってると思ってかアルゴなりに緊張をほぐす為のジョークとして交えられたが、紗夜と日菜の二人にだけは伝わらなかった。世代では無いのかもしれないが、姉妹は少しだけ疎外感を覚えたという締まらない一幕があった。
さて、アルゴの依頼を受けて地下墓地へと向かう4人。道すがら、エルフクエストとはなんぞやとクラインが質問するという一幕を挟みつつ、ダンジョンや迷宮区とはまた別の地下へと降りる為の入口と階段の前へとやってきた。
「アルゴさんが言うには、墓地を進んでいけば勝手に始まるとのことですが……」
紗夜がそう確認しつつ、先頭のヒースクリフが地下墓地へと通じる階段へと足をかけた。
殿をクラインが務める形で降っていく一行。向かう先が死者を弔う場所だからか、冷たい空気が吹き抜けていくのもあって雰囲気があった。紗夜とクラインの表情が硬くなる一方、日菜とヒースクリフは異様な気配を感じ取っては階段の先を注視していた。
日菜は感覚を拡げ、ヒースクリフは想定と違う一種の騒々しさを察する。二人の共通認識は、何かの数が多いというものだった。
「既に何か起きている様だな」
「何かがいっぱいある……もしかしたら、
ただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、これには《幽霊》どころでは無いと身が引き締まる紗夜とクライン。フロアへと降りていく階段の段数がやたら多いと思いつつ、その歩みが少しだけ早まっていった。
「カタコンベを想像していたのですが……」
「そりゃアレか? ヨーロッパの方でみられる、洞窟みてぇな墓場のことか?」
「元々は教会の地下に作られた埋葬場所だそうですが、その内に死者を葬る為の洞窟や洞穴を指すようになったとか。有名所なんかは観光地にもなってますよ」
やがて辿り着いた景色を見て紗夜が口走り、クラインが応じる。テレビの歴史紹介番組などで目にしたことのある光景を想像していた為に言葉が出た。
だが紗夜は、彼女の知識の中のそれと比べて思ったことを告げる。
「ですが……何だか整備され過ぎていると言いますか、墓地と聞かされていた割には墓標らしきものが見当たりませんし」
この地下墓地、墓所と言う割にはレンガ造りで整備されていたりとかなり人の手が行き届いている様に見える。紗夜の言った通り、墓標らしき目立つ物体も確認されなかった。
彼女たちのイメージからしてみれば、この墓地はあまりにも綺麗過ぎた。地下の薄暗い空間を蝋燭の火が照らしていたりと雰囲気はまさしくそれなのだが、どうにも迷宮区の気増し程度にしか思えなかったのである。
もっと墓標が乱立していたり、それこそ誰かの骨が落ちていたりといった
だが事はそう単純では無い。
地下墓地のエリアへと足を踏み入れ、その空気に呑まれることが無かったのは喜ばしい。しかし直ぐ様、ゴースト系とは別の透明感がある敵や、明らかに地上の遺跡エリアよりも大きいゾンビ系の敵が徘徊しているのが視界に映る。
そして日菜やヒースクリフが懸念していた通り、その数が尋常ではない。遺跡で戦ってた時の湧き具合を1とした場合、少なく見積もったとしても見える範囲だけで10倍近い数が索敵スキルによって検知されていた。
これだけ湧きが良ければ、大人数による経験値稼ぎにはもってこいだろう。数に数をぶつければ安易に囲まれることもなく、申し分ない効率を叩き出すことが出来たに違いない。
しかし今はたかだか4人である。囲まれる心配もそうだが、何より倒し切るだけの手数が不足している。更にクラインは、最前線を走りきれるだけの経験と実績が欠けている。他の3人についていけるだけの実力があるかと言われれば、現時点では首を横に振らざるを得ない。
今の彼に出来ることと言えば、弓を扱う紗夜の護衛に回ることくらいだった。それでも十分なのだが、眼前の敵の数を考えると些か物足りなくなってしまっていた。
突破口が無い。その上、この地下をどう探索していけば良いのかも不明瞭と来た。《幽霊》の件どころかエルフクエストの続きすらも危ぶまれた、その時
「誰か近付いて来る……!」
感覚を研ぎ澄ませていた日菜が、モンスターとは違う気配を感じ取ったのか警告した。索敵スキルに反応しない、目視も通用しない透明な相手に対して俄に警戒心が強まる4人だった。
「待て、私だ。キズメルだ。……驚かせるつもりは無い」
「「キズメルさん!?」」
が、4人の近くまで寄ってきた際に、日菜の視線の先から聞き覚えのある声が上がった。何も無い空間から手が覗かせたかと思えば、モンスターに見つからない位置まで寄ってきた後に被り物を脱ぎ始めた。するとそこには、エルフクエストにおける最重要人物でもある黒エルフの知人が姿を現した。
ここで合流するとは思ってなかったのか、予想に反した双子の声が重なる。キズメルの仕草から、彼女が透明化を果たしていたのはアルゴが言っていたマントなのだろうと推測を立てた紗夜は、思わぬ出会いに面食らいつつも訊ねた。
「どうしてこちらに?」
紗夜の問いは二つの意味を持っていた。一つは単純にキズメルがここにいる理由、つまりはエルフクエスト関連の話だ。
そしてもう一つは、何故墓地の奥ではなく入口で邂逅したのかという疑問だった。そうと知らず日菜が警戒したり、姉妹が揃って驚きの声をあげた原因になるが、4人はキズメルとの合流は墓地の奥地でだとアルゴから聞かされていたからというのがあった。
そのせいでキズメルがここに来るとは思ってなかったのである。アルゴのサプライズだったとしたら、してやられたと言うものだろう。日菜はアルゴに対してささやかな仕返しをすることを決意した。
尤も、情報屋の彼女にそのつもりは一切無い。キズメルとの合流は地下墓地の奥の方だという情報に嘘は無かった。ただ、4人がイレギュラーに巻き込まれただけである。
そうとは知らない紗夜の質問に、キズメルは神妙な顔で答えた。
「フォールンたちが良からぬ企てをしていると聞いてな。斥候たちの入手した情報によれば、この地下で不穏な動きをしているとのことだ。見ない顔もいる様だが、そなたらの方こそ何故か?」
「ちょっとした怪奇現象を突き止めようとしていたと言いますか、《幽霊》が本物かどうか探っている所です」
「ほう? 中々面白いことになってる様だな」
紗夜の返事に、キズメルが関心を示す。どうやら彼女はオカルトの類は恐れるどころか解き明かそうとするタイプだったらしい。
「して、その《幽霊》とやらはこの先にいるのか?」
「分からないので、他の方と手分けしてるんです」
「なるほど。そなたらがこちらを担当した、ということか」
「そうなります。私たちとしてはキズメルさんたちで言うところの異界の民だと思っているのですが、万が一そうで無かった時のことを踏まえて行動している、と言ったところです」
「ならば《幽霊》とやらが、フォールン共の仲間である可能性も」
「捨てきれない、と思います」
二人の会話はスムーズに進み、やや突発的だが第五層のエルフクエストが始まった様子を見せる。傍から聞いている3人の内、日菜とヒースクリフはいつものことだと二人の会話に聞き入っていた。しかしエルフクエスト自体が初見のクラインからすると、プレイヤーと遜色ない言動を取る美人が登場したことに面食らい、流暢に会話していることから従来のゲームとは違うという事を今になって実感していた。
「本っ当に、よく出来てるもんだぜ……」
「そう思うかね?」
思わず漏れた感嘆の言葉に反応したのは、ヒースクリフだった。
「嬢ちゃんと会話してるのを見てるだけでも、ありゃ同じ人間と話してる様にしか見えねぇ。あれでNPCなんだよな?」
「そうだよ。キズメルさんはプレイヤーじゃないよ」
交渉事は姉に任せているので、手持無沙汰なのか日菜も会話に交ざってくる。
「それに、やたら仲が良いみてぇだな。あの二人」
クラインの視線は、既に交渉というよりは談笑になっている二人へと向けられた。
「おねーちゃんとキズメルさん、二人とも真面目だから気が合うのかなって」
「それにしては、あっちのダークエルフの姐さんは凄い優しい表情な気ぃするけど?」
「分っかんない。初めて会った時からあんな感じだったけど、キズメルさんがおねーちゃんに対してシンパシーを感じてるってことくらいだよ、分かったのなんて」
日菜としても、これまでの共闘を抜きにしてあそこまで好意的に接して貰える理由について察しがついていない。姉が仲良くするのは良いことだが、どうにもむず痒い感覚を覚えて落ち着かない様だ。
始めは姉に対する独占欲かとも思ったが、どうやらそういったマイナスの感情では無いと彼女が気が付いたのは最近の事である。
「ヒースクリフの旦那は? 何か分かったこととかあったりしないんで?」
「正確なことは私にも分からんよ」
クラインがヒースクリフに話を振るが、即座に首を横に振って否定される。
しかし彼は「だが」と一つ前置きをしてから、彼なりの考えを述べ始めた。
「彼女が君たち姉妹に向けている感情が、それぞれ別のものだという事は分かっている。姉の紗夜君に対しては共感を、そして妹の日菜君に対しては……懐かしさ、だろうか」
「「懐かしさ?」」
思わぬ言葉に、疑問の声が重なる。
その返事に対してヒースクリフはフッと苦笑いを浮かべたかと思えば、片手を胸の位置まであげながら諭すように告げる。
「キズメル君は日菜君に対し、ここには居ない誰かの面影を重ねている様に見える。何も君自身を全く見ていない訳ではないが、その後ろに別の誰かの姿を幻視している気がしてね。そこに乗せられている感情が、何かを懐かしんでいる様に思えてならないのだよ」
「あたしを通して……?」
その見解は思いの外、日菜の心にストンと落ちて行った。腑に落ちた、といった表現が正しいだろう。
自分を通して誰かを見ている。それは恐らくだが、既に故人なのだろうと察しが付く。キズメルからの視線が、姉から向けられるものと何処か似通っていたことへの説明がつく。
事ここに至って、日菜は一つの結論に辿り着いた。
(それじゃあ、キズメルさんが最初からあたしたちに対して友好的だったのって、あたしたちの境遇をキズメルさんの過去に重ねていたからってこと……?)
そうだとしたら、日菜たちの知らないキズメルの過去とはつまり
(キズメルさんには妹か弟がいて、この人自身はお姉さんだったの?)
要するに彼女は自分を紗夜に重ね、今は亡き弟妹を日菜に重ねていたという事である。そしてやたら友好的で、それこそ今でさえ事前情報よりも接触が早いというのは
(あたしたちがキズメルさんたちの二の舞にならない様に、可能な限り介入してくれてるの?)
その結論を前提に考えれば、日菜はこれまでの言動に対して得心がいっていた。
それと同時に、姉とはそういうものなのかと、一種の諦観が混じった。
(姉の心、妹知らず……なんてね)
妹が姉二人に向ける視線は嬉しいやら悲しいやら、複雑なものになっていた。
アルゴの依頼という形で地下墓地エリアへと赴くことになった4人。そこで合流したキズメルを加え、いざ墓地攻略へ
〇クラインの勇み足
そのまんま。ちょっと余裕が出てくると前のめりになりがちの一例。今回の失敗を経て、彼はリーダーとして立派に成長する、はず
姉妹がこの手の失態を犯さないのはお目付け役がいるからというのもあるが、紗夜の性格的に無茶を通すだけの能力が無ければ実行しないからというのもあるし、この状況下であれば日菜は紗夜から離れないので結果的に同じ
〇《幽霊》の噂と憶測
仮にプレイヤーだとして現状では最前線の第五層をソロで活動している時点で絶対ヤバイ。せめて敵か味方かの判断くらいつけたい、というのが共通認識
でもこの階層で本当にヤバいのは《幽霊》の正体じゃなくて……
〇いのちだいじに
残念ながら紗夜と日菜にはネタが伝わらない
〇地下墓地エリア
本当ならエリアに入って少ししないと敵も湧かないし、うじゃうじゃ出てくることもあんまり無い。なのに入る前から敵の気配を感じるくらいには大量に湧いてるし、ただ奥に進むのも一苦労な状態。入り口付近でキズメルと邂逅しなければ撤退視野は妥当だった
このエリアになると人魂系の敵とか出てくる。言い方的にはアストラル系になる、んだと思う
第五層のエルフクエストはこのエリアで進行する。雑に言えば何か企んでるフォールンたちを見つけて阻止しよう、って感じ。要するに戦闘は避けられない
〇日菜の推察
大体合ってる