夜を日に継ぐ   作:百三十二

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一応戦闘はあるけどあっさりしてます。この章のメインはそっちじゃないので……




竹林での救出戦

 

 

 

 

 待ち人が到着するまでの間、アルゴと別れた3人は小江戸ならぬ第十層主街区の城下町をぶらりと散策して時間を潰していた。食べるとほんの少しだけバフがかかる三食団子をいただいたり、自分たちが生まれるよりも最低400か500年以上は前の時代の景観を楽しんだりと、思いの外暇潰しには困らなかった。

 

 攻略組ではない下層のプレイヤーたちも足を運んでいる姿が見られたりと、どうやらこの城下町は大勢の人が興味をそそられるものであったらしい。それに対して何処となく満足そうな様子のヒースクリフがいたとか。

 

 偶にはこんな風に、仮想空間に用意された仮初の世界を謳歌するのも悪くない。そう思わなくもない紗夜だった。

 

 

「よっ、久しぶりだな嬢ちゃんたち! ヒースクリフの旦那も壮健そうで何よりだぜ!」

 

 

 そしてアルゴとのやり取りを終えてからおよそ数時間後、その男は待ち合わせ場所の転移門広場に現れるなりそう挨拶してきた。

 

 他でもない、赤いバンダナがトレードマークで日菜曰く『野武士面』の男性であり、自身も1PTギルドのリーダーを務めるクラインその人だった。転移の光が収まるなり3人を見つけた彼は、相変わらずの快活振りを見せつつやって来た。

 

 

「お久しぶりです、クラインさん。第五層以来ですね」

 

「おう。嬢ちゃんたちも相変わらずの活躍っぷりだろう? あの時一緒に戦った年下の子は凄かったんだって、仲間に自慢出来たぜ。おかげさまで、あいつらも少しは気力を取り戻して最前線を目指し始めた。改めて礼を言わせてくれ」

 

 

 そう言って彼は頭を下げた。尤も、彼の仲間たちも例によって異性に目が無いので、腐ってないでそんな子たちに良いところを見せたいという欲望もあったことは伏せていた。とはいえ、理由はどうあれ年下が頑張っているのに奮起しなくてどうするんだという漢気の方は高い割合を占めていたことは、彼らの名誉のために添えておく。

 

 

「最前線に来るの?」

 

 

 態々クラインが一人で来たことからそうでないとは察しつつも、確認を兼ねて日菜がそう問いかける。

 

 

「いんや。何だかんだで出遅れた分は埋まらなくてよォ。もうちょい時間かかりそうなんだわ。ま、そう遠くない内に肩を並べてやっからよ、席開けといてくれってな」

 

「それはディアベルさんに言ってください。枠という意味では、義勇軍の方々で埋めているのが現状ですので」

 

 

 そうクラインがおどけると、紗夜が実情を伝える形に。それを聞いた彼は一瞬だけ目を丸くすると、何かの納得と共にグーとパーにした手を胸の前でバチンと突き合わせてギラついた。

 

 

「っし! そんときゃあの優男に殴り込みだな!」

 

「ず、随分と過激ですね……」

 

 

 彼とディアベルの間に起ったことを知らない姉妹からすると、何の事か分からず本当に殴り込みでもするんじゃないだろうかという勢いの意気込みだった。大人の男性による軽い豹変に面食らった紗夜は思わずそう溢し、日菜はこれが男の人同士の友情かと新しい発見をしていた。

 

 

「で、だ。また世話になるってことで良いんだよな?」

 

「ええ。アルゴさんからはその様に聞いています」

 

「カタナと聞いて黙っちゃいられなかったけどよォ、オレらはどうすりゃ良い訳?」

 

「それも既に」

 

 

 念を押す様なクラインだったが、思っていたよりも至れり尽くせりの状況に少しだけ驚愕した。

 

 そして彼は記憶を辿り、そう言えばあの情報屋はこの姉妹に対しては非常に親身になっていたなと得心する。

 

 

「何だ、鼠の奴も用意周到じゃねぇの」

 

「ネズちゃんはあたしたちに少しでも情報を売りたいんだよ。じゃないと貰ってばかりで苦しいって」

 

「お、おう……」

 

 

 などと感心していたら日菜がそう言うものだから、鼠も苦労しているんだなと軽く同情するクラインだった。さしもの情報屋とて、相手が悪かったということか。

 

 逆に言えば自分はカモなんだろうなと思い至り、少々気落ちもしたが。

 

 

「城下町を出て道なりに進むとダンジョン代わりの竹林が見えてくるそうです。そこに隠しボスが湧くそうなのですが、その条件を満たす際にモンスターを複数倒すことになるので熟練度も上げられるかと」

 

「隠しボスったぁ、腕が鳴るじゃないの」

 

「今回は私とヒースクリフさんで盾役が二枚の安全策を取ります。如何せんβテストの時よりも隠しボスが強化されている可能性も考慮しなければなりませんので」

 

 

 チラリと紗夜が後方のヒースクリフへと視線を向ければ、首肯が返ってくる。それを見ていたクラインはやる事を理解すると共に、一つの疑問を浮かべていた。

 

 

「そーいやサヨの嬢ちゃんは弓じゃねぇんだな。あれから代えたとか?」

 

「元々こちらが本命ですよ。あの時はその方が都合が良かったから、ということにしておいてください」

 

「はー……えらい器用なもんだ……」

 

 

 彼が紗夜と会った時、彼女は弓を装備していた。にも拘らず今は剣と盾を装備している上に、作戦上もそれが前提で話が進んでいたので気にかかっていた。

 

 特にクラインからしてみれば、第五層の地下墓地で大量のモンスターを相手に大立ち回りをした時の印象が強すぎた為、その際に更にインパクトのある一射を紗夜が見せたこともあって彼女の武器に対する先入観は非常に大きかった。それ故に、紗夜の装備が見慣れないものであることに違和感を覚えていたのだった。

 

 そんな疑問に対して当の本人が特に意に介した様子もなく告げてきたので、クラインは年下の少女に対して見当が合ってるかどうか微妙な賞賛の言葉を贈ると同時に、少しだけ畏怖した。

 

 アルゴの件もそうだが、この姉妹は揃って底知れなさ過ぎやしないだろうか。味方である分には心強いこと間違いないので、これからも真っ当な人付き合いをしていきたいものだと彼は考えた。というより、彼は既に一度やらかして妹の方にドロップキックをお見舞いされているので、不評を買う様な真似をしてはいけないと彼の仲間たちに忠告しておこうと密かに決意していた。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

「とりゃぁ!」

 

 

 クラインさんと合流した私たちは挨拶もそこそこに、アルゴさんから教えられた隠しボスが出現するという竹林エリアにやってきた。見上げても先端が見えないくらい高く真っ直ぐ伸びていて、その合間に用意されている道を歩いていく。藁で出来た柵を無理やり超えて竹林の中に飛び込んでしまえば最後、元の道に戻る事は困難だからやめておけという忠告を胸に、度々訪れる開けた場所を順繰りに巡っていった。

 

 道中は『はぐれ』扱いのモンスターが散見するだけで、特に危険な様子は無かった。熟練度の都合もあって主にクラインさんが攻撃出来る様に立ち回りつつ、3人でサポートに徹していたくらいだ。

 

 それとは別に気になったのが、登場するモンスターが狛犬の他に蛇型、というか蛇のモンスターがいたことだろうか。詳細は聞きそびれてしまったが、主街区でもある城下町に存在するお城の名前は《千蛇城》だと言っていたはずなので、もしかしたら蛇もモチーフの一つに含まれているのかもしれない。

 

 

「しかし……あまり見かけませんね、黒い狛犬」

 

 

 そういった中で、目的のモンスターに中々出会えずにいた私が思わずそう溢してしまう。

 

 今回の目的の一つである隠しボスの暫定出現条件が、白い狛犬に紛れて出現する黒い狛犬を規定数倒すのだと聞かされている。故に同じ狛犬型モンスターでも今しがた倒された白では意味がない。

 

 

「誰かに先越されちまったとかかねぇ?」

 

「可能性としては、普通にありえそうですね」

 

 

 クラインさんの意見は至極もっともでもあり、当然ながら隠しボスもリソースの一種である。アルゴさんを頼らずとも、ボスの情報を入手していたプレイヤーがいたとしたら討伐に赴くこともあるだろう。

 

 どういう理由があるかは不明にしても、早い者勝ちという一面もあるSAOにおいて躊躇している暇は無いという思考に囚われてしまう可能性だってある。仮に先を越されていたとしても、悪質でなければただ無事であることを願うばかりである。

 

 

「して、どうするかね? 黒い狛犬の討伐が為されなければ隠しボスは出現しないのであろう? このままではその姿を拝むことすら叶わなくなってしまいそうだが」

 

 

 このまま竹林に籠っていた所で目当ての狛犬に出会えるかどうかは未知数だ。それを見越したヒースクリフさんが撤退も視野かと遠回しに提案してくれたが、私は首を横に振って否定する。

 

 

「いえ、まだ続行します。隠しボスもそうですが、元はと言えば《カタナ》スキルの為にクラインさんの熟練度上げの方がメインでしたので。幸いにも、最前線に常駐している訳ではないクラインさん一人でも概ね何とかなると分かっている現状を捨てる程のことでもないかと」

 

 

 あくまでもメインは熟練度の確認である。そしてこの竹林エリアは通路に一度で大量に湧くことが無いので、多少レベルが落ちるはずのクラインさんでも余裕をもって立ち回れていた。言ってしまえば、彼にとっての狩場としては十分なのだ。

 

 黒い狛犬は出来ればの話に留めておいて、メインの目的を優先する為に撤退するつもりは無かった。ましてや、クラインさんでも戦えるとはいえここが最前線であることに変わりはない。私たちにも十分な経験値が入ってくるので、単純なレベリングと考えても良かった。

 

 熟練度とレベリングの時点で二兎を追えてしまっているので、流石に三兎目の隠しボス云々は都合が良すぎるとも捉えられる。よって私としては、別に一石二鳥というだけでも満足していたりする。

 

 

「ではその様にするとしよう。少々余計なことを言ってしまったかな?」

 

「そんなことはありません。気づかない内に踏み込み過ぎている可能性もありますし、ブレーキ役というだけでありがたいです」

 

「誉め言葉として受け取っておこう」

 

 

 実際、私も熱中し始めると突き進み過ぎてしまうきらいがある、らしい。あまり自覚は無いが、ギターを弾くのに夢中になり過ぎて日菜が部屋に入ってきたことに気が付かなかったことはある。だからこうして一度、ふと冷静になるタイミングを与えてくれるヒースクリフさんの進言は大いに助かっている。

 

 一度でも体力をゼロにしてまえば終わりなのだから、気をつけ過ぎて駄目ということは無いだろう。年上からの忠告は、素直に受け取っておくものである。

 

 

「とはいえ、一度休憩にしましょう。どれくらい熟練度が上昇したかも気になりますし」

 

「心強い護衛が3人もいる様なもんだからよォ、非常にやりやすかったぜ。普段よりも攻撃を叩き込みまくった自信があるくれぇよ」

 

「それは重畳ですね。数値の方も確認して──」

 

 

 

 

 

 ────誰かッ!

 

 

 

 

 

「「「!」」」

 

 

 そうして一息付こうとした私たちの耳に、突如として他のプレイヤーの切羽詰まった声が飛び込んできた。

 

 距離としては、恐らくこの先の小さくだが開けた空間からだから近いと言える。助けを求める声に無意識で反応しかけたところで

 

 

「この様な場所で声がするとは……PKの可能性も捨てきれないが、どうする?」

 

 

 この場で最も冷静だったヒースクリフさんに待ったをかけられる。彼の言い分は正しく、竹で囲まれた遠くの見えない実質的な閉所はPKが待ち伏せするのにもってこいの環境に違いなく、襲撃の憂き目に遭う可能性も否定しきれない。実際問題、そういう被害があったという話も耳に入っている。

 

 だけどこの場で迷うことは無い。こちらは4人もいるし、仮に相手が複数いたとしても大規模なPKが隠れられる様な場所ではない。

 

 

「無論、向かいます。クラインさんも良いですよね?」

 

「あったりめーよ! レディの危機に駆け付けないなんてあり得ねぇ!」

 

「ああ、はい」

 

 

 ある意味で一番危険に晒されるかもしれないクラインさんにも許可を取るが、返って来た台詞にスッと血の気が引いた気がした。言われてみれば聞こえた悲鳴は女性のものだった気がしないでも無いが、この距離でそうだと断言出来る彼の耳が凄いのか、異性に対する嗅覚なのか。呆れを通り越して感心してしまいそうになるが、すんでのところで生返事をすることで踏み止まった。

 

 これは単に、女性に目が無い彼の性格なだけだ。それが転じてレーダーみたいに発展してるのは、賞賛しかねる所ではある。

 

 その証拠に、日菜が彼を見る目が容赦ない。嫌ってはいないだろうが、どうしようもない相手を見る様なジト目になっている。一歩間違えれば、言葉にしてしまいそうなくらい心底呆れているのがありありと分かる。

 

 

「懲りないね」

 

「はうっ!?」

 

 

 などと思っていたら、どうやら結局は言ってしまったらしい。何を思い出したのか、その一言はクラインさんにクリティカルヒットした様で、意気揚々としていた彼は奇声を上げつつ勢いを削がれたからかガックリとその場に膝をついて項垂れていた。

 

 

「こんなことやってる場合じゃないでしょう!?」

 

 

 そんなコントみたいな光景に、思わず敬語も忘れて叱責してしまう。

 

 

「そ、そうだった。早くレディを助けねぇと!」

 

 

 などと宣って復活するクラインさんに一々ツッコミを入れるのも億劫になってきたので、いい加減黙って声のした方へと走り始める。

 

 男の人にとって異性とは、そんなにも魅力的な存在なのだろうか。こんな状況だと言うのに平常運転と彼を見ていると、何となくそういう考えが頭の片隅に浮かんでいく。

 

 尤も、今は必要無い思考なので、そのまま忘れることに決めた。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 救援要請の叫びを聞きつけた紗夜たちは、それから1分に満たない短時間を走り抜けることで数ブロック先の小広間へと辿り着いた。数回あった分岐は、声の聞こえた方角を4人の中で最も正確に把握していた日菜が誘導することで道を間違うという失態を犯すことは無かった。

 

 そうして駆け付けた先に見えた光景は、通常個体の5倍はあるだろう一際巨大な白い狛犬と、何とかして生き延びようと立ち回っている男性と、彼に庇われている女性の姿だった。戦っているというよりは既に逃げ回っているという状態だが、どうやら戦えなくなってしまったもう一人の女性が部位欠損ペナルティによる行動不能状態に陥ってしまった様で、見捨てるという選択肢が存在しない男性が一人で粘っている、というのが見て取れた。

 

 罠でも何でもなく、事態が急を要しているのは火を見るよりも明らかであった。

 

 

「押し返します! ヒースクリフさん!」

 

「そちらに合わせよう!」

 

「助かります!」

 

 

 即断。横槍になることを躊躇することなく、紗夜は介入を決意した。

 

 現状、隠しボスらしき明らかな特異個体は男性にヘイトが向いている様で、前足で踏みつぶそうと躍起になっていた。今は耐えている男性だが、いつ限界を迎えるかなど不明なことには変わりない。

 

 どの程度戦っていたのかも知らない紗夜は、男性と動けない女性の二人から敵を引き離すという選択を取った。そのまま自分たちにヘイトが向けば御の字という算段で、ヒースクリフに助力を請う。

 

 

「クラインさんそっち守って!」

 

「おうよ!」

 

 

 盾役二人が何をしようとしたのかを察した日菜がクラインに指示を飛ばし、自身は姉の後ろを追う。第五層の時に無茶振りを潜り抜けた野武士面の男は、何故という疑問を持つことも無くそれに従った。

 

 このボス戦、至上命題が討伐ではなく護衛だということを彼も理解していたからこその即答だった。

 

 

「屈んでくださいッ!」

 

「!」

 

 

 盾を前面に押し出した盾役二人が巨大な狛犬に接敵する。相も変わらず前足で男性を踏み潰そうとしており、それを何とか防ごうと身構えていた所へ紗夜が叫ぶ。

 

 とてつもない幸運に恵まれたのか、救援の気配を正しく感じ取った男性は突然の命令に迷いなく従った。この様な状況に陥っても彼が無事でいられたのは、この辺りの判断をミスることが無かったからともいえよう。

 

 

「「っ!」」

 

 

 ともかく、若い子女の声の通りに男性がその場に屈み、それによって巨大な狛犬の鼻っ面がよく見える様になった。そこへ紗夜とヒースクリフが正面から飛び込み、二人がかりでそれぞれの盾を押し付ける。

 

 ゲームによっては《シールドバッシュ》とも呼ばれるであろう盾で押し返そうとする行為は、前足に拘っていた狛犬の顔面へとカウンター気味に直撃した。可愛くない悲鳴をあげて後方へと押しやられた巨大な狛犬は、頭部への打撃判定がクリティカルヒット扱いになったのか僅かならがスタン状態へと陥ってしまう。

 

 

「「今!」」

 

 

 スイッチという言葉を必要としない姉妹の連携は、たったそれだけで成立する。

 

 姉たちが敵を追いやると信じ切っていた日菜は、シールドバッシュの反動で動けない二人に変わって巨大な狛犬へと攻撃をかける。スイッチと同様のやり口で入れ替わり、紗夜とヒースクリフの間を一陣の風の様に突き抜けていった。

 

 

「しっ!」

 

 

 加速を乗せた単発ソードスキルがスタン状態で動けない巨大な狛犬の眉間を貫く。

 

 

「ま、だっ!」

 

 

 しかし隠しボスもボスということか、それだけでは致命傷にならなかった様で巨大な狛犬が立ち直ろうとする。

 

 日菜はそれを見越してか、余らせた勢いを利用しつつ突き刺した短剣を軸にして空中で宙返りし、その場で上空へと飛び上がった。

 

 今し方、自身へ手痛い一撃を食らわせた者が武器を持たずに空中へ身を投げ出している。そう思ったのか狛犬の顔が上を向き、日菜を捉える。

 

 

 その選択が、命取りになる。

 

 

「──っ!」

 

 

 正面から目を切った瞬間、反動の硬直から解放されていた紗夜が装備を捨てて地面を蹴った。

 

 

 狙うは空を見上げて露呈した下顎。低い姿勢からアッパーを放つ要領で、《体術》スキルを乗せた一撃をお見舞いするべく突っ込んでいく。

 

 

(これぞ以心伝心、ってね!)

 

 

 そんな姉の行動を空中から見ていた日菜は、自身の行動に合わせて動いてくれていることに歓喜し、喜色を浮かべる。

 

 

 そして最高到達点を過ぎて地面へと落下を始める頃に、日菜も《体術》スキルを発動させる。

 

 

 姉が手でかち上げるなら、自分は足で蹴り落とそう。余裕から遊び心を持ちつつ、それでいて冷静に狙いとタイミングを合わせる。

 

 

((…………今!))

 

 

 姉妹の思惑が再びシンクロした時、嫌な気配を感じ取ったのか巨大な狛犬が上ではなく前を見ようとする。

 

 

 だがそれは──既に遅すぎた。

 

 

 

「「いっけぇぇぇぇっ!!!」」

 

 

 

 紗夜の拳と日菜の足が、それぞれ下と上から頭部を挟撃する。

 

 

 防御する暇もなく、迎撃する手段も無く、前足で遊んでいた時に比べて180度変わった戦況に対応出来ずに終わる。

 

 

 隠しボスの体力が一連の流れのみで全損するということはない。だが最初のスタンに加えて、間髪入れずに頭部への強烈なコンボは例えボスであろうとも行動不能のデバフ状態に陥るには十分だった。

 

 

 後は動けなくなった白い巨体を、この場にいる面子でタコ殴りにすれば良い。事実上、此度の戦闘は姉妹によるこの攻撃によって決着したのである。

 

 

「相変わらず無茶苦茶な嬢ちゃんたちだぜ……」

 

 

 そんなクラインの呟きは、一般プレイヤーを代表していたと言えよう。

 

 

「「────」」

 

 

 何故なら、助けられたはずの男女二人組が、その光景を目にして開いた口が塞がっていなかったのだから。

 

 

 

 







〇蛇モチーフ

第十層のテーマは和風だが、蛇関連も多い。このフロアに湧く落ち武者たちも鎧の中身は蛇であり、蛇が侍に擬態しているという設定らしい。城の名前も《千蛇城》だし城主の名前はオロチだとかで、どう考えても蛇である

モブ敵では単純に蛇としても出てくるしで、苦手な人には割と厳しいフロアなのかもしれない


〇竹林エリア

第十層におけるダンジョンの一種、という体にします。実際どうかは原作待ち

実はこの竹で囲まれたエリアに足を踏み入れた時に紗夜は京都の何処かっぽいと感じていますが、口にしてないだけでそれとは別に修学旅行があったら自分も現実のこんな景色を眺めることが出来たのだろうかと思っていたりします。今はそんなたらればに耽る意味も無いので誰にも言う事はありませんが


〇隠しボス

やたらデケェ狛犬。その辺に良く湧く白い狛犬を大きくしただけ

竹林エリアにランダムに湧く色違いの黒い狛犬を20体くらい倒すと出現するボスであり、そもそも黒い狛犬の出現割合がかなり低いために遭遇すること自体がレア。黒い狛犬のことを知らなければ踏み抜くことはほとんどないトラップだが、狙って遭遇しようとすると無駄に困難

ただし出会うと結構辛い。如何せん単純に巨体で、その割にスピードもそこそこ。βテスト時代に比べて強化されているという設定

狐火じゃないけど、青白い火を吐くという案もあったが……そこまでやると第十層のエリアボスという範疇を超えている様な気がして没に


〇平常運転なクライン

ある意味、今作における一般人枠であり、清涼剤でもある。なお、ちょくちょく日菜が塩対応になってるのは姉に近寄った前科があるからというのと、何となく駄目な大人の見本だと思っているからだったりする

別に人間的に心底嫌ってるとかは無いしむしろ頼れる兄貴分みたいな所は好ましく思っているが、駄目な部分はハッキリ駄目という具合。隙を見せると日菜から毒が飛んでくるし、大体クラインにクリティカル判定で大ダメージを与える


〇さよひな連携

スイッチなのにスイッチと言わない。というか第三者から見た時の戦い方がアグレッシブ過ぎて一般人目線絶句しかない。あと普段は優先度が低いだけで紗夜も《体術》スキルは獲得しているので、いざとなったらこうして日菜と二人がかりで殴り掛かれるという手札を披露した様なもの

自分で書いておいて何だが、この姉妹は取れる手札が多い分だけ武器を手放しがちだなって思った。武器を失っても致命的にならないと考えたら、SAOにおいてはある意味大正義かもしれないが

というか隠しボス戦でシールドバッシュ×2→眉間突き刺し→上下から体術挟撃って打撃判定の殺意強いな。そりゃボスもスタンくらいする。イメージとしては顎砕かれて気絶した様なものかと



私事ですが、近日親知らずの抜歯の為に手術を行うことになっていまして、場合によっては入院する可能性もあると伝えておきます。もし来週の更新が為されなかった時は「あ、入院したな」と思ってください。しても短期ですから最低でも再来週には間に合うはずです

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