それではどうぞご覧ください。
氷は仮面ライダーリラティブに変身し、即座に床に手を置いて、瞬時にカナシミたちの足元を凍らせて身動きを封じた。
「今ッ!!」
そして氷リラティブは社長室から飛び出ると、廊下を全力で走り、そのまま階段をすっ飛ばしながら降りていく。
本来であれば、社長室の広々とした窓を割って逃げたほうが早いのだが、そのすぐ下は人が行き交う場所である為、ガラスが散乱すれば怪我人が出てしまう。その為、遅延行為であるのは氷自身もわかってはいるが、仕方なくビル内からの脱出を余儀なくされた。
「ヨロコビ、キョウフ」
「マジで理解」
「ひ、ひぃ……!!やっぱりそうなるんだぁ……!!」
カナシミの合図と共に、ヨロコビとキョウフはリラティブの後を追う。
ちょうどその時、氷は2人がこちらに向かってくる音に気づき、それと同時にモヤシも氷に提案をする。
『氷さん!紫のメダルを使いませんか!?」
「紫……?あーあの水のやつ?」
『あのメダルなら、この階段を流れる様に降りられるんじゃないですかね?水だけに』
「…………まぁ試してみましょ」
《テラー!》《アイスバーグ!》
《コネクト!》
《リラティブ!ウィズテラー!》
リラティブドライバーに装填したカンジョーメダルを反転させ、紫色の方を表にし、ドライバーの上部を押してフォームチェンジを行う。
リラティブはウィズテラーとなり、手のひらから水を出現させ、粘土のようにそれをこねて、ビルの最下層とまではいかないが、ある程度の水を流すと、その上に飛び乗った。
すると、まるでウォータースライダーの様に滑り、走るよりも早く階段を降りることができた。
「このまま一気に降りるわよ!」
『おぉ!これはスムーズですね!』
2人でワイワイとしているのも束の間、後ろから声が聞こえた。
「マジで逃がさねーから!」
「い、いいいい痛くはしませんし、痛くしないでぇ……!!」
ヨロコビとキョウフが近づいて来ている。
それに気づいた氷は更に水を流し続けた。が、この速度では時期に追いつかれてしまう。
焦るモヤシに氷はフッと笑い返す。
『ど、どうしましょう氷さん!』
「……全く馬鹿ね。私が何も考えてないわけないでしょ」
「え?」
「ここで───こうよ!」
《リラティブ!ウィズソロー!》
氷はカンジョーメダルを再び裏返し、ウィズソローへと戻った。
それにより水の力は使えなくなり、先ほどまで勢いよく流れていた水は、段々と弱まっていく。
だが、水が充分な流れ、最下層に達するここを狙っていた。
「これがアイススライダー!」
氷は足元の水を一気に凍らせると、先ほどよりも速く、階段を滑り降りてみせた。
制御はやや難しいものの、あの2人を撒くには十分な速度である。
「着いたわよ!」
『流石です香さん!僕は信じてました!』
「ふふっ、ホントにそうかな」
ビルの出入口である扉から勢いよく飛び出るリラティブ。
通行人たちが何事かと彼女らを見るが、それを気にせず、その後は全力で走って逃げたのであった。
「マジやっちまった!はははははっ!」
「お、怒られる……怒られるよぉ……!!」
通行人の視線に入るわけにはいかない2人は、静かに社長室へと戻っていく。
社長室に戻ると、カナシミは一面ガラス張りのビルの壁から、リラティブたちの後ろ姿を眺めていた。
「カナシミ、マジごめん!マジで逃した!」
「………仕方がない。彼ら、彼女らはよく逃げた」
「これからどうするんだ?マジあんなの見られたらやばくね!?」
「確かにそうかもしれない」
カナシミは知能あるエモーションの中でも最上位に位置する存在である。
その頭の良さは他のエモーションとは比べ物にならない。又、人間と差し支えない感情も持ち合わせている。
その為、彼は人間の姿へ変化する力を手に入れ、人間と変わらない生活をし、人間と同じ資格を取り、こうして社長の座にまで上り詰めた。
カナシミは人間社会において重役を担う存在になった。部下たちも大勢いる。
カナシミたちの姿は見られていないにしろ、いずれここへ誰かが異変を察知して駆けつけてくるだろう。
「が、安心したまえ。"ここら一帯にいる者に関しては何も問題ない"」
カナシミがそう言うと、社長室のドアを勢いよく開ける輩が1人。
「だ、大丈夫ですか社長!」
「あぁ、何も問題ない」
「良かったですよ………"お二人"も大丈夫でしたか?」
ヨロコビとキョウフが頷くと、輩は安堵し、非常識にも勝手にドアを開けたことに頭を下げ、自分の持ち場へと戻っていった。
そしてそれを見たヨロコビは腹を抱えてケタケタと笑う。
「いやマジ流石だな!カナシミのこの力はマジですげぇ!」
「ひぃぃぃぃ……」
これを機にビルの下にいる通行人たちも、何事もなかったかのように段々と散り始める。
それは先ほど氷たちにも使用したが効果のなかった、カナシミの力によるものだった。
カナシミは悲しみの感情から生まれたエモーションである。何かに対して毎日のように悲しみ、頬に涙を伝せる。泣くという行為だけでも、様々な感情が入り混じっているのだが、このカナシミに至っては、哀れみの心というものは持ち合わせてはいない。
感情というものが人間社会においてどれほど大事なコミュニケーション手段であるのか、彼自身わかっているつもりではいた。
しかし、彼がいくら理解を深めようとも、エモーションの宿命というべきか。悲しみの中に感情を一つ一つ入れて混ぜるという事ができなかった。
そんな彼は悩みに悩み抜いた末に、相手自身の感情を、心をコントロールする力を手にした。
「"人の心を操る"。そうする事により人間たちの私たちに対する認識を改めることができる。人間とは悲しきこと。感情に囚われ続け、欲のままに行動をするから、私に心を握られてしまうのだ」
「次はマジでどうする!?」
「一旦様子を見るとしよう。この事実を聞いても尚、彼女らは戦うことを決めた。やはり生物というものは互いに争わなければ生きていけない様だ」
カナシミは頬に涙を伝わせ、窓越しに空を見上げる。
「時が来たのなら、もう一度あの光景を────"エモーショナリデミック"を開始する」
いずれ起こる災厄をカナシミはポツリと呟いた───。
今回は短めに仕上げました。次回は新章入ります。
次回、第10話「犯人=謎」
次回もよろしくお願いします!!