新章突入です。
それではどうぞご覧ください。
第10話「犯人=謎」
「ハァッ!!」
工場内に氷の叫び声が響く。
リラティブウィズソローはエモーションへ両手を広げ、掌から冷気を噴出する。
群れで襲ってきたエモーション達は、忽ち並び立つ氷像の様に凍ってしまった。
その隙にリラティブはドライバーのメダルを取り替え、ウィズアングリーへと姿を変える。己の拳に炎を纏い、次々に氷像を砕いていった。
エモーションたちは白く冷たい氷の礫となって弾け飛ぶ。
「まだまだ壊したりねーよッ!!」
モヤシは相変わらずスイッチが入ると止められない。
それを氷はやれやれと呆れた様子で、ただ手馴れているので焦らず冷静に。
『はいはい、もうお終いだから』
再び暴れ回りそうになるモヤシリラティブを、氷の意思で手を動かし、無理やり変身解除させる。
この変身後のモヤシの扱いも少し手慣れてきた。しかし、何か解決すれば、すぐにまた新たな問題が発生するのが人生というものだろう。
氷は最近やけにエモーションの出現率が高くなっている事に気づき、それに対して違和感を覚え始めていた。
『あー僕またやらかしそうに……』
「別に気にしてないわよ。というか慣れたし……それよりもモヤシ。最近エモーション多いと思わない?」
『確かに。ここ最近ずっと戦っている気がします』
「気がする、じゃなくてずっとよ!高校生活にも支障出始めて大変なんだから」
そう言って氷は長めのため息を吐く。
「まぁ予想は大体つくけど」
『……カナシミのせいですか?』
「でしょうね。単純に仲間を増やすつもりなのか、邪魔者の私たちを消すつもりなのか……いずれにしろ何か目的がありそう。もっと大きな目的が……」
そんな事をモヤシと話していると、工場の外から声が聞こえてきた。
どうやら逃げた筈の工場の社員たちが戻ってきた様だ。
「えぇ!?何で戻ってきたの!?」
『氷さん撤退です!』
「わかってるわよ!」
2人は、もとい氷は急いでその場を後にする。
そんな彼女らを密かに追うエモーションが1体────。
*****
───チーン。
仏壇の前で氷は手を合わせ、静かに目を瞑る。
目を閉じると家族との思い出が蘇る。最近までずっとこうだったんじゃないか、と思えるほど鮮明に。
そしてすぐに別の場面に切り替わる。あの地獄の様な光景。家族を殺したあの男の顔が見えかけた時───。
『氷さん?』
モヤシが話しかけてきた。
「………はぁ、人が感傷に浸ってる時に何よ」
『え、あ!すみません!』
「全く。で、なに?」
『あぁ、いや30分くらい同じ姿勢のままだったので気になって……』
「そ、そうなの?そんなに時間経ってたんだ……」
『僕は昔の記憶がなくて同情する事が失礼になるかもしれませんが……やっぱり悲しいし、辛いと思います。』
「失礼なんて事ないわよ。あなたなりに気を遣ってくれてるんでしょ。ありがと」
『氷さん。僕と氷さんは文字通り一心同体です。何か困った事があったらいつでも言ってください!居候させて頂いてるんですから何でもやりますよ!』
「へー、じゃあ家事お願いしようかな。毎回私がやってるし、たまには手伝ってくれてもいいんじゃない?」
『た、確かに……』
氷はふふっと笑う。
その時、ふと氷はガラス戸の方を見た。
カーテンが風で靡き、その隙間から見える不気味な人影の姿。これは人なのか、否、人な訳がない。
何本もの触手が垂れ下がった醜悪な見た目───エモーションだ。
「ど、どうして私の家に!?」
『もしかしてさっきの戦いの後に……?』
「そんな事はいい!私の家……家族との思い出を壊されてたまるもんか!変身ッ!!」
氷はリラティブドライバーを取り出し、腰に装着すると、手早くメダルをセットして上部のボタンを叩く。
《リラティブ!ウィズソロー!》という音声と共に、氷は仮面ライダーリラティブウィズソローへと変身した。
そして氷の力を操り、エモーションを一時的に凍らせると、そのまま山の方へと移動させる。
「あんな所で戦われても困るからね!」
そう言って氷は綺麗な回し蹴りをお見舞いすると、氷が割れると共にエモーションが吹き飛んで、目の前にあった大きな木にぶつかった。
エモーションは立ち上がる。が、様子がおかしい。何やら違和感を覚える。
普通のエモーションであれば、攻撃対象が定まった場合すぐにでも攻撃を仕掛けてくる筈だ。それから奇妙な鳴き声もオマケでついてくる。
だが、このエモーションは奇妙な鳴き声を発さない。ただ一言、片言ではあるが喋った。
「───ミツケタ」
「見つけた?」
「オマエ───タベル───」
「な、えっ!?」
そう言うとエモーションは突然リラティブに向かって飛びかかって来た。
あまりにも突然のことに対処できず、そのままエモーションが馬乗りになって、口であろう部位がリラティブの胸元に向かって伸びる。
間一髪の所でそれを鷲掴みにすると、これでもかというくらいにエモーションは暴れ回る。
「このぉ……!!」
「タベル───」
「何が食べるよ!私は簡単に食べられるほど甘い女じゃないから!」
そして互いに暫く揉み合いになっていたが、リラティブはエモーションの腹の部分に足を当てがい、力一杯に押し飛ばした。
再び適当な木にぶつかるエモーション。再度何事もなかったかの様に立ち上がる。
「喋れるって事は知能がそれなりにあるみたいだけど残念ね。私たち仮面ライダーにはそんな攻撃効かないのよ!多分」
『多分なんですね』
「効くか効かないかで言ったら効かなそうじゃない?私たち一応特別みたいなものだし」
そんな話をモヤシとしていると、エモーションは再び襲い掛かってきた。
「何度やっても同じよ!」
氷リラティブはまたも得意な蹴り技でエモーションを蹴り飛ばそうとした。
その瞬間、一言だけエモーションが呟いた。
「────オマエジャナイ」
「えっ」
見事に蹴り技が決まり、エモーションは吹き飛ばされると、また呟いた。
「マタ───タベラレナカッタ───」
表情では何を考えているかわからないエモーション。
ただその時だけは、その言葉だけはハッキリとわかった。目的を達成できなかった悔しさ、そして───怒り。
エモーションは感情を表に出しつつ、蛇の様にくねりながら森の中へと姿を消した。
「また食べられなかった……?何のこと?」
『…………っ!!!』
突然、モヤシは急に頭が割れる様に痛くなったかと思うと、脳裏にエモーションの姿が浮かび上がった。
目の前にはエモーション。そのエモーションから全力で逃げる自分の姿。
これは記憶がなくなる前の?それともなくなった後?
いや、そうだ。これは最後に見た光景だ。氷に見つけられる前に起きたあの時だ。
「───モヤシ!ねぇモヤシってば!」
『はっ……!』
「どうしたの?……急に頭の中が重たくなったんだけど……」
『氷さん、思い出しました』
「え?まさか記憶?」
『はい、ただ本当に中途半端なんですけど』
「いいわよ。少しでも蘇ったなら良いことじゃない」
『……実は僕、あのエモーションと会った事があるんです。それも氷さんが僕を助けてくれる前の時です』
「あー……最初にあなたと会った時に話したやつでしょ?それならあなたから直接聞いたわよ」
『違うんです。そこじゃないんですよ』
「だから何言ってるの?勿体ぶらずに教えて!」
『それよりも前に、僕は……エモーション以外から逃げていました。これは何でしょうか……一体何から……うぅ……』
モヤシが再び苦しみ出すと、氷は彼を落ち着く様に促す。
「ま、とりあえずそこまで思い出せたなら良いんじゃない?もしかしたらあなたの事だから借金取りに追われてたとかありそうだし」
『僕がそんなことする人間に見えます!?』
「ははっ、ないない。それはない。冗談よ。とにかく一歩前進って事ね」
『はい、思い出すにはもう暫く掛かりそうですけど、何卒よろしくお願いします』
記憶の断片とモヤシを狙うエモーション。
全ての記憶が明かされる時、真実は2人の運命を大きく変える───。
皆さん本当に本当に申し訳ない。来年から普通に再始動します。
では次回、第11話「ホット=コールド」
次回もよろしくお願いします!!