仮面ライダーリラティブ   作:辰ノ命

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皆さんご無沙汰してます。
それではどうぞご覧ください。


第13話「恋=愛」

 私は寒波 氷。

 とある事をきっかけに男の人と同居することになった愛ノ川高校2年生。

 

『氷さん?さっきからボーっとしてどうしました?』

 

 今は話しかけてきたのが彼。名前はモヤシって事にしてる。

 ちなみにだけど、モヤシとは同居してるって言っても、私たちの場合は特殊な関係性がある。

 もう数ヶ月経つのかな。モヤシと私はエモーションっていう怪人に襲われた時、このリラティブドライバーのせいかなんなのかわからないけど、融合して1つになってしまった。

 ややこしいのだけれど、1つの身体に2つの魂ではなく、2つの身体が1つになったという方が正しい。

 

『氷さーん?』

 

 さっきから話しかけてきているけど、目の前に彼がいる訳ではない。

 今は私と身体を交代して、私の身体の中で話しかけている。もし、彼にそれを委ねたのなら、今度はモヤシの身体が前に出て、私は後ろに下がる。

 不思議でしょ?私もそう思う。

 ただこの仕様だからこそなのか、私たちは互いに思考を共有できない。目や耳は互いを通して確認できるんだけどね。

 

『もしかして昨日の件気にしてくれてます……?』

「まぁそんな所」

 

 私は自宅の椅子に座って考え事をしていた。

 昨日、それはキョウフとの戦いで少し見えてきたモヤシの正体。

 これに関して私は寝る寸前まで思考を巡らせて、今日も朝から考えて、1番有力な仮説を立てた。

 それはモヤシがエモーションを創り出した"研究員"だったのでは、という話。

 リラティブドライバーは私達の目の前に現れた。当然だけど、私とモヤシにはなんらかの関係性はない。それなのにも関わらず、このドライバーは突如として目の前に現れた。

 記憶のないモヤシが、ようやく思い出した断片にエモーションから逃げる光景。そしてイカリという特殊なエモーションとの関係性。

 これらを加味すれば今までの流れは説明がつく。

 

「ねぇ、モヤシ」

『あ、はい?』

 

 私はモヤシに質問する。

 ただ1つだけ疑問に思う部分があるからだ。

 

「あなたが消えるのはおかしいと思わない?」

『………ん?え?あぁ、確かに……』

「あなたがエモーションを生み出した母体だとしたら、あなたは感情を抜き取られて廃人になる筈じゃない?で、その身体は残ったままになるのは当然。今までエモーションが母体をもう一度襲うなんて事例聞いた事ないし、そもそも病院とかでも感情を抜き取られた人たちが消えたーなんて話はない訳だし」

『じゃあ……僕は一体何者なんですかね?』

 

 やっぱりそう聞いてくるか。

 私は自分の出した答えを、モヤシに告げようか迷った。

 ただもう少し調べてからの方がいいかもしれない。それからでも遅くない筈だから。

 

「そうだ、モヤシ」

『どうしました?』

「出かけましょ」

 

 私は話を逸らす。

 モヤシも特に気にしてなさそう。

 

『どこに行くんですか?』

「買い物よ」

『今日は学校休みですもんね。可奈さんと後は誰も呼ぶんですか?』

「呼ばないけど?」

『え?じゃあ1人でって事ですか?』

「1人?何言ってるの?」

『やっぱり1人じゃないんですか?』

「あなたがいるでしょ?」

 

 こちらからは表情が見えないけど、多分凄く間抜けな顔してる。

 

『と言っても、僕は可奈さん達みたいにこう面と向かってというか……あまりお手伝いできないと思うんですけど……』

「別にそんなの求めてない。話し相手になってよ」

『はぁ……』

「それじゃあ行くわよ!まずは映画!」

『映画……あのテレビでもやってた奴ですか』

 

 それから私は早速支度を済ませて、駅から最寄りの映画館へ向かった────。

 

 

 *****

 

 

 氷さんが言ってた映画ってコレのことか。

 駅から徒歩数分で来れる場所に、こんなに大画面のテレビ……映画があるなんて凄いなぁ。

 

「ほら、始まる」

 

 氷さんは小声で僕に告げる。

 僕は別に喋っていても周りには聞こえないし問題ないのだが、氷さんの脳内に響いているとなると鑑賞の邪魔になる。

 ただ映画が始まると、僕はそれに夢中になって話す事を一時的に忘れた。

 

『おぉ……』

 

 この映画は恋愛映画だと氷さんから聞いた。

 彼女曰く恋愛映画なんてまず観ないらしいが、可奈さんたちがどうしても観て欲しいと懇願して来たらしい。

 肝心の映画の内容は主人公の女性が大病を患っており、自身が死に征く定めを知り、人間関係を築こうとしなかったが、とある場所で出会った男性と恋に落ちて……と言った感じだ。

 周りが言うには王道展開らしい。が、実話を元に制作されたものらしく、所々リアルな"人間"の感情が上手く表現されており、物語が進行する度に心臓が握りつぶされそうになる。

 それから後半に差し掛かった時、周りから啜り泣く声が聞こえて来た。

 

(これは辛いよね)

 

 映像の中で女性は今まで告げられなかった、いや、告げようとするのを拒み続けた自身の好きだという気持ちを、大好きな彼に伝えた。

 その伝えた場所が病院のベッドの上。もう身体も動かせないほど弱った身体の彼女。

 男性も自分の想いを彼女に告げる。とても優しいキスを数秒間。互いの頬に涙が伝う。

 唇を離すと、彼女は…………。

 

『そんな……』

 

 僕は思わず声が溢れる。

 氷さんの表情は見えないが、僕の視界がボヤけている。

 きっと泣いているのだろう。僕は再び映画に目を向ける────。

 

 ─────映画が終わった。辛過ぎて僕は多分一生忘れることはないだろう。

 一方の氷さんは劇場内の椅子に座ったまま動かない。

 

『氷さん。終わりましたよ』

「………ええ」

『いい映画でしたね。実話を元にしているのなら、彼が今後報われてくれればいいんですけど……」

「ねぇ、モヤシ」

『はい?どうしました?』

「彼女は母と父、それから弟がいた。自分が死ぬってわかってるから家族に当たりが強かった所……私、正直やだなって思った」

『………』

「でも、亡くなる寸前。真っ先に家族の事が頭によぎった。どんな態度を取っていてもやっぱり家族って大事なんだなって」

『氷さん。僕、記憶がないのでわからないし、僕が言ってもってなるんですけど……この映画を観てからなら、その気持ちすごく分かります』

「ふふっ、ありがと。まぁ実話を元に、だからこの主人公の女性が本当に思ってたかはわからないけど、きっとそうだと思う。じゃなきゃあんな風に手紙とか残さないと思うし……」

 

 氷さんと映画について話していると、映画スタッフさんから声を掛けられる。

 

「えっと……劇場内は通話禁止なので……」

「え、あっ!えっと通話してた訳じゃなくて……ひ、独り言です!映画観た後は癖で独り言感想が止まらなくって、はははっ……」

「そ、そうですか」

 

 そして氷さんは足早に外に出る。

 

『僕のせいですね……』

「話しを持ち掛けたのは私だし、気にしないでよ。さて、後で可奈たちに感想でも伝えないと」

『映画の次はどこ行くんですか?』

「うーん……服でも見に行こうかな。結構お金も貯まってきたし」

『そのお金って親戚の方から?』

「まぁね。申し訳ないからあんまり使わないようにしてたけど、偶にはいいかなって思った」

 

 氷さんは季節に合わせた服を最低限持っているだけで、あまりオシャレとかに興味はないらしい。

 ただこのルックスにこのスタイル。服が逆に着せられていると言っても過言ではないだろう。最低限だとしても、その最低限だけでいいのだから周りからしたら羨ましい限りだ。

 僕も彼女の服選びには興味がある。

 

「それじゃあ近くのショッピングモール行くわよ」

『お願いします!』

「お願いします……?」

 

 それから映画館を出た後、近くにあるショッピングモール内に入り、有名どころのシロクロやCUだったりと手を出しやすいところからのスタート。

 

「これ可愛くない?」

『可愛いですね』

「…………」

『え、なんですか!?』

「心の底から言ってない感がすごいわね」

『え、えぇ……』

 

 記憶がないからかもしれないけど、女性って難しい。

 僕はこんな質問を氷さんにぶつけてみる事にした。

 

『氷さんってモテモテじゃないですか』

「そう?」

『はい。だから男性とお付き合いしたことあるのかなって』

「はぁ?」

『すみません僕はいらん事を言いましたすみません申し訳ないですすみません』

 

 別に氷さんは怒ってる感じではなかったけど、何か寒気を感じた。

 アイスバーグだからか……?

 

「………そ、そういうのは別に興味ない」

『おっと?』

 

 意外な反応に僕は驚いた。

 

『でも告白とか何回もされたんですよね?』

「数え切れないくらいね。上も下も関係なく」

『へー上級生にも……』

「んーん、先生」

 

 これ地味にまずい事を聞いてしまっているのかもしれない。

 僕は話題を逸らそうとしたが、氷さんは続ける。

 

「1年生の時に一目惚れだーって言われて。まぁ当然断ったけど、その後もしつこくてさ。可奈達と手を組んで他の先生に現場押さえてもらってから、社会的制裁を喰らわせた感じかな」

『こわっ』

「か弱い女の子を襲おうとする人が悪い───あ、この服良くない?」

 

 女性を敵に回してはいけない。僕は心に誓った。

 そんな会話を挟んでから、氷さんは試着室で気になった服を試着し始めた。

 僕はもちろん目を瞑っている。

 

「いいわよ〜」

 

 氷さんに言われて目を開けると、そこには天使が立っていた。

 白い服がまるで天使の羽のように、何故か神々しく見える。

 

「………ちょっと?」

『改めて思います。本当に綺麗です』

「あ、ありがとう」

 

 思わず本音が漏れてしまう。

 多分今、真顔で言っている。

 

「あーーーあなたが変なこと言うから熱くなってきた。何着か買ったらもう帰る」

『なんかすみません……』

「はいはい、それじゃあ出ましょ」

 

 氷さんは服を購入した後、そのまま帰路につくのかと思ったが、駅とは逆の方向を歩いた。

 暫くして僕たちは高台までやってきた。

 氷さんはフェンス身体を預け、高台から見える街並みを眺める。

 

「意外と人少ないわね」

『意外とですね』

 

 ここに来て僕たちは暫く黙っていた。

 風の音が聞こえる沈黙の後、先に口を開いたのは氷さんだ。

 

「2年前、エモーショナリデミックが発生した日。その日に私の家族は殺されたの」

 

 それは氷さんがあまり語ろうとしなかった家族の話だった。

 

『エモーショナリデミックの日ですか……前にも聞いた殺人鬼はそれに乗じて殺害していったんでしょうね。氷さんのご家族をッ……!!』

「私の為に怒ってくれてありがと」

 

 そう言って氷さんは微笑んでくれた。

 

「私も少しだけ記憶喪失なのかも。朧げな記憶。犯人の顔が思い出せないの……当時、まだ普通の中学生だった私にはショックが大き過ぎたみたい」

『僕なんて全部忘れたパッラパーなんで大丈夫です!氷さんもいつか思い出せますよ。そしたら……僕、絶対手伝いますから。氷さんをこれ以上悲しませない為に』

「ホントいい奴よねあなた。モヤシって名前付けられて、私にいいように使われてるのに」

『実は結構気に入ってますよ!最初は戸惑いましたけど、今じゃ抜け殻説も出てる僕ですから……仮に僕が存在しないものだとしても、この"モヤシ"って名前がある限り僕です!』

「ふふふっ、それで喜べるなんて安いわね〜……まさしく"もやし"」

『ちょ、ちょっと!?』

 

 僕たちは顔は合わせられないけれど、氷さんの顔を想像して吹き出して笑った。

 変な顔だったとかじゃなくて、なんて言うんだろうな。初めての気持ちだ。

 

 ─────初めて気持ち。

 変な感覚。モヤシの顔は見えないけど、きっと今顔を見たらダメな気がする。

 

 互いの気持ちに揺らぎが見えた時、周りから悲鳴が聞こえ始めた。

 

「悲鳴!?」

『氷さん!エモーションです!準備を───────ッ!!』

 

 そう、彼女達の前に現れたのは、

 

「ヒサしぶりだな。アいたかった」

「あなたはッ───"イカリ"!!?」




ほのぼの回?です。本当です。
徐々に秘密が明らかに……!!

次回、第14話「喜怒=哀恐」

次回もよろしくお願いします!!
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