それではどうぞご覧ください。
「イカリ……どうしてあなたがここにっ……!!」
人々が逃げ惑う中、イカリはぬるりと現れた。
モヤシの事を抜け殻という割には、その見た目からは似ても似つかない。
カナシミ達のように仮面を被り、仮面は怒りの表情を浮かべる。身体は怒りを表すかの如くメラメラと逆立った棘が全身から突き出ており、特に肩は大きく、両肩で左右のバランスが違う。
「だいぶカラダがモトにモドりつつある。アトは"シボりカス"をクってオわりだ。ほら、オモテにデてこい。"モヤシ"とイったか?ニンゲンのオンナとユウゴウするとは、オレもヨソウガイだったが……そのケンキュウジョでトってきた"リラティブドライバー"のエイキョウか?」
カタコトながらも前回会った時とは比べ物にならない程、流暢に喋るイカリ。
この短期間でかなりの感情を食らったのだろう。
「ちょ、ちょっと待って!あなた今なんて言ったの!?」
「おマエとハナすコトはない」
イカリの鋭い爪が伸びる。
それをすんでの所で氷は後ろに避け、リラティブドライバーを取り出して腰に装着する。
「私はあなたと話したい事が山積みなの!」
『氷さん!』
「大丈夫よ、モヤシ。なんとなくこいつは私と相性良さそうな気がする」
リラティブドライバーに青いメダルをセットし、上部のボタンを叩く。
「変身ッ!!」
中央が回転し、横一列に青色が並ぶと氷の身体が装甲に包まれる。
氷山から現れるのは"仮面ライダーリラティブ ウィズソロー"。
《リラティブ!ウィズソロー!》
「さぁ、冷やすわよ!」
早々にリラティブはイカリに向かって脚を振り上げる。
それをイカリは後方へ躱す。
「ヨウがあるのは、おマエのウシろにいるオトコ。オレジシンだ!」
イカリはリラティブの腹部に目掛けて爪を立てる。
その爪は見事に躱されるが、もう一方の手を使って更に追い打ちを仕掛ける。
「答えなさい、イカリ!あなたは元研究員だったの!?」
リラティブは足を使って爪を弾く。
身体を捻ってイカリの顔面に回し蹴りをし、回転の勢いが衰えぬまま、怯んだ所を足を引っ掛けて転ばした。
倒れた身体にパンチをお見舞いすると同時に、イカリの身体を凍らせて行動を制限する。
「本当にそっくりね。変身した時のモヤシみたいに感情のまま行動する」
『だから"私の方が相性がいい"って言ったんですね……いや、それよりも研究員ってどういうことですか……?』
「後で話すからもうちょっと待ってて。それで、早く答えてくれない?イカリ」
そういうリラティブに対して、イカリはニヤリと笑う。
「おマエはナゼカったキでいるんだ?」
「質問はこっちがしてるんだけど?」
「あぁ、そうだったな……このジョウキョウ、イカりがコみアげてくるなぁ……!!」
突然、イカリの身体が燃え上がる。
するとたちまち氷が溶けて、イカリの身動きが取れるようになった。
「炎ッ……!!」
湧き上がる炎を前に氷は一瞬頭にモヤシの姿が思い浮かぶ。
能力から戦闘スタイルまで同じ。モヤシそのものである。
「オラァッ!!」
怒りの炎を纏った拳が飛んできた。
先ほどの衝撃で体勢が崩れていたリラティブは咄嗟に腕をクロスさせる。
その腕の防御を貫通するかの如く、命中した瞬間にミシミシと音を立てて吹き飛んだ。
リラティブはなんとか地に足をつきブレーキを掛ける。
が、高台のフェンスにぶつかって転落しかけた所、腕を伸ばしてフェンスを掴んでなんとか耐えた。
「いったぁ……」
腕がへし折れそうな感覚。まだ動くもののダメージは相当に大きく、フェンスを掴む腕もそう長くは持たないだろう。
すぐに這い上がって戦闘に戻るか、それともこのまま落ちて一旦体制を整えるか。
「……なら、やる事はこれでしょ!モヤシ!」
『は、はい!』
「あれ使うわよ!」
『あーあれですね!』
氷は凹凸のアイテム"オウトツバイダーを取り出して2つに分離させる。
それをリラティブドライバーに装填し、色が違う2つのメダルをセットする。
《ボルケーノ!》《アイスバーグ!》
《トゥワイスコネクト!》
「我儘言わないようにね、モヤシ!!」
「善処します!!」
そして氷は上部のボタンを叩く。
《リラティブ!ウィズボルケーノ&アイスバーグ!》
「行くぞ!!オラァァァァァァァァァッ!!」
「だから合わせないと動けないでしょ!!」
仮面ライダーリラティブ ウィズボルケーノ&アイスバーグ。右側がモヤシ、左側が氷という異質な形態。
ただ幸いな事にフェンスを掴んでいた手は左側。つまり氷サイドなので、氷はなんとか片腕で這い上がる。
が、目の前には既にイカリが炎の拳を振り上げて立っていた。
「モヤシ!」
「わかってる!」
それをモヤシは右手に炎を纏わせ、イカリに合わせて拳同士を打ちつけた。
拳と拳の間に爆炎が噴き上がる。その衝撃を受けて吹き飛んだのはイカリの方だった。
「ぐっ……!さっきまでとはまるでチガうな」
「このクソやろう。さっきはよくもやってくれたなぁ……ここからは俺のターンだッ!!」
と、勢いよく地面を蹴ったモヤシだが、左側がそれに追いつかずに顔面から転んでしまう。
「おいッ!!!」
「仕方ないでしょ合わせるの大変なんだから!!」
「不便過ぎんだよこの形態ッ……ちっ!俺の奴に変えさせろ!!」
そう言ってモヤシはドライバーからオウトツバイダーを引っこ抜こうとしたが、氷はそれを全力で止めに入る。
「絶対に無理だからやめて!」
「無理って決めつけてんじゃねーよこのクソアマ!!」
「今までの形態じゃあいつの火力に追いつけないの!」
「まだやってもいない事だろうがッ!!いいから俺に────」
その時、氷は左手で右側の頬をぶん殴る。
「いってぇ!!」
「聞いて、モヤシ」
モヤシは急におとなしくなる。
氷の顔は見えないが、その落ち着いた声に怒りが収まった。
「ごめんね。私の力不足なのは確かにある……でも、それと同時にあなたの力よりもイカリの力の方が優ってると思う」
「なんの根拠があるんだ、あぁん?」
「ずっと近くで見てたから」
その言葉を聞き、モヤシは黙ってしまう。
いつもであるなら来る筈の怒りが抑えられている。
「私はあなたの感情を受け入れる。だからあなたも私の感情を受け止めて」
「どうやってだ……?」
「イカリに対してあなたはどういう感情?」
「あ?ムカつくに決まってんだろ。あいつが俺の記憶を持ってるなら尚更な!」
「なら、私もあなたと同様にあいつに怒る。だからモヤシは私が悲しいって思うような行動はしないで」
「はぁ?…………意味わかんねーな」
「…………」
「意味わかるわけもねーだろ。人の感情なんざ全部わかるかってんだ」
モヤシは右側の拳を地面に叩きつけて身体を起こす。
「ただ"なんとなく"わかってやるよ。それだけで十分だろ。お前の頭なら」
「……ふふっ、"なんとなく"ね。完璧じゃない」
2人の感情が交差する。遮断されている筈の互いの感覚が"なんとなく"わかる。
「いつまでハナしているつもりだ!!」
イカリが全身に炎を纏って走り出す。
それに対してリラティブも走り出す。
「はぁっ!!」
モヤシの拳が先にイカリを捉えた。
イカリの胸部が燃え上がり、凄まじい爆炎と共に吹き飛んだ。
「かはっ……!?」
「次は私ッ!」
直後、氷は地面を凍らせ、その上をスケートをするかの様に滑る。
1度目の変身の時よりもスムーズに、より速く、ターゲットに一瞬にして近づき、氷を纏ってスパイク状にした脚でイカリを蹴り上げる。
「打ち上げ花火だ。イカリッ!!」
そしてモヤシは右手に火の玉を握り込むと、それを振りかぶって上空に飛ばされたイカリに対して投げつけた。
火の玉は身体に触れた直後に、眩い光と共に爆発する。
「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
イカリは脱力したまま上空から落ちてくる。
追撃しようとしたリラティブであった──────。
が、突然モヤシの身体が硬直する。
「あっ……がっ……!!」
「モ、モヤシ!?どうしたの!?」
「記憶が流れッ……ッ…!!」
最初にイカリに触れた時、同様に記憶が蘇った事で激しい頭痛に襲われるモヤシ。
そのまま身動きが取れずにいると、体勢を立て直したイカリがこちらに向かって来た。
「モヤシ!大丈夫!?」
「な、なんだこれはぁ……ッ…!!」
そしてイカリの燃え盛る拳がリラティブの頬にめり込んだ。
それからリラティブは後方にあった壁に激突し、その衝撃によって崩れた岩に埋まってしまった。
「─────うぅ……!!」
「平……気……?」
「……クソがッ!!てめぇの方が平気じゃねーだろ!!」
殴られてしまったのは氷サイド。
彼女は今の一撃でだいぶダメージを負ってしまった様だ。
「私は平気だから……ごほっ!」
「はっ!平気で辛そうな声出せるかボケがっ!………クソッ!!」
モヤシ主体の形態になればこのピンチは脱することができる。
ただその場合、まだ整理しきれていない記憶が再び接触によって、新たな記憶が呼び起こされて混在してしまう可能性もなくはない。
そうなれば大きな隙を晒すこととなる。
「来てるな……」
岩の隙間からイカリが全身に怒りの炎を纏わせて近づいて来ているのが見える。
モヤシは半分諦めかけていた。が、逆に怒りを湧いて来ていた。
「なんでだよ……」
自分が負ける事への不快感。いや、そうではない。
氷が痛めつけられた時、心の奥底に今まで感じたことのない怒りを覚えていた。
「あぁ、腹立つ……腹立つなぁ……!!」
「ごめん……モヤシ……」
「ちげーよ、そうじゃねぇ」
何かに引き寄せられる様にモヤシと氷はリラティブドライバーに手が行く。
オウトツバイダーに触れると何か違和感を覚えた。
「……おい、待て。そうだ」
「うん、この凹凸アイテム"余裕"がある」
「感情が力の源ならよ。てんこ盛りにすりゃいいって事だろうがよ!」
「モヤシ!」
「やるぞ、氷……これしかないだろッ!!」
2人は互いのアングリー・ソロー・ジョイ・テラーのメダルを取り出した。
それらを右側にモヤシのメダル、左側に氷のメダルを装填する。
《アングリー!》《ソロー!》《ジョイ!》《テラー!》
《クワトロ!コネクト!》
今までに聞いたことのない音声が鳴り響く。
正解。それを引いたと確信した2人。
モヤシはリラティブドライバー上部のボタンを叩いた。
《リラティブ!ウィズ!四大感情!キ・ド・アイ・キョウ!》
「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」」
次の瞬間、岩が弾け飛ぶ。
イカリは目の前の光景に驚いて思わず後退る。
「な、なにこれ……」
「互いの感覚がわかる様になってやがる……っ…!!」
モヤシは左側の頬を撫でる。互いの感覚が共有された瞬間、今までのダメージが全身に伝わって来たのだ。
【仮面ライダーリラティブ ウィズキドアイキョウ】。
怒り、喜び、悲しみ、恐怖の感情を表すかの様にそれらの特色が4つに分かれて装甲となっている。
モヤシ側の上半身はウィズボルケーノ&アイスバーグと同様だが、下半身は喜びを表す様に棘が不規則にうねっている。
一方の氷側も上半身は同様ではあるが、下半身は恐怖を表し、渦巻状の装甲が取り付けられていた。
「─────おい、イカリ。かかってこいよ」
「ふん、それがどうした!!」
イカリは真っ直ぐにリラティブに向かって突っ込んできた。
それに対してモヤシサイドは炎と光を混ぜ合わせた炎の光線を、手のひらから打ち出した。
「な、なにっ!?」
炎の爆発力に加えて光の速度が融合した事により、それを視認してから動き出す事は至難の業であった。
イカリはまともにくらってしまい、それは身体を貫通するにまで至る。
「がはっ……!!?」
続いて氷サイドによって放たれる水。その水は高台全体を濡らし、次の瞬間には凍りついてしまう。
まるで氷の舞台となったその中央にはイカリが立っている。
「イカリ……お前にはこの"新たな記憶"について聞きたいことがあるんだよ」
そう言ってリラティブが近づいた瞬間であった─────。
「そのカラダは……オレのモノだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
突然、リラティブに飛びかかって来たイカリ。
これには要素外だったリラティブは引き剥がそうとした。
「な、なんだっ……!!?」
リラティブドライバーが強い反応を示す。
それと同時に辺りが眩い光に包まれた───────。
*****
先に目を覚ましたのは氷。
どうやら気を失っていた様であった。
「う、う〜ん………あっ、イカリは!?」
辺りを見回してもイカリの姿は見えない。
高台には氷と、それからモヤシの姿があるだけだ。
「ちょっとモヤシ起きて!イカリがいなくなってる!」
「……へ?……えぇ!?そんな!一体どこに行ったんですか!?」
「わからない……あの時、抱きつかれたあと強い光が……」
「あの光はなんだったんですかね……氷さん怪我の方は大丈夫ですか?」
「私は大丈夫。あなたは?」
「僕も大丈夫です。この通りどこも………………ん?」
「あれ?」
2人は暫く見つめ合う。
そして事に気づいた───────。
「「元に戻ってるぅ!!!!??」」
まさかの分離してしまった2人。
これは一体……。
次回、第15話「普通=非日常」
次回もよろしくお願いします!!