仮面ライダーリラティブ   作:辰ノ命

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皆さんご無沙汰してます。
それではどうぞご覧ください。


第15話「普通=非日常」

「で、よ」

「で、ですね」

 

 イカリと戦った翌日、文化祭の準備があるものの、一旦現状を整理する為に氷は学校に休みを貰った。

 

「分離できた……ね」

「分離できましたね」

 

 氷とモヤシ。2人は1つであった。1つの肉体に2つの魂ではなく、2つの肉体を持つ1つの存在。

 それがどうだろう。イカリとの接触によって2人は本来あるべき形へと戻った。

 今、自宅で机を挟んで椅子に座り、互いに見つめているのがその証拠だ。

 

「まぁ良かったけど……なんだが急過ぎて変な感じ……」

「僕も久々に面と向かって氷さんの顔が見れましたよ」

「鏡越しだったからね。目が合うとしても」

「変な感じです……本来ならこれでいいはずなのに」

「人間の慣れって怖いわね。どう考えてもおかしい……しかも年頃の女の子の身体に入ってあんな所やこんな所まで見たり聞かれたりしたのに……」

「そ、それは仕方ないじゃないですか!」

「と、そんな話はさておきよ!」

 

 氷は机を叩く。

 

「"新たな記憶"の話」

「あー……そうですよね」

 

 モヤシは目を逸らす。

 なにやら言いにくそうな顔をしている。

 

「なに。そんな酷い記憶なの?」

「いや、そんな事はなくて……ただ氷さんの予想が外れてたって事がわかりました」

「どういう事?」

「僕は"元研究員"でもなかったんです」

「……え?」

 

 元研究員ではない。

 その言葉を聞いて氷は思わず声を漏らす。

 

「なら、あなたが……じゃなくてイカリが言ってたリラティブドライバーを取ってきたって発言。これってただの不法侵入して窃盗して逃亡したってだけになるわね」

「そうなります……って、意外と驚かないんですね」

「まぁあくまで予想だから。と、それで?」

「あ、はい。僕はリラティブドライバーを研究所から持ち出した後、逃げる途中でエモーションに会いました。そして僕は逃げた末に捕まってしまい、感情を食べられてしまったんです……」

「でも?」

「その筈だったんですけど、僕は記憶を失っただけで感情もそのままにこの通り無事でした。それから意識が朦朧とする中で歩き続けて……こうして氷さんに拾われたって感じです」

「最初に会った時か……」

 

 思えばあれから長い時間2人は一緒にいる。

 氷は基本的に誰かと一緒にいる事が多かった。誰からも好かれる彼女の周りには、知らぬ間に男女年齢問わず多くの人が集まった。

 学校から帰ってきて通話をして明日の予定や遊びに行く予定など計画を立てたりした。

 だが、通話を切ればひとりぼっち。学校から帰ってきても「おかえり」と出迎えてくれる人物もいない。

 1人でご飯を食べて、静かに勉強をし、眠くなってきたら寝る。それが毎日の様に家でやる事だった。

 そんな日々を過ごす彼女の前に突如として現れた。それがモヤシだ。

 モヤシがあの日、あの場所で出会わなければきっと彼女の感情は冷え切っていたのかもしれない。

 

「モヤシ」

「はい?」

「ありがとね」

「きゅ、急にどうしたんですか?」

「なんでもなーい」

 

 氷はふふふっと笑う。

 その顔を見たモヤシは自然と笑みが溢れる。が、モヤシはすぐに顔を背けた。

 一瞬、何か思い詰めた様な表情を浮かべていた。

 それを見た氷は何か言いかけたが、すぐに呑み込み、モヤシに昼食を作る様に促す。

 

「……ちょっとご飯作ってよ!今まで私にやらせてたんだからわかるでしょ!」

「じゃ、じゃあ……」

 

 そう言ってキッチンに立つモヤシ。

 なにやら卵とひき肉を取り出して調理を始めた。

 暫く待っていると段々といい香りが漂ってきた。いい匂いでどこか懐かしさを感じる。

 

「できましたよ」

「はーい……って、これ作ってたの」

 

 出てきたのはそぼろ丼。卵とひき肉の2色で構成されたシンプルな丼。

 モヤシの事だから"もやし"でも入れて肉やら野菜やらで炒めると予想していた氷だったので、これには少々驚いた。

 特に焦がした様子もなく、料理の出来栄えはまぁ見事なものだった。

 

「もしかして前から料理できる感じ?」

「いやぁ……その辺に関しては僕記憶がないんです。ただ氷さんが色々な物を作ってたのを見て覚えたんですよ。これも氷さんが普段から料理を作ってくれていたお陰です」

「はいはい。ま、記憶はなくても、こうやって新しい事を覚えてくれればいいし、もし仮にイカリが言うもう1人のあなた自身だったとしてもモヤシはモヤシだと思う」

「……ありがとうございます」

 

 また一瞬に悲しい顔を浮かべたモヤシ。

 しかし、すぐにいつもの優しい顔に代わり、

 

「じゃあ食べましょう!ははっ、食事するにも毎回氷さんと切り替わらないといけなかったので、これでだいぶ楽になりますね!」

 

 と言ってから「いただきます」と言って食べ始めた。

 それでも氷は何も聞かずに一言。

 

「いただきます」

 

 何か隠しているモヤシではあるが、きっといつか話してくれる。

 そう信じて氷も一緒になって食べ始めた───────。

 

 

 *****

 

 

「はっ、相変わらずエモーションの癖にでかい場所に住みやがって。カナシミ、お前は何になるつもりだ?」

 

 高層ビルの社長室。ドアを乱暴に開けながらイカリが入ってきた。

 それを見たカナシミは静かに涙を流す。

 

「相変わらずはお前もだろう、イカリ」

 

 社長室にはカナシミとイカリの他に、キョウフとヨロコビも椅子に座っていた。

 この4人が集まった理由。それは……。

 

「あぁ、遂に我々4人が集まる時が来た……想定よりも時間を費やしてしまったが

 、ようやく計画に移せる」

「それで……俺を呼び出してなんの様だ?俺は個人的に忙しい身なんだが」

 

 イカリがそう言うと、カナシミは話を始める。

 

「我々エモーションとは本来、人間の感情を糧にして成長し、やがて人間に近い存在へと生まれ変わる。ただ我々という生物は、その食性から永遠に人間と共生できぬ関係にある。ならば、どうするべきか。この問いの答えは至極簡単。"エモーションのみ"の世界を作ればいいのだ」

「……とうとうやるつもりか」

「そうだ。我々4人が集まる事がその幕開けである。人間の感情を主に司る『悲しみ、喜び、怖さ……そして怒り。突出した感情を持つ我々はエモーションの中でも特別。力を結集し、同志を増やし、人間をより効率よく糧とする様に───"エモーショナリデミック"を再び行う」

 

 カナシミは頬に涙を伝わせる。

 それは悲しいという感情なのか、それとも喜びに近いのか。

 

「だからこそリラティブドライバーが必要なのだ」

「リラティブドライバーだと?」

「私がエモーショナリデミックを行えたのも、全てはリラティブドライバーの機能によるものが非常に大きい。今はモヤシくんと氷くんの手に渡り、同志達は彼らによって何百と殺されている。エモーションを倒す事が可能な力……これこそが何より重要なパーツである」

「エモーションを殺せるのにか?」

「我々を殺せる力。毒をもって毒を制す、という言葉がある様に同じ力が必要不可欠なのだよ。このリラティブドライバー奪取にはそれほどの意味がある。その為には─────」

「俺の力が必要なんだろ?"お前らよりも特別"な俺の力が」

 

 カナシミが言い終わる前にイカリが言い放つ。

 そして間髪入れずに続けた。

 

「安心しろ。お前に言われるまでもない。俺はただ……俺の身体を取り戻したいだけなんだよ。そうすりゃその副産物としてリラティブドライバーも手に入る。一石二鳥とはまさにこの事だろう?」

「その通りだ」

「なら、いいぜ。正直俺はエモーショナリデミックだとか同志だとか関係ねーんだよ。もし俺のやり方が気に入らないのなら────」

 

 イカリの顔が歪むと共に、カナシミに圧が飛ぶ。

 

「俺はお前を殺すぞ」

「……その件に関しては問題ない。君に一任しよう」

「話が早くて助かるぜ。同士」

 

 そう言ってイカリはドアを乱暴に開けて帰っていった。

 ヨロコビはそれを見て爆笑していたが、キョウフは情けない悲鳴をあげていた。

 イカリがいなくなった社長室。暫くしてヨロコビはカナシミに尋ねる。

 

「ははははははっ!マジあんな自由にやらせていいのかよカナシミ?」

「何も問題ない。私の計画の中に、彼のあの態度も混ざっている」

「そりゃマジかよ!ただ、いいのか?仮にあいつがマジでリラティブドライバー奪取できたとしても、それってつまりマジで身体を取り戻している時じゃんか。そのままリラティブドライバーパクられたらマジで笑えなくなるな!あははははははっ!」

「ヨロコビよ。言っただろう?何も問題ない、と。全ては計画の範疇。イカリがこれから何をしようとも何も揺らぐことはない。ただ多少手間が増えるだけだ」

「……ぷっ!あははははははっ!流石カナシミだな!俺はやっぱあんたについてくぜ!」

 

 社長室にヨロコビの笑い声が響き渡る。

 カナシミはガラス越しに外の景色を見つつ、ガラスに映る自分を見て、僅かに微笑む──────。

 

 

 *****

 

 

 愛ノ川高校の文化祭の日。

 色々あったものの無事にその日を迎えられた。

 

「ほらほら、可奈。お菓子ばっかり食べてないで準備して」

「ほっほはっへほ〜」

「リス」

 

 氷の一言で教室に笑い声が響く。

 彼女のクラスはお化け屋敷である為、クラスメイト達は早めに来てメイクを行う。

 様々なお化けコスチュームが並ぶ中、氷はシンプルに白い服を着て髪の長い幽霊役をやる事になっていた。ただその再現度はかなりのもので、シンプルながらも昼に見ても悲鳴をあげるくらいには怖い。

 

「……ねぇねぇ氷〜」

「なに?」

 

 可奈が氷に話しかける。

 

「彼氏さんとはどうなの〜?」

「か、彼氏?」

「だってさっき言ってたじゃん。分離しちゃったから男と女屋根の下2人からだって〜」

「そんな言い方してないから!ていうか彼氏とかひとっっっことも言ってない。モヤシはただの……」

「ただのぉ???」

「ど、同僚……?」

「へえええええええええええええ?」

「お菓子全部処分するよ」

「ごめぇぇぇぇぇぇぇん!!」

 

 ただ氷は家を出る前に、モヤシに一言声をかけていた。

 

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「モヤシ、文化祭来る?」

「え?良いんですか?」

「うちの高校一般公開してるし、どうせ家にいても暇でしょ?」

「何も言い返せない僕がいます」

「でしょ?なら、来てよ。パンフレット机に置いてあるからそれ見て探して」

「あ、はーい─────」

 --------------------------------------------

 

 

 *****

 

 

 そうして今、モヤシは愛ノ川高校に向かう最中であった。

 純粋に1人で歩くのは何ヶ月ぶりだろうか。

 

「確かここをまっすぐ……」

 

 暫く歩いていると愛ノ川高校が見えて来た。

 早く見に行きたいモヤシは走り出そうとした───その時だ。

 電柱からニュッと人影が現れる。

 

「………ッ!」

「よぉ、俺」

 

 モヤシの前に現れたのはそう、イカリであった。




期限日に投稿できないのほんと申し訳ないです!

次回、第16話「燃やし=怒り」

次回もよろしくお願いします!!
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