仮面ライダーリラティブ   作:辰ノ命

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皆さんご無沙汰してます。
それではどうぞご覧ください。


第16話「燃やし=怒り」

 その姿はモヤシと変わらない。

 ただしそれは非常にぼやけている。はっきりとした形を作れていない。

 まるで決定的な"パーツ"が不足しているかの様だ。

 

「イカリ……!!」

「ようやく分離した様だな」

「ようやく?お前この事を知っててわざと────」

 

 イカリはモヤシに指を差し、舌打ちを混ぜながら横に振る。

 

「偶々だ。偶々ではあったが……俺からしたら都合がいい。やっぱりそのリラティブドライバーにはまだ秘密が隠されている様だな」

「………」

 

 どうやらイカリはモヤシがリラティブドライバーを持っていると勘違いしているらしい。肝心のリラティブドライバーは氷が持っている。

 普通なら狙われる可能性のあるモヤシが持つべき筈なのだが、氷は昨日の時点である実験を行っていた。

 

 

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「モヤシ。私、今から外に出るから」

「え、もうこんなに暗いのにですか!?」

「試したいことがあるの」

 

 氷はそう言って真っ暗の中、外へと出ていった。

 それから暫く経った頃、家で待っていたモヤシは突然どこかへと吸い寄せられる。

 身体は粒子状になり、家々を貫通し、やがて氷の元へと辿り着くと仮面ライダーリラティブへと変身した。

 

『え、えぇ!?どう言うことですか!?』

「私たち身体が分離しても根本的な部分は繋がったままみたいね。あなたも感じ取れなかった?」

『そ、そういえば……』

 

 モヤシが家で待機中、やけに不快感を覚えていた。

 この時期の夜は少し冷える。ただモヤシは中にいるのでそう言った感情は持つことはない筈だった。

 

「これがリラティブドライバーのせいなのか、それともあなた自身が特殊だからなのか。それはまだわからないけど、とにかく"これ"を持っていなくても感情を感知できる事はわかったわ。あなたが家でソワソワしてたのもわかってたし」

『おぉ、つまり別行動をしていても互いに状況がなんとなくわかるって事ですね!』

「そう。でも、まだもう1つ試さないといけない事がある」

『ん?なんですか?』

「今度は逆バージョンも試すの───」

 

 その結果、モヤシとは違って氷の身体は何も変化がなかった。

 つまり変身する条件は2人が一定の距離を保ち、2人が揃っていないと仮面ライダーへの変身は不可能。そしてこの様にご自長距離での変身はモヤシのみに許される特殊な方法という事。

 

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 これによりモヤシはリラティブドライバーを持たず、氷に託しているという訳だ。

 

「カナシミからリラティブドライバーを奪う様にと言われたが、そんなもん後でどうとでもなる。お前から身体を取り戻せば済む話だからな」

「取り戻すだって?これは僕の身体だ!勝手に偽物扱いするな!」

「はっ、何訳のわからない事を言ってやがる。もう一度自分に問いかけてみろよ」

「な、何を言ってるんだ……」

「記憶」

「………っ!!」

「戻ってるんだろ?研究所までの記憶がよ」

 

 モヤシは動揺を隠さなかった。

 それをイカリは見逃さない。

 

「ぼ、僕は……」

「リラティブドライバーはあの研究所から盗み出したものだ。俺が……お前が忍び込んで手に入れたブツ。これを売れば金になる?興味があったから記念品に?違う……お前は飢えていた。それ以上に刺激的な快楽を」

「やめろ……!!」

「こんなドライバーなんて偶々気分で持ち出しただけだ。それ以上にお前がやりたかった事……全く縁もゆかりもない奴らの恐怖に怯えた顔。それが見たくてたまらなかった。誰でもいい。柔らかい綺麗な肌に傷をつけただけで湧き出る真っ赤な液体。お前の心を揺さぶる景色!」

「やめろッ!!」

「よう……"殺人鬼"。今度は誰を殺すんだ?─────」

 

 

 *****

 

 

「────モヤシ?」

 

 氷は感じ取っていた。モヤシから伝わってくる悲しみや怒り、恐怖……。

 色々な感情がぐちゃぐちゃとしており、本人が正気じゃない事がすぐにわかった。

 

「どうしたの氷?」

「……可奈、ごめん。ちょっと席外してもいい?」

 

 そう言うと氷はすぐに教室から飛び出ようとした。

 

「あ、待って氷ッ!」

「なに?」

「文化祭、まだ始まったばかりだからね!」

「……えぇ!また後で!」

 

 氷は校内から飛び出し、人気のない所でリラティブドライバーを腰に装着し、それからメダルをセットして変身する。

 

「変身」

 

 仮面ライダーリラティブ ウィズソローに変身した氷。

 明らかに情緒が不安定となっているモヤシに声をかける。

 

「モヤシ!?大丈夫!?」

『…………』

「モヤシってば!」

『氷……さん……?』

「私がいない間に何があったの?」

『僕は……僕は黙っていた事があります……』

「黙っていた事?それって……」

 

 モヤシに聞こうとした所で、不気味な笑い声が聞こえてきた。

 その方向に振り返ると、怒りの形相をした仮面を被った異形の怪人が現れた。

 

「イカリッ……あなたがモヤシに何か吹き込んだのね!」

「事実を述べただけだ。ちょうどその会話の邪魔をしたか?」

「それ以上モヤシを追い込むんだったら……私は容赦しないから」

「そうかそうか。だが、今から話す事を聞いてお前がどう判断するか、だな」

「何を言って……ッ!?」

 

 リラティブは咄嗟に顔を逸らす。

 直後、頬を掠める様に炎の弾が横を通り過ぎる。

 

「はっ!」

 

 それに繋がる様に今度は炎を纏った拳がリラティブに迫る。

 それを腕をクロスさせて凌ぐが、圧倒的なパワーの前にそのまま後方へと吹き飛ばされてしまう。

 

「きゃっ!」

 

 後ろにあった建築物が壊れて瓦礫と化す。

 リラティブはこの場にいてはまずいと判断し、氷で道を作るとそれを滑って別の場所へと移動する。

 

「逃すかよ!」

 

 それを追う様にイカリは、下半身を燃やしてロケットエンジンの様に稼働させる。

 先に飛び出したリラティブであったが、イカリの速度が上回る。

 

「は、速い……!?」

「残念でした」

 

 イカリは下半身を元に戻すと、勢いのままリラティブを蹴り飛ばす。

 それからリラティブは大きく回転しながら、広い工場地帯へと入った。

 

「くぅ……!!」

 

 体制を立て直そうと荷物が散乱している場所まで氷を張ると、そこを滑って上手い具合に着地して衝撃を抑えた。

 脇腹がズキズキと痛むがこの程度であるなら戦闘可能だ。

 

「随分と辛そうだな」

 

 イカリは既に目の前だ。

 

「その状態のまま聞かせてやろう」

 

 イカリは言うがリラティブはその場から飛び跳ねてキックを喰らわせる。

 だが、イカリは微動だにしない。

 

「聞かせてやるって言ってんのに……ウゼェ女だなッ!!」

 

 そしてリラティブの足首を万力の様な握力で掴むと、地面に乱雑に叩きつけた。

 

「かはっ……!!」

「オラァッ!!」

 

 そのままリラティブを1回転させて再び荷物が散乱する場所へと放り投げる。

 叩きつけられた衝撃が身体に残り、声を発する事もできない。

 

「くっ……ぁ……」

「アマなお前に簡潔に、わかりやすく、一言で教えてやる。そいつは……"殺人鬼"だ」

「………っ……」

「何がって顔をしてるんだろうな。本人から直接聞きたいか?あ?」

 

 氷は震える声で問う。

 

「殺人鬼……?モヤシ……が……?」

「研究所から逃げた話は聞いたか?あれはそこの奴ら全員殺してから逃げたんだよ」

「………そんな……!」

「デタラメ言ってると思うよな?だが、真実はそうなんだよ」

 

 それからイカリは研究所で起こった全てを氷に話した。

 氷はモヤシの表情が度々暗くなった事、なぜ教えてくれなかったのかようやく理解できた。

 

「……だから何よ」

「は?」

「それはモヤシであってモヤシじゃない。私の動揺も誘ってるんだろうけど無駄よ。私はモヤシを信じてる。どうせあなたが黒幕なんでしょ?あなたが……"本体"であるなら」

「……はっ、まさかここまで関係が進んでるとはなぁ……思った以上に繋がりをぶち切れそうだ」

「繋がり……?」

 

 イカリはニタリと微笑む。

 

「これから話す事は全て真実だ。よく聞け。まずモヤシだが、本来は存在しない筈の人間だ」

「……なんとなくわかってた……」

「だろうな……そしてここからだ。今、俺はモヤシを人間と称したが実際は複雑だ」

「え……?」

「モヤシはエモーションに感情を吸われた……謂わば外側はあるが中身がない状態、謂わば抜け殻な訳だ。まぁそれが本来のエモーションに襲われた人間の筈なんだが、こいつはリラティブドライバーを所持していた。これにより俺の感情の奥底にあった善の心がこいつに留まった。そしてそれは新たな別人格を生み出した」

「つまり身体自体はあなたのもので、中身は……」

「そして中身はエモーションの中にいっちまった」

「じゃああなたはエモーションの身体を逆に乗っ取ったって事?」

「ご名答。随分と時間掛かっちまった。カナシミすらこの事実に気づいてないぜ?俺をまだエモーションのイカリだと思ってやがる……要は俺が"本物のモヤシ"というのによ」

 

 イカリは再び不気味に笑う。

 それから氷が何か質問をしようとするが、イカリはそれを遮って話を続ける。

 

「あれはお前がモヤシを見つける前……いや、俺が研究所を出て……もっと前か。俺はとある民家に忍び込んだ。金やら物やらそんなもんに興味はなかった。最初の殺人がそれだったなぁ……それから俺は複数人を同時に手をかけた方が楽しいことに気づいた」

 

 突然、イカリはこう言い出した。

 何故か氷は嫌な汗をかき始めた。

 

「俺は次にターゲットを家族に定めた。両親を先にやっても、子供を先にやっても。どちらにせよ違った表情が見れたよ」

「ね、ねぇ……」

 

 氷の声が震える。

 それは恐怖か、それとも……。

 

「俺は犯行を繰り返した。快楽がその身を埋め尽くすまで……ニュースにもなった頃、あの日、エモーショナリデミックが始まった。それはそう────」

「2年前」

 

 先に氷が発言した。

 その表情はみるみるうちに鬼と化す。

 

「そう、そうそうそうだ!もうなんとなく察しついてきただろう?俺が、モヤシが……やったんだよ」

「あなたがッ……!!!」

「ようやくネタバラシだな」

 

 イカリはリラティブの頭を乱暴に掴んで言い放つ。

 

「お前の家族。寒波家全員を殺したのは、この"俺たち"だ」




次回、第17話「融合=帰還」

次回もよろしくお願いします。
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