仮面ライダーリラティブ   作:辰ノ命

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皆さんご無沙汰してます。
それではどうぞご覧ください。


第17話「融合=帰還」

 寒波一家殺人事件────。

 この事件は"エモーショナリデミック"が収まってきた頃に報道された。

 エモーショナリデミックの発生中に寒波家に忍び込んだ男が、そこにいた一家を皆殺しにした残酷な事件。

 被害者は氷の両親に、"冷"という弟。先に殺されたのは冷で、その後に氷を逃す為に囮となった父と母。

 

「お姉ちゃん……助けて……」

「冷ッ……ぁあ!!」

 

 姉の名を呼ぶ弟の掠れた声。ブクブクと血を吐き出しながら助けを求める。

 身体を引き摺りながらも、必死にその手を氷に伸ばす。

 

「お姉ちゃ──────」

 

 直後、冷の指が飛ぶ。

 指先から蛇口を捻った様に命が流れ出す。

 

「あっ……」

 

 弟の名を呼ぼうとした氷。それは冷も同様。

 だが、殺人鬼はそれを許さなかった。

 殺人鬼は冷の後ろから抱きつくと、持っていたナイフでまず喉を切った。

 

「──────ッッ!!?」

 

 冷にはもう発言権はない。

 涙と血でぐしゃぐしゃになった冷の顔の横でニヤリと殺人鬼が微笑む。

 後はもう死ぬだけだと乱暴に床に捨てる。

 

「はははははっ!!──────はぁ……次はお前だ」

 

 再び殺人鬼の瞳に殺意が宿る。

 氷は恐怖で足がすくみ全く動けない。

 

「女の身体は柔らかくて刺し甲斐がある。特に胸は面白い。デカければデカいほど弾力があってナイフが深く沈む。腹もいい。中に入れてかき混ぜてやれば口から滝の様に血が出るからな」

 

 聞くに耐えない生々しい男の言葉。

 氷は思わず吐き気を催し、その場に吐いてしまう。

 

「偉いなぁ。俺の為に腹のきったねぇもんを出してくれたのか?これで血以外の変なもの見なくて済む」

 

 男が近づいてくるのがわかる。

 ただ氷は前を向けなかった。前を向いたらもう正気でいられなくなる。今も冷静ではないが思考ができる状態。

 この状況をなんとかしようと、恐怖の中でも必死に最適解を見出そうとした。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

 

 その時、父親が横から割って入り、正面から殺人鬼に飛び掛かった。

 それに続く様に母親も背後から羽交締めにする。

 

「逃げろぉッ!!氷ッ!!」

 

 叫ぶ父親の背中にナイフがずぶりと突き刺さる。

 

「ぐうぅ……ッ!!」

 

 それでも父親は離さない。

 しかし殺人鬼は細身とは思えないほどの力で2人を壁や地面に叩きつけ、ナイフを出鱈目に突き刺しながら引き剥がす。

 

「あああああああああああああっ!!!」

 

 母親が絶叫する。

 殺人鬼の顔を引っ掻き、相手が怯んだ隙にそこらにあったもので殴りにかかる。

 

「そうそれだ!!ははっ、その抵抗だッ!!」

 

 それは殺人鬼に喜びを与えてしまった。

 ナイフが母親の口を通り過ぎる。その瞬間、母親の口は耳まで裂け、血が吹き出した──────が、彼女の目は死んでいなかった。

 寧ろそのまま前へと踏み出し、殺人鬼の手に噛みついたのだ。

 

「くっ……!?」

 

 メリメリと歯が食い込み、そこから血が滲み出す。

 母親が作ってくれた僅かな隙。それに合わせる様に父親は殺人鬼の顔面に、全体重の乗った渾身の一撃を叩き込んだ。

 

「あがッ……!!」

 

 殺人鬼は思わず倒れそうになった。

 しかし、すぐに足を踏ん張りまるで蛇の様にグネリと身体を捻り、その反動で母親をドアの角にぶつける。

 そして立て続けにドアを利用して頭を潰す。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」

 

 父親は絶叫と共に殺人鬼を殴り、殴って、殴り続けた。

 そんな抵抗に苦しむ顔を見せず、不気味に笑い続ける。寧ろその行為自体が彼を喜ばせた。

 

「ほーら切っちゃうよ」

 

 そう言うと殺人鬼は父親の腕を滅多刺しにする。

 ダラリと垂れる父の腕。そんな状態で抵抗できるはずもなく、気がつくと右目に冷たいナイフが突き刺さる。

 

「あははははははははっ!!」

 

 歓喜に溢れた笑い声が辺りに響く。

 2人が倒れたのを確認する殺人鬼。

 

「………待たせたな。ちょっと時間かけすぎちまった」

「嘘……やだぁ……ぁあッ!!お父さん、お母さん……冷………!!」

「いい顔だいい顔だいい顔だぁ……いいっ……………すごくっ………はははははははははははははははっ!!!──────────?」

 

 その笑い声が突然ピタリと止まる。

 殺人鬼は驚いた。

 

「逃げろッ!!逃げてくれ氷ッ!!」

「私たちが……守るからッ!!早くッ……!!」

 

 氷は2人の言葉に反発したかった。

 しかし、それはダメだと瞬時に判断する。冷静でいられた事が幸か不幸か。彼女の判断が自分の為ではなく、寧ろ2人の為なんだと決定付ける。

 

「あああああああああああああああああああああッッッ!!!」

 

 それから氷は走った。無我夢中で振り返ることも無く、ただ真っ直ぐと走り続けた。

 生きなければいけない。行かなきゃいけない。進まなくちゃいけない。

 ひたすらに真っ直ぐ。視界が涙でぐちゃぐちゃになっても、転んでも、ボロボロになってもひたすらに。

 

「き、君ッ!大丈夫かい!?」

 

 最後に倒れたその先に交番があった。

 エモーショナリデミックの真っ只中にいる筈もない警察官だったが、奇跡的にたった1人だけ待機していた。

 氷はすぐに保護され、事態が収まるまで時が流れる──────。

 

 

 *****

 

 

 モヤシが何も話せなかった理由がわかった。

 

「ねぇ……どうして」

「あ?」

「どうして黙ってたのッ……!!」

 

 これはイカリにではなく、自分に聞いているんだとモヤシは気づく。

 

『……………ぅ』

「何か言ってよ!!」

『……………………言えなかったんです……だって……これを言ったら氷さんを傷つけてしまうから……』

「そうよ。傷つくわよ。私の中にずっと"仇敵"がいたんだから」

『………僕の記憶がない時から、氷さんは僕を温かく迎えてくれた。受け入れてくれた。だから必死に何か恩を返さないかってずっと考えていたんです……でも、それはこの記憶が蘇ってから違った。僕は氷さんを只々不幸にさせていただけなんだって。今もずっと、これからも僕は誰かを不幸にし続ける。僕は……存在しちゃいけない化け物なんだ……!!』

 

 モヤシがそう言った瞬間、リラティブの身体は光を浴びて変身が解除され、2人は分離してしまう。

 

「氷さんすみませんッ……すみませんでしたッ!!僕は……僕はッ!!」

「モヤシ……」

 

 氷が何か言おうとした時、横から割って入るにイカリがモヤシの前に立つ。

 

「イカリッ……!!」

「もうやめようぜ。俺たちは一心同体……否、俺とお前は元々1人なんだ。お互い元の形に……元の名に戻るとしよう」

「僕は僕自身も、お前も絶対に許さないッ!!」

 

 モヤシは殴り掛かるものの片手で受け止められてしまう。

 

「さぁ、改めて1つになろう。本当の"俺"に戻るんだ」

 

 それからイカリは地面に転がったリラティブドライバーを拾い上げる。

 嫌な予感を覚えた氷は咄嗟に手を伸ばす。

 

「邪魔だ」

 

 氷は蹴り飛ばされる。

 それを見たモヤシは一瞬にして修羅の様な顔つきになり、イカリに飛び掛かった。

 

「イカリィィィィィッッ!!」

「あぁ?そんなに俺とくっつきたいのか?」

 

 片手で首を掴まれたモヤシ。必死に殴る蹴ると暴れて見せるもののイカリは全く怯まない。

 

「遂に手に入れた……これが俺の、俺たちの本当の姿だッ!!」

 

 イカリが腰にリラティブドライバーをセットすると、アングリーのメダルがまるで血の如く赤黒く染まり、全く新しいメダルへと変化する。

 

「ふんっ!」

 

 そしてイカリがモヤシを掴んでいた手に力を込めると、徐々に彼の身体はイカリの中へと吸い込まれていく。

 やがてモヤシは消える。静けさが残る中、氷が溢れるように名を呼ぶ。

 

「モヤ……シ……?」

 

 だが、目の前にいる人物はモヤシではあるが、"モヤシ"ではない。

 

「モヤシだと?違うな。俺はイカリ……でもないか。もう偽りの名にする必要もない。何故なら俺は完璧な肉体と完璧な力を手に入れたからだ──────俺の本当の名は『朝日 燈(あさひ あかり)』。ただの狩人だ」

 

 すると、周りにエモーションたちがわらわらと姿を見せ始める。

 狙いはリラティブドライバーであると燈は瞬時に判断する。

 

「やっぱりバレたか。カナシミの野郎……」

「あはははははっ!マジ裏切ったちゃったかやべーなイカリ!」

「ヨロコビか」

 

 エモーションの群れの中からヨロコビが姿を現した。

 ニコニコとした表情をしているが、既に臨戦態勢である事は誰から見ても明らかだ。

 

「イカリはエモーションの時の名前だ。今はもうただの人間……いや、エモーションの力を持った人間。ハイブリット形態。つまりはお前たちとは一線を画す存在になった訳だ」

「あちゃー!マジこれがキョウフの言ってた奴か。マジ予想通りではあったけど、マジ殺すしかなくなっちゃったな!」

「お前の狙いはわかってる。"これ"だろ?」

 

 燈はリラティブドライバーをトントンと指を刺す。

 

「マジそうそれ!大人しく渡しても殺すし、渡さなくてもマジ殺す!」

「どっちにしろ殺されるのか」

「マジ!」

「はっ、ならやってみろ。ヨロコビ、後悔するなよ」

《レイジ!》《ボルケーノ!》

《バーンアウト!コネクト!》

 

 リラティブドライバーがマグマの様に真っ赤に光りながら、火山の爆発する様な音が辺りに響き渡る。

 燈は拳同士を打ち鳴らし、右の親指を下に向けて前に突き出す。

 

「変身」

 

 左手でリラティブドライバーの上部を叩くと、背後から巨大な火山が中央に出現し、噴火するとマグマが噴き出て足元を固めていく。

 燈の身体に火山灰が纏わりつき、まるで灰色の彫刻の様な見た目となる。

 そしてその隙間からジワジワと赤みを帯びていき、最後に燈の身体から大量の炎と衝撃が発せられる。

 

《大噴火!リラティブ!ウィズレイジ!》

 

 まるでその姿は鬼の様。

 モヤシの勇ましいウィズアングリーの姿に、エモーション時のイカリの激しい怒りを表現した様な刺々しい見た目が融合。

 赤黒い装甲に走る管はまるで血管。どくどくと脈打つそれは血流の如く。

 

「……マジ?」

 

 ヨロコビの頬に汗が流れる。

【仮面ライダーリラティブ ウィズレイジ】が指を鳴らす。

 

「さぁ、燃やし尽くす」




お待たせしました……。

次回、第18話「爆熱=壊滅」

次回もよろしくお願いします!!
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