仮面ライダーリラティブ   作:辰ノ命

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皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


第19話「彼≠彼女」

 氷の頭は破裂した───────。

 と、氷自身もそう思った。

 

「────────ぅう………え?」

 

 リラティブの拳が止まっている。

 イカリ……否、燈の性格上痛めつけてから殺すという事も考えられるが、今回ばかりは"必ず殺す意思"を持って殴りかかった筈である。

 だから目の前で起きている現象は信じ難いものだった。

 

「モヤシッ!?」

 

 咄嗟に氷は彼の名を呼ぶ。

 それをすぐにリラティブは否定した。

 

「ふざけんじゃねぇッ!!そんな事がある筈ないッ!!」

 

 その言葉通り止まった拳は再び動き始め、氷の頬を掠めて地面を叩き割った。

 氷もこの短時間ながら冷静になり、顔を少し逸らした事で攻撃を避けられた。が、2度目の奇跡はないだろう。

 そして氷はすぐに立ち上がって距離を取った。

 

「はっ、逃げないのか」

「逃げられないから逃げる事をしないだけ」

「そうかよ。このアマ……なら避けてみろッ!」

 

 そう言ってリラティブは右手を出す。

 既に警戒体制に入っていた氷は、そのタイミングを見計らっており、右手を上げたとほぼ同時に横へ飛んだ。

 瞬間、後方に爆音と共に衝撃が氷を襲った。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 その衝撃で近くにあった壁に激突し、腕を痛めたが気にする余裕もない。

 

「よく避けたなぁ?ただ次はない。横に飛ぼうが、上に飛ぼうが関係ない。避けても届くほどの火力で確実に殺してやる」

 

 あぁ、やっぱり同じ声だ。と、氷は思う。

 何度も会話をし続けてきた。それが頭の中であれ、対面であれ、毎日の様にこの声を聞き続けた。

 ドスが効いた声。怒りを露わにする態度。乱暴な口調─────それら全て"燈"という殺人鬼のものであった。

 両親と弟の仇であるこいつは憎い。だが、憎しみや怒りの中に何故か現れる悲しみの感情。

 

「………モヤシ、いるんでしょ?」

「なぁ……もういないんだよ。あいつは。どこにも存在しなかった。このリラティブドライバーのせいで産まれた俺の欠片。はっ、俺に善の心があるとは思わなかったが……なるほど。人間、皆最初は善人。生まれ育った環境が悪いというがまさにこの事だな」

「ねぇ」

 

 氷は理解していた。だが、信じられない気持ちが優っていた。

 だから否定して欲しかった。ハッキリと。もう一度。

 

「あなたは……私と一緒に過ごした"モヤシ"なの?」

「違う」

 

 燈は否定する。

 仮面の下は見えないけれど表情がなくてもわかる。声は低く冷たい。

 

「俺は"燈"だ」

 

 これが三度目の正直か。

 既にリラティブは至近距離におり、手のひらに怒りと炎のエネルギーを溜めていた。この距離は回避不可能だ。

 

「うっ……!!」

 

 氷がギュッと目を瞑ったその時だった。

 カランカラン。

 と、地面に何かが落ちる音が響く。軽い音。

 それが何かわからないまま、辺りは一瞬にして煙に包まれた。

 

「煙幕かッ!」

 

 リラティブは咄嗟に炎を掌から噴出し、その勢いで煙と共に氷すらも燃やしてしまおうと試みた。

 煙が消えた後、氷がいた場所を確認したが、焦げた後はあれど何かが燃えた痕跡すらなかった。

 

「誰だ……こんな戦闘中に入って来れる奴は警察や軍……カナシミの奴らか?いや、違うな。ヨロコビに任せている事からそれはない。あの女の取り巻きという事もあり得ない。だとするなら…………」

 

 燈はニヤリと微笑む。

 

「俺らを知っている関係者が他にもいたか─────」

 

 

 *****

 

 

 氷はとある廃工場の地下室に身を隠していた。

 勿論1人でここに来た訳ではない。先程何者かに助けられ、着いて行った先が廃工場の地下、という怪しさ満載の場所であった。

 しかし、家に行けばきっと燈は氷を殺しにくる。それを彼女も理解していたが故に、この人物についていくしかなかったのだ。

 

「さぁ、お茶でも召し上がれ」

「い、いただきます」

 

 周りは機械でぎっしりと埋まっており、真ん中には丸いテーブルと椅子が2つあるだけ。紙も床に散らばっていたり山になっていたり、明らかに片付けがされていない状態である。

 そして氷をここに連れてきた人物は髭面でボロボロの白衣を着たお爺さん。分厚いメガネをかけており頬は痩せこけている。

 

「君と話しをしたかった」

「私とですか?」

「あぁ、もち……ごほっ!ごほっ……!!」

 

 老人は激しい咳をした。

 すぐに氷は近くに駆け寄り背中を摩る。

 

「大丈夫ですか!?」

「………はぁ、はぁ……すまないね。それじゃあ椅子に座ってくれ」

「は、はい」

 

 2人椅子に座り直し、互いに向かい合う。

 

「この見た目とこの施設でわかるとは思うが……私は研究者の1人。名を『半情(はんじょう)』という」

「えっ!?研究者って……まさかっ!」

「そう。私は感情について研究し、世界に混乱を招いた哀れな男だ」

「…………」

 

 突然の事に驚き、氷は口を開いた口が塞がらない。

 

「で、でもあそこにいた研究員の人達って全員殺されてしまったんじゃ……!!」

「あぁ、みんな死んだよ。ただ1人、私だけ残してね」

「……あなたには聞きたい事があります。」

「そうだろう……ただ先に君について聞かせてもらってもいいかな?"リラティブドライバー"の件を伝えるにあたって、君自身がどこまで理解しているかを確かめたい」

「では、包み隠さず話します。あなたを信用して」

「ありがとう」

 

 それから氷は今までに起きた事を全て話した。

 モヤシとの出会い、その裏に隠された真実。仮面ライダーリラティブとしての戦いや強化アイテムについて全て。

 自分の過去も噛んでいる事から、話の内容を合わせて告げると、半情は暫く黙ってしまった。

 

「は、半情さん?」

「…………………ッッッ!!」

 

 半情は急に床に頭を擦り付けて謝罪した。

 

「申し訳なかった!!私が、私たちがあんなものを作り出してしまったから君の家族はッ……!!私の責任だッ!!君の気が済むまで殴ってくれて構わない!!許して欲しいとも言わないッ!!本当に、本当にッ……!!!」

 

 そのまま半情は涙を流して謝罪を続けた。

 が、氷は肩を叩いて顔を上げる様に言う。

 

「半情さん、顔を上げてください。別に謝る必要なんてないです。私はあなたに対して憎んだりしてません。寧ろあの殺人鬼が全ての元凶ですから。憎むのならあいつの方です。それより半情さんも仲間を殺されて辛かったんですよね?これ以上誰かが犠牲になるのは見てられないですよね?」

「あ、あぁ……」

「教えてください。この悲劇を繰り返さない為に今どうするべきか」

「君は……君は本当に凄い子だ……ありがとう」

 

 それから半情は冷静になると、静かに語り始める。

 

「私たちは感情について研究を進め、次第に生物そのものに着眼点を置く様になった。生物は感情があって成り立つものだと考えた私たちは、自分たちの手で何かしらの感情を多く持った生物を生み出そうと試みた。その結果産まれてしまったのがカナシミだった。ここまでは君も知っているだろう」

「はい、カナシミ本人から直接聞きました」

「カナシミは短期間で悲しみの感情以外に他の感情を持つ様になった。"心"。生物として初めてまともになった瞬間。私たちは当時驚きはしたが、喜ばしく思った。それからカナシミは映画や本、ゲームにおもちゃ、色んな事に興味を持ち始め、段々と人間と大して変わらない生物へと変わっていった」

 

 ここで半情の顔が曇る。

 

「………だが、それが良くなかったのだと私は気づいた。とある日、カナシミは聞いてきた。『なぜ、自分以外の生物はいないのか』、と。そう、当初エモーションという生物はカナシミしかおらず、莫大な資金の運用や極秘情報であったが為に1体しか存在させられなかったんだ……彼は賢かった。だから疑問に思ったんだろう。自身の存在を」

「…………」

「それから彼は自身について聞く様になった。自分は一体何者なのか。自分はなんの為に産まれたのか……そして彼は理解してしまった。自身が人間ではなく化物なんだと──────」

 

 

 *****

 ----------------------------------------------------

 

 

「半情、何故私は1人なのだ」

「カナシミ……それはだな」

 

 カナシミは普段ガラス張りの部屋にいた。

 いつも半情と話す時はお互い2人きりで、その部屋で喋るのが日課だった。

 

「私はこれまで豊富な知恵を得た。映画や本に登場する人物たちは"世界"を周っている。生きとし生けるもの達に出会い、別れ、広大な自然や文化を目にし、様々な感情を表現している。だが、私はどうだ?」

「カナシミ、落ち着くんだ」

「私の仲間はどこだ?なぜ私はいつもこの研究所に居なくてはならない?なぜ外に出てはいけないのだ?教えてくれ半情。私は……人間なのか?それとも化物なのか……?」

 

 その言葉に当初、半情は何も答えられなかった。

 

「君は疲れている。少し休みなさい」

「答えてくれ、半情。君だけにしか聞けないんだ。1番信用における君にしか……」

「……………すまない」

「待つんだ半情!」

 

 ─────それから数年と経つと、研究員達の様子がおかしくなってきた。

 最初は1人、受け答えがあまりにもおかしい研究員が見つかった。研究のし過ぎだろうと誰もが気にも留めなかったが、段々と人数が増えていくにつれて雲行きが怪しくなった。

 半情はこの間にリラティブドライバーの開発を進めていた。

 理由は勿論、カナシミの件が発端であった。後は実験するだけの段階だったが、ここに来てこの現象。

 明らかに何か別の要因がある。

 

「…………始めよう」

 

 半情の合図と共に行われた実験。

 リラティブドライバーで変身を試みた研究員の1人。

 

「あ、あぁ………!!」

「ミョルルルルルルルルル」

 

 不完全な生物。見るからに感情すらない触手の化物。人に近い姿。まさしく怪人。

 その生物は銃火器すらほぼ歯が立たず、なんとか別室に閉じ込めて監禁状態。

 

「カナシミ………」

 

 半情はカナシミの元へと向かう。

 カナシミは今までにない悲しそうな顔で質問する。

 

「半情よ。私は殺されるのか?」

 

 その単刀直入な質問に対し、半情は口籠る。

 

「……そうだろう。答えられる筈もない」

「聞いてくれ、カナシミ!」

「成程。創作物において感情を揺さぶる方法。その1つが、そう。裏切り……"哀しい"な、半情」

「カナシミッ!!」

「私を生み出してくれた事、感謝する。そして──────────────────さよならだ」

 

 次の瞬間、半情以外の研究員達は皆エモーションを生み出した。

 半情も死を覚悟したが、何故かエモーションたちは彼を襲おうとはしない。

 その時、カナシミは彼に近づいてこう言った。

 

「私は君を友達だと思っている。これからも……」

「カナシミ……私は……」

「"エモーショナリデミック"を開始する」

 

 その後、エモーショナリデミックが始まり、世界が混乱したのは言うまでもない。

 

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 *****

 

 

「────その後、私は研究所から逃げ、この地下施設を作り上げたのだ。まぁ元々ここは廃工場の中にあったし、研究所から持ち出したもの機械と私の貯金を叩いて作った機械を持ち込んだだけなんだがね」

「え、ちょっと待ってください」

「ん?どうしたんだい?」

「エモーショナリデミックの最中、燈が……殺人鬼が研究員達を皆殺しにしたのって……」

「ふむ……彼はもう既に侵入していたんだろう。研究所に」

「………そういう事ですか。燈は何度も殺人を繰り返しニュースに取り上げれるまでに至った。その後、すぐにエモーショナリデミックが始まり、それに乗じて燈は私たち家族を襲い、逃亡の末にそのまま研究所に行き着く。そこにいた研究員達は感情がなくなって植物状態だったけど、死んでいる訳ではなかったから燈が興味本位で殺してしまう。その時にリラティブドライバーを手に入れて、それからどこかでエモーションに襲われ、逃げて、襲われて……を繰り返す事2年が経ち、最終的にイカリとモヤシが生まれた」

「氷ちゃんには迷惑を掛けてしまった……」

「いえいえ!だからそれについてはー……と、ただ不可解なのはリラティブドライバーがなぜその場に残っていたのかっていう……自分が殺されるとわかっているなら破壊するか持ち出す筈ですし……しかもカナシミは今になって欲しがっているしで……」

 

 この疑問に半情は神妙な顔で答えた。

 

「私に持っていて欲しかったのかもしれない」

「え?」

「それが彼の最後の情けなのだろう………」




カナシミの情けとは?

次回、第20話「仲間≠友達」

次回もよろしくお願いします!!
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