仮面ライダーリラティブ   作:辰ノ命

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皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


第21話「氷結≠冷血」

「モヤシを返せ!」

「元々俺なんだよッ!」

 

 同じ仮面ライダーリラティブの拳がぶつかり合う。

 灼熱の炎と極寒の氷によって周辺を熱気と冷気が包み込み、相反する2つの矛盾が完成する。

 その矛盾を先に制したのは燈。

 

「こんなもんかァ!?」

「うぅっ……!!」

 

 パワーはやはり燈に軍配が上がる。

 氷はいとも容易く拳ごと吹き飛ばされて宙を回転する。

 

「まずは、一撃ッ!!」

 

 燈は追い打ちを仕掛けた。

 激しい炎を纏った拳が氷を捉えかける。

 

「調子に─────ッ」

 

 空中であるにも関わらず氷は身体を捻って、その拳を紙一重で回避する。

 まさか避けられると思ってなかった燈は一瞬固まった。

 

「乗るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 すぐに氷はその腕を取って全身を使って締め上げる。

 見事に決まった腕十字固めに、燈は苦悶の表情を浮かべた。

 

「ぐぅぅぅぅ……ッッ!!」

 

 ミシミシと鈍い音を立てる燈の腕。

 モヤシには悪いが1本でも折って有利に持っていきたい。と、氷は彼を傷つけてでも連れて帰る覚悟があった。

 

「や、やめてください氷さんッ!!」

「えっ……」

 

 モヤシの声。

 氷は思わず力を弱める。

 

「バカがッ!!」

 

 その時、燈の腕の筋肉が隆起し、氷をフルスイングすると簡単に腕から剥がれて地面に叩きつけられた。

 

「かはっ……!」

「頭ァ……砕いてやるよッ!!」

 

 燈の拳が燃え上がり、まるで爆発すらかの如く、氷の頭目掛けて飛んでくる。

 

「はぁっ!!」

 

 それを氷は両手から氷の柱を創り出し、地面に突き刺した勢いで避け切った。

 対象がいなくなった拳はそのまま地面にめり込んだかと思うと、そこから大爆発を引き起こし、噴火するのかの様に地面から炎が噴き出した。

 あの一撃を喰らっていたら一溜まりもなかっただろう。氷は体勢を立て直しつつ安堵する。

 

「このクソアマ。もう一つのリラティブドライバーを携えて来たと思ったら、俺の邪魔ばかりしやがって……挙句には"いない筈の奴"を助ける、だと?俺を殺せばモヤシも死ぬのにか?そもそもいないモノを殺すもクソもないが……ここまでやって無策という訳じゃねーはずだ」

「無策だけど」

「…………………は?」

 

 キッパリと言った氷に、燈はいつもなら笑い返してやる所だが、あまりにも正直な言葉が出て来て驚いた。

 

「あなたをボコボコにすれば、そのうちモヤシが顔出してくるんだろうなって思っただけ」

「お前正気か?」

「さっきもチラッと出て来たじゃない。やめて〜って」

「あれはモヤシじゃない。俺自身が言った言葉だ。んな事は分かり切っている筈だろう」

「ええ、わかってる。わかってるから少しでも希望を見出したいんじゃない?」

「何が言いたい」

「とある人が言ってたわ。あの時、攻撃を一瞬止めてくれたのは、融合したてで記憶が混在している一時的な現象でありモヤシではない……って。でも、私はそうは思わない」

 

 マスクに隠れた顔で氷はニカッと笑って見せる。

 

「あのバカなお人好しは私を悲しませる様な事はしないから!」

 

 氷の全身を心のエネルギーが駆け抜ける。

 

「私はモヤシを信じてる。だからモヤシッ!必ず連れて帰るからッ!!」

「馬鹿がッ!!妄想もそこまでにしておけッ!!」

 

 そして燈は再び拳に炎を纏うと、氷に向けてミサイルの様に打ち出した。

 

「ふっ!」

「なにっ!!?」

 

 氷はそれをすんでで避けた。

 それと同時に氷は、片脚に"氷"をスパイク状に纏って燈の側頭部に突き刺した。

 

「ぐっ……て、てめぇ──────なっ」

 

 頭を狙われた衝撃か足元を見ていなかった燈。

 いつの間にか凍らされてしまっており、その場から身動きが取れなくなっていた。

 

「やあァァァァァアァァァァァァッッ!!」

 

 氷は華麗な身のこなしで縦横無尽に動き回り、全身に強烈な蹴りを浴びせる。

 

「クソがァァァァッッ!!舐めてんじゃねーぞッ!!!」

 

 すると燈は掌から足元に炎を放ち、容易く氷を溶かすと、放出した炎をそのままに空へと飛んでいく。

 そして上空に着くと、両手を氷に向け、そこから放出する炎を雨の様に降り注がせた。

 

「まずいかも……ッ!!」

 

 それから氷は咄嗟に弧を描く様に手を振るい、空中に氷の壁を創り出した。

 と、その壁にちょうどぶつかった火の粉が、次の瞬間に爆発する。

 それを起点に放った炎の全てが次々に連鎖爆発を引き起こす。

 

「嘘でしょ!?」

 

 避け切るのは不可能と判断した氷は、自らを厚い氷の壁をドーム状に展開して耐え凌ごうと試みる。

 爆発する雨。高温の炎によって徐々に氷の壁は溶かされていく。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」

 

 氷は絶叫と共に"氷"の生成を続けた───────やがて雨は止む。

 

「…………」

「…………」

 

 リラティブは互い無言。

 片や想定以上のエネルギーの使用によりエネルギー切れ間近で、爆発による身体への影響で体力を大きく消耗。

 片や同じく過度なエネルギー消費によってギリギリで、氷の生成が間に合わずいくつか被弾して身体的なダメージが大きい。

 

「うっ……!」

 

 氷は思わず膝をついてしまう。

 それを見た燈は微笑んだ。

 

「はっ、ははっ……どうやらお前は限界みたいだな。このまま俺の手で終わらせてやるッ!」

 

 燈の拳に炎が灯る。

 それを見た氷は同じ様に笑って見せる。

 

「ふふっ、あなたもギリギリでなに強がってるの?そんな蝋燭みたいな炎で私を殺せる?」

「舐めるなクソアマ。満身創痍のお前をやるくらいならこれくらいで十分なんだよッ!」

「………それは"怒り"?」

 

 氷は問う。

 

「ああ……………"怒り"だッ!!」

 

 燈はそう言って炎を噴き出して氷に殴りかかった────────が、

 

「────は?」

 

 受け止められた。

 それもまだまだ子供で、女で、自分よりもひ弱な存在に片手で。

 

「な、馬鹿なッ……そんな事ある筈がッ!!」

 

 腕を振り払おうとしても全くびくともしない。

 氷はその手に力を込めると、燈は苦痛の声を上げる。

 

「ば、がぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁッ!!」

「……あなた何か勘違いしてる?」

「な、なんだとッ!?」

「あなたのそれは"怒り"なんかじゃない。人を痛めつけて喜ぶ"快楽"であり、紛れもない"殺意"の感情」

「それがどうした!」

「リラティブドライバーの性質を思い出してみなさいよ。あなたが今使っている"それ"の、本来の力をッ!!」

 

 次の瞬間。

 燈の腕が氷付けにされ、距離を取られた後、鳩尾につま先がめり込んだ。

 

「ごはぁっ……!!?」

 

 地面を無様にのたうち回る燈を、氷は悲しい表情で見据える。

 マスク越しからチラリと見えた表情に燈は驚きを隠せない。

 

「なんだその顔はッ……!!ゴホッ!」

「私の力は"悲しみ"。でも、あなたはどう?本来、力の源である筈の"怒り"を置き去りにして表に出ている感情。"殺意"。これが100%あなたが使いこなせていない原因。そして……エネルギー切れが起こる最大の欠点」

「待て……なら、お前はなにを悲しんでいる?仇を取る為……違う。助ける為?違う。なんだ、なにが悲しい。お前は一体なにを悲しんでいるッ!」

「あなたという存在を、かな」

 

 その答えは燈の殺意を増幅させるには事足りるモノであった。

 

「はっ……くくっ……俺の存在を否定するだと……?俺が悲しい奴だって言いてーのか?あ?」

「哀れな人よ……過去に何があったかは私にはわからない。けど、過去がどうあったとしても、"今の燈"という存在はあってはならない」

「ふざけるな……俺を否定するなッ!」

「あなたはただのエモーション。それ以上でもそれ以下でもない。モヤシが存在しない人?なら、あなた自身にも言える事。あなたは死んでエモーションが成り変わっただけ。"本当の燈はモヤシ"よ」

 

 最後に一言。彼の存在を思い出させるかの様に。

 

「そうでしょう?エモーション"イカリ"?」

 

 それは燈?を暴走させるには十分過ぎる程だった。

 

「違う、違う………違う違う違う違う違う違う違う殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すッッッ!!!」

 

 燈?の全身から赤黒い炎が噴き出した。

 まるで血を彷彿とさせる程、ドロドロとして嫌な臭いが漂う。

 

「あっ─────────」

 

 その時、燈?の動きがロボットの様にぎこちなく動き出す。

 

「こ……お、り……………こお、り……さ……………」

 

 この声は聞いたことがある。

 燈?と同じ声だが、氷にはそれが誰かわかる。

 

「うそっ………」

 

 何度も、何度も聞いた声。

 聞きたかったあの声だ。

 

「氷さんッ……!」

「モヤシッ!!」




モヤシ、帰ってくるのか……?

次回、第22話「過去≠未来」

次回もよろしくお願いします!!
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