最終章です。
それではどうぞご覧ください。
第24話「悲劇=災難」
「モーヤシ」
「はい?」
「呼んだだけ」
「なんですか、もー」
半情はこの空間が苦痛であった。
お礼をしたいと後日、寒波家に招待されたが何があったかと言わんばかしの光景が広がっていた。
モヤシと氷の距離が異様なまでに近く、そして誰がどう見てもバカップルに変貌していたのだ。
幸せなのはいいことではあるが、流石にこれはどうなのか。
「あ、あー……氷ちゃん」
「どうしたんですか半情さん?」
「何があったの」
「はい?」
「君たちの距離が近いから!!昨日の今日で変わり過ぎでしょ!!?」
「あー…………」
氷が言うにはこうだった。
イカリという因縁を終わらせた2人は相棒という壁が崩れ、関係性を妨げるものがなくなり一気に距離が縮まった。
これにより2人は今まで男女関係というものを構築してこなかったが為に偉い方向に進んでしまった訳だ。
「にしてもだよ……それを絶対に人前でやっちゃダメだからね!おじさんは忠告したから!経験者だから!」
「ラブラブだったんですね」
「…………まぁ私の話はいいんだ。それより身体の調子は───ゴホッ!」
「半情さん!」
氷はすぐに半情の元へ行き背中をさする。
「ああ、すまない……全く研究員たちの仇を取れたと思ったら次はこれか……ポンコツな身体だよ」
「ごめんなさい。私たちがふざけてたから……」
「君たちのせいじゃないよ。それより身体の具合だ……リラティブドライバーを使用して1人での変身。モヤシくんはどうだい?」
そうモヤシに尋ねると、彼は身体をあちこち触れて言った。
「そう……ですね。身体は特に変わった様子はないみたいです。それに……」
「それに?」
「僕の身体は元々"燈"でした。けれど、今は"別の燈"になったみたいに身体の傷や調子もまるで違うみたいで」
「ほう……それは君が新しい"人"となったからなのだろう」
「え?」
「モヤシくんは元々存在せず、又その身体も燈のものだった。しかし、あの時2人は互いに別の人間として……モヤシくんが己自身を拒否した事で、全く新しい身体を持って分離した。これによって君は新しい"燈"として生まれ変わったのだろう」
「………そうだったんですか」
「何はともあれ身体に異常がない様で良かった。次に氷ちゃんは?」
今度は氷に質問が飛ぶ。
「私も特に問題ありません。燈にやられた傷は痛みますけど、それ以外はなんとも。ただ私以外となれば話が変わってきます」
「というと?」
「モヤシと私は距離が離れていてもどちらかがリラティブドライバーを所持している限り、お互いの感情の起伏を感知できました。でも今はそう言った事が見受けられないんです。昨日少し時間を使って2つのドライバーを所持した状態で距離を取ってみました。けれど結果は先ほどの通り無反応といった具合で……」
「うーん……ただハッキリ言えるのは、お互いに強い想いがあれば再び可能となるはずだ。僕もそれに関してはわからないけど、モヤシくんが自身の新しい身体を手に入れた事が原因の1つと取れるかな」
「やっぱりそうですよね……」
2人が議論を重ねている間、モヤシはテレビでニュース番組を観始めた。
「──────2人とも!!」
モヤシは大声を上げて2人を呼ぶ出す。
その声を聞いて驚いた氷と半情はテレビの方に視線を向けた。
そこに映っていたものは目を疑う光景であった─────。
「速報です!街中でエモーションが大量発生しています!付近にいる皆さんはすぐに避難を!繰り返します!付近にいる皆さんすぐに──────きゃあっ!?」
「ミョルルルルルルルルル……」
別のニュース番組に切り替えると、そこには人間から次々にエモーションが生み出される悲惨な光景が広がっていた。
3人はこの光景に見覚えがある。2年前の惨劇。
エモーショナリデミック────────。
*****
「キョウフ。そろそろ彼らが来る頃だ。頼んだぞ」
「う、うん!任せてカナシミ!」
カナシミは空を見上げる。
「リラティブドライバー……あれさえあればこの街に留まらず全国を……私たちの食糧問題も解決できた筈だ」
「そ、それってどうしてだっけ……?ひいぃ、忘れてごめん……!」
「あのドライバーは1人では感情を抑制できずエモーションを生み出してしまう欠陥が存在する……が、敢えてそれを利用する。1人の人間を媒体にリラティブドライバーの出力を定期的に調整。これにより永遠と
「なら……ぼ、僕が手に入れるよ!エモーションの未来の為に!」
「キョウフ……お前は足止めだけでいい。私はその間に生み出されたエモーションたちを掻き集め、私の能力と彼らの生命力を使用し、"テラ・エモーショナリデミック"を開始させる。尊い犠牲ではあるが仕方あるまい。我々の未来の為に──────」
カナシミがそう言った瞬間、邪魔者の声と懐かしい声が聞こえてきた。
「早いな。仮面ライダーリラティブ。そして……………我が旧友よ」
「カナシミ……」
カナシミは半情を見た途端に涙を流す。
それからすぐに背を向け、自分の為すべきことの為にある場所へと向かう。
「待てっ!カナシミ!」
半情が彼を追おうとすると、キョウフがそれを妨げる。
「い、行かせない!」
ガタガタと震えるキョウフに2人の男女が前に出る。
「半情さん!僕たちがキョウフを倒します!」
「あなたはカナシミを!」
そう言われ半情は静かに頷くとカナシミの元へと走り出す。
最初は追いかけようと思ったキョウフであったが、目の前に2人に行かれた方がだいぶリスクがあると判断する。
キョウフは街中に溢れる恐怖を吸い取り巨大化した。
「あの時と同じ巨大化ね」
「なら、僕たちもあの時と同じ様に」
「今なら使いこなせるかもね」
氷とモヤシはリラティブドライバーを腰に装着。
共に手を握り合うと彼の身体は氷と一体化した。
ボルケーノカンジョーメダルとアイスバーグカンジョーメダルをオウトツバイダーに装填した上でドライバーに装填。
《ボルケーノ!》《アイスバーグ!》
《トゥワイス!コネクト!》
「変身ッ!!」
掛け声と共にリラティブドライバー上部のボタンを叩く。
《リラティブ!ウィズボルケーノ&アイスバーグ!》
「「さぁ、燃やして凍らせる!!」」
ウィズボルケーノ&アイスバーグはお互いの感覚が共有されない弱点がある。
が、今の2人にそんなものは関係ない。
「モヤシ!全力で殴り行くわよ!」
「はい!」
なんと2人は感覚が遮断されているにも関わらず、氷は足場を創り出し、それに合わせてモヤシが飛び乗り、巨大化したキョウフに対して2つの属性攻撃を様々な角度から炸裂させたのだ。
キョウフもこれには驚きを隠さなかった。
「全然性格が違うッ!!」
「僕はもう新たな燈だッ!!今の僕は氷さんのやりたい事が全てわかるッ!!」
炎による攻撃でキョウフを炙っていると、氷側が足場を蹴って急に上空で飛び出した。
「呼び捨てで呼んでって言ったでしょッ!!」
氷の怒りの踵落としがキョウフの脳天を撃ち抜いた。
その一撃によりキョウフの巨体は地面に沈む。
「氷ィ……慣れないんですよ!」
「敬語は許すけど名前だけは許さないって言ったでしょ!」
「ひぃん……」
「はぁ、このまま追撃するわよ!」
「りょ、了解です!」
そのまま2人は落下する勢いに任せ、リラティブドライバー上部のボタンを押し、両足を揃えて地面に倒れたキョウフに必殺の一撃を放つ。
《ボルケーノ&アイスバーグ!フィーリング!》
両足を氷で固め、尚且つ両手から炎を噴射しブースターの役割に使い、勢いを更に増して放った一撃はキョウフを倒すには十分過ぎるほどであった。
「あ、あぁぁぁ……!!」
かつてより成長した2人にとってキョウフは造作もない相手である。
キョウフは泣き喚きながら段々と身体を小さくしていく。
「ひぃぃぃぃぃぃぃ………」
「どう?私たちに2度も同じ様に負けるのは?」
「やだぁ……いやだぁ……僕は死にたくないッ……!!」
「……………」
"死にたくない"。
その言葉は氷やモヤシにとって何より引っかかる。
「嫌だ嫌だッ!!なんで僕たちは死ななきゃいけないんだ!!僕たちだって生きているのに……どうして殺されなくちゃいけないんだよ!!」
「…………」
それに対して上手く言葉が出てこない2人。
黙っていればいずれキョウフは消える。ただこのままでいいのだろうか。
そう思う2人。
一時の時間か流れた。
「………カナシミ……ごめん。僕は……君の為に………」
キョウフは突然両手を広げて空を仰ぐ。
「未来を創るよ─────────」
その瞬間、キョウフの身体に凄まじいほどの黒い霧が吸い込まれていく。
リラティブはそれが何かを感じ取れた。これは恐怖の集合体であると。
「あ、あああああああああああああッ……!!」
次第にキョウフの身体は破裂せんばかりに膨張し始めた。
この光景はイカリの時にも見た事がある。
「耐えろ耐えろ耐えろォォォォォォッッッ!!」
キョウフは絶叫しながら自らの身体を両腕で潰す。
恐怖の感情を一点に集中させる。
それを1つの"憎悪"に変え、小さく纏め上げる────────。
「───────ふぅ」
溢れ出る憎悪。
全身に無数の亀裂。
背中から4本の腕が生え、口から牙が剥き出し、筋肉が今にも破裂しそうなほど隆起している。
「な、なにこれ……」
「キョウフ……なのか?」
刹那、リラティブが吹き飛びビルを貫通した。
「がはッ!!?」
酷い耳鳴りがする。
2人は全身に感じる痛みに耐えながら立ち上がった。
「い、今のはなに……?」
「氷、ここは2人に分かれて……」
「ダメよ!この状況で分離なんてしたら─────」
目の前にキョウフが現れた。
2人はその速さに"恐怖"する。
「モヤシッ!!」
「はい!!」
氷は瞬間的に氷で防御を固め、モヤシは防御後にすかさずカウンターを決めようと身構えた。
だが、無意味だった。
「えっ……」
視認すら不可能な連続殴打。
リラティブは訳もわからないまま変身が解除する。
「あっ……ぐっ……」
「そ、そんな……氷……ッ!」
地面に倒れる2人。
キョウフはゆっくりと近づき、オウトツバイダーを拾い上げる。
「な、なにを……する気だ……!」
そしてキョウフはオウトツバイダーを握り潰す。
バチバチと音を立て壊れたそれを雑に投げ捨てる。
「……ッ!!」
それからキョウフはゆっくりと口を開く。
「君たちは僕の力を見誤った。僕は元々強いんだ。でも、カナシミが僕が暴れ出すと計画が狂うって言うから仕方なく隠してきた。それにこれは力を使い過ぎて死んでしまう可能性もあるんだ……もう仕方ないけどね。だって計画を成功させなきゃいけないから。僕たちエモーションの未来の為にさ」
キョウフはジョイカンジョーメダルとテラーカンジョーメダルを持ち上げ一息に破壊する。
「君たちなんて変身能力がなければただの人間。僕たちエモーションに対して何一つ手段を持たない可哀想な奴ら」
レイジとグリーフカンジョーメダル破壊。
「それなのにこんな物を使って反抗してきた」
アングリーとソローカンジョーメダル破壊。
「でも、もうそんな事はできない。この世界は僕たちエモーションのものなんだ」
ボルケーノ。アイスバーグ。
─────破壊。
「リラティブドライバーを頂戴。それがあればカナシミが喜ぶんだ」
「渡す訳ないじゃない!」
「あっそ」
キョウフは氷の首を掴み上げ、徐々にその手に力をこめていく。
「あ……ッガ……ッッッ!!」
「────……ッ!!!氷ッ!!」
それに対してモヤシはキョウフにタックルを食らわせる。
だが、全くびくともしない。
「氷を離せッ!!」
「殺すよ?怖い?彼女を失うのが?」
「やめろッ!!」
「………ああ、その顔だ。その恐怖に歪んだ顔が堪らなく好きなんだ……!!」
次第に氷は白目を向き始め、手がだらんと垂れ下がる。
「氷は僕の大切な人なんだ……これ以上彼女に悲しい思いをさせたくない……」
「だからどうしたの?助けて欲しいの?」
「僕は彼女を守りたい、支えたい!その為なら僕はなんだってできるッ!」
「なに?もういいよ。お前のそれ聞くに耐えない」
「離せッ!!氷をッ!!」
その時、モヤシの瞳が赤く輝いた。
尋常じゃない程の力でキョウフの手を捻りあげると、そのまま後方へと大きく蹴り飛ばす。
「な、なんだって……!?」
モヤシはすぐに氷に側に駆け寄り優しく頬を撫でる。
「氷……氷ッ!」
「………ん、ん……?モヤシ……助けてくれたの?」
「当たり前じゃないですか!良かった……」
「カンジョーメダル全部破壊されちゃったけど、どうする?」
「どうにかなりますよ。だって僕たちじゃないですか」
「……ふふっ、確かに。そうね」
2人は立ち上がり、共にキョウフの前へと歩み出る。
「変身できないお前たちに何ができるッ!!」
キョウフがそう言い放つ。
「メダルとか関係ない!私たちは互いに感情がある限り、どちらかが支えてくれる限り、何度だって立ち上がってやるわ!」
「氷の言う通りだ。キョウフ。お前は言ったよな。"死にたくない"って……だったら僕たちもそうだ。誰だって死にたい訳じゃない。だからこそ僕は人を守るんだ」
「それがハッキリ正解だって言えないけど、私たちは人の未来の為に戦う!!」
「僕たちは諦めないッ!!」
「絶対に諦めないッ!!」
「僕たちはッ!!」
「私たちはッ!!」
「「2人で1人の仮面ライダーだッッッ!!!」」
────────2つのリラティブドライバーが眩い輝きを放つ。
ちょっと小話です。
モヤシは既に新たな朝日燈として生まれ変わっておりますが、氷は変わらずモヤシと呼んでます。なぜなのか。そりゃ言い慣れてますからあだ名みたいなものです。愛称なんです。ただモヤシって本当に酷いとは思います。私も。
とにかく!!!!!
遂に次回!!!!!アレが来ますッ!!!!!
次回、第25話「氷+モヤシ=最強」
次回もよろしくお願いします!!