遂に最終回です。
どうぞご覧ください。
モヤシが消えてから数年の時が経った。
氷は愛ノ川高校を卒業後、推薦で名門大学に入学した。
親戚の人たちの支援により、今まで寒波家は成り立っていたが、突然氷はこの家を売りに出すと言い出した。
氷自身も身勝手で我儘であり、今までの支援を無駄にする様な行為だと理解している。
だが、氷は決めていたのだ。過去と決別する事を。
決して忘れる事はできないし、忘れてはいけない記憶。
ただずっと引き摺り続け、前に進めないのも違うと思ったのだ。
「ごめんなさい、叔母さん……それにみんなにも沢山迷惑をかけて、私は……」
「え?世界を救った子が迷惑?何言ってんだい!」
「そう、世界を救ー……って、なんで知ってるの!?」
「だってあなた映ってたわよ、テレビ。ほら外、見てなさい。取材陣がいっぱいいるから」
「えぇ!!?」
親戚一同は氷の判断に賛成した。
そして氷は、もしとある男性が寒波家を訪れたら住所を教えてあげる様に言い残し、地元を離れて上京した。
「新生活スタートかーーー」
引っ越しを終えて最低限のものが部屋に飾られている。
外観が綺麗で見通しがよいアパートの一室を借りた。大学にはバスで向かう。少し離れていた方が気が楽だったからだ。
今日はたまたま休みの日。氷はスマホでグループ通話を開始する。
「可奈、みんな、久しぶり。元気してた?」
「氷〜!会いたかったよ"ぉ"!!」
「可奈は相変わらずこれ」
「氷に早く会いたいってうるさかったんだから!」
いつもの4人は暫し会話をした。
お互いに積もる話もあり、会話は夕方まで続くと、氷がハッとなる。
「ごめんみんな!私、明日早いから今日はここまでにするね!」
「やだょぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「また今度時間が合えば地元戻るから。それまで待ってて」
「うぉぉおぉん!!」
氷は皆に別れを告げ、通話を切る。
そして訪れる静かな時間。
「……………」
やはり1人は辛い。
まるで心にぽっかりと穴ができた様だった。
「はぁ……寝よっと」
氷はベッドで横になり眠りに落ちる。
目を開けたら、目の前に彼がいると信じて───────。
*****
テラ・エモーショナリデミックが未遂に終わり、全てのエモーションが絶滅した。
世間は平和を取り戻し、いつもと変わらない日常……いや、エモーションのいない日常を過ごしている。
かくいう私もその1人。日々変わらない日常を過ごす。
なんの変哲もない。たった1人の。
「………あっ」
街をぶらりと歩いていたら、ガラスケースの中に入られたテレビが今日のニュースを映していた。
内容は──────ああ、半情さんの特集か。
秘密裏に行われた命を創造するという大罪を犯し、世界に混乱を招いた張本人。と、されていたり、1人の少女と青年を助けて世界を救った偉大な人。とか賛否両論が激しく、今でも議論が上がるほどだ。
私からしたら、ちょっと可哀想な人だって思ってしまう。
「あれから2年か……」
2年。あの時と同様エモーショナリデミックが終わって経過した時間だ。
なんの因果かこの時期になると思い出してしまう。
半情さんは1年前にこの世を去った。私に全ての研究資料を託して。
「ね、ねぇあれ氷ちゃんじゃない!?」
「ホントだ氷ちゃんだぁ!!」
私を呼ぶ声が聞こえ、手を振るう。
彼女たちは嬉しそうに飛び跳ねた。
そう、私の事はニュースに取り上げられて一躍有名人となった。世界を救った若き英雄。
なんだか実感は湧かないけどね。
「あれ、氷ちゃん?相棒は一緒にいないの?」
「そうそう熱愛の話もあるあの!!」
この質問。どう返そうか悩む。
「んー……今日は一緒じゃないんだ。あいつも忙しいだろうし」
「遠距離恋愛キターーーーーーー!!」
何故か喜んでいる。
いや、彼女たちにとっては非常にロマンチックな印象を与えるのだろう。
「またね」
「また会ってくれるんですかぁ!!?」
「君たちが望むなら」
「げはぁ!!?」
こうして熱烈なファンもいてくれるが、別に私はアイドルになった訳でも芸能人になった訳でもない。
取材陣が何度も押し掛けてくるし、番組のオファーも何度かもらった。
けど、全てにおいて拒否をしている。
別に語る必要がないからだ。
「さてと……」
大学の研究スペースで半情さんの残した資料を開く。
全てを理解するにはもう何十年か必要だと思うけど、私なら短期間で必ずマスターする事ができる。
それなりの自信はあるから─────。
「半情さん、これは?」
生前の半情さんにリラティブドライバーの資料を渡された。
「これはリラティブドライバーの全てと感情についての実験諸々が入ってる」
「こ、これ私が持っていたらまずいんじゃ……」
「……ああ、その通りだ。でも、私はこれを赤の他人に渡すなどごめんなんだ。信頼できる誰か。二度と惨劇を起こす事のない唯一の存在。それが氷ちゃん。君だ」
「半情さん……」
「ゴホッ!ゴホッ!………はぁ、私もそろそろかな。だが、ようやく全てが終わって家族の元へ行けると思うとなんだか嬉しい気持ちになる」
「確かに。全てが終わりましたもんね」
「そう、全てが終わった。そして……ここで出すのもなんだがモヤシくんの件なんだが」
「はい?」
「リラティブドライバーと彼を犠牲にあの惨劇は終息した。ただ彼は本当に犠牲になったかと言われれば疑問に残る」
「………え?」
「こうして冷静になってから考えてみたんだ。あの時、モヤシくんはカナシミと共に深淵に消えた。もう元に戻ることもない……と思っていたが、リラティブドライバーのみがその役目を果たし、尚且つモヤシくんの感情がそのまま現在まで残っているのなら……数年の時を経て、形を成し、この世に戻れるのではないかと」
「そ、そんな事が可能なんですか!!?」
「人の感情は一種の生命線でもある。生きたいと強く願えば、余命宣告された人も、宣告された年以上に生きた事例もある。生きたい気持ち……いや、それをしたいと願える大事なものがあってこそなのだろう」
「…………約束しましたから」
「約束?」
「モヤシは必ず私の元に帰ってきてくれるって、別れ際に約束しました。だからあいつはなに食わぬ顔できっと帰ってきます。きっと」
半情さんは微笑む。
「君たちの幸せを願っているよ。天からいつまでもね……おっと、私の場合は地獄からかな?」
「半情さん!!」
「ははっ、冗談……」
この会話の数日後、半情さんは亡くなった。
半情さんは確かに大罪を犯したけど、最後まで私たちの助けになってくれたのは事実だ。
本当に恩人だと思ってる。
「あれ?もうこんな時間?」
外はすっかり暗くなっていた。
そろそろ帰って明日に備えなければいけない。
「可奈たちと遊ぶ約束もしてるし、無理は禁物」
資料をまとめて研究スペースから出る。
バスに乗り、少し歩いてアパートに。
部屋に入って灯りを点けても、そこには誰もいない。
私の頭に響く声もない。
「………1人は寂しいよ」
毎日こんな事を言っている気がする。
1人は慣れっこだった。でも、誰かさんのせいで1人が辛くなった。
責任とれ、早くしろ。
「おやすみ」
こうして今日も最後に目を瞑る────────。
*****
感情は人間にとっての生命線。
皆、総じて思うだろう。感情は動物にとってのコミニュケーションの1つだと。
「氷ー!早くしてよー!」
「可奈!そんな早く走らなくても食べ物は逃げたりしないわよ!」
「あははははっ!」
楽しい時は笑う。
「ぶええええええええええん!!売り切れてるぅうぅぅぅ!!」
「この服、人気だからねぇ……」
悲しい時は泣く。
「うわっ!びっくりした…………」
「可奈、怖がり過ぎ」
怖い時は怯え。
「さっきの人ぶつかっといて謝らなかった」
「私に任せて。説教してやるから」
「「わぁ!!待って待って!!」」
不快に思えば怒る。
様々な感情が人を創り、人を育てる。
「今日は楽しかった!」
「また4人で集まりましょ」
人と人との繋がりは永遠に続く。
そう、永遠に─────。
ピンポーン。
「はーい」
アパートの一室。
1人の少女はチャイムを聞き、玄関へと向かう。
「ちょっと待っててくださーい」
バタバタと忙しなく、少女はドアを開ける。
「あっ─────────」
氷の様な感情に、再び"燈"が灯る─────。
少女は微笑み、
「おかえり」
全ての感情を込めて、彼女はそう言った。
仮面ライダーリラティブ The end。
ほんっっっっっっっとうに時間かけ過ぎましたが、無事に完結までこぎつけました……。
ようやく安定はせずとも短い期間の中で投稿できたのは自分的には嬉しい反面、中々こう時間を作る機会がなくて長々と日を空けたのは勿体無いなーと感じてます。
仮面ライダーリラティブはサブライダーや細かい描写を導入したりせず真っ直ぐ進んだ結果短めとなってしまいましたが、これにて本編は最後とさせて頂きます。
ただ!いつもの如く次回特別編を投稿!5周年5作品目の新ライダー登場予定!
では次回、特別編「仮面ライダーリラティブ Best partner」。
最後までよろしくお願いします!!