あらすじ
カナシミに勝利し、エモーションが全滅してから2年。
高校を卒業し大学生としての新生活をスタートした氷。そんな彼女はもう1人じゃない。大切なパートナーが隣にいるから。
ある日、久々の地元へ帰った氷は友人たちと出掛けていた。その先でエモーションが現れたと聞き、疑いつつも彼女はそれを確かめるべく現地に向かうのであった─────。
それではどうぞご覧ください。
仮面ライダーリラティブ Best partner
寒波氷は1人だった。
4年前の惨劇、エモーショナリデミックの最中に氷の家族は殺された。
親も弟も殺された彼女はひとりぼっちなった。友人はいた。親戚の人だっている。
でも、彼女の心にはぽっかりと穴が空いていた。
その穴を埋める為には最も近しい"愛"が必要だった。
しかし彼女は"愛"を拒絶していた。本当は飢えていたのに、いつの間にかまた失うのが怖くて自然に遠ざけていたのかもしれない。
否定を続け、孤独に打ちひしがれていた彼女を、何の因果かとある青年が埋めてくれたのだ。
彼は優しかった。そして相棒だった。だが、因縁の深い男でもあった。
紆余曲折ありながらも2人は"仮面ライダー"としてエモーションと戦い、又互いを隔ていた障壁を壊し"愛"を築いた。
しかし、運命は残酷である。彼はエモーションを全滅させる為に自身を犠牲にし、その姿を眩ませたのだ。
また1人となった氷。彼を想い、悲しむ日々が続いていた──────。
「──────可奈、お待たせ」
「おっそーい!!何してたの!!」
「"こいつ"の支度に手間取っちゃって」
否、悲しむ日々は終わっていた。
「むっ!また氷に迷惑掛けるつもり!?──────」
帰省して可奈たちと合流した氷。
その隣には着慣れない服を着て大人しそうな青年の姿。
「"燈"さんッ!!」
「あははっ……ごめんなさい」
リラティブドライバーと彼の意思が奇跡を起こし、2年という長い時を経て彼女の元へと帰ってきたのだ。
彼が帰ってきてからは少しばかり忙しい日々が続いた。
それもその筈、朝日燈は殺人鬼で氷の家族の他多くの命を奪った極悪人なのである。
ただモヤシに至っては彼から生まれた別の燈。つまり見た目と声は全く一緒だが、その中身は新たに生まれた別人なのである。
仮面ライダーリラティブとして戦い、世間に顔が知れ渡った事で被害者たちやだけどから裁判沙汰に発展した。
しかし、周りの協力や功績を讃えられた事や彼の人柄、誠心誠意の謝罪も相まって無事無罪となった。
彼は無罪となった今でも被害者たちに顔を隠して謝罪をしている。この贖罪を一生背負っていく覚悟でモヤシは"新たな朝日燈"として生きる道を選んだのだった。
「氷、任せて!あの日言った通り説教かましてやるんだから!!」
「落ち着きな可奈、ってまだ覚えてたの」
「氷を泣かせた罪は重しッ!!!!!」
暴れる可奈を止める氷。それを見て笑う友人たち。
モヤシも顔が緩み笑顔が溢れる。
その表情を見て、可奈は何か言いたげではあったが大人しくなった。
「………ねぇ、氷」
「ん?」
「今幸せ?」
短い言葉ながら氷は可奈の真意を受け止めた。
だからこう答える。
「うん、凄く幸せ」
氷の幸せそうな表情。
可奈は叫ぶ。
「私の氷が取られたァァァァァァッ!!」
「いや、あなたのものじゃないし」
再び笑い声が響く。
外は快晴。太陽の輝きと同様の彼女たちの笑顔も眩しく光る───────。
*****
「モヤシ、次はどこ行きたい?」
街中を友人たちとぶらぶら歩きつつ、氷はモヤシに質問する。
すると、突然彼が謝り出した。
「………なんかごめんなさい」
「え?なんで謝るのよ?」
「あぁ、いや……僕がいるとせっかく久しぶりに会えた友人方に気を遣わせちゃってるんじゃないかと思って。もちろん氷もですけど」
「あんたねぇー」
氷はため息を吐く。
「………したかったから」
「ん?なんて言いました?」
「したかったの」
「何がですか」
「自慢したかったから!!」
「えぇ……」
それを見た可奈や友人たちは氷を取り囲む。
ニヤニヤとした顔は非常に腹立たしい。
「おやおや、おやおやおやおーやおや?氷さ〜ん、いつからそんな女の子しちゃったのぉ?」
「昔は彼氏いらないとか言ってたのに、ねーーーー」
「溜め込んでいたものが爆発したか。気をつけろ青年よ。こういう女は夜が怖い」
友人たちはやいのやいのと氷を揶揄った。
段々と顔を真っ赤にする氷を、すかさずモヤシは割って入り、彼女を自分の元へと寄せた。
「やめてあげてください。氷が今にも溶けてしまいそうですので」
「おお、彼氏さん介入!それそれ!」
「こんなに顔が真っ赤になるなんて、僕と家にいる時くらいですよ」
これが氷にとって爆弾発言だった様で、モヤシの腹にこれまた綺麗なボディブローが炸裂した。
腹を抱えるモヤシを置いてさっさと進む氷。
それに駆け足でついていく可奈たち。
「んーーーーーー……!!」
「氷さん?」
「なにっ」
「お家だと乙女しゃんなんですかぁ〜?????」
「──────────ッッッッ!!!!!!」
可奈は氷に頭を拳でグリグリとされて悲鳴を上げた。
本日犠牲者を2人出し、一旦仕切り直してもう少し広い場所に行こうとした。
────その時だ。
「─────助けてくれぇ!!」
「えっ?」
男性の悲鳴。
それから次々に悲鳴の声が響き渡る。
「え、なになに!?」
「………可奈、みんなを連れて逃げて」
「氷ッ!?どうするの!?」
「決まってるでしょ。私たちは仮面ライダーなのよ」
そう言って皆が逃げた方に走り出すと、通り側の男性が、
「"エモーション"だッ!!」
という名前が耳に入る。
氷は付いてきていたモヤシと顔を合わせる。
2人とも信じられないという表情。
「エモーションは全滅した筈でしょ!?」
「はい。仮に全滅していなかったとしたら必ず奴らは人を襲います。この2年という歳月の間にニュースに取り上げられない訳がない!」
「なら………さっきのエモーションってなんなの」
「わかりません。だからこそ確かめないと」
「そうね。確かに!」
─────それから2人は現場に着いた。
そこには一頻り暴れたであろう傷が所々に残っていた。
「嘘でしょ……?」
「そんなバカなッ……!!」
その中央に佇むのは全身から触手の生えた化け物。
今までに幾度となく見てきた紛う事なきエモーションなのである。
「でもたったの1体。生き残り……?いや、そんな筈ない」
「幸い被害者は居なさそうですかね?」
現場に着くまでそれほど時間が経った訳ではないので、感情を食べられているのなら近くに1人2人は倒れている筈だが、不思議な事に被害者は見当たらない。
「ねぇ、モヤシ。あいつ全然襲って来ないわね」
「こちらは見えている筈ですけど……」
そのエモーションは実に奇妙。
ただ黙って静かにその場に佇むだけ。
「─────────────ア」
暫くしてエモーションに動きがあった。
氷とモヤシ。2人を視認してから5分後の事である。
「ア………アア…………ッ!!」
段々と震えが激しくなるエモーション。
すると突然、エモーションの身体が裂けて別のエモーションが姿を見せた。
「あれって……!!」
「─────"イカリ"ッ!!?」
それはまさしくイカリであった。
もう1人、本当の朝日燈。ただし最終的に彼はエモーションという化け物に成り果ててしまい、氷とモヤシによって倒された筈。
それにも関わらず、再びこうして彼らの前に姿を現したのだ。
「モヤシ、これはまずいわ」
「僕もそう思います」
イカリは明らかに普通ではなかった。
身体は捻れて口からドロドロとした赤い液体を流し、白目を剥いてまるで虫の様に手足が数本生えている。
そして彼らを完全に認識した頃には咆哮と共に殺意を見せる。
「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスッ!!!」
その言葉を吐き出しながら、身体をくねらせ、先の鋭い手足を振り回しながら彼らに突っ込んできた。
「お願いモヤシッ!」
「はい!……久々ですね!」
「ええ、いくわよ相棒ッ!!」
「いきますよ!!」
《アングリー!》《ボルケーノ!》
《コネクト》
モヤシは腰にリラティブドライバーを装着し、彼女を自身の身体に吸収する。
赤いメダル、アングリーとボルケーノカンジョーメダルを取り出し、リラティブドライバーに装填。
流れる待機音に合わせて身体を動かし、あの掛け声を叫ぶ。
「変身ッ!!!」
リラティブドライバーの上部ボタンを勢いよく叩く。
彼の背後に火山が出現しマグマが流れ出る。モヤシを飲み込み、マグマが固まる。
それを力強く破壊すると、中から仮面ライダーリラティブが誕生する。
《リラティブ!ウィズアングリー!》
「また燃やしてやるぞ、イカリッ!!」
「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスッ!!」
何故イカリが復活したのかわからない。
だが、今のイカリがあの時のイカリだとは到底思えない。言動や行動から自我がないと見える。
モヤシはイカリに向かって跳んだ。炎の拳で顔面を殴りつける。
「………………?」
「───────コロスコロスコロスゥゥゥゥゥゥゥゥッッ!!」
「なにっ!?」
確実に顔面を捉えた筈だった。
しかし、イカリは怯む事なく反撃に出る。リラティブの身体を突き刺そうと手足を伸ばす。
「くぅっ……!」
リラティブは片手から炎を噴出し、その勢いを利用し身体を回転。
イカリな攻撃を避けると、すぐ脳天に踵落としを決めた。
「コロスゥゥゥゥゥゥゥゥッッ!!」
「お前に何があったんだイカリッ……!!」
もう自身と同じとは言えない姿ではあるが、自我もなく暴れる化け物に成り果てたのを見るのは辛い。
「コロス」という一言は最早悲鳴にも聞こえる。
「氷ッ!!」
『はいはい交代ね!!』
リラティブはドライバーからメタルを引き抜き、ソローとアイスバーグカンジョーメダルを装填。
ドライバーの上部のボタンを叩き、氷を纏った別の姿へと変貌する。
《リラティブ!ウィズソロー!》
「その頭、冷やしてあげるから!」
ウィズソローへとフォームチェンジしたリラティブは、周囲を凍らせ足場を滑りやすくさせた。
思った通りでイカリは足を滑らせて地面を転がる。
「一気に畳み掛けるッ!!」
氷はリラティブドライバーの上部ボタンを押し、手から冷気を放出。
イカリの頭上に無数の氷柱を創り出す。
「家族の仇ィィィィッ!!!」
腕を勢いよく振り下ろすと同時に氷柱も落ちる。
無数の氷柱がイカリの身体に深々と突き刺さった。
「コロスコロスコロッ─────────…………」
暫しの沈黙。
イカリの身体は砂の様に崩れ落ち、跡形もなく散ってしまった。
「なんだったの……」
『エモーションが復活……そんなのあり得るんですか?』
すると氷は少し間を置いた後、モヤシに話し始める。
「モヤシ。あなたはエモーションが現れる条件、覚えてる?」
『ん?それは人間の感情が限界を迎えた時ですよね?その元凶であるカナシミは消滅しましたし、彼を生み出した研究員は皆死んでしまいました。半情さんも……』
「そう元凶はカナシミ。でも、カナシミの能力って範囲に限界があると思うの。半情さんが亡くなる前に話してたんだけど、ひとつだけ気がかりなのはカナシミの能力の範囲外にいた人間が何故エモーションを生み出したのかって」
「そ、それは……」
「感情の昂りでエモーションが生まれ、エモーションは人間の感情を餌とする。どちらも結局"人間"が関係しているのよ。私のあくまで推測なんだけど………」
氷は声を低くして呟いた。
「昔も今もエモーションを生み出している人間がいる」
それについてモヤシが質問をしようとした時だった。
『氷、そこの岩陰ッ!』
「えっ」
モヤシの叫び声を聞き、すぐ目の前の岩を見ると、その後ろの影が一瞬揺らいだのが見えた。
それから氷はその方向の地面を凍らせ、スケートの様に滑って追いかけた。
リラティブから逃げることなど出来る筈もなく、逃走者は無様に捉えられる。
「あなた何者?」
氷の質問に逃走者は不気味に笑った。
「半情が死んで残念だったなぁ?ふひひ」
目元に真っ黒な隈ができており、白衣を着用し、見た目年齢は半情と同じくらいの男性。
奇妙に笑い続けるその男に氷は問いただす。
「イカリを甦らせたのはあなた?そもそもあれはなんなの?エモーション?すぐに答えなさい」
「ふひひ……質問が多いお嬢さんだ」
「ぶつわよ」
「ふひっ、暴力はいけないなぁ?……私は
「半情さんの!?」
その男は担木と言い、常に笑みを浮かべながら話す。
「半情がリラティブドライバーを設計したのなら、私はエモーションそのものを創り出した」
「エモーションを創り出した張本人……」
「私は新たな生命を生み出すことができる。誰もが私を羨み、誰もが私を祝福する……そう思っていたのに、実際はどうだ?世間は私の名前より半情の名を連ねる。それどころが私そのものは?何故上がらない?私がエモーションを、命を、この手で………創り出したんだぞ?」
「まさかあなたッ……!!?そんな理由でまたエモーションを生み出しているの!!?」
「ふひひひひっ、私は運良くあの日逃げられた。カナシミの能力と計画をいち早く見抜き姿を眩ませた。そして思った通りカナシミは計画を実行。奴が暴れる度に私の名が世間に知れ渡る様で心地よかった!だから私もその間に近くにいた人間からエモーションを生み出せる様に実験を行った」
すると、突然担木はリラティブを睨みつける。
「そしたらお前たちがカナシミの……私の計画を邪魔した。私の実験を、賛美を、お前たちが全部無駄にした!」
「無駄にしたですって……!!」
リラティブは担木の肩を掴む。
「あなたのせいで何人も犠牲になってるのよ!?その中には亡くなった人もいる!!それを言うなら何の価値もないどうでもいい功績の方が無駄よッ!!」
「な、なんだとぉ……!!」
担木はワナワナと震えたが、急にぴたりと止まり、再び不気味な笑い声を上げる。
「お前たちの情報は掴んでいる。必ず報いを受けさせてやる。ふひっふひひひひひひひっ!」
その後、氷たちは現場に駆けつけた警察に担木を預けた。
報いを受けさせる、氷はその言葉が妙に引っかかる。
「氷、ここは一旦離れて可奈さんたちと合流しましょう」
「え、ええ、そうね。行きましょ。モヤシ」
パトカーに乗せられる担木。その瞳は彼女たちに向けられている。
激しい憎悪が籠った瞳の意味がわかるのは、翌日の事だった────────。
*****
「モヤシッ!!」
「まずい事に……くっ!!」
早朝、モヤシと氷は息を切らせながら全力で走っていた。
その理由はまたエモーション関連である。ニュース番組にて復興しようとする街中に再びエモーションが現れたという情報が流れた。
しかし、昨日と同じくそのエモーションはその場から動こうとはしなかった。そもそも見た目はエモーションと言い難いものだ。
まるで人間の心臓の様な形をしており、ドクドクと脈打っている。エモーションと表記されたのは、きっとあの特有の触手が周りに付いているからだと思われる。
昨日と同様に倒せばいいのだが、2人が焦る理由がもう一つあった。
「可奈、無事でいてッ!」
それは早朝、突然の電話。
内容は友人たちの話で彼女が"担木"に捕まったというのだ。
実行犯の担木は態々友人たちに向けて情報を流した。逮捕されて車に乗せられた瞬間、仕込んでいた薬を警察の1人に注入したそうだ。
そこからはエモーションを従えて逃走し、可奈を誘拐した後に友人たちに連絡。街には自身の最高傑作であるエモーションを配置。
つまり担木は2択にさせた訳だ。友人か市民か。報いとはこの事だった。
「担木ッ……絶対に許さない!!」
街のエモーションに向かえば、可奈は殺される。
かと言って可奈の方に行けば、エモーションは起動し、感情関係なく街中の人を殺し続けると言う。
運命の分かれ道。2人は街と担木。どちらか一方に行かなければならない。
「………ねぇ、モヤシ」
「わかってます。コレを」
「違う」
モヤシは氷にリラティブドライバーを手渡そうとしたが、彼女はそれを拒否した。
「氷、もうリラティブドライバーは1つだけなんですよ?」
「わかってるから言ってる」
「担木の方にはエモーションがいます!リラティブドライバーが無かったら戦えませんし、感情だって食べられてしまうかもしれないんですよ!?」
「それはあなたも同じよ、モヤシ。でも聞いて。私は絶対大丈夫だから」
「ダメです」
「はぁ……モヤシ。あなたは私に約束守らせる癖に、私からは約束させてくれないの?」
「そ、それとこれとは………」
「安心して。私だって無策じゃない。あなたがいない間、私だって色々と研究してきたんだから……変身できなくても私たちは2人で1人の仮面ライダー。必ず可奈を救い出して、モヤシの元へ駆けつける。約束する」
暫くモヤシは黙った後、強く頷いた。
「なら、今度は僕が待つ番です」
「ええ、待ってて」
2人は互いに顔を見合わせた後、それぞれが向かうべき場所へと急いだ──────。
─────廃工場、と思わせるほど静かな空間。
周囲にはこの工場に勤めているであろう人々が倒れている。
その中央には親友を攫った憎き男、担木が木箱に腰掛けていた。その隣には肩に腕を回されて怯えている可奈の姿。
「可奈ッ!!」
「ふひっ、まさか私の方に来たかぁ」
「約束通り来てやったわよ」
「………ん?あの男は?」
「例のだーいじなエモーションの所へ向かったけど?」
「ほほぉ、まさか二手に分かれるとはな……でも、私は知っている。お前たちがリラティブドライバーを1つしか持っていないということをなぁ!」
「それがどうしたの?」
「見たところお前はリラティブドライバーを持っていない!エモーションへの耐性を持たない!確実にここで死ぬッ!ふひっふひひひひひひっ!!」
氷を嘲笑う担木。
可奈は大声で「氷、逃げてッ!!」と叫ぶが、氷は既に前に出ている。
「死に損ないめ……行けっ!!」
「ミョルルルルルルル」
合図と共に一斉に氷に向かうエモーションたち。
しかし、氷は服の中に手を入れ、形に特徴がある銃を取り出した。
「はっ!」
銃を撃つと、放たれた弾丸はエモーションに当たった瞬間、エモーションを木っ端微塵に吹き飛ばした。
「──────────は?」
あまりにも衝撃的な光景に思わず口をあんぐりと開ける担木。
氷は戦いの中で鍛え上げられた戦闘技術と軽い身のこなしで、次々にエモーションを撃ち抜いていく。
「私だってねッ!!………ふっ!この2年間ボーッとしてた訳じゃ、ないのよッ!!」
自分を守る術がなくなり、焦り始める担木だったが突如として声を張り上げた。
「い、いいのかッ!!小娘ッ!!」
「なによっ!!」
「私の所にはお前の親友がいるのを忘れるなッ」
「うっ……!!」
担木は可奈の首にナイフを突きつけていた。
「落とせ。その銃をッ!!」
「……………」
「早くしろよぉぉぉぉぉッッ!!」
「………ッッ!!」
氷は仕方なく銃を地面に落とした。
そして担木はそれを蹴る様に指示すると、氷はそれを遠くに蹴り飛ばし両手を挙げる。
「無様だなぁ!!ふひひひひひひっ!!」
「…………」
だが、氷はこれも想定内だった。
両手を挙げてはいるが、足先は銃の方に向いている。
チャンスは一度のみ。失敗は絶対に許されない。
「やれッ!!」
「氷ィィィッ!!逃げてぇぇぇぇぇッ!!」
エモーションが氷に襲いかかる────────────その瞬間。
バチバチバチバチバチッ。
何かが破裂する音。否、これは電気。
ここは工場。漏電でもしているのかと担木は辺りを見渡す。
「───────ん?はっ……!?お、女はッ!?」
担木の腕には可奈の姿はない。代わりに布を持たされていた。
そんな可奈はいつの間にか氷の隣に座っていた。
「か、可奈ッ!!」
「うわーーーーん!!氷ィィィィ怖かったよぉぉぉぉ!!」
氷は可奈を慰めつつ、前を見た。
「あ、あなたは……?」
そこには青と赤の装甲を纏った仮面ライダーが立っていた。
胸には大きな雷を象った装飾品。見ようとによっては"5"という数字に見える。
「お嬢さんたち下がってな。あとは俺に任せとけ」
そう言うと謎の仮面ライダーは右手を開いて顔の横に持っていき、力強く拳を作る。
「さ、今日も"未来"を帰すか」
エモーションが触手を伸ばして仮面ライダーに襲いかかる。
が、仮面ライダーはそれをヒラリと躱し、対象を蹴り飛ばすとバチバチという音を立てて辺りに電気が飛び散った。
「おいおい、こいつら本当に"未来人"か?未来ってのは総じてセンスがないのか………」
「それはエモーションっていう化け物だけど……」
「あ?エモーション?なんだそれ──────あいてぇ!?」
後ろを振り向いた瞬間。後頭部にエモーションの触手がヒットする。
「ご、ごめんなさい……」
「はっ……ははっ……気にすんな……いったぁぁぁ」
仮面ライダーはすぐに振り向く。
そして指をコキコキと鳴らす。
「俺がせっかくカッコつけてる所に手ェ出してきやがってよぉ……」
バチバチと音を立てて電気が走り出す。
「纏めて来い」
それから仮面ライダーはドライバーの右側のボタンを拳で叩く。
すると、胸の装飾品と思われていたパーツが光り、首の方にある先端部分から青緑色のエネルギーが流れ出す。さながらマフラーの様に靡く。
次の瞬間、仮面ライダーが消えた────────。
「はえっ……?」
担木の目の前には仮面ライダー。
そして拳が彼の顔面を凹ませる。
「ぷぎょぉ!?」
氷の肉眼では視認不可能、
それもその筈。仮面ライダーはこの一瞬のうちにエモーションは爆発し、担木の元まで辿り着いていたのだ。
「………よし、そこのお嬢さん。こいつを渡しとくから……あの……さっきの言葉は忘れて欲しい」
「ん?さっきの?」
「え?聞こえなかった?」
「全然」
「あぶねぇ!!!!!」
氷は首を傾げるが、本人はホッとしている様子である。
「……ああ、いいんだ。聞いてなかったらそれでいい。そうであってくれて助かった。本当にありがとう」
「????????」
「とまぁここからどうすればいいのやら──────おっと、俺が吸い込まれたゲートが登場か」
仮面ライダーの背後に黒いゲートが出現。
手を振ってそのゲートに入ろうとした。
「ちょっ、ちょっと待って!」
「あ?」
「助けてくれてありがとうございました」
「……ま、俺には人助けくらいしかできないからな。偶々と言えど無事で何よりだ」
氷は質問する。
「あなた、仮面ライダーですよね?」
「そうだが?……ってお嬢さん知ってんのか!?」
「私も実は仮面ライダーリラティブって言います。相方がいるんだけど今ここにはいなくて………あなたの名前を教えてもらっても?」
「名前ね────"仮面ライダーボルテクス"。それが俺の名前だ」
そう言って"仮面ライダーボルテクス"はゲートの中へと消えていった。
「………不思議なこともあるのね」
「ありがと"うごお"り"ぃ!!!」
「はいはい、おっと。そろそろあいつを助けに行かないと」
「彼氏さんの大ピンチに駆けつける……いいね!」
「可奈、ちょっとお願いがあるんだけど、警察と工場の人たちに事情説明してから、このクソッタレを取り押さえててくれる?」
「仮面ライダーさんの頼みとあらば任せて!」
「ありがとう可奈。任せたわよ、親友」
それからすぐに氷はモヤシの元へと駆け出した。
*****
「くぅぅぅぅッ……!!」
仮面ライダーリラティブのウィズレイジに変身したモヤシ。
起動したエモーションはカナシミ、イカリ、キョウフ、ヨロコビ。その他にも多くのエモーションが入り乱れまさに混沌と化した化け物に変貌。
まさに、カオスエモーション。
模造品とは言えどその力は圧倒的。最早暴走状態に近いエモーションを止めるのは至難の業だった。
モヤシはなんとか炎の攻撃で耐えてはいるものの、既に体力の限界に近づいていた。
「はぁ……はぁ……」
遂に変身が解除される。
絶体絶命のピンチに思考を巡らせていると、ちょうどその時、聞き慣れた声が聞こえてきた。
「モヤシィィィィッ!!」
「氷ッ!!」
氷は息を切らせながらモヤシの元へとなんとか辿り着いた。
モヤシはそっと彼女を受け止める。
「良かった……無事だったんですね」
「もう1人の仮面ライダーに助けてもらったの」
「ん?仮面ライダー……?」
「詳しい話はあとよ!まずはこの化け物を倒さなきゃ」
「その通りですね。それじゃあ一緒にいきますよ、相棒ッ!!」
「おっけー相棒ッ!!」
2人が拳を合わせると、氷はモヤシと融合する。
モヤシはベストリラブルズを取り出し、開いてリラティブドライバーに装填後、4つのカンジョーメダルも装填。
《ボルケーノ!》《アングリー!》
《ライトコネクト!》
《アイスバーグ!》《ソロー!》
《レフトコネクト!》
左右の親指を立て、拳を胸の前で打ち鳴らす。
「変身ッ!!」
リラティブドライバーの上部ボタンを叩き、仮面ライダーリラティブは最強の姿へと昇格する。
《ワン・フォー・トゥー!トゥー・イン・ワン!》
《ベストリラティブ!アイラビュー!》
「「燃やして、凍らせて、ぶっ倒すッ!!」」
仮面ライダーベストリラティブはベストリラティブレイドを召喚。
直後、カオスエモーションは全身から光線を放つ。
「無駄だッ!!僕たち2人が揃ったのならッ!!」
「無敵よッ!!」
ベストリラティブレイドで光線を弾き、カオスエモーションの腕を破壊。
そして瞬時にカオスエモーションに近づき、次々に触手を斬り刻む。
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」」
雄叫びと共にベストリラティブレイドを振り回す。
炎と氷がカオスエモーションを包み込み、強力な熱気と冷気によって身体の細胞が死滅していく。
もがく。足掻く。カオスエモーションは再び光線を放つが、先ほどよりも太い。
「パワーを上げた所で意味はないぞ!」
「これでもくらっときなさい!」
ベストリラティブレイドを槍投げ様に飛ばす。
それは光線をいとも簡単に割いて進み、切先は胸を貫いた。
「「これで最後だッ!!」」
それからベストリラティブはドライバーの上部ボタンを叩き、天高く飛び上がる。
両足を揃えてカオスエモーションに向けて急降下。
「「はぁぁぁぁ─────────」」
炎と氷、自然のエネルギー。
そして、愛。
全ての感情が籠った最強の一撃が繰り出される。
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」」
ベストリラティブの一撃はカオスエモーションを、貫いた。
中心から崩壊する様に砕け、次の瞬間──────────。
オオオオオオオオオオオオッ………。
まるで解放された様に吠え、散っていったのであった──────。
「お疲れ様、モヤシ」
変身解除をし、氷は背伸びをしながらモヤシを労う。
「こう見るとエモーションも気の毒だなって思いました」
「そうね……でも二度とそういう悲劇は起こしちゃいけない」
「はい、もしまた何かあっても僕たち2人なら乗り越えられますよ」
「ふふっ、確かに。さ、可奈の所に行こっか!事情聴取されてるだろうし!」
「あ、そうそう仮面ライダーってなんですか?教えてくださいよ」
「また後でね」
「え、終わったのに!?ちょっと氷さんッ!?」
氷が走って逃げるのを、モヤシは急いで追いかけた────。
*****
あれからまた数ヶ月が経った。
担木は事の大きさが問題視されて当然刑務所に入れられた様だ。
刑務所内でも自身の野望を語っている様子だが、怖い囚人たちから睨みを効かされているもので結局萎縮していると聞いた。
自分が有利なら調子に乗る。これは本当にダメな人間の典型かな。
一方で僕。朝日燈ことモヤシは変わらず大切な人と共に幸せな日々を過ごしている。
「氷、ただいま」
「おかえり〜、お風呂入れてあるから入って」
「はーい」
「……仕事は順調?」
「あーまぁ、皮肉な事に元が頭の回転が良くてあんないい所につけるとは……」
氷は大学生。同居するのであれば自身も稼がなければ男としての示しがつかない。
一か八かで氷の親戚に相談し、とある大手の商品開発部に所属する事となった。
元々"朝日燈"という人間は追求する事に関しては群を抜いていた。頭も良かった。だから僕はそれを活かすことができ良い仕事につけた。
あんなに憎んでいた相手が残してくれたものが、まさか自分の為になるなんて夢にも思わなかった。
よく考えれば彼がいなければ、今の自分はここにはいなかっただろう。
そう言った点では彼には感謝するべきなのか。いや、難しい。
どう足掻いても僕は氷の家族を手に掛けた。その罪は今も変わらないし、許せない。だからなんとも言えない気持ちになる。
「…………」
「ねぇ」
氷が突然、顔を掴む。
「なに暗い顔してるの」
「し、してました?」
「してたわよ」
「………すみません」
「嫌な事でもあった?」
「ああ、そう言ったわけでは……ただの個人的なおもっいぃッ!?」
そのまま勢いよく顔を近づけられた。
「隠し事はなし。だって私たち……その……そういう関係でしょ」
「……ははっ」
「何がおかしいのよ」
「確かになって思っただけです。やっぱり僕、氷と入れて良かったなって」
「ふーん……なら、んっ」
「んっ?」
氷が目を閉じている。
これはそういう事か。そういう事なんだろう。
「んんっ」
催促されているこれはやるしかない。
そっと唇を近づかせた瞬間であった。
ガチャ、バーン!
ドアが勢いよく開いた。
「氷ー!!遊びに来たよー!!私ちゃんと連絡入れ……たぁ…………」
「ッッッッッッッッッ……!!!!!!!!!???」
「おや。おやおや。おやおやおやおや?」
僕は知っていた。
さっきそこであった。
でも、言わなかった。
だって言うなって言われたから。
「燈さん、私が見といてあげる。続きをせよ」
「何言ってるの可奈!!」
「やれ」
可奈さんは椅子に座って足を組み、手を胸の前で組んでいる。
この表情は、本気だ。
「あなたもやめさせてよ、モヤシ!」
「流石に恥ずかしいので……」
可奈さん横に首を振る。
「やってよ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ッッッ!!」
「うるさいッ!!」
「氷が虐めるゥ!!!」
「どっちがッ!!」
氷と可奈さんが戦っている間、僕はお風呂に入るとしよう。
戦士には休息が必要だから。
それじゃあ今日も1日お疲れ様です。
そして──────これからもよろしくお願いします氷。
仮面ライダーリラティブ Best partner The end
*****
「…………」(手を銃の形にしてる
「え、それ数年間やり続けてるんですか?」
「愚かだな……」
「私たちがこうしている間もやってたんですか……?」
「僕は良いと思いますよ!」
「……とまぁ冗談はこれくらいにしてようやく半分か」
「出揃ってきたって感じですね」
「だが、決戦はまだ先と言うべきか」
「迫っているんですね。アレが」
「なら……次はあなたの番ですよ。恩人さん」
「はいはい、俺に任せとけよ。時間を越えようが何しようが全部俺がぶっ倒してやるからな」
仮面ライダーリラティブ To be continued…
まずは特別編ご覧頂きましてありがとうございました!!!
この4作品まで追って頂いてる方もこの作品から読んだという方も本当にありがとうございます!!!
氷さん銃なんて作ってたのかと困惑するかもしれませんが、あれは対エモーション専用ですので人が死ぬ事はありません!まぁ怪我はしますけど……。
さて、もうここまでやれば皆さんもお察しの通り新たなライダーのお通りです。
私のオリライの記念すべき5周年+5作品目のライダーはこいつですッ!!!!!
────過去はいらない。
遥か遠い未来。未来人たちは過去を否定した。
薄汚い低脳が溢れ、技術の進歩のカケラもない歴史など不要なのではないか、と。
現在に生きる青年「五々 冴月/ごご さつき」は毎日自堕落な生活を送っていた。
過去も、未来も、彼にとってはどうでも良い。
ただ"今"さえ生きられれば良かった─────が、そんな日々は突然終わりを迎えた。
突如として出現した未来人「アブゾウル」彼らは過去を消そうと破壊の限りを尽くす。
それに巻き込まれ瀕死の重傷を負ってしまった冴月。
そこへ現れた謎の美女博士「カナタ」に命を助けられ、「仮面ライダーボルテクス」に変身して命を繋いだ。
運命は変わった!
新たな命を捧げられた冴月は仮面ライダーボルテクスとしてアブゾウルと、人類の"今"の為に戦う!
過去?未来?関係ない俺は"今"を守ってやるッ!!
──────現在は俺の手に。
5周年+5作品目記念ッ!!
新連載!!仮面ライダーボルテクス!!
これからもどうぞよろしくお願いします!!!