それではどうぞご覧ください。
一度ニュースで見た事がある。
この2年の間で起きた中では1番酷く、世界の終わり、人類滅亡とまで言われたその騒動は【エモーショナリデミック】と名付けられた。
これは2年前、突如として現れたエモーション事件から数週間後に起こったもので、奇跡的に被害は最小限に収まった。
先ほどの様に連鎖的に大勢の人間から生まれるエモーション。なぜ、収まったのかの理由は定かではない。
だが、その傷跡として残るのが、現在のエモーションによる無差別な食事だ。
「可奈…… みんなっ……!!」
その光景よりも凄まじいとは言わないが、一度に4体出現するのは、ここ最近では見られなかった。
氷はリラティブドライバーを腰に装着する。
「えっ……?」
すると、驚く事にエモーションは氷を襲わず、互いに掴み合いを始めた。
気味の悪い鳴き声を共鳴させながら、今度は同士で触手を突き刺して互いを喰らう。
何が起こっているのか。エモーション同士が互いを食うなんて聞いたことも見たこともない。
氷はそれを見て震えていた。恐怖心が込み上げる。
『氷さんしっかり!』
一緒の身体にいるので、お互いの感情の変化には敏感。
モヤシは氷を励まそうと声を掛ける。氷もその声にハッとし、ドライバーにメダルを装填して変身する。
「変身ッ!!」
《リラティブ! ウィズソロー!》
変身後も今だに互いを喰らい合うエモーション。
これは大きなチャンスなのではないだろうか。このエモーション達を倒してしまえば、可奈たちを最も容易く救える事だろう。
「さぁ、まとめて冷やすわ!!」
好機と取った氷リラティブはドライバーの上部を押して両脚に氷のエネルギーを集中させ、4体のエモーションを同時に蹴り飛ばす。
《ソロー!フィーリング!》
「ハァッ!!」
掴み合いになっていたエモーションは、それぞれ廊下の壁に吹っ飛ばされる。
少々学校が荒れてしまったが仕方ないだろう。
「これで終わり……?」
いや、終わりではない。また4体のエモーションが互いを喰らい合う。
そして段々とエモーションは融合をしていく。
「な、なんなのこれ……!!」
エモーションが融合なんて聞いた事も見た事もない。
もしかしたらこれがエモーショナリデミックが最小限に収まった理由なのかもしれない。互いに喰らい合うのなら、何人居ようとひとつの身体に収まり、数がより少なくなるからだ。
「……… モヤシ、今から戦うエモーションの相手いける?」
『え、どうして?』
「多分、さっきよりも遥かに…… 強い」
『…… わかりました。やってみます!』
《アングリー!》《ボルケーノ!》
《コネクト!》
《リラティブ!ウィズアングリー!》
リラティブはウィズアングリーへとフォームチェンジし、モヤシの性格はガラリと変わり、物怖じせずにエモーションに突っ込んでいく。
火山の様に荒々しく、炎を纏った拳をエモーションへと食らわせる。
「なにっ……!?」
拳を片手で止められた。
炎はまだ燃えているが、エモーションはそんな暑さ関係なく、リラティブを投げ飛ばした。
「なんだこのやろう……」
「私に、その攻撃は、通用しない」
「あ──?」
今、こいつは喋ったのか。
人間の言葉を喋るエモーションはいたが、それは人間の感情をたらふく食べた個体のみのはず。ただこのエモーションに関しては、エモーション同士の融合でなった個体であるので、ここまで綺麗に喋ることなど不可能だ。
「お前、なんで喋れるんだ?」
「逆に、問う。人間は、なぜ、喋る? それと、同じことだ」
「小馬鹿にしやがってよぉ……!!」
リラティブの怒りのゲージが上がる。身体から炎が溢れ、それはまさに火山と表すべき姿だ。
「燃やされて灰になっちまえッ!!」
「なにを、怒る」
炎の拳の連打が繰り出され、それらをエモーションは両手を使って軽くいなす。
氷もその時に気づいた。このエモーションは「力」ではダメなのだと。「技」出なくては勝てない。
「クソッタレェェェェェェェッッ!!!」
『モヤシ!! 変わって!!』
「誰が変わるかぼけぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
そして隙をつかれたリラティブは、無数の拳の間から抜け出した平手で、廊下の壁にゴムボールの様に叩きつけられながら吹っ飛んだ。
「いってぇな……」
『あいつは力じゃ勝てないってわかったの。私なら絶対勝てる』
「お前が先に変われつったんだろ」
『臨機応変にやるのよ。それぐらいわかるでしょ』
「バカにしやがってぇ……!!!」
『はい、チェンジ』
「あ、くそっ!!────」
氷が主導権を無理やり奪い取り、ウィズソローへとフォームチェンジを行う。
しかし、この形態になったからと言って勝てる見込みはない。絶対と啖呵は切っても、実際は根本部分は何も解決してない。
「モヤシの力でも勝てない敵…… 友人達の感情……」
氷の奥底にある不安が表に顔を出し、みるみるうちにそれは「恐怖」の感情に変わる。
恐怖を覚えたその時、彼女の手には新たなカンジョーメダルが握られていた。
「紫色のメダル……?」
氷はリラティブドライバーからソローメダルを抜き取り、紫のメダル「テラーメダル」をセットする。
《テラー!》《アイスバーグ!》
《コネクト!》
「これってもしかして……」
『新しい力ってやつじゃないですか!?』
「よーし、行くわよ!!」
リラティブドライバーの上部のボタンを押すと、真ん中のメダルが回転し、紫色に光出す。
《リラティブ! ウィズテラー!》
これは恐怖から生まれたメダル。氷の勇気が恐怖を作り、恐怖は新たな力へ変換された。
ウィズソローとは違い、装甲の色は紫色へと変更され、全体的につららの様に棘が下へと伸びている。さながら着物を着た幽霊の様。
「さぁ、冷やすわ!!」
「新たな、姿」
エモーションはそう呟くと彼女に突撃していく。
それに対してリラティブは両手を前に突き出し力を込めると、両手から水の波動が出てきてエモーションを吹っ飛ばした。
「今度は水ってことね…… よしっ!」
「その力、危険だ」
「あなたもね!」
そしてリラティブは水の波動を放って、エモーションから距離を取りつつダメージを与えていく。
その連続攻撃にエモーションは近づくことができず、段々と後退を余儀なくされる。
「私、わかったことがあるんだけど。あなたその力って『量より質』って事でしょ。可奈達の感情が1人10だとしたら、あなた達が無差別に食べてる感情が3。つまり4体分という事は3倍以上は強いって事よね」
「そうだ。私は、強い、はず。なぜ、お前が、私より、上」
「いえ、力の差はあんまし埋まってない。簡単な話よ、あなたは──── 近距離攻撃しかしてこないんだもん」
「あっ……」
「さっさと返しなさい。可奈達の感情ッ!!!」
《テラー! フィーリング!》
リラティブはドライバーの上部を押して、両手にエネルギーを集中させ、巨大な水の波動をエモーションに向けて放った。
エモーションのいる廊下には扉がなく、逃げる通路もない。
波動は廊下を抉りながらエモーションを巻き込み、突き当たりまで吹き飛ばし、壁を越えて外へと飛んでいく。
「あ、ああぁぁぁぁああぁあぁぁあぁっ!!!──────」
そしてエモーションはたまらず爆発して散っていった。
それと同時にモヤの様なものが飛び出し、可奈達の身体の中へと入っていく。
「はい、私の勝ち!」
『やりましたね氷さん!』
「さて、可奈達の様子を見に行くわよ────」
氷は変身を解いて、感情が元通りになったのか確認をしにいくのであった────。
*****
またいつもの学校生活に戻った。
翌日、1人学校に向かう氷。立て続けの戦闘で少し疲労が出ている。
「ん〜…… 身体が重たい」
『氷さん大丈夫ですか?』
「一応はね。それよりあのエモーション手強かったわ」
『あれが何度も出てくるとなると困りものです』
「そうならない事を願うばかりよ…… このメダル。これがなかったらもっと苦戦してたかも」
『ベルトといい、メダルといい、どれもこれも急な登場しますね』
「やっぱり不思議よね。これから私たちどうなっちゃうんだろ」
そう心配する氷。
それを見下ろす新たな影。
「─── お前の出番だ。ヨロコビ」
「はっはー! 任せなカナシミ。マジであいつら倒してやっからよマジ」
新たなエモーション。彼女達の運命は────。
早くしようと思ったらめっちゃ遅れました()
次回、第7話「喜び=火山」
次回もよろしくお願いします!!