億劫のオーバーロード   作:wash I/O

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転移歴1000年。
この節目を敢えて祝おうとする者はナザリックにはいない。


第11話 転移歴1000年 道化来たりて笛を吹く
20.道化来たりて笛を吹く(1)


 転移歴800年代、900年代と、新たなユグドラシルからの来訪者は、400年代同様に捕捉されることがなかった。いなかったはずもなかろうそれらが、人知れず滅んで今なおどこかに埋もれているのか、あるいはナザリック地下大墳墓同様にどこかに潜んで繁栄を続けているのかは知る由もない。

 

 そのような次第でここ二百余年の間ナザリックは、よく言えば平穏、悪く言えば退屈な日々を過ごしている。

 

 さりとて、まったく無風であったはずもない。

 800年代中庸には、五代目となる闇妖精双子(ダークエルフ・ツインズ)ベラ、ベロが生まれ、押し出されてシニョーレ・フィオーレ、シニョーラ・フィオーラを名乗った二代目も900年代半ばに入ってこの世を去った。

 その遺体は、初代アウラ、マーレを含むユグドラシル由来の存在すべてがそうであったように光子分解されることがなく、腐敗することもなくそのまま遺り続けた。以て、シニョーレ・フィオーレ、シニョーラ・フィオーラは宝物殿奥の霊廟に場を設け、安置されることとなった。

 これらは、そもそも予期されていたことでありさほどの衝撃(インパクト)をナザリックにもたらすものではなかった。

 

 特筆すべき出来事としては、二代目マーレ、アウラが死去した後幾分か経た時分に第五階層(氷河)を震撼させた<換金箱(エクスチェンジボックス)>破損事件がある。

 この千年を通じ大魔王アインズ・ウール・ゴウンは、その死の支配者(オーバーロード)の本能の求めに応じあいも変わらず能天気にムカつく奴ら狩りを続けてきたのであるが、当初、あらゆる資源は無駄にすまい、と様々な工夫を以ておこなわれてきた遺体の活用もだんだんとぞんざいになっていた。

 特に、動像寺院(ゴーレム・テンプル)のギルド遺構から接収され予備として保管されていた<換金箱>が第五階層の遺体冷凍保管所に常設されて以降は、コキュートス配下の雪女郎(フロストヴァージン)たちが無造作に遺体をそこへ投げ込んで小銭に替えるのが常態化していた。遺体そのものは換金対象にはならないが、身に着けているものは数をこなせば幾許かの金貨にはなったからである。

 

 そしてここに思わぬ隙があったのだが、ナザリック勢から見て無防備徒手空拳に思われる現地人の中には、かつて世界に<翻訳の神秘>を行き渡らせていた世界級(ワールド)アイテム<巫女(ヴォルヴァ)の布告>を盗掘した連中のように、幸運からユグドラシル由来の物品に行き当たり身につけている者が、稀にではあるが存在する。

 そうしたアイテムの中には、これもまた全体からすれば極めて稀ではあるが、他のアイテムとの接触によりそれを破壊する(トラップ)効果を有するものがあり、当初、遺体遺品の現金化(シュレッド)をパンドラズ・アクターが一手に請け負っていた時分には決してそのようなことはおこらなかったものではあるが、それこそパンドラズ・アクターのような魔法の品(マジックアイテム)専門家ですら慎重な見極めを要するそれを、雪女郎に求めるのにはいささか無理があった。

 

 かくして、無造作に<換金箱>に放り込まれたそれはたちまちに異音を生じさせ、無二でこそないが貴重なそれを見るも無惨に破壊してしまったのである。

 

「く、(くそ)がーーーッ!」

 

と地団駄踏んで悔しがったアインズが、雪女郎や彼女らを監督するコキュートスに腹を立てているはずもなく、ただただこの事態を事前に予測し損ない防護措置を怠った自身に怒り狂っていることは、元よりナザリックの誰もが理解していた。

 とまれ、起こってしまったことは仕方がない。壊れてしまった<換金箱>が他ギルドから接収した予備のうちの一つであったのは幸いであったが、そうであっても二度目はあってはならぬこと。手始めに遺体冷凍保管所の大掃除が厳命され、最早来歴も分からぬままに積み上げられていた有象無象の遺体がナザリックを支える実りの肥やしたれ、とトブの大森林の各所に投棄されることになった。

 

 このとき、冷凍保管所の最奥で誰の目に留まることもなく忘れ去られていた、天地逆さのまま石床に突き刺さる二体の前衛的(アヴァンギャルド)な氷の彫像もまた、やはりこれを無頓着に単なる粗大ゴミの一つと見做した雪女郎によって野晒しにされたのであるが、そのことに気づく者など誰一人としていようはずもなかったのである。

 

 

                    *

 

 

 かくして、ナザリック地下大墳墓は転移歴1000年を迎えた。

 これを祝賀する催し、のようなものは何一つ開かれはしなかった。

 

 そもそも、至高の(あるじ)アインズ・ウール・ゴウンその人にしても、記憶がはっきりしているのはせいぜい一年が限度、それ以前の記憶となればユグドラシル時代に繋がってしまう。比較的変化や刺激の乏しい日々を過ごしているコキュートスですら三年より前の記憶はない。シャルティアに至っては三日前に自分が何をしていたのかすら怪しげだ。

 もっとも、シャルティアのそれは必ずしも彼らが宿命的に背負うところの短期記憶の制約によるものではないのであるが。

 

 とまれ。

 

 そのような次第であるから、彼らの主観的には千年もの間これをやってきた、という実感は甚だ乏しく、辛うじてデミウルゴスが生真面目に数え上げる三賢者会議(トリニティ)の開催回数だけがその悠久の時の流れを物語るのみであり、それにすら特に関心のない能天気なナザリックの面々の誰にとっても、とりたててその節目を祝う動因などありようもなかった。

 

 むしろ彼らの関心は、当然のことながら常に<百年の揺り返し>に注がれていた。

 が、注意深く続けられた探査、監視にその兆候が引っ掛かる様子はまったくなく、ひょっとすると三百年前、転移直後に白金の竜王(プラチナムドラゴンロード)ツァインドルクス・ヴァイシオンの逆鱗に触れる愚行に及んだがために問答無用にその恐るべき<始原の魔法(ワイルドマジック)>によって灰燼に帰された大理石造りの金字塔(ピラミッド)が、実はユグドラシル終了日にログインしていた最後のギルドだったのではないか、などという楽観的見通しすら口にされるようになったある日のこと、ナザリック地下大墳墓は招かれざる客の突然の来訪を迎えたのである。

 

 

 

「それでは、記念すべき第一万飛んで五百回、三賢者会議(トリニティ)(プラス)(けもの)と執事、を開催いたします。」

 

 ナザリック地下大墳墓地上部。

 隠蔽のために自然を模して盛り土された丘に囲まれた野原、古代遺跡を想起させる石造りの構造物が散在する一角に、純白の敷布(テーブルクロス)を張られた大きな円卓といくつかの椅子が並べられている。

 

 さわやかな秋の日差しの下、上座の一際立派な簡易玉座に鎮座するのが我らが死の支配者(オーバーロード)アインズ・ウール・ゴウンであることは言うまでもない。その右手傍らには守護者統括にして事実上のアインズの后であるアルベド、左手には狡知の参謀デミウルゴスと財務責任者パンドラズ・アクター、と、いつもの三賢者の面々。

 

 加えて。

 

 丁度アインズの真正面に向かい合って、すっと背の高い細身の女性が着座している。左右のこめかみから薄紅色の髪を貫いて後方に向かって捻りつつ屹立する二本の(つの)が飾りでないのであれば、人間ではあるまい。髪同様に薄紅色の光沢を放つ着流し(アオザイ)を通して透けて見える凹凸の少ない直線的な体線(ボディライン)、は中性的な雰囲気を漂わせてもいる。

 その隣には、彼女にどうしても、と請われてナザリックの執事セバス・チャンが居心地悪そうに直立不動のまま控えていた。

 

 突如どこからともなく徒歩で現れ、ナザリック外苑を哨戒していたシャルティアに「シャルティア、お久しぶり」と声を掛けてきた彼女に、一時ナザリックは大騒ぎになったが、落ち着いてデミウルゴスの日記を調べ上げてみれば、その存在はしかと記録されていた。

 白金の竜王ツアーの娘、と名乗る紅水晶の竜王(ローズクォーツ・ドラゴンロード)コンスタンツァダラゴーナ・ミナスジェライス、ことコニーは、六百五十年前にもふらりとナザリック地下大墳墓に立ち寄っており、際しては恥ずかしげもなくセバスに対する幼い恋心を表明した後、出された茶と茶菓子を丸呑みして飛び去ったのみで、いったい何をしに来たものかさっぱりわからない有様であった。

 

 彼女の再襲来に、アインズは六百五十年前同様にひとまずは父親ツアーに苦言の<伝言(メッセージ)>を飛ばしたのであるが「おまえの娘が来ている」と告げた途端にツアーが居眠りを始めたので、これは時間の無駄だ、と呆れてすぐに通話を切った。

 面倒臭いが放置もしておけず、アインズは前回同様にナザリック地上部で彼女と対面したのであるが、意外や意外、妙齢の淑女(セニョーラ)へと成長を遂げた当の本人は恭しくアインズに対して礼を執った後「<百年の揺り返し>に関してお耳に入れたい話がある」と真顔で切り出したので、急遽三賢者を召し出しての緊急会議開催に至ったものである。

 

「本日は緊急開催の契機ともなった客人(ゲスト)として紅水晶の竜王コニー、彼女のたっての要望(リクエスト)もあって忌々しくも小憎らしい執事セバスも同席しておりますが、この点については異議は御座いませんね?」

 

「デミウルゴス。忌々しくも小憎らしい、は余計な枕詞でしょう。」

 

と他ならぬセバスから異議が申し立てられたが軽く無視された。もとよりセバスも相手にされるとは期待していない。

 

「では、まずコニーからアインズ様に奏上したいことがあると伺っておりますので、そこから始めましょう。」

 

 デミウルゴスがそう告げると皆の視線がツアーの娘へと注がれた。

 そして発せられた言葉がこれだ。

 

「セバスを土産に持ち帰って構わんかえ?」

 

 まったく……親子してどういうノリなんだ、こいつらは!

 

「おまえの親父からは気に食わなければ屠ってお構いなし、と言われているんだが……オレにお前を殺すことを躊躇う理由などないとわかっているか?」

 

 たちまちにコニーの目が点のようになる。

 

「意外に……」

 

「意外に?……意外に、何だ?」

 

「父からことのほか冗談がお好きな御仁だ、と聞かされておったが。

 意外に冗談を解さぬのだな、アインズさんは。」

 

 おまえら親子の冗談の感性(センス)に付き合ってられるかよ!

 

「本題に入るつもりがないのなら帰ってくれ。」

 

「されば。」

 

 と、漸くコニーは本題を切り出した。

 

 曰く、彼女の母、すなわちツアーがコニーを娘としてもうけた際の配偶者は、遥か南方、竜王国と称する人間種の国家の王を長く務めている。ツアーがそうであるように、彼女もまた国家統一の象徴として祭り上げられている存在で、実際の政治(まつりごと)は人間の宰相以下多数の官吏が取り仕切っているものだが、その女王の宮廷に二ヶ月ほど前から奇妙な人物が出入りしているのだという。

 

「母は面白い太鼓持ちだ、と気に入っている様子だが、(わらわ)には、何であるとははっきりとは言えぬが、不穏なものを感じずにはおられぬ。そなたらも決して本性善ならぬ者ではあるが、存外カラリとしておる。対してこの者は、何やらねっとりとした嫌らしいものを覚える。」

 

「なぜ親父に相談しない?」

 

 アインズは簡潔にそう問うたが、返ってきた言葉はにべもないものだ。

 

「子のおらぬアインズさんには、子を育て上げた後の雄雌の微妙なところはわかるまい。」

 

 その気になれば世界すら焼き払える竜王(ドラゴンロード)が何を言ってやがる!

 

「コニーの母君は、ツアーの言う<百年の揺り返し>に関心がないのだね?」

 

 このままでは話が進まない、と案じたものかデミウルゴスが割り込んだ。

 

「アインズさんのところの参謀は理解が早くて助かるぞえ。」

 

 まるでオレが呑み込み悪いみてーじゃねーか!

 とアインズは憤るも、よくよく考えてみればその通りではあるので返す言葉がない。

 

 コニーはそこには関心がないようで、母女王は父ツアーのような識見にはいささか欠けていて、決して愚かな王ではないとは思うが、昔から人を見る目はお世辞にもない(ほう)だ、と事もなげに言い放った。

 

「コニーは問題の人物に会ったことがあるのかしら?」

 

 アインズが二の句を継げずにいると、アルベドがなんとか話を進めるべく助け舟を出して来る。

 

(わらわ)は竜王国の宮廷に席を得ているわけではないゆえ、遠目に見たことがある、程度ではある。

 が、その者はこちら(ナザリック)の皆に勝るとも劣らぬ気配を発しておった。父の言うユグドラシルプレイヤー、とやらであるのは間違いない、と判断しておる。」

 

「供……つまり(わたくし)どものような下僕(しもべ)を引き連れているのかしら?」

 

「いや、いつも一人ぞな。」

 

「隠形している可能性は?」

 

「自慢するわけではないが、今もこの周囲を蟲型の異形の者が隠形して守備しておることに(わらわ)は気づいておる。その(わらわ)があの者はいつも一人だ、と申しておると思うておくれや。」

 

 コニーは正しくナザリックの八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)の存在に言及した。その彼女が言うのであれば、確かに話題のプレイヤーは単独行動をしているのだろう。そんなことをその者の下僕(しもべ)が看過するだろうか、という疑問は湧くが、その者自身がアルベドやデミウルゴスに匹敵する知恵あるNPCである可能性も否定はできない。

 

「コニー殿の母上は、その者に資金援助などをしておいでなのですかな?」

 

 続いてパンドラズ・アクターが問いを発した。

 

「ない、とは言い切れぬが、そもそも母は竜王国の国庫をどうこうする権を持ってはおらぬ。かの者を宮廷魔術師に召し抱える、などという噂も耳にはしたが、まだそれが成ったとは聞いてはおらぬゆえ、今のところはないと考えるが宜しかろう。」

 

「奇妙ですな。」

 

 コニーの言にパンドラズ・アクターが首を傾げる。

 

「我らのように転移時点で相応のユグドラシル金貨を溜め込んでいたものであれば、ここまで拙速に現地の者との接触を試みる必要もありますまいし、逆にギルド維持資金に困っているものであればコニー殿の母上にそれを求めておらぬ説明がつきません。」

 

「おまえの言はもっともだが、宮廷魔術師の地位が得られさえすればその収入でギルド維持が叶う程度の余裕だけはある、という可能性もあるだろう。」

 

 アインズは息子の言を肯定しつつ、即断を避ける修正を加えた。

 

「コニー、宮廷魔術師云々が話題になるということは、そいつは魔法詠唱者(マジックキャスター)なのだな?」

 

「左様、それは間違いない。アインズさんのような骸骨姿ではなく人型を取ってはいるが、そなたらの言う異形種、であろうと思う。無論、(わらわ)がそうであるように、それがかの者の(まこと)の姿であるかはわからぬがな。」

 

 アインズを含む三賢者(トリニティ)は、ある程度安定した人格を保ってこちらに顕現したユグドラシルプレイヤーは、ナザリック地下大墳墓がそうであったように、軽々に現地勢力との接触は試みないであろう、との見立てを前提にしていた。

 ユグドラシルプレイヤーと現地人ではあまりに力の差があり過ぎて、真っ当な関係の均衡(バランス)維持が難しいからであり、力の差に気づきつつも人格に難がある者であれば、八欲王や火口(クレーター)となったギルドのようにたちまちに略奪に乗り出すのが自然だからだ。

 なので、コニーによって報告されたプレイヤー、もしくはその意を受けた知的な下僕(しもべ)の行動は、現れてしまえばそういう者もいるだろう、と思われる一方で、まったくの想定外であったことも否めなかった。相手がツアーではない竜王(ドラゴンロード)で、かつ、ツアーの知り合いだ、ということも含めて。

 

「コニーはこの話をオレたちに知らせて、どうして欲しいんだ?」

 

 改めてアインズは単刀直入に訊いた。

 コニーは悪びれもせず即答する。

 

(わらわ)とて、父がユグドラシルプレイヤーを世界を(けが)し得る者、と警戒し、常に心配(こころくば)ってきたことを承知しておる。が、であるがゆえに、母はこれを素直には聞かぬ。されば、(わらわ)が懸念するところが妥当か否か、アインズさんの見極めをお願いしたい、と考え参上した。」

 

 加えてこうも。

 

「アインズさんとて<百年の揺り返し>でやって参る者に関心あることは承知している。(わらわ)の話を恩義に感じてくれるならば、謝礼にセバスの身一つで手を打とう。」

 

 セバスは変わらずコニーの後方で後ろ手を組み身じろぎ一つしない。

 

「コニー、それは……また冗談なのか?」

 

「アインズさんには産卵適齢期を迎えいささか焦りを感じていなくもない(わらわ)の言葉が冗談に聞こえてか?」

 

 アインズからすれば、すべてが悪い冗談だ。

 

「セバスはオレの下僕(しもべ)ではあるが、セバスが誰と恋をし交わるかを決めるのは、オレではなくセバス自身だ。セバスと卵を温めたい、と願うのであれば自分で口説くんだな。」

 

「口説いても構わんのかえ?」

 

「同じことを何度も言わせるな、コニー!

 オレがおまえの色惚(いろぼ)けに難癖して何の得がある?

 好きにしてくれ。セバスに振られてオレたちを逆恨みするなら、そのときは相応の反撃をくれてやる!」

 

 そう言われたコニーは、自身が振られる可能性などまったく顧慮せぬものか、妖艶な視線でセバスを舐め回すように見つめ始めた。やはりセバスは、変わらずコニーの後方で後ろ手を組み身じろぎ一つしない。

 

 憐れに思わなくもないが、許せセバス。

 面倒臭い馬鹿の相手はおまえに任せた!

 

 形容し難い怪しげな空気を醸すコニーとセバスから強いて目を逸したアインズは、手招きでアルベド、デミウルゴス、パンドラズ・アクターの三賢者を自身の側近くへ呼び寄せ、何やら密談を開始した。

 

 

                    *

 

 

 ふと気がつけば、そこは夜半の鬱蒼とした森の中で、自身はずぶ濡れの泥まみれだった。

 

 植生から考えればトブの大森林のどこか。今が夜であることを幸いに、彼女は天空へと目をやった。見覚えのある星座を辿れば、現時刻が不明瞭なために確定こそしないものの、大凡の方位方角はたちまちに判明する。

 続いて彼女はいくつかの惑星の位置を確認した。その相互の相対位置関係を計算して愕然とする。この惑星配置はあり得ないものだ。これが正しいのだとすれば、自身が意識を失ってからざっと九百年は経過していることになるではないか!

 

 否……きっとそれは正しいのだ、と彼女は確信する。

 これはあの化け物が、自分に下した時間流刑なのだ、と。

 

 そこまでして。

 

 そこまでして私が「口だけの人間」であることを証明したいのか、あの傲慢で無能な骸骨は!

 

「クライム!クライム!」

 

 彼女は大声で忠臣、かつ、愛玩する者の名を呼んだ。

 往時は口に出すことを憚られたそれではあるが、それを耳にしたとて何処の誰であるか解する者は、極一部の例外的存在を除けばよもや存命はしていまい。

 

 しばし応答はなかったが、ややあって、掠れた声で返答がある。

 

「ラナー様……ラナー様はご無事であられますか?」

 

 クライム、と真名を呼ばれたことで、最早偽名を用いる必要はなくなったのだと判じた彼もまた、己が愛しい(あるじ)の真名を呼んだ。

 

「もちろんよ、クライム!」

 

 幸いにしてラナーもクライムも夜目には困らぬ身の上だ。互いの声を頼りに再会を果たし、しばしの抱擁を交わす。

 

「ご無事で何よりでしたラナー様。しばしご不便をお掛けすることになりますがご辛抱ください。どこか平穏に暮らせる場所を探しましょう。」

 

 そう言うクライムを、ラナーは力強く突き放した。

 

「何を考え違いをしているのかしら?

 戦いはまだまだこれからよ!」

 

 クライムは、今なおあの常識の埒外の存在への闘争を断念しない(あるじ)の情念に驚嘆しつつも、動揺の色を隠せない。

 

「もうお()めください、ラナー様。

 ()()(わたくし)どもでどうこう出来る相手では御座いません!」

 

 クライムは真正直に自身の思うところを奏上するが、その真摯な言葉は彼女の心には響かないようであった。

 

「どうこうするのはあなたではないわ。

 私よ!」

 

「ラナー……様。」

 

「あなたにはわからないでしょうけれど、どうやら私たちは九百年眠らされていたようだわ。」

 

 クライムの目が点になる。

 

「私の読みが正しければ、骸骨とその眷属は今なお自身の存在をこの世界の人々に対して隠し続けているはず。でも、私の手にかかれば連中を炙り出すのはそう難しいことではない。そして、あの連中の姿を見て仲良くできる相手だと思う人間、亜人は、九百年の時を経た今であってもそうはいないでしょうね。」

 

 ラナーは愉快げに(わら)った。

 

「そいつらをちょっと煽ってさえやれば、あの骸骨野郎を的にした世界大戦を起こすのだって簡単なことよ。皆の恐怖を煽り、その恐怖を克服するには恐怖の源を断つ以外にない、と囁いてやりさえすればよいのですからね。」

 

 おほほほ、と再びの高笑い。

 

 嗚呼。

 

 とクライムは嘆息した。

 

 自分はどこで道を誤ってしまったのだろうか。

 いつの時点であれば、慈愛溢れた黄金姫のままに彼女を留まらせることが出来たであろうか。

 

 そして、それを怠った自身には、この憐れな老婆に最期まで付き合う義務がある、と。

 

「ひとまずは、手近な町を探しましょう。」

 

「多分、こっちよ!」

 

 ラナーは星から判断した方角に確率的な要素を加えて、森を脱出し人間の生活圏へ至る可能性が最も高いと考えられる方向を右手で指し示す。左手はクライムの手を取った。

 既に骨と皮のみからなる節くれだったその感触は、クライムにとっては不思議なことに、自身を従卒見習いとして場末から拾い上げ連れ出してくれた当時の黄金姫のそれから何ら変わらぬように思われた。

 

「お供いたしますとも、どこまでも!」

 

 二人の下等吸血鬼(レッサーヴァンパイア)は、力の限り夜半の森を駆ける。

 まるで、身分違いの叶わぬ恋を成就させるべく、駆け落ちした姫と従僕であるかの如く。

 

 

                    *

 

 

 コニーの母、黒鱗の竜王(ブラックスケイルドラゴンロード)ドラウディロン・オーリウクルスの宮廷に近からず遠からず、人里からも近からず遠からずの沼地にその庵はあった。小さな、遠目には農具の納屋のような小屋。どことも道は通じていない。住人がそういったものを必要とはしない存在だからだ。

 

 やおら、その傍らに禍々しい気配を発しつつ<転移門(ゲート)>が開いた。

 中からまず現れたのは、七つの宝玉を咥えた七匹の蛇が絡み合う黄金の杖、ナザリックの至宝ギルド武器スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン……その模造品(レプリカ)。過去の経験……など何一つ憶えてはいないのであるが……から、理知的な来訪者(ユグドラシルプレイヤー)相対(あいたい)するに当たっては、まず自身がユグドラシルにその人ありと謳われたギルド、アインズ・ウール・ゴウンのモモンガである、と認知されることがその後の円滑な会話に資することはよく理解されているので、今回もそのために持ち出されたものであろうか。

 そして続いて現れるのは、その至宝の杖を携え自らは神器級(ゴッズ)アイテムとなる金糸銀糸に彩られた豪奢な漆黒の装束(ローブ)を纏った骸骨。

 常と異なるのは、その肋骨と骨盤の中空に浮いて留まるこれまたナザリックの至宝の一つとなる紅玉が見えないことだ。代わって骨の両の手には、やたらと目立つゴテゴテとした籠手が嵌められている。

 

 さて、これは何を意味するものであろうか。

 

 とまれ、骸骨は無言のまま連続していくつかの怪しげな光に包まれた。<無詠唱(サイレント)>にて防御系の強化(バフ)をおこなったものだろう。

 実のところ、ユグドラシル時代を通じて、盟友ウルベルト・アレイン・オードルやペロロンチーノと共に楽しんだ気まぐれの狩りを除けば、こうした防御が実際に功を奏したことはほとんどない。

 これは、防御魔法が何らかの手段によって突破された、という意味では決してない。ギルドの対外戦は軍師ぷにっと萌え、あるいは戦術指揮官ベルリバーによって事前に綿密に計画がなされており、その時点でほとんどの場合勝敗が決していたからだ。つまり、こういった防御手段が必要となる不意の一撃を食らうよりも前に、敵方が瓦解潰走しているか、アインズ・ウール・ゴウンにとっての想定外の事態が生じた場合は、無理をせずの即時撤収が徹底されていたからである。

 

 さりとて、ユグドラシル時代から培われ<日誌(ログブック)>にも刻み込まれた習慣は容易に消え去ることはない。そもそも予備の<換金箱(エクスチェンジボックス)>の破損に、自身が事前に備えていなかったことを地団駄踏んで悔しがるアインズであるから、後々にそういう気分を味わうくらいであれば、手間を惜しんだりどうせ時間で回復するMP(魔力)を出し惜しみする理由はまったくなかった。

 <換金箱>にしても、かの破損はそれが、予備、と認識されていたがゆえに生じた隙だったのであって、宝物殿のそれが唯一のものであった時分は、喉から手が出るほど欲したユグドラシル金貨を得るためであっても、そこへ放り込む物品の事前検査は度が過ぎるほど慎重におこなわれたし、ほぼ安全性が保証されているトブの大森林の実りについても、検疫措置をおこなわずに<換金箱>に投げ込むなどという粗雑さは、()にとってもまた、想像の埒外の仕儀なのである。

 

 骸骨は<飛行(フライ)>でふわりと飛び上がり、沼の中の小さな陸地に建つ庵の入り口へ舞い降りた。この場所はコニーから伝え聞いたもので、ほぼ聞いたままの場所に聞いたままの建物があった。今のところ、罠や魔法による迎撃の気配らしきものは感じられない。

 

 コンコン、と彼は礼儀正しく庵の扉を叩いた。

 

「突然失礼します。こちらにユグドラシルからお越しの(かた)がおられると伺いまして、ご挨拶に立ち寄らせていただきました。」

 

 いささか馬々鹿々しさを覚えなくもないが、無用な闘争を回避するにはこういったお作法も必要なものだ。

 ややあって中から男性の声……声色のみから判じれば、かつてのモモンガ、鈴木悟と同世代であろうか……で応答があった。

 

「ユグドラシル、とおっしゃいましたか……只今参ります!」

 

 その口調は驚いてはいるようだが理知的で、どうやらたちまちに戦闘、ということはなさそうだ、と内心安堵するも決して警戒は緩めずに相手の出方を待つ。近づいてくる足音の後に扉が開かれ、姿を現したのは一人の道化師だった。

 

道化師(トリックスター)……とは、また微妙な相手ですな。)

 

 攻性防壁(カウンター)を警戒して魔法による探査こそ試みはしないものの、彼の鋭敏な感覚はたちまちに相手の値踏みを開始する。百レベル(カウンターストップ)か否かは断言できないが、それに限りなく近い強者の気配。これみよがしに身体のあちこちを飾る魔法の品(マジックアイテム)は、効果のほどこそさほどではないが、かなり高価な課金アイテムの(たぐい)ばかりだ。

 

 そして、遊戯札(トランプ)道化者(ジョーカー)の如き怪しげな化粧を施されたその表情は、なかなかに内心が読み取り辛い。

 

「も……もしやあなたは!」

 

 対する道化師は開口一番そう言った。

 どうやらこちらが何者であるか、知識があるらしい。

 

「ユグドラシル非公式ラスボスと謳われた、アインズ・ウール・ゴウンのモモンガさん……なんですか!」

 

「ああ、私のことをご存知でしたか。申し訳ありませんが、私はあなたのことを存じ上げません。」

 

 有名人であることを鼻にかけているよう取られないように、でありながら、必要以上に(へりくだ)ることのないように、声色を注意しながら骸骨はそう応じた。

 

「ま、まずは立ち話も何ですので中にお入り下さい。ご覧の通りのあばら家で何のおもてなしも出来ませんが。」

 

 道化師は骸骨を中へと招いた。その言葉は嘘ではなく、魔法の力で彼のギルド拠点に繋がっている、などということはなく、こちらの世界の素材でのみ建てられたと思われる言葉通りのあばら家だ。

 道化師は一つだけあった椅子を骸骨に勧め、自身は質素な寝台(ベッド)に腰掛けた。

 

「私はダニエル・グレイ、と名乗っております。ご覧の通りの道化師(トリックスター)で、ギルド無銘の者(エキストラ)に所属しておりました。」

 

 まず道化師はそのように自己紹介した。

 

「よもやここに在るユグドラシルプレイヤーが私だけ、とは思ってはいませんでしたが、まさかあの有名なアインズ・ウール・ゴウンの、しかもギルド長とお会いすることが叶おうとは思ってもみませんでした!」

 

 興奮気味にそう告げたのち、道化師はすっとそれを納めて静かに問う。

 

「で……モモンガさんはどの程度状況を掴んでおいでなのでしょうか。ユグドラシル運営とは連絡がついておいでなのですか?私のことも、運営から知らされてお訪ねになったのでしょうか?」

 

 なるほど。

 と骸骨は、表には出さないままに道化師の品定めを続けていた。

 

 過去にこういったことを言い出した来訪者はいなかったように思うが、十全な知性を元のプレイヤーから引き継ぐことが叶った者であれば、ある意味自然な発想ではある。少なくともこれは、NPCではないだろう。

 

「いえ、運営と連絡がついたことはありません。

 あなたのことは、あなたが出入りしておられる竜王国女王陛下の娘から知らされました。」

 

 その名こそ出さぬが、コニーからその存在を聞き及んだことについては、こちらが来訪者に気づいた経緯について余計な詮索をさせぬよう、開示することは三賢者の合意で前もって決められていたことになる。

 

 一瞬……ほんの一瞬ではあるが、道化師の瞳が怪訝な、こちらを疑ってかかるような色を見せたことを骸骨は見逃さなかった。が、続く道化師の言葉はその印象とは異なる物言いだ。

 

「そうでしたか。オーリウクルス女王陛下のご息女とお知り合いとは……。

 流石はアインズ・ウール・ゴウン。私如きの一歩も二歩も先を行っていらっしゃる!」

 

 どうにも道化師は何か考え違いをしているように骸骨には思われるが、それを正すことはナザリックのみが理解し専有している知識を少なからず分け与えることにも繋がりかねない。今少し、腹の探り合いが必要だ。

 

「ダニエルさんは……いつこちらにお越しになられたんですか?」

 

 やはり道化師は、骸骨の言葉に一瞬「おや?」という表情を見せた。

 そんなにおかしなことを尋ねただろうか。あるいはこれはこの人物の癖のようなもの?

 

「お恥ずかしながら、はっきりとは思い出せないんです。

 ユグドラシルのサービス終了直後、気がつけばここに居ました。ざっと三ヶ月くらい前になりますかね。

 

 モモンガさんも、同じような感じですか?」

 

 これは!と骸骨は思う。

 この類型(パターン)は、彼自身が直接相見(あいまみ)えたわけでは決してないが(のち)に伝え聞いたところの、アインズの魔法で死ぬことを願い、幸いにもそれを叶えられたという田中(すぐる)と同じだ。

 

 ダニエル・グレイを自称するこのプレイヤーは、おそらくは転移直後にギルド維持資金枯渇に直面し、自身のNPCに襲われて辛くもこれを撃退。何かの偶然でこの庵まで辿り着きはしたものの、そこに至る記憶を既に失っているものだ。

 見る限り、彼が身につけているものを除けば、あばら家の中にユグドラシル由来を思わせる物品が見当たらないのがその証拠だろう。

 

 あるいは、すべて承知の上で、まだそこに思い至ってはいないのだ、とこちらに思わせるためにこのように偽装している……などという可能性があり得るだろうか?

 

「……そうですね、同じような感じだと考えてください。」

 

 骸骨はそう答えた。が、見るからにダニエルはそれを信じてはいない様子だ。

 

「我々の……本来の身体はどうなってしまったんでしょうか。三ヶ月も食事も摂らぬままにVRデッキに繋がって汚物塗れだなんて、考えたくもないですよね。ですが、こうしてお話しできるということは、我々は何らかの手段で生存させられている以外にあり得ない。ユグドラシル運営がこんな誘拐紛いのことをしようなどと思いもしませんでしたが、当局は動き出していたりするものでしょうか?」

 

 言葉通りに信じる限り、ダニエルは今自身が在る此処が、没入型仮想現実遊戯(DMMO RPG)ユグドラシルの延長戦だと捉えており、異世界転移など思いも寄らぬ、と言わんばかりの様子だ。

 これも、出会ってしまえばさもありなん、と思わないでもないが、これまでに出会ったことはなく、想定もしてはいなかった類型(パターン)になる。

 

「そこは私にも何とも……」

 

と骸骨は言葉を濁した。やはりダニエルからは、何かを疑わしく思っているような雰囲気が漂っている。

 

 まぁ、常識で判断できない事態に巻き込まれている、という点については疑う余地もないのではあるから、無理のないこととは言えるのであるが。

 

「モモンガさんは他のプレイヤーともお会いになりましたか?」

 

 ダニエルが関心を向ける事柄の順序がいささか不自然に思われ骸骨は当惑するが、事前に決めた通りの対処をこなすのみだ、と割り切った。

 下調べしておいた過去の記録の中から、やはり三賢者が開示して差し支え無しと判断していたうちの一部を開示する。変に否定するよりも警戒されずに済むだろう。

 

「お二人ほど。お一方は土鬼(ノーム)、もうお一方は蟲の死霊使い(ヴァーミンネクロマンサー)でしたね。

 どちらも私のことをご存知で、とくに土鬼の方は見た目は当然中年男性でしたが、お話ししてみると明らかに中の人は若い女性のようでしたので、少し照れくさかったです。」

 

 骸骨は、道化師の警戒心を解く一助になれば、と冗談めいた調子でそう返したが、すぐに掻き消えはしたものの、ほんの一瞬ダニエルからは何に対してかは不明瞭ではあるが、明らかな苛立ちにも似た感情が伺えた。聡明でこそあるが人間では決してない骸骨には、これ以上の人間由来の機微の理解は手に余る。

 

「そのお二方は今どちらに?」

 

「一度出会ってそれっきりです。今、何処におられるかは承知していません。」

 

 流石に「自分が必殺連続技(コンボ)で屠ってやった」と言うわけにもいかず、土鬼のギルド拠点がその後も特定されないままなのは事実なので、骸骨はそう答える。ますますダニエルの様子は訝しげだ。

 

「不躾ながら、モモンガさんはまるで平気のように見えますが。

 ……そうなんですか?」

 

「はい?」

 

 問われた意図がわからず、骸骨は呆けた声を発した。

 

「運営の気まぐれか手違いか、あるいは何らかの犯罪に巻き込まれたのだとしても、普通はこの事態からの脱出をお考えになりませんか?

 でもモモンガさんは、こちらの世界で出会った二人のプレイヤーと別れてそれっきりだ、とおっしゃる。常識的に考えれば、共に行動して脱出の方法を考えはしませんか?」

 

 うーん、面倒なことになってきたな、と骸骨は相手に気取られぬよう内心で溜息をついた。

 これも、田中蟲の態度から考えればあっておかしくないものではあるが、よもやこちらがそれに挑んでいないのがおかしい、と詰め寄られるとは、やはり考えもしなかったことだ。人間の想定外の事態に対する反応というのは、なかなかに多様性(バラエティ)に富むものだ。

 

「実は……モモンガさんは何か運営から便宜を受けておいでなのでは?」

 

 よりにもよってそう来るか!

 

「……正直に言いますと、此処が何なのかわからないのはダニエルさんと同じですが、あまり不満はないんです。仲間もいますし。」

 

 骸骨はどう返してよいやらわからぬ疑問から少しでも話を()らそうと、何気なくそれ自体はまったく嘘ではない答えを返したが、これにはダニエルが大きな動揺を隠しもせず見せた。

 

「ほ、他のアインズ・ウール・ゴウンの方々もおいでなのですか!」

 

 嗚呼、そういう意味ではなかったのだが。

 

 さりとてNPCが自我を生じさせて行動することを知らぬダニエルに、そんな知識をくれてやる必要はない。

 

「全員、ではありませんが。」

 

と骸骨は話を合わせた。

 

 が、道化師は引き続き食いついてくる。

 

「タブラ・スマラグディナさんや、ウルベルト・アレイン・オードルさんもおられるのですか!」

 

 それは守護者統括アルベドと参謀デミウルゴスの創造主の名だ。骸骨はもちろんそれを承知しているので、まぁ、似たようなものだろう、と、

 

「もちろん。」

 

と答えた。

 

 すると、いっとき考え込む様子を見せたダニエルは、改めて姿勢を正しこう切り出したのである。

 

「モモンガさん、私があなたの新しい仲間になりますので、そんな連中とは手を切って此処からの脱出方法を共に模索すべきです!」

 

「……は?」

 

 そんなところまで()()せずともよかろうに、骸骨はパカリと大きく口を開けて絶句するも、流石に神々しい緑色の光を放つことはなかった。

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