双子忍者の
「何だか……剣呑な様子だな。」
一筋離れた
「遺憾ながら思った通りだな。」
と返す。
クゥイナは、ただ黙ったままに、うんうん、と頷くのみ。
「思った通り?」
「キーノの耳ならここからでも連中の声が聴こえるだろうよ。耳を澄ましてくれ。」
「あ……あぁ!」
まだ日が高いので万全でこそないものの、
「……いい気なモンだぜ。」
「当たり屋、っていうんだろ、こういうの?」
「たんまり詫び
「どこぞの参事の差し金かもなぁ?」
「てめぇの子どもを出しにしたってんだから呆れた野郎だ!」
……おいおぃ、なんだこれ?
「直接暴力に訴えないだけ、まだまともな連中だ。」
やはり、何でもないという様子のリキウスにキーノは困惑させられる。
先に<朱の薔薇>を訪ねてきた参事が、何やら自身の企てを通さんとする政争の
見れば、破落戸たちは何をするでもなく、ときおり親子が暮らすという部屋の辺りを一瞥しては、少なからず通り過ぎる通行人に聞こえるか聞こえないかくらいの声でぼそぼそとさきほど聞き耳立てた会話を続けている。
それ自体は害のない、むしろそのあまりに卑しい心根に憐れみすら感じる行為でこそあれ、これがかの親子に対する嫌がらせを企図して為されていることは明らかだ。
「いったいこれは?」
「説明は
一人、話が出来そうなやつを残して、
先の聞き耳もそうだが、リキウスには、キーノの自身は好ましく思わないでもない吸血鬼の
無論、それが自身が皆の役に立つ最も大きな長所であることは承知はしているものの、そこはかとなく違和感を覚えないでもない。かつての<蒼の薔薇>のラキュース・アインドラ……自身、信仰系
とまれ、今はそんなことを議するときでなし。
通りすがりを装って歩み出たキーノが不意に破落戸の前で立ち止まったため、
「……何だ、おまえ?」
と声がかかったが、それまで俯き加減だったキーノが、ふっ、と深く
「な!」
一人残された男は驚きの声を上げたが、いち早くその死角に駆け込んだリキウスがあっと言う間にその利き腕を捩じり上げ、
「怪我をしたくなかったら、ちょっと付き合ってもらおうか。」
と、
ひょい、と壁に向かって突き放し、リキウス、キーノ、クゥイナに囲まれて、男は特に歯向かう様子は見せなかった。しばし卑屈な面持ちで対する三人を品定めする
「あんた……?
<朱の薔薇>のリキウス・アインドラじゃねーか!」
「俺のことを知っているなら話が早い。」
リキウスは腕組みしたまま強い視線で相手を威圧している。
が、睨まれている男は何の自信があってか怯む様子を見せない。
「……どういうつもりかは知らねーが、面の割れた相手なのは幸いさーね。
オイラはヘンガートナーさんのところで……世話になってるモンだ。それでも事を構える、ってんならいい度胸じゃねーか!」
キーノは、はてヘンガートナーとは誰だろう、と思うが、この文脈からすると、ヘンガートナーも市参事か、そうでなくともエ・レエブルで相応の権力を備えた人物なのだろう、と推測する。
この思わぬ反撃も、リキウスは読み切っているものなのだろうか?
「それはこっちの台詞だ。おまえがその名を口にしたことで裏を取る手間が省けた。」
「!」
言われた男は目を真ん丸にして固まっている。
虎の威を借りる狐が、たちまちに借りて来た猫だ。
「あんた、正気か?
この街でヘンガートナーさんに楯突けば、いくら<朱の薔薇>とて……」
「勘違いするな。」
とリキウス。
「俺はそのヘンガートナーさんに助け舟を出してやろうと言うんだ。」
「キーノには意外に思うかも知れないが、あの馬鹿には決して
破落戸の頭目と見做した男に「この件から手を引かないと腕を捻られるでは済まんぞ」と因果を含めて解き放ったリキウスは、小さな紙片に何かを書きつけてクゥイナに託し、自身はキーノと共に定宿に戻った。
ヘンガートナーというのは、参事どころか<原初の五家門>の一角を占めるエ・レエブルきっての大物で、件の事故の山車の一方が彼の家門の始祖を称えるそれであった。
「あの馬鹿はヘンガートナーの支持者、というか
ありとあらゆることが自己責任に帰されるエ・レエブル、そして帝国自由都市では、我が身を己で守る力量のない無産市民は、相手が参事であれその他の有力商人であれ地主であれ、支持することと引き換えに庇護を約される関係を取り結ぶのが一般的だ。
このとき、支持を受け庇護を与える側が
「いいわけないだろ!」
とキーノは突っ込むが、やはりリキウスはどうというでもない
「そもそものアレは疑うべくもなく事故で、誰か一人の責を問う話でもない。直接的なそれは山車を押していた連中に問われもしようが、その監督責任はそれぞれの山車の家門に帰する、とも言えるし、潜在的にそういう危険のある祭りを能天気に毎年楽しんでいるのは他ならぬ街衆自身だ。
今回の被害者とて責を免れるものじゃ決してない。向かい合った山車が互いに道を譲らなければ、何かあって当然だ。その瞬間に幼い息子から目を離した父親も、完全無謬とは決して言えまい。」
「そ、それはそうかも知れないが……」
「問題は、だ。」
とリキウスは、いつものCの字席の上に肘をついた。
「<原初の五家門>や<最初の十六参事>が絡んだこの手の
あの馬鹿はそれがわかっていて、ヘンガートナーに世話になっている義理があるし、何より人間てやつは、自分が借りを感じている人物が負い目を負ったり、その非を鳴らされるのに、馬々鹿々しくも耐えられない者の
そんな具合で、当の本人としては正当防衛くらいのつもりで、火種の親子を街から追い出してしまえば人の噂も七十五日、と考えたんだろうさ。あいつが本物の馬鹿だったら親子を殺して何処かに埋めちまう、ってのもあり得たんだから、まだマシな方、ということになるが。」
本人の自覚の有無はさておき、人を善人と悪人とに
「デ、ドウスルンダ?」
と、愉快気なギン。
こう問いつつも、既に答えは承知であるように見える。
リキウスもまたそれは承知しているので敢えてここで仔細には触れない。
「締めにはギンさんにも付き合ってもらう。」
「私ヲ……祭リノ山車ニハ載セナイ、ンジャナカッタノカ?」
ギンの揚げ足取りにもリキウスは悪びれる様子もなく、
「自分で押す分には別儀さ!」
と、カカカと笑って見せた。
*
紛うことなく悪魔である私としては誠に遺憾なことではあるが、呆れたことに、一見どんなに愚かしく拙く悪意に満ちたかのように見える行為であっても、やっている本人は、善かれ、と考えてやっていることがほとんどだ。
強盗殺人、といった、誰の目にも邪悪な行為でさえ、当人にとっては愛しい飢えた我が子を救うべく肥え太った搾取者を襲う、善きおこない、であるなどといった茶番がざらにあるのは、実に嘆かわしいことだ。
地獄への道は善意で舗装されている、などと言った
あるいは、地獄は善意で満ちているが天国は善行で満ちている、とも。
実に腹立たしいではないか!
善意の者を私が招く謂れなどあってたまるかね?
我が御領たる地獄は、純粋結晶した悪意、で満たされていて然りである!
善なる者の
善人なおもて
……おっと失敬、途中から私の趣味の世界へ
とまれ。
極めて逆説的ではあるが、それはまた一つの真理を示してもいるのだよ。
すなわち、人間どもは決して真なる悪には至れないのだよ。
それこそが、かの儚くも切ない者たちの限界の本質であるのだ。
そして、私がそうであるように。
また、
(えっ?
……いやぁ、そりゃ
この世の一切合切を引き連れて、禍々しくも呪わしき地獄へ至る門を
キミにも。
そこに僅かばかりとも参与することが出来る、と……期待するやせずである!
と言ったところで今日の講義はここまでとしよう。
服を脱いで尻をこちらへ向けたまえ。
(はっ?)
我が教えに陶酔するあまり、既に濡れそぼっているじゃないか。
ご褒美にいきなり入れてやろう。
(え?……えぇ!)
そしてその抽挿を受け入れ甘い溜息を漏らすと同時に……
突如として目前に現れた、金糸銀糸に彩られた漆黒の
「……きゃぁーーーーー!」
*
「本日は時間を作っていただいて感謝します、ヘンガートナーさん。」
<朱の薔薇>の一同は、クゥイナが届けた
「本題を手短に。」
六十は
「
「いくら欲しい?」
いきなりそこかよ!とキーノは息を呑んだが、リキウスは
「それは早合点が過ぎましょうよ。」
老爺は無言のまま、杖を軽く振って話の続きを促す。
「あなたの
エ・レエブルに司法、警察的な治安機構は存在せず、参事であろうが無産市民であろうが自身の権益を犯す者に対するのは自力救済が原則だ。リキウスの言うところは、当地ではしばしば見られるところの、腕に覚えのある
「私が面倒をみてやっている者の中には、そういう無頼もいるだろうな。
それがどうしたね?」
「よもやヘンガートナー参事ともあろう
「命じた証拠でもあると?」
キーノはこの腹の探り合いに、あろうはずもない軽い胃痛を覚えている。
「まさか!」
とリキウスは軽い笑いをあげる。
「ですが。」
と、横柄にテーブル上に肘をおいて
「噂を立てる街衆に証拠など不要でしょう。
それに、ご承知かとは思いますが、我らが
おいおいおぃ、完全に
リキウスはいったい何をするつもりなんだ!
そんなキーノの困惑を余所に、リキウスは続ける。
「では、<朱の薔薇>からの提案をお伝えする。」
「……提案?」
「そう、提案です。
乗るも
「……」
「ヘンガートナーさんは、ご自身に縁ある山車の関係した事故に不幸にも巻き込まれた被害者を憐れまれて、見舞いを遣わした上で怪我の回復まで困らぬ程度の生活費を工面なさいます。」
「……」
「ついでにビョルケンヘイム参事あたりにつなぎをつけまして、怪我の回復途上であっても何とかこなせる仕事まで紹介します。」
「……」
「街衆は
「……」
「一方の被害者は、己の不注意で失ったものが有徳の参事に補填されただけのことで差し引きゼロ。よもやその
カツン、と杖が突かれて鳴らされる。
その辺で軽口は慎め、の意であろうか。
「ふん、小賢しい。」
しばしの沈黙。
実のところ、リキウスなどに言われるまでもなく、ヘンガートナー自身にも事故の被害者に幾許かの金員を与えて政争の具に供される芽を断つ着想がなかったわけではない。自助を原則とする帝国自由都市にも、損害賠償、の概念はある。
が、当地における損害賠償は、あくまでも事前に交わされた契約に謳われる責任の範囲においてなされるものであり、今回のような誰の責とも言い難い
リキウスの提案は、これを賠償、ではなく補填と捉え、かつ、当面の生活費の提供と怪我を負っていてもこなせる仕事を紹介することにより、金額の妥当性を示しつつ同時にあくまでも自助を促すものだ、とする点が、本件への対処を躊躇っていたヘンガートナーにとって、エ・レエブルの統治理念にも適った解法であった。
「……リキウス・アインドラ君、ガ・ギン殿、クゥイア君、クゥイナ君、それに……キーノ・インベルン君。でよかったかな?」
キーノは、
「諸君は紅茶は嗜むかね?」
リキウスがこれに「人並みには」と応じると、老爺は振り返って、
「良い物があるので、時間が許すなら一杯飲んでから帰るといい。
私は次の約束があるので失礼するよ。」
と、そのまま部屋を出て行った。
このとき。
ヘンガートナー翁が「血は争えぬものだ」と、自身の若き日に垣間見、政治家の理想像の一つとして記憶に焼き付けたある人物を想起していたことなど、<朱の薔薇>の面々には知る由もない。
その後、五人は召使いを連れた執事が供した紅茶を馳走になった。
ガ・ギンなどはしきりと「高級ナ茶葉ハ違ウナ!」と感心する様子を見せたが、キーノは、確かに得も言われぬ馨しい香りだ、とは認めつつ、やや煮だし過ぎ濃い目で渋くすらあったそれに込められた
「リキウス……って、いつもこういう感じなのか?」
帰路、先を行くリキウスと双子忍者……普段はギンにべったりなのに、このときは何を思ってかリキウスの周りをくるくる回りながら歩いている。と言うのも、生来フランス語話者として
「常ニ、デハナイガ……ソウイウ感ジダ。」
フフフ、とギンは不敵に笑うが、キーノは、はぁ、と息を吐いた。
「ドウシタ、キーノ?」
「……どうにも引け目に感じてな。
私は今回の一件、まったく先の見通しが立たず、最後の最後までリキウスの意図がわからなかった。正直今も、なんでリキウスが、義侠心からであるのはわかるが、こんな
「人ハソレゾレニ得手不得手ガアルモノダ。リキウスニ出来ナクテ、キーノニ出来ルコトダッテアルダロウ?」
「それも引っ掛かるところだ!
リキウスは、私の
「……キーノハ、吸血鬼デアルコトニモ引ケ目ヲ感ジテイルノカ?」
「そりゃ感じるさ。不死の化け物だぞ、私は!」
「私ダッテ、見ル人カラ見レバ化ケ物ダロウヨ。」
「ギンは違うだろ!」
「ソウカナ?
キーノハ人間ノ父母カラ生ヲ享ケ、奇縁アッテ真祖吸血鬼ノ力ヲ得タモノダ、ト承知シテイル。
対シテ、私ハ極一般ノ人間カラスレバ、
……おまえ、それ。
「ダガ、私ハ何モ引ケ目ニナド感ジテハイナイ。
愛情ヲ注イデクレタ父母、若干ノ違和感ヲ隠シキレズモ分ケ隔テナク付キ合ッテクレタ帝都ノ幼馴染、ソシテ、ヨク遊ンデクレタ……イロイロナ事ヲ語ッテ聞カセテクレタ、キーノ
さしものキーノも、この文脈での
「ソウイッタ記憶ノ
ソシテ、ソレハ、リキウス、トテ同ジコトダ。」
「リキウスも、同じ?」
「アァ、話シテイナカッタカ。
リキウスノ祖父モ市参事ダッタンダ。リキウスノ父親カラ聞カサレタ話ダ。」
「……はぁ?」
キーノは思いもよらない話に困惑する。
市参事は、基本的にはある程度の土地財産を有した者が務めるもので、貴族の血筋を引くとはいえ、リキウス自身を含め
そもそもキーノは、リキウスのことを、かつてのラキュースがそうであったように、心根は卑しからずとも、血筋の良い夢見がちな
「
ガ・ギンは、エ・レエブルにおけるアインドラ家の歴史を語った。
今に至る始祖、キーノも面識のあった今や伝説の
リキウスからみて曾祖父の代にアインドラ家は、
この祖父が子、すなわちリキウスの父を得て冒険者稼業を引退した時分、今から遡って五十年と少し前に、それまでにも幾度となくあった
直接のきっかけは、突如としてアゼルリシアの鉱山が枯渇したこと……つまり、呆れたことに元を糺せばアインズたちが悪い!……によりブルムラシュー侯国から流れ込んだ失業者が多数あって、その影響からか「参事会に無産市民を代表する者がないのはおかしい」という声が俄に大きくなったことだった。当初市参事会はこの要求を荒唐無稽、と無視していたが、無人の
こうして三十三番目の参事<
そして、初代護民官に推し挙げられたのが、他ならぬリキウスの祖父だったのである。
「ダガ、結果的ニソノ職責ハ、リキウスノ祖父ヲ苦シメタ。」
「……苦しめる?
市参事、というのはそんなに大変な仕事なのか?」
「イヤ、リキウスニ似テ正義漢ダッタ祖父ハ、熱心ニ取リ組ンデ街衆ノ境遇改善ニ少ナカラズ貢献シタラシイノダガ……」
あるときリキウスの祖母、つまりアインドラ家の直系となる祖父の妻が、祖父に「もうそんな仕事は辞めるべきだ」と訴えたのだという。その理由は、彼女が、我々はアインドラ護民官を支持する者だ、と騙って
これはリキウスの祖父に大きな衝撃を与えた。無論、これが彼が命じたものであろうはずもなく、ヘンガートナーがそうであったように、その責が名を騙られた参事に求められるなどということはないのであるが、そもそもからして祖父自身がアインドラの家名の有する権威を当てにして婿入りしたことに自覚があったがために、痛くその心を傷つけたのである。
速やかに職を辞した祖父はあっという間に衰え、孫、つまりリキウスの誕生を待たずに世を去った。この逸話は、父を通して、ある種の訓戒として息子リキウスに語り継がれたのであるが、これを聞いていたリキウス本人の受け取り方は、父の期待したところとはやや違ったらしい。
アインドラの血筋を求めてエ・レエブルを訪ねたガ・ギンがリキウスと知己を得、意気投合してクゥイア、クゥイナと共に<朱の薔薇>を結成したとき、自身は職人であったリキウスの父は、真っ向から反対こそせぬもののあまり良い顔をせず、際して一連のアインドラ家の今に至る歴史をガ・ギンに語った。
これにガ・ギンは大いに面喰って、アインドラ一門に仲間を求めた自身の無邪気さを恥じ入りさえしたものだが、当のリキウス本人は、
「俺は俺なりのやり方で、アインドラの血筋と折り合いをつけるつもりだ。」
と父に応じ、以て自身の歩まんとする道に了解を引き出したのである。
ちなみに、三十三番目の参事会議席<護民官>は、今も続いて存在はするものの、街衆の関心を失ってあっという間に形骸化してしまい、今では形式的な労働組合長として、比較的余裕のある暮らしを営む雇われ人の間で押し付け合われるものになってしまっているのだそうな。
「なんと……そんな背景があったとはな。」
キーノは、今回の一連の出来事と見事に符合する物語に感嘆の声を上げた。
まだ青臭いところがないでもないリキウスではあるが、自身の言に
「人ニ歴史アリ、トデモ言ッタトコロカナ。
ソシテソレハ、キーノ
ギンは、ニッと笑って見せ、キーノもそれにニコリと微笑み返す。
「あぁ、ギンの言う通りだ。
こうして改めてキーノ・インベルンは、折に触れて企図せず己の視座に新たな光を差し込んでくれる新たな仲間たちのある幸福を、深く、深く噛みしめたのであった。
この後。
リキウスに後ろ盾を断られた某参事が、逆恨みから「吸血鬼を市外に退去させるべし」との発議を参事会でおこなったが、どうせ年甲斐もなくあの可愛らしいお嬢さんに
さらに数日を経たある日のこと。
「久々の大仕事だ!」
と上機嫌で定宿に帰ってきたリキウス。
「エ・ランテルと行き交う隊商が、エ・ペスペルの城外で野営するに際し何やら馬鹿でかい化け物が廃墟をうろつくのを目撃しているそうだ。未確認だが恐らくは
ふむふむ、と皆が話の続きを待つ。
「捨て置いたとて害あるものでもないだろうが、将来的にエ・ペスペルを再興したいという話は以前からある。で、この際は、という話になって、有徳の参事ヘンガートナーさんは私財を
まぁ、決して腕に覚えがないわけでもないんだろうが、元より名前倒れの連中だ。そして、相手は
「我々ニ支援要請ガアッタ……トイウコトダナ?」
とガ・ギン。その口許には既に不敵な笑いが
見た目にそぐわず極めて温厚、理知的な人物でこそあれ、その血筋が、本能的に
「そういうことだ。しかも依頼料には随分と色がついている。借りは早めに返しておきたい、ということなんだろうが、なかなかに老獪な御仁だよ、アレは。
対するこちらは、俺の神聖魔法は当然として、何と言っても心強い
さて、ここで言われる不死者とは、討伐すべき獲物のことを言ったものか、それとも?
とまれ最早キーノは、リキウスのこういった物言いにもわだかまりを感じることはない。
「ふふ、望むところだ!」
<朱の薔薇>は新たな冒険へ出立する。
*
スレイン報国神都大神殿地下、六大神ギルド遺構のとある一室。
名もなき非常勤政治顧問としてそこを訪ねる腹心、狡知の
あぁ、デミウルゴスの話はやっぱり面白いよなぁ!
と能天気に楽しんでいたものの、唐突に二人が
「……えっ?」
「きゃぁーーーーー!」
「ア……アインズ様?」
この
しばしこの状態が続いた後、アインズは交わる下僕たちの前に静かに土下座をし、
「ごめんなさい!」
と詫びるが早いか「ごゆっくりどうぞ」と言い残して<
シロクロは一瞬何かを口にせんとしたが、至高の御方に自身の秘め事を顕わに目撃された羞恥心の喚起せしむるところか、押し寄せた快楽の波に吞まれて、どうでもよくなって果てた。
デミウルゴスは、至高の主に倣ったかの如く口をぽかんと
「なるほど、そういう事で御座いますね!」
と叫んで果てた。
よもや、至高の四十一人の重厚な記憶の
完
<次話予告>
帝国自由都市リ・ロベルに
億劫のオーバーロード余3話『昨日の
「
どう見たって人間か亜人じゃねーか!」
参ったなぁ、ちょっと……想像していなかった返しだ。