カルタン・ヌルの最期
「……あれ!ワタシ、寝てた?」
はっ、と彼女は覚醒した。
「参ったなぁ。明日も、っつーか、もう今日かぁ……早番なのになぁ。」
そう呟きながら、彼女はVRデッキの
……落ち着け、落ち着け。
ユグドラシルに限らず、
繰り返しギルドの仲間たちと円卓の間で交わされた笑い話、定番のジョークだ。
改めて彼女は頭上に手を回すが、やはりHMDはそこにはない。意を決して自身の頭を掴んでみるが、さらさらとした長髪が指に滑る。
おかしい!
自分は生まれながらの巻き毛で、髪質ももっとゴワゴワしたもの……だったはずだ。
これも、ギルドの仲間たちに卑下混じりに繰り返し語ってきたことだ。
恐る恐る、顔から順に、首、胸、腰、足からつま先まで指を這わせてみるが、がさつき一つない滑らかな肌、容易く折れそうなほど細いが力強い筋肉に支えられた首筋、手の平に収まりきらない豊満でやわらかな胸、きゅっとくびれた腰、カモシカのようなという言葉が相応しい
どれも、コーディリアのものだ。
そう、ワタシはコーディリアだ。
ユグドラシルでのワタシはそう名乗る女
が、そのユグドラシルは……昨夜終了したんじゃなかったのか?
彼女はゆっくりと周囲を見回してみる。
自身の所属したギルド、カルタン・ヌルの拠点、
眠りに落ちる直前、此処にいたのは記憶しているのでそこに矛盾はない。
目前の
が、戦士である彼女にとっては縁の少ない代物で、そもそもギルド長プロスペロの承認がなければ使うどころか動かすこともできない。
ふと思うところがあって、コーディリアはその
何の抵抗もなく台から落ちて床をコロコロ、と転がる。
意味するところは明白だ。
これは既にギルド武器ではない。
そして視界に入るもう一つの物体。
<
そう、自分は昨夜来、ここで最後の大掃除をやっていたのだ。
ギルド、カルタン・ヌルは一年ほど前の
そもそも参加ギルド数は14で、カルタン・ヌルの順位は8位だったのだから、中央以下だ。それに、レイドボスに与えたダメージの七割は上位3ギルドが与えたもので、しかも、最上位、見事世界級アイテムを獲得したそのギルドは、翌日に殲滅系ギルドの総攻撃を受けて陥落し、その後消息を聞かなくなった。
あぁ、もう自分たちに出来ることはないんだ。
ギルド長の
プロスペロはしばらくチャットウェアでギルメンに再起を呼び掛けていたが、ある日を境にそれがぷっつりと
それからもしばらくの間、ユグドラシルから新規クエストの案内や、ギルド拠点周囲に敵影を確認した警告などのメールが飛んできていたが、彼女がそれを開くことなく無視し続けた結果、メールウェアの支援AIがユグドラシル由来のメールを迷惑メールと判定するようになって、完全にその存在を忘れ去りかけていた。
これを思い出したのは、別に彼女にユグドラシルへの強い思い入れがあったから、ではなく、メールウェア支援AIは、その判断でユーザーの経済的損失をもたらしたがための訴訟を避けるべく、金銭の取得または損失に関わるメールは迷惑メール判定の例外として扱われる仕様であり、その結果、フィルタを通り抜けて彼女に届いたそれは、ユグドラシルのサービス終了は一週間後なので、未換金のユグドラシル金貨の処分はお早目に、というリマインダーだった。
ユグドラシルのサービス終了日、翌朝の早番を引き受ける代わりに早めに仕事を切り上げた彼女は、ひょっとすると他のギルメンたちもログインしてくるかも知れない、との微かな期待を抱きつつ、夕食も摂らぬままにVRデッキに着座した。この時点で午後7時少し前。
長く訪れなかった
思った通り、宝物殿にはかなりの量のユグドラシル金貨が残されていた。
というのも、ギルド武器<
ギルド維持の観点からは必ずしも褒められた行為では決してないこれに、かつての仲間たちは顔を顰めたアイコンをチャット経由で示したものだったが、プロスペロは「私の利用分は私が課金して補うのだから問題ないはずだ」と開き直って憚らず、実際、緊急の利用にも備えてかなりの額面を投じてユグドラシル金貨に換えていたことを、彼女を含む仲間たちは承知していた。
当のプロスペロがこれを
迷宮内にはこの他にも、
ギルドの防衛戦力は激減したことになるが、よもやここに至って
当初、彼女はいろいろと思い出がなくもないそれらの
結局のところ、素材価値しか勘案されない換金は宝物殿金貨の総数を一割ほど増やしたに留まったが、深夜にはすべてが終わって雲散霧消するそれを残しておく合理的な理由はない。自身では決して動かすことができないギルド武器以外のすべてを処分した時点で午後9時を少し回っていた。
午後10時までは、他のギルメンがやって来るのを待とう。彼女はそう考えていたが、時間が経つにつれ、他にも同じことをやっているプレイヤーはたくさんいるはずで、それがユグドラシルが実行されている
払い戻しはユグドラシル金貨100毎単位だったので、今日のギルド維持費にも満たない端数が残ったが、彼女が向こう3日ほどは普段口にしない贅沢な食事ができそうな程度の現金が得られた。仲間たちが遅れてやってきて権利を主張するようであれば、追ってこれを分ければいい。
そして、すっかり殺風景になった玉座の間で、今しばらく、来るか来ないかわからない仲間を待ちながら感傷に浸った。
そもそもこのギルド拠点は、ギルドの前身となった自身を含む7人組のクラン、カルタンが狩った準レイドボス、
これを指揮統率し、各種の手続きの差配や調整を一手に引き受け、自身クラン最強の火力でもあったプロスペロも疑う余地なく輝いていたが、既にこの時点で、彼が他の
当人に悪気などなく、ただただ感想戦として喋っていたのであろうことは百も承知ではあるが、プロスペロが件の世界級アイテムが懸かったレイドボス戦後に、数人のギルメンの動きが悪かったことをやや嫌味っぽく語ったことが致命傷だったのだろう、ということにも、本人を除く
だが、あのときの彼はそれを口にすることを抑えきれず、結果的にギルドの命脈を自ら絶ってしまった。よもやゲーム如きのことで、とは思いつつも、長く消息を聞かない彼が自身の生命までを絶っていなければいいが……今日このときまで、これについて考えるのが嫌だからワタシはユグドラシルから目を背けていたんだ、という自覚が今の彼女にはある。
はて、自分たちにはこの結末を避ける分岐点があったものだろうか。
いや、そんなことを考えたとて意味はないだろう。仮にプロスペロがあの放言を自身の内に押し留めることが叶っていたのだとしても、このあたりが自分たちの力量の限界だ、という意識があったのは間違いないし、あれだけがギルドの求心力喪失の決定要因であったはずもなく、そもそもあれを乗り越えていたのだとしても、今日のサービス終了を避ける手立てはない。
それでも彼女は、もう少し気持ちよくこの日を迎えることができなかっただろうか、
そんなことを考えているうちに、自分は眠ってしまっていたらしい。
厳密に言えば、自分がユグドラシル最後の時間をアイテムの処分と残金貨の払い戻しに費やし、それを終えた後は玉座の間で考え込んで過ごしたことは、まるで台本のト書きにそう書かれたかのように記憶に鮮明だが、今振り返ると、自分が何を考え込んでいたのか、がはっきりとは思い出せない。
いったい……何が起こっているのだろう?
いくつかあった計時機能を有するアイテムもすべて処分してしまったし、さきほど
それにも増して彼女を困惑させるのは、コンソールが無応答であるがゆえに、<運営>への
ふと、誰かの視線を感じて、慌てて彼女はそちらへ視線を向けた。
コーディリア同様の理想的な
ギルドの自動防衛戦の指揮官として生成されたNPC、
そのジゼラが、じっとこちらを見ている。
今一度、彼女は床に転がった<
であれば、ギルド武器同様に拠点レベルから生成されたNPCもまた消失していて然りだが、今、目前にはジゼラが立っている。
しかも、やおらそのジゼラが口を開いた。
「<
な!
コーディリアは息を呑んだ。
NPCが発話している。音声で……自発的に?
そうこうするうちに、ヤドカリの殻に由来するがゆえに有機的な曲面になっている隔壁に穿たれた巨大な扉が
「ギルドの鍵は失われた。
わたしがジゼラの指揮に従う理由は既にない。」
「タイエットの言は正しい。
でも、昨夜来のその女の蛮行に思うところがあるのは、
「
このやり取りにコーディリアは呆気に取られた。その内容もさることながら、ここで言われる、昨夜来のその女の蛮行、の、その女、とは疑う余地なく自分自身のことだ。
コーディリアはNPCたちの装備を取り上げて
黒檀の
しかし、仮に攻撃を受けたとて、それが何だというのか。
これはゲーム、しかも既にサービス終了したゲームの出来事に過ぎない。コーディリアを失って困ることなど何もないし、むしろ
敢えて一撃受けてみるか?
コーディリアは覚悟を決めて、無防備なままに迫りくるタイエットを待ち受けた。
タイエットの黒光りする拳が目前に迫って、コーディリアは本能的に両の腕を自身の前で十字に構えて防御の姿勢を取ることを強いられた。刹那、猛烈な衝撃を感じ自身の
これが……痛み?ダメージを負う感覚?
それは、想像していたものと少し異なるような気もしたが、そもそも今の彼女にはどうしたことか<現実>で自身が恐れていたはずの痛み、が実際にどのようなものであったか思い出すことが叶わない。その一方で、コンソールを欠く現状では正確な数値ではわからないものの、自身のHPが万全のおよそ三割、ごっそりと失われたことだけは何故かわかる。
ともかくこれは、耐えられなくはないが、好んで受けるものではない。そして、ログオフ不能の現状においてHPが0に至ることの
さりとて、どうすればいい?
不意に彼女は、自身の脳裏に、かつてのゲーム内においては階層的に整理されたリング型メニューで示されていた戦士としての
「<
馬々鹿々しくも光速で放たれ周囲からは相対論的に歪んで見える、とフレーバーテキストに謳われた技能の発動を意識すると、これまた馬々鹿々しくもコーディリアはその
同時に、元来の自分が再現できようはずもないあり得ない動作を自分の肉体がやっている感覚が走ると同時に、コーディリアの
この一撃を受けたタイエットは、じりり、と後退する様子を見せたが倒れはしなかった。元より、防御力、耐久力に寄って
「
と素っ気なくジゼラが言う。
かつての自身の
だが、彼女が意味もなくそこに苦言を呈するよりも以前に、大きく片足を振り上げたタイエットが次の行動に移った。それが何を意味するかは彼女には理解できたが、対抗する手段がない。
「<
そう叫びながらズン、と黒檀の円筒状の足が踏み鳴らされるや、コーディリアは自身の身体が下方へと強い力で引き寄せられ、行動の自由が奪われたことに気づいた。タイエットの
本当に文字通りのことが実現できたらこんなものじゃ済まないだろう、とコーディリアは思うも、そんなことを考えている場合ではない。この技能は対象が接地していなければ何故か無効になるので、常に自身が装備していた<
「持てる最大の火力で
ジゼラの声に、冗談じゃない!とコーディリアは色めき立つ。
装備無しの状態で発動可能なタイエット最強の攻撃手段、円筒状の巨大な足を軸方向に亜光速
万事休すか……こうなっては、HPの喪失がログオフに繋がるに望みを託す
コーディリアは覚悟を決めた。
その間にも、タイエットは彼女が予想した通り、自身の必殺技を放たんと、ズン、ズン、とこちらへ向かってくる。これはゲームだ、これはゲームだ……繰り返し頭の中でそう唱えてはいるものの、彼女の心は、今や完全に恐怖に支配されていた。
ズン!
最後の足音が、タイエットがコーディリアを間合いに捉え立ち止まったことを告げたとき、突如としてさらにその背後から、懐かしくも頼もしい魔法詠唱の声が響き渡る!
「<
ギルドの冒険において、何度もHMD内で見慣れたはずのその
タイエットの頭上に突如渦巻く異空間が現れ、どう見ても玉座の間よりも遥かに大きい灼熱した岩の塊が出現したかと思いきや、そのままタイエットを押し潰したのだ。常識的に考えれば自分も巻き込まれて当然だが、不思議とその効果はタイエットのみに限定されているらしい。
「あぁ!」
そして、ぐずぐずと燃え崩れるタイエットの背後から姿を現した
あれは……
見紛うことなくあれは、我らがカルタン・ヌルのギルド長、プロスペロではないか!
「プロスペロ!助けに来てくれたのね!」
タイエットの破壊で縛りを解かれた彼女は、よろめく足取りで窮地を救った男に歩み寄った。
人差し指を天に向かって突き上げた魔法発動時の
「あなたも来ているとは思わなかったわ。」
自分以外のギルメン……しかも、彼女が失意のあまり最悪の最期を迎えてはいないか、と心配していたギルド長の姿に、一気に気持ちが安堵の方向に振れたコーディリアは、プロスペロにお義理程度の
「……え?」
そのプロスペロは、
へにゃり、と膝が折れて、頭を強打せぬよう庇うのが精一杯、コーディリアはぐったりと床に転がった。刺し傷からの大量出血に伴い、じりじりとHPが減少していくのを感じる。
「許されざる罪に、然るべき報いを。」
何の感情も伝わってこない、まるでNPC、ジゼラやタイエットのそれと同じような口調で、ぽそり、とプロスペロが言う。
その様子にも驚かされはしたが、より彼女を驚愕させたのは、プロスペロが手にした短剣の刃が彼女の肌を傷つけるのも厭わず、コーディリアの
ユグドラシルのアバターは衣装も含めてのアバターであり、各種装備品の差し替えはできても裸体になることなどできようはずもない。あられもない姿を麻痺したまま晒すコーディリアを無表情のまま見下すプロスペロは
これは……アバターが
声も挙げられぬまま、コーディリアはただただこの悪夢が早く終わってくれ、と祈った。自身が自慰用の
プロスペロの人間とも思えぬ吠える声がしてようやく終わったか、と安堵するも束の間、雑にコーディリアを蹴飛ばして裏返したプロスペロは立て続けに尻穴を襲った。もはやコーディリアには、思考を停止させこの嵐のような行為が過ぎ去るのを待つ以外に為す
結局プロスペロは、男性自身を清めるでもなく今一度コーディリアの前を犯した後、彼女を突き飛ばすように押しのけて立ち上がり
うつ伏せになって涎を垂らしながら、辛うじて片目でプロスペロを視界に捉えたコーディリアは、これは彼を苦しめ、かつ、心配はしつつも放置して適切な
これでプロスペロは気が済んだだろうか。これでワタシを赦してくれるだろうか。今なお意味不明なこの事態からの脱出に、共に取り組んでくれるだろうか。
だが。
「
プロスペロは、件の短剣をコーディリアの剥き出しの乳房の上に当て、そのまま全体重を乗せて貫いた。
プロスペロが
が、過去からの習慣で、ログイン直後におこなわれた各種の
宝物殿金貨蕩尽が警告されている。
残数は五十枚未満で、次のギルド維持資金の要求に耐えない。
もちろん、プロスペロは今夜サービス終了を迎えるユグドラシルにおいて、そんな金貨を確保しておく必要がないことは理解している。
一方で、宝物殿金貨の蕩尽は、随分昔となる彼自身の最終ログイン以来外部からの侵入者の記録がない以上、かつてのギルメン……プロスペロが何度ギルドの再起を訴えても応じないばかりか、否の返信すら返さなかった連中のうちの誰かが、最期の最後に
彼は残りの20分と少しを、円卓の間で呪詛を吐きながら過ごした。
いかに破綻した色恋沙汰から逃れようや!
言語に絶する犯罪への復讐!長命への怠惰!
いまは亡き肉体人の先祖を復活させるため、
神々との接触をいざ求めん!
それは、狂人の詠う意味不明の無韻詩。
そして午前0時、プロスペロは何かが変わったことに気づいた。
それまでなかった、確かに己の足で大地に立っている感覚がある。<
コーディリアがそうしたように、GMコールやログオフが不可能であることを確認した後、いくつかの位階魔法を空打ちして自分がそれを使えることは理解できた。目下起きている事態が何であるのかはともかく、駄目元でギルド武器だけは回収しようと玉座の間に向かえば、丁度その守護を委ねていたNPC、黒檀の巨人タイエットがこちらに背を向けて入室しているところだった。
外から様子を伺えば、中には何も装備していない無課金ユーザーのような情けない格好をしたコーディリアが居て、タイエットと戦っている。
なるほど。
と、プロスペロは独り得心した。
どういう趣向かは理解に余るが、どうやらユグドラシルの延長戦が始まっているらしい。あの糞女がギルド維持資金を横領したせいで、
プロスペロは後を追って入室し、魔法の効果に不安があったことも手伝って、こういった場合の定石に従い、即時発動ができない超位魔法を除けば自身の技の中でも最大火力となるそれを放ってタイエットを屠った。ほう、
もちろん、プロスペロはコーディリアを救わんとこれをおこなったわけではない。
むしろ、一瞬の希望を与えた後に絶望に陥れることこそ彼女を遇するに相応しい、と考えてのことだ。
思った通り糞女は、土壇場に現れた
ギルド現役時代以来、不意の遭遇戦で貴重なアイテムを
相手は曲がりなりにも100レベルの女戦士、まともに接近戦をすれば敵うはずもない。が、完全に油断していたコーディリアの脇腹を刺すのは、笑ってしまいそうになるほど簡単だった。が、笑顔が相手に一瞬でも安心を与えることを嫌って、プロスペロは無表情を貫いた。
今以て何故そうなっているのかはわからないが、18禁項目が無闇に厳しかったユグドラシルにおいて、公知されたサービス終了時刻以降、あろうはずもない男根が自身のアバターにそそり立っている以上、女戦士であるコーディリアも同様だろう。
欲情したわけではないし、もちろんコーディリアを愛してなどいない。この糞は、ただHPを
そして、放心してか絶頂に至ってかは知ったことではないが、心ここにあらずのコーディリアの胸に、100レベルプレイヤーといえども抗いようもない
「
死ぬまでに一度は言ってみたかった台詞だ。
コーディリアの血液と精液まみれの薄汚れた
中の人……実際の性別が本当に女だったことは知っているが、きっとアラフォー、行き遅れの百貫デブであったに違いない……はログオフしたのだろうか。VRデッキの上で自身が味わった屈辱に身悶えていてくれれば幸い、あわよくば発作的に手首でも切ってはくれまいか!
しかし。
そんな高揚も
<運営>が何を思ってこんなことをやっているのか知る由もないが、ユグドラシルの延長戦として、ログオフを封じられた<
できることならば、このゲームを
問題は、ギルド武器<
だから、可能な限り短期の解決を試みるべきだが、
しかもその中間点には、三体の100レベルNPC、司祭ヴィクラム、
さりとて、ここに籠城するのも良策ではない。コーディリアを犯し始めた時点で、これを見ていた防衛指揮官NPCジゼラはそそくさと玉座の間を退出していった。ログインした時点でよもや戦闘などするつもりはなかったので偽装系の防御措置を怠ったから、ジゼラはこちらの残りMPが大火力攻撃魔法を扱うに足りないのに気づいているはずだ。この機を逃すまじ、と、アレが100レベルNPCを含む忠誠心を失った
ただ一つだけ。
一つだけプロスペロにはこの状況からの脱出に一縷の望みをつなぐ手段が残されている。
が、それはいささか投機的な危険を孕むものだ。
<
100レベル
問題は、何処へ飛ぶか、だ。
ユグドラシルの仕様上、事前に特別な儀式をおこなったり、専用の
が……本当に拠点の外は、ヴァナヘイムなのか?
不可能座標への転移は、それを通り抜けた者の
仕様上、転移先座標はアバターに記録される
一方で、以前は存在したが何らかの理由で失われた座標……
プロスペロは迷った。
他にも同様にこの<脱出ゲーム>に巻き込まれている者の存在を仮定すると、少なくないプレイヤーが今自分が置かれている状況に陥るはずだ。そうしたプレイヤーが、ともかく忠誠を失った下僕たちから逃れて一息つくべく拠点外へ転移する、というのは、最も想定される行動の一つだ。だから、ここに罠を張る、というのは、悪辣でしられたユグドラシル<運営>としては、極めてあり得る話であるように思われる。
一方で、この状況が真に<脱出ゲーム>であるならば、そうだと気づいた時点でもはや
仮にハズレ
「<
かくしてプロスペロは、
*
「……見てたのか?」
「はっ?」
ナザリック地下大墳墓第十階層玉座の間。
転移歴400年も残すところ数日となり、未だあるべき
「いや……あんまり
一通りの議事が終わった後、狡知の
「ご冗談を、アインズ様。あくまでも……
その、三日月型の口が不安を煽るんだよ!
「講談師、見てきたような嘘をつき、なんぞと申しますが、
いや、そこは負けとけ、パンドラ!
「し、しかしだな、デミウルゴス!
作り話にしては、
「いえいぇ、アインズ様ァ!
アレがないと画竜点睛を欠く……と、あちきなんぞは思うのでありんす。」
そりゃ……どう考えてもおまえの趣味だろ!
「ただ、デミウルゴスは真面目が過ぎて猟奇的描写にキレがありんせんなぁ。あちきでありんせば、コーディリアなる雌豚の穴という穴に……」
「待て待て、シャルティア!」
大魔王アインズ・ウール・ゴウンは、期せずしてシャルティア・ブラッドフォールンから放たれそうになった精神攻撃を寸でのところでかわした。
「私ハ、デミウルゴスノ想像力ニ感服シマシタ。サモアロウ、ト思イマス。」
「出来ることであれば、コーディリア嬢を助けてさしあげとう御座いました。」
毎度のことながら……
「お、お
「何言ってんのよフィオーレ、
「ボクは、アインズ様の下僕として生を享けたことを誇らしく思います!」
「ワ、ワ、ワタシも、お、お
「フ、フクロウさん……で、出てこなかったァ。」
「え!
わかるけど……わからん!
「デミウルゴスの言わんといたしますところは。」
とアインズの傍らにあって優しげな視線を愛する
「多くのユグドラシルプレイヤーが、自身の
アルベドはそのまま帰ってこなくなった。
ただ一人アインズだけが、何でおまえら、嘘か
そして。
何処とも知れぬ深海の底に横たわる巨大な
完
<次話予告>
「あ!」
と少女が声を挙げた。
「先生の指が近づいてくるのがわかります!」
億劫のオーバーロード余11話『青空教室』
「や、やめろー!」