億劫のオーバーロード   作:wash I/O

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水晶の塔事変の後日譚。


余14話 転移歴532年 さすらいの吟遊詩人
さすらいの吟遊詩人


 アーグランド評議国、ポリス・ウロヴァーナ。

 

 かつてリ・エスティーゼ王国ウロヴァーナ辺境伯領、と呼ばれた当地の現在の正式名称がこれになるが、異種族混交政体を採る評議国は傘下の自治区(ポリス)それぞれにおける固有の語用には寛容……というか、そもそもこだわりがないので、ここで暮らす人々は、もはや評議国に加わってからの時間の方が長いにもかかわらず、自分たちの暮らす領域を、ウロヴァーナ伯領、あるいは辺境伯領、北辺(ほくへん)と呼び習わすのを常態としている。

 

 そもそもからして、アーグランド評議国、という国号自体、その歴史よりも国体の歴史の方が遥かに長い、という奇妙な国号だ。

 

 この名が登場するのは今から遡って約八百年前、いわゆる十三英雄と魔神の戦いが終わってリ・エスティーゼ王国が建国された直後のことになる。

 王国の国王直臣には封臣契約に基づき一定の冥加金が課せられたのだが、その額面は領地の面積に応じて決せられることになっていた。そして、現アーグランド評議国に接するアセナーラ子爵領は、未開の僻地を封土されたがゆえに王国内で唯一その面積が確定していない領地だった。当初アセナーラ子爵家は自領の平野部の面積を根拠に冥加金を納めていたが、これに、さらに領地を隣接するボウロロープ侯爵が、

 

「過小に評価した領地で冥加金を決めるのはいかがなものか。」

 

と噛みついた。

 平たく言えば「おまえんとこだけズルい」という子ども地味た言い分なのではあるが、何事も形式を重んじる気風の王国ではこれが糞真面目に問題視され、馬々鹿々しくも踏破が困難で一度たりとも境界線が問題になったことのない山脈の領有権を明らかにするための交渉団が、海路北へ向けて派遣された。

 

 数度の難破失敗を経た彼らを山脈の向こう側で出迎えたのは人魚(マーマン)海蜥蜴人(シーリザードマン)の部族で、もうこの時点で察しろよ、な感じなのであるが、彼ら自身は「太陽があの峰の上に来たら昼寝時」以上の価値を山脈に見出してはいなかった。結果、彼らが生活の糧を得る沿岸部を除き、山地はすべてアーセナル子爵領に帰属するもの、とする協定が結ばれた。

 子爵は「余計なことを言い出してくれた」と随分ボウロロープ侯を恨んだものだが、後に、望みもしなかったにもかかわらず、山脈から良質な玉、大理石等の(かね)になる鉱物資源が得られることがわかって、最果ての辺境に仰々しくもエ・アセナルを名乗る城塞都市の建設まで叶うに至ったのだから、人生のみならず、国運というものも、どう転ぶかわからないものだ。ボウロロープ侯が地団駄踏んで悔しがったのは言うまでもない。

 

 この協定が国家間の条約に昇格するに際し、リ・エスティーゼ王国に対する当事者の名称が問題になった。

 

 人魚(マーマン)海蜥蜴人(シーリザードマン)も、その時点で数百年に渡り当地で生活を営んできたものだが、互いに不可侵の種族の縄張りがすべて、の彼らに自分たちの領土に対する固有名称などなく、そもそも領土、という観念すらない。一方の王国側は、彼らがさらに上位の権力構造の統治下にあることは理解していたので、その主体の名前を知りたがった。

 が、これも、問われた側からするとどう応じたものか答えに窮するもので、部族ごとの自治単位が便宜上、ポリス、と呼ばれていることこそ理解しているものの、その集合の名称、と聞かれても意味がわからず、なんなら隣接するポリス以外は存在すら知らない者がほとんどだ。

 辛うじて通じた会話は、

 

「リ・エスティーゼ王国は王が統治するがゆえに王国であるが、貴国を統治する者は誰か?」

 

に対し、

 

「そりゃ……評議員閣下だべ。会ったことはおろか、見たこともないけど。」

 

であり、もうこれ以上問答を続けても無駄だと諦めた王国側は、以前から、山脈と内海の向こうに広がっているのは知っているが容易に辿り着けない土地全体を、方舟の国(アーグランド)、と呼んでいたところに、これを評議員が治めているのだから評議国だ、と添えて、それまで存在しなかった、アーグランド評議国、の国号を国境線確定の条約に記載する、ただそれだけのために生み出した。

 以来、王国の文献が典拠になって大陸側ではアーグランド評議国の呼称が定着し、交流の便宜上当人たちも少なからず用いるようになったがこれを正式の国号とする意識は乏しく、数少ない人間の友人を通じてこの名を知った白金の竜王(プラチナムドラゴンロード)が、何を思ってか自身の肩書きに用いるに留まっているのが実情だ。

 

 このような事情もあって、ポリス・ウロヴァーナの住民たちは今でも自分たちの暮らす領域を、辺境伯領、と呼び続けているが、辺境伯、という称号を得た統治者は存在しなくなって久しい。

 

 辺境伯領の統治を実際におこなっているのは任期七年の統治官(アルコーン)三名で、これは有産市民、実質的には文字を読み書きできる城塞都市リ・ウロヴァール市民の指名投票で選出されるが、統治を志す立候補者の中から選ぶ、のではなく、評議員に対して当地に責を負う代表者を推挙する、というのが建前になっており、各市民は気儘にこの者は、と思う者の氏名、必要に応じて在地や屋号を加えて投じる、という存外いい加減なもので、上位三名に等しく同じ権が与えられるが、投票がこのようなあり方なので辞退も認められていて、その場合は()()がり当選となる。

 加えて、六十年に一度評議国傘下の自治区持ち回りで遷都される首都(アクロポリス)に上って、評議国全体にかかわる政治に従事する代議員(ロゴグラポス)三名、同様に任期七年、があり、日常において評議員たる竜王(ドラゴンロード)と直接対面するのも彼らの仕事になる。こちらも投票で選出されるが、統治官(アルコーン)経験者に限る、という縛りがある。

 もっとも、これらは杓子定規の建前であって、評議国内の人種は文化、習俗、寿命も様々なので、それぞれに応じた翻案(アレンジ)が許容されており、実質義務であるのは統治官三名、代議員三名は必ず置け、のみで、任期や選出方法は自治区によって様々になり、以下の統治体制は事実上の丸投げだ。

 

 評議員、すなわち竜王(ドラゴンロード)自身は評議員の任を、身も蓋もない言い方になるが「誰かが落ちそうになったら拾って戻してあげて、喧嘩しそうだったら()めてあげて、と大昔に蟻本人から頼まれた趣味的な蟻の巣の見守り役」程度に考えていて、国内の各種族に何か共通の施策を申し下そう、であるとか、一致団結して何かをやらせよう、などという発想は清々(すがすが)しいまでに持ち合わせていない。白金の竜王(プラチナムドラゴンロード)ツアーが他の竜王から、変わり者、と見られるのは、(ひとえ)にツアーが、蟻の巣の蟻を個体識別した上で意思疎通(コミュニケーション)することを好むがゆえであった。

 一方で、では他の竜王が何もしていないのか、というとそんなことはなく、最低限の務めとして代議員の議会報告に耳を傾けて承認を与えることに加え、たとえばツアーをして比較的話が通じる、と評される青空の竜王(ブルースカイドラゴンロード)スヴェリアー・マイロンシルクは、数年に一度ではあるが、気まぐれに無作為(ランダム)なポリスに突如舞い降りて「()(なんじ)()る者(なり)」と告げ、相手が右往左往する様子を楽しむ悪癖がある。

 これは、言われる側からすると、やろうと思えば自分の暮らすポリスどころか世界全域を焼き払うことすら造作もない評議員閣下が、おまえたちの行状に常日頃から上空高くより睨みを効かせているぞ、と恫喝されているに等しく、以て評議国内はすこぶる治安がよく、統治官、代議員選出にあたっても、不正、などということは滅多に聞くものではなかった。

 もっともそれ以前に、評議国内の少なからぬ市民が、

 

 統治官、代議員は、(あら)ぶる竜王(ドラゴンロード)に捧げられる生贄(いけにえ)だ。

 

と考えていないでもなかったので、推挙されてしまえばもう仕方がないとしても、それは誰もがやりたがる仕事では決してなかったのである。

 

 

 

 旧王国時代からの惰性で、ポリス・ウロヴァーナの統治の中心地は今なお城塞都市リ・ウロヴァールである。

 

 評議国の水棲亜人の協力が得られるようになったことで、従来渡航不能と考えられていた北方の内海に海路が開かれ、伴い経済活動の多くは北岸に新たに開削されたいくつかの港町へ分散した。そのような事情もあり、リ・ウロヴァールにはかつてほどの喧騒はない。

 もっとも、王国の昔からウロヴァーナ辺境伯家は代々、よく言えば温厚、悪く言えば凡庸な当主を立てて波風立てずの現状維持を尊ぶ気風があり、領民もそれになびいていたので、そもそも喧騒などなかった、という見方もある。

 

 そんなリ・ウロヴァールの下町の飲み屋街に、ここしばらく人気(にんき)を博している吟遊詩人(トゥルバドゥール)がある。

 

  そは何処(いずこ)

  荘厳華麗と風に聞く

 

    ベンベンッ!

 

  百階層の耆闍崛山(グリドクラータ)

  国士無双と人の言う

  永劫不滅と鬼が()

  そは何処(いずこ)……そは何処(いずこ)にありしかや!

 

    ベベン、ベンベンッ!

 

 洋琵琶(リュート)爪弾(つまび)きながら語られる(うた)はいつも同じで、耆闍崛山(グリドクラータ)なる聴衆の誰にも聞き覚えのない場所に、財宝を求めて忍び込む一団の物語である。

 だが、これが飽きられることはなかった。この吟遊詩人の爪弾く弦楽器の音色には、聴く者に幸運の強化(バフ)を与える魔力があり、誰一人としてそれに気づく聴衆はいなかったが、それでも彼らは、この叙事詩を聴きつつ一杯嗜んだ翌日には、それが如何なものであれ生業(なりわい)(すこぶ)(はかど)ることを身を以て知っているからだ。

 

 謳う吟遊詩人は金髪碧眼の整った顔立ちをしているが、男性のようで男性でなし、女性のようで女性でなし、老成した円熟味を漂わせつつもあどけない若さが感じられる捉えどころのない人物だ。

 よほど大事な荷物であるのか、常に何かを背負ってその上から母衣(ローブ)のようなものを纏っており、丸く背が膨らんでいる。よもやその下に……

 

 人ならぬ翼が潜んでいようなどと、思い巡らす者はない。

 

 物語は耆闍崛山(グリドクラータ)を襲う略奪者の視点で進む。

 天使の群れがこれを迎え撃つも悉く退けられ、侵入者が如何に強さに優れた者たちであるかが強調されるが、これは最期に登場する真の主人公、耆闍崛山(グリドクラータ)(あるじ)たちを引き立てるための演出であることは、(とう)に聴衆たちは承知している。

 最高潮(クライマックス)は、侵入者を一網打尽とすべく七人の熾天使(セラフ)を引き連れた、四天王、なる存在が登場する下りだ。

 

  光り輝く羽衣(はごろも)

  御使(みつか)いの(つるぎ)引っ提げて

  付き従いたる七界(しちかい)()(びと)

  率いるは、耆闍崛山(グリドクラータ)の四天王!

 

  此方(こなた)

  その槍()(つらぬ)けぬ物無し闇黒卿(あんこくきょう)青龍!

 

    ベンベンッ!

 

  其方(そなた)

  (はがね)とて灰も残さず焼き尽くす悪焔坊(あくえんぼう)朱雀!

 

    ベンベンッ!

 

  彼方(かなた)

  拳の(はや)古今(ここん)居並(いなら)(もの)なし死叫門(しきょうもん)白虎!

 

    ベンベンッ!

 

 聴衆が息を呑む。

 ここの下りこそが、見せ場中の見せ場、と知る(ゆえ)だ。

 

「よォ!」「待ってましたァ!」

 

  何方(どなた)

  鉄壁堅牢(てっぺきけんろう)(まも)何人(なんぴと)如何(いか)(やぶ)らんや……

 

 酒場の客、皆が吟遊詩人に絶叫唱和する。

 

「「「邪鏡院(じゃきょういん)玄武!」」」

 

    ベン、ベベン、ベベンベンベンッ!

 

 洋琵琶(リュート)をかき鳴らしつつ、演者の(まなこ)から一筋の涙がつつつーと走る。

 聴衆の誰一人としてこの(うた)の真に意味するところなどまったくわかってはいないが、決まってこの場面になると感極まった吟遊詩人が熱い涙を流すことを知っている彼らは、拍手喝采と乱れ飛ぶ銀貨、銅貨で迫真の演者を讃えた。

 

 

 

「噂通りの素晴らしい(うた)でした。」

 

 演奏を終え、漸く静けさを取り戻した酒場で、奥手の樽を立てて設けられた一人席で葡萄酒(ワイン)を嗜んでいた吟遊詩人に身なり卑しからぬ男が声をかけた。

 

「……お楽しみいただけたのであれば(さいわ)い。」

 

 吟遊詩人は(さかな)野猪(ワイルドボア)腸詰め(ソーセージ)(つつ)きながら気のない返事を返す。

 

「いつも同じ唄をやっておいでのようですが……新曲を作ったりはなさらぬものでしょうか?」

 

 ん?

 まったく予期していなかった問い掛けに、興味を(いだ)いたものか、吟遊詩人の視線が男へと向かった。男は何処(どこ)からか引いてきた小さな椅子に腰掛けて、吟遊詩人に差し向かいで座る。

 

「見たところ他所(よそ)からこちらにおいでになったものかと思いますのでご承知でないかも知れませんが、近々七年に一度の統治官(アルコーン)の推挙が御座います。」

 

「それが……何か?」

 

「どうしてもその座に推したい優れた人物がおるのですが、如何せんあまり町衆に知られた者ではないのです。」

 

 やはり吟遊詩人には男の言わんとするところがわからない。

 

「人の生涯など儚いもの。七年も経てしまえば、その人物も老いて辣腕を振るう機会を失いましょう。」

 

「それは……そうでしょうな。」

 

 自身は、寿命などというものと縁のない吟遊詩人はそう応じた。

 

「ここは一つ、貴方(あなた)に彼の威徳を称える唄を爪弾いてはいただけないものかと。もちろん、相応の御礼はご用意させていただきます。」

 

 あぁ、なるほど。そういうことか。

 いささか長居が過ぎたようだ、と吟遊詩人は自嘲する。

 

「お話の趣は理解しました。ですが、私はあなたの言う人物のことを名前はもちろん何も知りません。」

 

「数日お待ちいただけば、その人物の人となり、来歴をまとめた文書をご用意できます。謳うにあたっての脚色(アレンジ)はお任せいたします。口出しは一切いたしません。」

 

 この男は……私がその人物を好色一代男として謳い上げても同じことを言うのだろうか?

 

「順序がおかしくなってしまいましたが、ご芳名を承ってよろしいでしょうか?」

 

 男にそう問われて、一瞬吟遊詩人は呻吟した。

 真名を名乗ってよいものだろうか。否、自分は創造主のそれすら包み隠さず謳っているのだから、今更つまらぬ偽名を名乗る必要もあるまい。

 

(キュー)。」

 

「……きゅう?」

 

  Qビット……

  量子情報量単位(キュービット)が今は懐かしき我が創造主

  邪鏡院(じゃきょういん)玄武が、与え(たも)うた名前なり

 

    ベンベンッ!

  

「……はぁ?」

 

 男は、これは偽名、あるいは芸名で、さきほど聞いた叙事詩の続きなのではなかろうか、と疑問に感じつつも、敢えてそれと問いただすでもなく、数日後の再訪を約して酒場を去った。

 

 もっとも、吟遊詩人自身に再会を待つつもりは毛頭ない。

 

 その後も、する必要もない食事を続けながら常連客の賛辞を聞き流し、やがてその客の気配も失せたところで酒場の主人に(いとま)を告げ、ふらふらと外へ出て夜更けの町並みに人気(ひとけ)のない裏路地を探す。そして、誰の目線もないところでやおら纏った母衣(ローブ)を翻し、抱えた洋琵琶(リュート)共々に自身の所持品(インベントリ)に仕舞い込んだ。

 

 背中から生えた、純白の巨大な翼が(あらわ)になる。

 ふわり、と宙に浮いた吟遊詩人はそのまま闇夜に溶け込むように消えた。

 

 

                    *

 

 

 どうして自分はこの見知らぬ世界を一人彷徨(さまよ)っているのだろう。

 

 キュービットは、ずっとそのことを考え続けているが未だその答えは得られず、また、得る(すべ)にまったく当てはなかった。

 

 どのような理路によるものか、不思議とユグドラシル時代の記憶は明瞭だ。

 自分はギルド、丸太(まるた)騎士修道会の前衛(アタッカー)にして防御専門家(タンク)山小人(ドワーフ)邪鏡院(じゃきょういん)玄武によってギルド拠点耆闍崛山(グリドクラータ)の賑やかしさを演出するNPC、射手の天使(キューピッド)として創造された者であり、与えられた名は種族名に掛けられた駄洒落だ。

 自分は、そこでただ仲間たちの間を飛び回り、ときに(あるじ)たちの求めに応じてギルドの栄光を謳う者だった。酒場で謳ってみせた叙事詩も、耆闍崛山(グリドクラータ)を襲った殲滅系ギルドを丸太(まるた)騎士修道会が撃退した実話に基づくものだ。

 

 だが、その後が支離滅裂だ。

 

 もっともはっきりしている最近のうちでの最も古い記憶は、丁度今そうであるようにふらふらと闇夜を飛んでいる内に眼下に街の灯りを見つけ、気まぐれに舞い降りたこと。退屈しのぎに街角で件の叙事詩を一人謳っていると、そのうち自分の周りに人だかりができて拍手喝采となったこと。続いて人のよさそうな老爺に声を掛けられ、よかったらうちの酒場で時折謳ってくれないか、と誘われて、他にやることもなかったので快諾したこと。

 

 自身が、絶対であったはずのギルドへの忠誠を既に失っていることには自覚がある。

 それがギルド武器の破壊であるのか、維持資金の蕩尽であるのか、何者かによる創造主諸共の殲滅であるのかは知る由もないが、ともかく丸太騎士修道会が既にこの世に存在しない、のは確かであり、その事実に対するキュービットの感情は極めて平板(フラット)なもので、むしろ解放感すらなきにしもあらず。

 創造主である玄武についても、懐かしさこそ覚えはするものの、敢えて再会したいとも思わないし、叶うものであれば、当人の名乗りも含め中ニ病(ちゅうにびょう)丸出しの命名の感性(センス)には苦言を呈したいくらいだ。

 

 が、不思議と件の叙事詩を謳うと、自然と玄武の登場場面が最高潮(クライマックス)になってしまうこと、感極まった自身が望むと望まざるとにかかわらず落涙してしまうことにも、当然キュービットは気づいていた。

 

 あれは酒場で()った七回目か、八回目のときだったろうか。

 既に聴衆の中には繰り返しやって来る者(リピーター)があって、それが元から酒場の常連だったのか、自身の唄を求めてのものかはわからないし興味もなかったが、叙事詩の下りが玄武の登場に至ったとき、

 

「「「邪鏡院(じゃきょういん)玄武!」」」

 

と数人からの唱和が起こった。

 

 そのときいつものように流した涙は、でありながら、いつものそれとは違った。

 熱い……ただ熱い涙だった、とキュービットは思う。

 何かが……それが何であるかは今以てわからずにいるが、何かが報われたかのような達成感がそこにはあった。

 

 この居心地の良さに、無為に当地に長逗留してしまった。

 次第に顔見知りも増え、挨拶や雑談を交わすこともしばしばあったが、それが繰り返される都度、何かが失われていくような感覚もあった。酒場で歌い始めた時分は、それ以前何処にいて何をやっていたのかについても憶えていたような気がするのに、今となってはそれがまったく思い出せない。

 

 そして無駄な長逗留が、自身の能力に目を付けて余計な算盤を(はじ)く者を惹きつけてしまった。

 ひょっとすると自分は、同じようなことを繰り返しているのではないか、気まぐれに降り立った町で謳って好評を博し、自身を利用しようとする者が現れるやその場を立ち去って、次の土地に馴染むに従って以前のことをすっかり忘れ、同じ轍を踏み続けているのではないか、という疑念もキュービットの脳裏にはあるが、さりとて、抗う(すべ)もなく、この疑念とて、(いだ)いたのがこれが初めてかどうかすらもわからなかった。

 

  百階層の耆闍崛山(グリドクラータ)

  そは何処(いずこ)……そは何処(いずこ)にありしかや!

 

 闇夜を飛びつつ口遊(くちずさ)む。

 

 耆闍崛山(グリドクラータ)の名は丸太騎士修道会の前身のクランが、拠点獲得イベントで陥落させた塔にギルド結成に伴い与えた名だ。

 

 すなわち、ギルド、アインズ・ウール・ゴウンの面々が、攻略した地下墳墓ナザリックを今日(こんにち)もなおそう呼ばれる、ナザリック地下大墳墓、と命名したのに等しい。

 

 丸太騎士修道会が塔に与えた名は古代インドの聖人が尊い教えを説いたとされる伝説の山の名に由来するが、元々時刻む水晶の塔(クロックワーククォーツタワー)とゲーム上呼ばれたそれとは異なり、外見上の特徴にまったく触れていなかった。

 そして、自身拠点NPCであるキュービットは、ユグドラシル時代において外から耆闍崛山(グリドクラータ)を見たことが一度たりともない。

 

 もし、彼の叙事詩が少しでも彼のギルド拠点の外見上の特徴を謳っていたものであったなら、聴衆の中に「おまえの謳うそれは、ひょっとして遥か東方カルサナスの大平原に出現したと聞く、触れ得ざる塔、ではないのか?」と彼を同地へ導く者があったかも知れないが、幸か不幸かそのようなことは今のところ一度たりとも起こってはいなかった。

 もっとも、導かれ辿り着いたとて、キュービットはそこに無人の廃墟を認めるのみ、なのではあるが。

 

「おっと。」

 

とキュービットは、思っているよりも遠くまで飛んでしまっていたことに驚きの声を上げた。

 進行方向からは既に朝日が顔を覗かせており、つまり自分は特に理由もなく東へ向かって飛んでいたらしいことを知る。眼下を見下ろせば、前夜までいた城塞都市を擁する平原はおろか平らな部分はまったくなく、頂上には万年雪を湛える険阻な峰々があって、朝日が形作る鋭い影が西へ伸びていた。

 今以て意味不明の当てもない旅ではあるが、しばしば目にするこうした大自然の織りなす壮大な光景は、ギルド拠点に閉じ籠もっていた時分には決して味わえなかったもので、当時は決して境遇に不満など(いだ)いてはいなかったはずだが、今の彼が、これはこれで悪くはない、と感じることの一つではある。

 

 そのとき。

 キュービットは違和感を覚えた。

 

 東へ面した急峻な斜面に何かが見える。

 岩の裂け目(クレヴァス)

 南北方向に広がるそれは余りに直線的で、この高度からでははっきりしないがかなり深く見える。

 その東西の壁の上にはやはり万年雪が随分と積もっているが、これが裂け目に崩れ落ちない理由はなんだ。これが自然に生じたものとして、たちまちに雪や岩屑で埋もれてしまって然りであろうに、見るからに人為的な直線を保っているのは何故(なぜ)だ。

 

 しばし彼の内で、それがどうした?如何な不思議とて宛てなき放浪者の自身に関わるものでなし、との思いと、仮にあれが人為的なものだとして、こんな人跡未踏の場所にこんなものがあるのは何故だ、誰が造った……誰か、居るのか?と問う好奇心が争ったが、結局後者が勝った。

 

 無限の寿命を有する自身が、この程度の寄り道を厭う理由はない。

 

 高度を下げてみると思いの外岩肌に沿って強い風が吹いていたが、そもそもキュービットは翼の生み出す揚力で飛んでいるわけではないので、(あお)られぬよう翼を畳めば害はなかった。慎重に万年雪に穿たれた裂け目の中へと降下すると、見たことか壁面は何らかの外的な力で完全に氷ついていて光の届く限り透き通っている。

 

 これは、何者かが意図を以て造作したものに違いない。

 

 強い確信を得てキュービットは降下を続けた。

 やがて氷の層を通り抜け岩壁が現れたが、やはりその表面は鏡であるかの如く磨き上げられている。幅はいくら進めどもほぼ3メートルで一定だ。よもやこれが自然の(わざ)であろうはずがない。

 

 そして。

 どのくらい降下したものであろうか、キュービットは下方に三つの(あか)りがあるのに気づいた。

 前照灯(サーチライト)であるかのように、それぞれ同じような方向を、でありながら微妙に異なる角度で照らしており、しかもそれが微妙に動いている。

 

 確かに、何者かが居る!

 

 刹那、その(あか)りが上方に向かって振り上げられキュービットの姿を照らした。

 

「て、天使だ!」

「天使が降りて来た!」

「大変だ、お客様をお迎えしなきゃ!」

 

 

                    *

 

 

「おまえらな!」

 

 腕組みした燕尾服の長身の人物が呆れた口調でそう言う。

 

「何度言えば、断りもなく外の者を連れ込むな、を理解するんだ?」

 

 その言葉にしゅん、と項垂れるのは、岩の裂け目の奥底でキュービットを照らし「天使だ、天使だ」と(はしゃ)いでここに招いた三匹、二本足で歩く子犬たちだ。

 

「すまない、マズいのであればすぐに退去させてもらうが。」

 

 キュービットはそう応じたが、

 

「いや、お客人に(せき)はない。これは我々の秩序の問題だ。」

 

と長身の人物に返された。

 燕尾服の人物はからくり人形(オートマトン)と見え、白銀に輝く肌を有していて男の声で喋るが、少女漫画の登場人物のような模式的な美男子の樹脂(プラスチック)製の面を付けていて、真の性別はよくわからない。

 もっとも、キュービット自身が両性偶有、半陰陽なので、そこは気にするところでもないのではあるが。

 

「名乗り遅れて失礼した。

 小生はギルド、カーター・ツィマーマンにて執事の職を承るイノシロー、と申す。」

 

 なんと!

 キュービットは驚く。

 

 自分の他にユグドラシル由来の存在がこの世界に居ようとは、今の今まで考えもしなかったことだ。

 

「私は……キュービット。」

 

 イノシローに合わせてギルド名を肩書きしようか、と一瞬考えたキュービットであったが、既にそれに対する忠誠を失った自分がそうするのはおかしいように思えて、名前だけを名乗った。

 

「キュービット?

 射手の天使(キューピッド)、ではなくて?」

 

「……あぁ、おかしいのは承知している。

 名は量子情報量単位(キュービット)に因むもので、要するに……駄洒落だ。」

 

「……なるほど、貴公の創造主は諧謔(ユーモア)に富む御仁のようだな。」

 

 これは……褒められた、のだろうか?

 キュービットは、いささか不満を感じないでもない自身の真名をそう評されて、くすぐったいような、気恥ずかしいような、当惑を覚えている。

 

 三匹……いや、曲がりなりにも意思疎通(コミュニケーション)が可能なのだから三人、とすべきだろうが、三人の犬の顔をした小人(こびと)は、それぞれエニフ、アルナス、メラクと名乗った。キュービットは、出会った状況と容姿から、彼らを岩妖精(コボルト)だと思っていたが、本人たちが言うには、彼らの創造主によって標準(デフォルト)岩妖精(コボルト)原型(ベース)に錬成されたからくり人形(オートマトン)であり、創造主たちは彼らのことを星子犬(スターパピー)と呼んだのだ、と教えられた。

 岩の裂け目は彼らが、褶曲してほぼ縦一直線になっている希少金属の地層をそっくりそのまま掘り進んでいるものだった。エニフたちは「天使とお茶会だ!」と喚きながら困惑するキュービットの手を引き、気がつけば完全隠蔽(コンシール)された彼らのギルド拠点に連れ込まれていた。今以て、どこが白銀世界との境目だったのかキュービットはまったくわからずにいる。

 

「一つ、確認しておきたいことがある。」

 

とイノシロー。

 

「何なりと。」

 

 その問いは想像の埒外のものだった。

 

「よもや、とは思うが。

 貴公は……アインズ・ウール・ゴウンと係累ある者ではあるまいな?」

 

 な……!

 再びキュービットは絶句するほどに驚かされた。

 

 自分の知るそれと同じものであるとすれば、アインズ・ウール・ゴウンは、かつての(あるじ)たる丸太騎士修道会の面々が、いつか機会があれば一戦交えてみたい、と願ったギルドの名だ。何なら件の叙事詩の末尾にも、

 

  不甲斐なき賊何するものぞ

  せめて相対(あいたい)するならば

  噂に聞こゆる四十一士(しじゅういちし)こそ相応しからめ

  なれば我らに不足なし

 

と謳われている。

 

「まさか!

 ……恥ずかしながら、私の所属したギルドは失われて既にない。」

 

 俯き加減にキュービットがそういうと、それまで直立不動の姿勢を執っていたイノシローが急に身体(からだ)を柔らかくすると同時に片手をキュービットの肩に掛け、

 

「すまない、(つら)いことを思い出させてしまった。(ゆる)してくれ。」

 

と詫びた。

 

「いや……お心遣いには感謝するが、それは気にはしていないので無用に願おう。

 しかし、あなたからアインズ・ウール・ゴウンの名が出る理由は是非とも伺いたい。」

 

「アインズ・ウール・ゴウンをご存知か?」

 

「ユグドラシルに生を()けた者で、知らぬ方が稀だろう。」

 

「確かに、それは貴公の言う通り。

 理由は……これだ。」

 

 イノシローは背後の壁に貼られた紙を指差した。

 日本語のひらがなで、標語であるかのような何かが書かれている。

 

  このせかいのものに、ふよういにぶき、あいてむをあたえないこと。

 

  あいんず・うーる・ごうん、にちゅうい!

 

「どういう……ことなんだ?」

 

「小生にもわからん。」

 

「……わからない?」

 

「わかっていることはある。

 この世界の者に不用意に武器、魔法の品(アイテム)を与えないこと、とある文字の筆跡は、お姿を見なくなって久しい我が(あるじ)、ヤチマ様のものだ。」

 

 あぁ……この者も(あるじ)を失っているのか、とキュービットは思うも、自身もそこを彼に触れられて配慮を謝絶したのであるから、敢えてそこには触れなかった。

 

「対してこちらの、アインズ・ウール・ゴウンに注意、は小生の筆跡だ。そして、紙の材質からこれらはほぼ同時期に書かれたものであることがわかっているが、小生にはこれを書いた記憶がない。」

 

 実のところそれは、今から遡ること三百年前、単身人間の街へ出掛けて行き、そこでこともあろうに殲滅系ギルドとして名高いアインズ・ウール・ゴウンのモモンガと出会ったのだ、と嬉々として語った(あるじ)ヤチマに小一時間お説教をしたイノシローが、この世界にアインズ・ウール・ゴウンがあることを危機管理上の課題として失念せぬよう書き残したものだった。

 もう一方のそれは、ヤチマ自身がモモンガことアインズに勧められたままに、迂闊にもこちらの世界の()()()()に彼ら自身にとっては途方もない威力を秘めた武具を供与してしまったことへの反省を込めて、やはり書き残したものだ。

 

 そしてその事実は、ヤチマが既に寿命で世を去ったことを含め、イノシローの記憶にはなかった。

 

「小生は、何時(いつ)かギルド、カーター・ツィマーマンの方々はお戻りになられるもの、と考えている。そのときまでこのギルド拠点、大魚の口(フォーマルハウト)を維持し続けることが小生の務め。

 ヤチマ様の筆跡にて、この世界の者に何も与えるな、とあれば、これは(あるじ)の厳命されたところ。そして、同時に小生の筆跡で、アインズ・ウール・ゴウンに注意、と書かれたのであれば、これもやはりヤチマ様が小生にこれをお命じになられた訓戒と(かい)すべきだろう。」

 

「……なるほど、相分かった。」

 

 再び姿勢を直立不動に戻したイノシローが問う。

 

「貴公は……何か特技をお持ちか?」

 

「私は……吟遊詩人だ。」

 

「ほぅ……少し披露してくれるか?」

 

「……では、お耳(よご)しであるが。」

 

 キュービットは、所持品(インベントリ)から洋琵琶(リュート)を取り出し、求められるままに得意の叙事詩を披露する。

 

  そは何処(いずこ)

  荘厳華麗と風に聞く

 

    ベンベンッ!

 

  百階層の耆闍崛山(グリドクラータ)

  国士無双と人の言う

  永劫不滅と鬼が()

  そは何処(いずこ)……そは何処(いずこ)にありしかや!

 

    ベベン、ベンベンッ!

 

「これは……良いものだ。」

 

「……そう言っていただけるのは幸いだ。」

 

「小生の理解が誤りでなければ、貴公の唄には幸運の強化(バフ)があると見た。

 どうかな?」

 

「仰せの通りだ。」

 

「差し支えなければ……貴兄をカーター・ツィマーマンの食客に迎えたい。」

 

 唐突な申し出にキュービットは困惑する。

 

「あぁ、もちろん貴兄が立ち去りたいときに立ち去ってもらって構わない。」

 

「理由……を訊いても構わないか?」

 

星子犬(スターパピー)たちは、鉱脈を掘って希少な鉱石を得、以てギルド維持資金に当てている。元よりかの者たちはそれが特技ゆえ過ちはなかろうが、それでも、居たはずの数名が既に行方が知れぬ。ギルドが維持されている以上、忠誠の誓いを捨てて逃散する者など居ようはずもないから、これは採掘中の事故で既に失われたもの、と考える(ほか)ない。」

 

 自身、寿命のないキュービットであるが、ほとんどの者が脆弱なこの世界において滅多にあることではあるまい、とは考えつつも、所詮自身のレベルは20ほどで、真の難敵に出逢えば戦闘技能皆無に等しい自分は容易に葬られることだろう、とは常々考えていた。

 見たところ、自分と同じかやや下回るレベルの陽気な星子犬(スターパピー)たちは、それでも、再び現れるものかどうか実のところわからぬ(あるじ)のために、今も(いのち)()けてギルドを維持し続けているのか。

 

「鉱山へ向かうに際し貴公の唄を聴けば、少しでも事故に遭う危険(リスク)を下げられるものではないか、と小生は考える。受けてくれるならば、貴公の望む処遇を約束しよう。」

 

 思えば。

 自分はこの自身の能力を他者の恣意に利用されるのを拒んで先の街を……おそらくはその前のそれも、そのまた前も、離れて彷徨(さまよ)って来たのではなかったか。

 

 だが。

 不思議と。

 

 本来は敵対すべき他ギルドの維持への協力など、ユグドラシルNPCとして生まれた自分にあろうはずもないことではあるが、ギルドへの忠誠を失ってしまった今となっては、そんなことをこだわる理由もない。

 

 この者たちとであれば……共に在ってもかまわない、ような気がする。

 

「では、お言葉に甘えて。一つだけお願いしたいことがある。」

 

  光り輝く羽衣(はごろも)

  御使(みつか)いの(つるぎ)引っ提げて

  付き従いたる七界(しちかい)()(びと)

  率いるは、耆闍崛山(グリドクラータ)の四天王!

 

  此方(こなた)

  その槍()(つらぬ)けぬ物無し闇黒卿(あんこくきょう)青龍!

 

    ベンベンッ!

 

  其方(そなた)

  (はがね)とて灰も残さず焼き尽くす悪焔坊(あくえんぼう)朱雀!

 

    ベンベンッ!

 

  彼方(かなた)

  拳の(はや)古今(ここん)居並(いなら)(もの)なし死叫門(しきょうもん)白虎!

 

    ベンベンッ!

 

  何方(どなた)

  鉄壁堅牢(てっぺきけんろう)(まも)何人(なんぴと)如何(いか)(やぶ)らんや……

 

「さぁ皆さん、ご唱和ください!」

 

「「「邪鏡院(じゃきょういん)玄武!」」」

 

    ベン、ベベン、ベベンベンベンッ!

 

 キュービットの(まなこ)から一筋の涙がつつつーと走るが、それは感傷でも哀悼でもなく、確かに……歓喜のそれであった。

 

                    *

 

 

 狡知の最上位悪魔(アーチデヴィル)デミウルゴスは、至高の主の思し召しゆえ敢えて異論は申し立てなかったが、それでも水晶の塔の唯一の生き残りが、復仇を誓って現れることへの警戒を決して怠ってはいなかった。

 

 が。

 

 こうしてその射手の天使(キューピッド)が、次の<百年の揺り返し>すら待たずに大魚の口(フォーマルハウト)に呑まれてしまっては、さしものデミウルゴスにもそれを追う(すべ)があろうはずもなく、既に大魔王アインズ・ウール・ゴウンの記憶からも失われて久しいそれは、以降ナザリック地下大墳墓から顧みられることは一切なかった。

 

 

                    完

 

 




<次話予告>

 (わたくし)が研究対象とするところは、まさにそういった転換点、一見して偶然の積み重ねによると見える歴史の中で、全歴史に決定的な影響を与えたと考えられるにも関わらず、今日(こんにち)の我々に(しか)とは認識されていないそれ、の探求なのです。

 億劫のオーバーロード余15話『歴史的特異点(サンギュラリティ・ヒストリア)

教授(プロフェッサー)の研究には実益がある、と?」

「究極的にはそれを目指しております。
 と申しますのも、(わたくし)の目指す到達点(ゴール)は、歴史的特異点を人為的に発生させること、なのですから!」
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