さすらいの吟遊詩人
アーグランド評議国、ポリス・ウロヴァーナ。
かつてリ・エスティーゼ王国ウロヴァーナ辺境伯領、と呼ばれた当地の現在の正式名称がこれになるが、異種族混交政体を採る評議国は傘下の
そもそもからして、アーグランド評議国、という国号自体、その歴史よりも国体の歴史の方が遥かに長い、という奇妙な国号だ。
この名が登場するのは今から遡って約八百年前、いわゆる十三英雄と魔神の戦いが終わってリ・エスティーゼ王国が建国された直後のことになる。
王国の国王直臣には封臣契約に基づき一定の冥加金が課せられたのだが、その額面は領地の面積に応じて決せられることになっていた。そして、現アーグランド評議国に接するアセナーラ子爵領は、未開の僻地を封土されたがゆえに王国内で唯一その面積が確定していない領地だった。当初アセナーラ子爵家は自領の平野部の面積を根拠に冥加金を納めていたが、これに、さらに領地を隣接するボウロロープ侯爵が、
「過小に評価した領地で冥加金を決めるのはいかがなものか。」
と噛みついた。
平たく言えば「おまえんとこだけズルい」という子ども地味た言い分なのではあるが、何事も形式を重んじる気風の王国ではこれが糞真面目に問題視され、馬々鹿々しくも踏破が困難で一度たりとも境界線が問題になったことのない山脈の領有権を明らかにするための交渉団が、海路北へ向けて派遣された。
数度の難破失敗を経た彼らを山脈の向こう側で出迎えたのは
子爵は「余計なことを言い出してくれた」と随分ボウロロープ侯を恨んだものだが、後に、望みもしなかったにもかかわらず、山脈から良質な玉、大理石等の
この協定が国家間の条約に昇格するに際し、リ・エスティーゼ王国に対する当事者の名称が問題になった。
が、これも、問われた側からするとどう応じたものか答えに窮するもので、部族ごとの自治単位が便宜上、ポリス、と呼ばれていることこそ理解しているものの、その集合の名称、と聞かれても意味がわからず、なんなら隣接するポリス以外は存在すら知らない者がほとんどだ。
辛うじて通じた会話は、
「リ・エスティーゼ王国は王が統治するがゆえに王国であるが、貴国を統治する者は誰か?」
に対し、
「そりゃ……評議員閣下だべ。会ったことはおろか、見たこともないけど。」
であり、もうこれ以上問答を続けても無駄だと諦めた王国側は、以前から、山脈と内海の向こうに広がっているのは知っているが容易に辿り着けない土地全体を、
以来、王国の文献が典拠になって大陸側ではアーグランド評議国の呼称が定着し、交流の便宜上当人たちも少なからず用いるようになったがこれを正式の国号とする意識は乏しく、数少ない人間の友人を通じてこの名を知った
このような事情もあって、ポリス・ウロヴァーナの住民たちは今でも自分たちの暮らす領域を、辺境伯領、と呼び続けているが、辺境伯、という称号を得た統治者は存在しなくなって久しい。
辺境伯領の統治を実際におこなっているのは任期七年の
加えて、六十年に一度評議国傘下の自治区持ち回りで遷都される
もっとも、これらは杓子定規の建前であって、評議国内の人種は文化、習俗、寿命も様々なので、それぞれに応じた
評議員、すなわち
一方で、では他の竜王が何もしていないのか、というとそんなことはなく、最低限の務めとして代議員の議会報告に耳を傾けて承認を与えることに加え、たとえばツアーをして比較的話が通じる、と評される
これは、言われる側からすると、やろうと思えば自分の暮らすポリスどころか世界全域を焼き払うことすら造作もない評議員閣下が、おまえたちの行状に常日頃から上空高くより睨みを効かせているぞ、と恫喝されているに等しく、以て評議国内はすこぶる治安がよく、統治官、代議員選出にあたっても、不正、などということは滅多に聞くものではなかった。
もっともそれ以前に、評議国内の少なからぬ市民が、
統治官、代議員は、
と考えていないでもなかったので、推挙されてしまえばもう仕方がないとしても、それは誰もがやりたがる仕事では決してなかったのである。
旧王国時代からの惰性で、ポリス・ウロヴァーナの統治の中心地は今なお城塞都市リ・ウロヴァールである。
評議国の水棲亜人の協力が得られるようになったことで、従来渡航不能と考えられていた北方の内海に海路が開かれ、伴い経済活動の多くは北岸に新たに開削されたいくつかの港町へ分散した。そのような事情もあり、リ・ウロヴァールにはかつてほどの喧騒はない。
もっとも、王国の昔からウロヴァーナ辺境伯家は代々、よく言えば温厚、悪く言えば凡庸な当主を立てて波風立てずの現状維持を尊ぶ気風があり、領民もそれになびいていたので、そもそも喧騒などなかった、という見方もある。
そんなリ・ウロヴァールの下町の飲み屋街に、ここしばらく
そは
荘厳華麗と風に聞く
ベンベンッ!
百階層の
国士無双と人の言う
永劫不滅と鬼が
そは
ベベン、ベンベンッ!
だが、これが飽きられることはなかった。この吟遊詩人の爪弾く弦楽器の音色には、聴く者に幸運の
謳う吟遊詩人は金髪碧眼の整った顔立ちをしているが、男性のようで男性でなし、女性のようで女性でなし、老成した円熟味を漂わせつつもあどけない若さが感じられる捉えどころのない人物だ。
よほど大事な荷物であるのか、常に何かを背負ってその上から
人ならぬ翼が潜んでいようなどと、思い巡らす者はない。
物語は
天使の群れがこれを迎え撃つも悉く退けられ、侵入者が如何に強さに優れた者たちであるかが強調されるが、これは最期に登場する真の主人公、
光り輝く
付き従いたる
率いるは、
その槍
ベンベンッ!
ベンベンッ!
拳の
ベンベンッ!
聴衆が息を呑む。
ここの下りこそが、見せ場中の見せ場、と知る
「よォ!」「待ってましたァ!」
酒場の客、皆が吟遊詩人に絶叫唱和する。
「「「
ベン、ベベン、ベベンベンベンッ!
聴衆の誰一人としてこの
「噂通りの素晴らしい
演奏を終え、漸く静けさを取り戻した酒場で、奥手の樽を立てて設けられた一人席で
「……お楽しみいただけたのであれば
吟遊詩人は
「いつも同じ唄をやっておいでのようですが……新曲を作ったりはなさらぬものでしょうか?」
ん?
まったく予期していなかった問い掛けに、興味を
「見たところ
「それが……何か?」
「どうしてもその座に推したい優れた人物がおるのですが、如何せんあまり町衆に知られた者ではないのです。」
やはり吟遊詩人には男の言わんとするところがわからない。
「人の生涯など儚いもの。七年も経てしまえば、その人物も老いて辣腕を振るう機会を失いましょう。」
「それは……そうでしょうな。」
自身は、寿命などというものと縁のない吟遊詩人はそう応じた。
「ここは一つ、
あぁ、なるほど。そういうことか。
いささか長居が過ぎたようだ、と吟遊詩人は自嘲する。
「お話の趣は理解しました。ですが、私はあなたの言う人物のことを名前はもちろん何も知りません。」
「数日お待ちいただけば、その人物の人となり、来歴をまとめた文書をご用意できます。謳うにあたっての
この男は……私がその人物を好色一代男として謳い上げても同じことを言うのだろうか?
「順序がおかしくなってしまいましたが、ご芳名を承ってよろしいでしょうか?」
男にそう問われて、一瞬吟遊詩人は呻吟した。
真名を名乗ってよいものだろうか。否、自分は創造主のそれすら包み隠さず謳っているのだから、今更つまらぬ偽名を名乗る必要もあるまい。
「
「……きゅう?」
Qビット……
ベンベンッ!
「……はぁ?」
男は、これは偽名、あるいは芸名で、さきほど聞いた叙事詩の続きなのではなかろうか、と疑問に感じつつも、敢えてそれと問いただすでもなく、数日後の再訪を約して酒場を去った。
もっとも、吟遊詩人自身に再会を待つつもりは毛頭ない。
その後も、する必要もない食事を続けながら常連客の賛辞を聞き流し、やがてその客の気配も失せたところで酒場の主人に
背中から生えた、純白の巨大な翼が
ふわり、と宙に浮いた吟遊詩人はそのまま闇夜に溶け込むように消えた。
*
どうして自分はこの見知らぬ世界を一人
キュービットは、ずっとそのことを考え続けているが未だその答えは得られず、また、得る
どのような理路によるものか、不思議とユグドラシル時代の記憶は明瞭だ。
自分はギルド、
自分は、そこでただ仲間たちの間を飛び回り、ときに
だが、その後が支離滅裂だ。
もっともはっきりしている最近のうちでの最も古い記憶は、丁度今そうであるようにふらふらと闇夜を飛んでいる内に眼下に街の灯りを見つけ、気まぐれに舞い降りたこと。退屈しのぎに街角で件の叙事詩を一人謳っていると、そのうち自分の周りに人だかりができて拍手喝采となったこと。続いて人のよさそうな老爺に声を掛けられ、よかったらうちの酒場で時折謳ってくれないか、と誘われて、他にやることもなかったので快諾したこと。
自身が、絶対であったはずのギルドへの忠誠を既に失っていることには自覚がある。
それがギルド武器の破壊であるのか、維持資金の蕩尽であるのか、何者かによる創造主諸共の殲滅であるのかは知る由もないが、ともかく丸太騎士修道会が既にこの世に存在しない、のは確かであり、その事実に対するキュービットの感情は極めて
創造主である玄武についても、懐かしさこそ覚えはするものの、敢えて再会したいとも思わないし、叶うものであれば、当人の名乗りも含め
が、不思議と件の叙事詩を謳うと、自然と玄武の登場場面が
あれは酒場で
既に聴衆の中には
「「「
と数人からの唱和が起こった。
そのときいつものように流した涙は、でありながら、いつものそれとは違った。
熱い……ただ熱い涙だった、とキュービットは思う。
何かが……それが何であるかは今以てわからずにいるが、何かが報われたかのような達成感がそこにはあった。
この居心地の良さに、無為に当地に長逗留してしまった。
次第に顔見知りも増え、挨拶や雑談を交わすこともしばしばあったが、それが繰り返される都度、何かが失われていくような感覚もあった。酒場で歌い始めた時分は、それ以前何処にいて何をやっていたのかについても憶えていたような気がするのに、今となってはそれがまったく思い出せない。
そして無駄な長逗留が、自身の能力に目を付けて余計な算盤を
ひょっとすると自分は、同じようなことを繰り返しているのではないか、気まぐれに降り立った町で謳って好評を博し、自身を利用しようとする者が現れるやその場を立ち去って、次の土地に馴染むに従って以前のことをすっかり忘れ、同じ轍を踏み続けているのではないか、という疑念もキュービットの脳裏にはあるが、さりとて、抗う
百階層の
そは
闇夜を飛びつつ
すなわち、ギルド、アインズ・ウール・ゴウンの面々が、攻略した地下墳墓ナザリックを
丸太騎士修道会が塔に与えた名は古代インドの聖人が尊い教えを説いたとされる伝説の山の名に由来するが、元々
そして、自身拠点NPCであるキュービットは、ユグドラシル時代において外から
もし、彼の叙事詩が少しでも彼のギルド拠点の外見上の特徴を謳っていたものであったなら、聴衆の中に「おまえの謳うそれは、ひょっとして遥か東方カルサナスの大平原に出現したと聞く、触れ得ざる塔、ではないのか?」と彼を同地へ導く者があったかも知れないが、幸か不幸かそのようなことは今のところ一度たりとも起こってはいなかった。
もっとも、導かれ辿り着いたとて、キュービットはそこに無人の廃墟を認めるのみ、なのではあるが。
「おっと。」
とキュービットは、思っているよりも遠くまで飛んでしまっていたことに驚きの声を上げた。
進行方向からは既に朝日が顔を覗かせており、つまり自分は特に理由もなく東へ向かって飛んでいたらしいことを知る。眼下を見下ろせば、前夜までいた城塞都市を擁する平原はおろか平らな部分はまったくなく、頂上には万年雪を湛える険阻な峰々があって、朝日が形作る鋭い影が西へ伸びていた。
今以て意味不明の当てもない旅ではあるが、しばしば目にするこうした大自然の織りなす壮大な光景は、ギルド拠点に閉じ籠もっていた時分には決して味わえなかったもので、当時は決して境遇に不満など
そのとき。
キュービットは違和感を覚えた。
東へ面した急峻な斜面に何かが見える。
南北方向に広がるそれは余りに直線的で、この高度からでははっきりしないがかなり深く見える。
その東西の壁の上にはやはり万年雪が随分と積もっているが、これが裂け目に崩れ落ちない理由はなんだ。これが自然に生じたものとして、たちまちに雪や岩屑で埋もれてしまって然りであろうに、見るからに人為的な直線を保っているのは
しばし彼の内で、それがどうした?如何な不思議とて宛てなき放浪者の自身に関わるものでなし、との思いと、仮にあれが人為的なものだとして、こんな人跡未踏の場所にこんなものがあるのは何故だ、誰が造った……誰か、居るのか?と問う好奇心が争ったが、結局後者が勝った。
無限の寿命を有する自身が、この程度の寄り道を厭う理由はない。
高度を下げてみると思いの外岩肌に沿って強い風が吹いていたが、そもそもキュービットは翼の生み出す揚力で飛んでいるわけではないので、
これは、何者かが意図を以て造作したものに違いない。
強い確信を得てキュービットは降下を続けた。
やがて氷の層を通り抜け岩壁が現れたが、やはりその表面は鏡であるかの如く磨き上げられている。幅はいくら進めどもほぼ3メートルで一定だ。よもやこれが自然の
そして。
どのくらい降下したものであろうか、キュービットは下方に三つの
確かに、何者かが居る!
刹那、その
「て、天使だ!」
「天使が降りて来た!」
「大変だ、お客様をお迎えしなきゃ!」
*
「おまえらな!」
腕組みした燕尾服の長身の人物が呆れた口調でそう言う。
「何度言えば、断りもなく外の者を連れ込むな、を理解するんだ?」
その言葉にしゅん、と項垂れるのは、岩の裂け目の奥底でキュービットを照らし「天使だ、天使だ」と
「すまない、マズいのであればすぐに退去させてもらうが。」
キュービットはそう応じたが、
「いや、お客人に
と長身の人物に返された。
燕尾服の人物は
もっとも、キュービット自身が両性偶有、半陰陽なので、そこは気にするところでもないのではあるが。
「名乗り遅れて失礼した。
小生はギルド、カーター・ツィマーマンにて執事の職を承るイノシロー、と申す。」
なんと!
キュービットは驚く。
自分の他にユグドラシル由来の存在がこの世界に居ようとは、今の今まで考えもしなかったことだ。
「私は……キュービット。」
イノシローに合わせてギルド名を肩書きしようか、と一瞬考えたキュービットであったが、既にそれに対する忠誠を失った自分がそうするのはおかしいように思えて、名前だけを名乗った。
「キュービット?
「……あぁ、おかしいのは承知している。
名は
「……なるほど、貴公の創造主は
これは……褒められた、のだろうか?
キュービットは、いささか不満を感じないでもない自身の真名をそう評されて、くすぐったいような、気恥ずかしいような、当惑を覚えている。
三匹……いや、曲がりなりにも
岩の裂け目は彼らが、褶曲してほぼ縦一直線になっている希少金属の地層をそっくりそのまま掘り進んでいるものだった。エニフたちは「天使とお茶会だ!」と喚きながら困惑するキュービットの手を引き、気がつけば
「一つ、確認しておきたいことがある。」
とイノシロー。
「何なりと。」
その問いは想像の埒外のものだった。
「よもや、とは思うが。
貴公は……アインズ・ウール・ゴウンと係累ある者ではあるまいな?」
な……!
再びキュービットは絶句するほどに驚かされた。
自分の知るそれと同じものであるとすれば、アインズ・ウール・ゴウンは、かつての
不甲斐なき賊何するものぞ
せめて
噂に聞こゆる
なれば我らに不足なし
と謳われている。
「まさか!
……恥ずかしながら、私の所属したギルドは失われて既にない。」
俯き加減にキュービットがそういうと、それまで直立不動の姿勢を執っていたイノシローが急に
「すまない、
と詫びた。
「いや……お心遣いには感謝するが、それは気にはしていないので無用に願おう。
しかし、あなたからアインズ・ウール・ゴウンの名が出る理由は是非とも伺いたい。」
「アインズ・ウール・ゴウンをご存知か?」
「ユグドラシルに生を
「確かに、それは貴公の言う通り。
理由は……これだ。」
イノシローは背後の壁に貼られた紙を指差した。
日本語のひらがなで、標語であるかのような何かが書かれている。
このせかいのものに、ふよういにぶき、あいてむをあたえないこと。
あいんず・うーる・ごうん、にちゅうい!
「どういう……ことなんだ?」
「小生にもわからん。」
「……わからない?」
「わかっていることはある。
この世界の者に不用意に武器、
あぁ……この者も
「対してこちらの、アインズ・ウール・ゴウンに注意、は小生の筆跡だ。そして、紙の材質からこれらはほぼ同時期に書かれたものであることがわかっているが、小生にはこれを書いた記憶がない。」
実のところそれは、今から遡ること三百年前、単身人間の街へ出掛けて行き、そこでこともあろうに殲滅系ギルドとして名高いアインズ・ウール・ゴウンのモモンガと出会ったのだ、と嬉々として語った
もう一方のそれは、ヤチマ自身がモモンガことアインズに勧められたままに、迂闊にもこちらの世界の
そしてその事実は、ヤチマが既に寿命で世を去ったことを含め、イノシローの記憶にはなかった。
「小生は、
ヤチマ様の筆跡にて、この世界の者に何も与えるな、とあれば、これは
「……なるほど、相分かった。」
再び姿勢を直立不動に戻したイノシローが問う。
「貴公は……何か特技をお持ちか?」
「私は……吟遊詩人だ。」
「ほぅ……少し披露してくれるか?」
「……では、お耳
キュービットは、
そは
荘厳華麗と風に聞く
ベンベンッ!
百階層の
国士無双と人の言う
永劫不滅と鬼が
そは
ベベン、ベンベンッ!
「これは……良いものだ。」
「……そう言っていただけるのは幸いだ。」
「小生の理解が誤りでなければ、貴公の唄には幸運の
どうかな?」
「仰せの通りだ。」
「差し支えなければ……貴兄をカーター・ツィマーマンの食客に迎えたい。」
唐突な申し出にキュービットは困惑する。
「あぁ、もちろん貴兄が立ち去りたいときに立ち去ってもらって構わない。」
「理由……を訊いても構わないか?」
「
自身、寿命のないキュービットであるが、ほとんどの者が脆弱なこの世界において滅多にあることではあるまい、とは考えつつも、所詮自身のレベルは20ほどで、真の難敵に出逢えば戦闘技能皆無に等しい自分は容易に葬られることだろう、とは常々考えていた。
見たところ、自分と同じかやや下回るレベルの陽気な
「鉱山へ向かうに際し貴公の唄を聴けば、少しでも事故に遭う
思えば。
自分はこの自身の能力を他者の恣意に利用されるのを拒んで先の街を……おそらくはその前のそれも、そのまた前も、離れて
だが。
不思議と。
本来は敵対すべき他ギルドの維持への協力など、ユグドラシルNPCとして生まれた自分にあろうはずもないことではあるが、ギルドへの忠誠を失ってしまった今となっては、そんなことをこだわる理由もない。
この者たちとであれば……共に在ってもかまわない、ような気がする。
「では、お言葉に甘えて。一つだけお願いしたいことがある。」
光り輝く
付き従いたる
率いるは、
その槍
ベンベンッ!
ベンベンッ!
拳の
ベンベンッ!
「さぁ皆さん、ご唱和ください!」
「「「
ベン、ベベン、ベベンベンベンッ!
キュービットの
*
狡知の
が。
こうしてその
完
<次話予告>
億劫のオーバーロード余15話『
「
「究極的にはそれを目指しております。
と申しますのも、