「それでは、本日の
ぱちぱちぱち、とお義理に拍手。
ナザリック地下大墳墓
読者諸兄もお気づきの通り、いつからか開会の挨拶をおこなうデミウルゴスは、その通算回数を告げなくなった。
否。
いつからそうなったか、については
転移歴1100年代の末、第一万一千百十二回目からだ。
その前回、いつものように「記念すべき第一万一千百十一回、
「無闇に記念すべき回を増やすな!」
とアインズがツッコミを入れたことがあった。
これは、直接的にはこの直前に三代目アウラ、マーレが儚くも身罷っており、その傷心の記憶を留めていたアインズの八つ当たりに近い感情に
「……そういうことで御座いますね、アインズ様ァ!」
と感極まった仕草で応じ、実際、次回となった第一万一千百十二回三賢者会議からは通算回数が告げられなくなったのである。
もっとも。
記憶能力に宿命的、というか致命的制約を負う彼らは、誰一人としてそんなことは憶えていないし、そもそも以前には通算回数が常に告げられていたこと自体、当のデミウルゴスすら憶えてはいないのである。
「本日は……」
と
「満を
「……はぁ?」
パカリ、とアインズの骨の口が
「早速承りたく……
極自然に、デミウルゴスの顔が前に突き出される。
「誰が……」
「はっ?」
「……誰がそんなことを言った?」
「この世界を征服するに、我らが至高の主アインズ・ウール・ゴウン様以外の何者が適任でありましょうや?
デミウルゴスのいつものノリもさることながら、それが決してアインズの望むところではないとわかっているはずの居並ぶアルベド、パンドラズ・アクターが、このデミウルゴスの様子に何の反応も返さず、
おまえらの愛も、忠義も……随分と中途半端だよな!そうだよなァーーー!
と、叫びたくなる気持ちをぐっと
「それは……オレの望むところではない。今はまだ、な。」
と、ない威厳を保とうと、敢えて厳かにそう告げる。
たちまちにデミウルゴスは、ハッ、とした表情を浮かべ、
「こ、これは!
下僕の分を超えた先走りがありましたようで、その点につきましては深くお詫び申し上げます。」
と、口先では詫びを入れつつ、やはりその口元には三日月型の笑みを浮かべ、
「……では、改めまして。
本日はアインズ様より、世界征服を目指す上で只今の現地人間社会の有り様について論じたき儀あり、と伺って御座いますれば、どうぞ。」
と、すっと右手をアインズへ向けて差し出した。
うーん、やっぱり何か違うんだけどな、と思いつつも、殊更そこを論じても
そもそもデミウルゴスのみならず、アルベド、パンドラズ・アクター、ナザリックの下僕の中でも突出して知に傾いた彼らは、アインズ自身が自覚する実像に対して銘々に若干の誤差を孕みこそすれ、基本的には至高の主の好み願うところを
そしてアインズ自身は、何故自分が、この世界の人間社会に生じたに見える変化を三賢者と論じてみたくなったのか、その真のところを自分自身でも掴みかねていたのであるから、それを映す鏡たる三賢者の言動にもまた、ブレが生じるのは仕方のないところだ。
そうに違いない。
そういうことにしておこう。
でないと、やっとれんわーーー!
「……ゴホンッ。」
意味もなく咳払いをして仕切り直しを図ったアインズは、やおら語り始めた。
「過日、アルベドとデミウルゴスがこちらの世界の人間社会に何か変化が生じている、という話をしているところに行き当たって、オレもいささか興味を惹かれた。」
アインズが語り始めれば、その一言一句たりとも聞き逃すまじ、と三賢者たちは、身を乗り出してアインズへ注目を向ける。
「自分の目でも見ておくべきだろう、とユリを伴って少し視察に出掛けたが、確かに……確かに何らかの変化が起こっていることはオレも認めるところだ。」
そう言いながら、何となく気に入ったので
<
「そもそも、この世界は剣と魔法の世界であったのに……」
<
この世界は剣と魔法の世界、と告げたところで三賢者たちが揃って、
「「「えっ!」」」
と、驚きの声を上げたがためだ。
「……えぇ?」
と、アインズも言葉を詰まらせる。
「オレ……そんなに
この
「いえ。父上が、この世界が剣と魔法の世界だ、などという
「……はぁ?」
アインズには、逆に息子の言葉の真意がわからない。
「いや……剣と魔法の世界、だろ?」
「まさか。ゲームでもありますまいに。」
「……えぇ?」
この進まぬ会話に、パンドラズ・アクターはしばし胸の前に触手を組んで、どうご説明申し上げればよいものか、と呻吟する様子を見せたが、やがてこんなことを語りだした。
「よろしいですかな、父上。
たとえばこの世界が、千人の住人が暮らす一つの村だ、とお考えください。」
「ふむふむ。」
「
千人のうち、剣と魔法を嗜む
「な!」
まったく思ってもみなかったパンドラズ・アクターの言葉に、アインズの骨の口が再びパカリ、と
「いや、でもユグドラシルは剣と魔法の世界で……」
「それは仰せの通りで御座います。プレイヤーにせよNPCにせよ、ユグドラシルでは剣と魔法、そのいずれをも嗜まぬ
アインズは、今この瞬間までこの世界は剣と魔法の世界だ、と考えてまったく疑っていなかったので、このパンドラズ・アクターの言葉に心をかき乱された。
そこに、反論の余地などまったくなかったからだ。
「強いて、ではこの世界は
さらり、とパンドラズ・アクターはそう言う。
「先の例で申しますと、千人のうち六百人、つまり六割は第一次産業、すなわち農業、牧畜業を生業としており、生産技術の向上により人手を要する場面が減って参りまして、我らの転移来訪以来一貫して漸減傾向には御座いますが、それでも五割以上がそうであることは揺るぎません。
ですのでこの世界は、昔も今も変わらず農本社会なので御座います。」
そりゃ……そうだわな、頭を冷やして考えれば。
「ご参考までに、第二次産業、すなわち鉱工業、第三次産業、すなわちその他の商業、支配者層……<
この話を聞きながら、アインズは順に骨の指を折っていった。
「六、一、一……二本余らないか?」
と、折らずに残った自身の指を示す。
「それはいわゆる穀潰しで御座いましょう。」
と応じたのは愛妃アルベドである。
「……はぁ?」
「デミウルゴスの調査は、当の本人がどのように自認しているか、ではなく、実際にどのような生産活動に寄与しているか、でおこなったものですから、何の役にも立たず、周囲の
どうにもアインズには、言っていることはわかるが腑に落ちない。
これを察したものか、デミウルゴスが口を挟む。
「キーノ・インベルン、とその一党をご記憶ですかな?」
「……何だったっけ、それ?」
例によって、その名はたちまちにはアインズの記憶の中にはない。
「
あー、何かそんな連中いたな。
「かの
無邪気にもこの世界を、剣と魔法の世界、と考えていたアインズからすれば、デミウルゴスの言う冒険者は、ある意味においてこの世界の主役だ。
それを言下に、穀潰し、と断言されて、アインズはいささかの目眩を覚えていた。
しかもデミウルゴスは、続けてこんなことを言い出す。
「もっとも。この定義からいたしますれば、トブの大森林の果樹園を管理運営するアウラ、マーレ一族を除き、生産活動に何ら関与せぬ我らもまた、穀潰し、ということになりますな!」
わっはっは、と愉快げに
「アインズ様の意を受け、守護者統括としてナザリック地下大墳墓に本来あるはずもない秩序を日夜生み出し続ける
パンドラズ・アクターもまた。
「宝物殿の管理業務は、十二分に第三次産業に該当するのではないですかな。」
そして三人顔を見合わせて、わっはっは、とやはり愉快げに笑う。
が、一人、アインズだけはこれに素直に加わることができない。
と言うのも、アインズは自身の前身、鈴木悟が<
もちろん、千年以上も昔のそんなことに頭を悩ませる必要などない、と心のどこかで訴える声が聞こえなくもないが、一方で、その千年の記憶をごっそり欠くアインズの主観においては、常に鈴木悟はたかだか去年の自分自身でもあるのだ。
そんなことを考えながらペカペカ光るアインズの様子を訝しく思ったものか、デミウルゴスから声がかかる。
「アインズ様におかれましては、穀潰し、はお好みでは御座いませんか?」
好むも何も……オレがその、穀潰しだろうよ。
「であれば、方針を転換いたしまして、今後の狩りの獲物は穀潰しを選んでお勧めするようにいたします。
そうすれば、淘汰圧が働きまして、これまでアインズ様が当世界の人間どもを善よりにお導きあられたように、穀潰しは淘汰されて勤勉な
はっ?
オレが……この世界の人間を善へ導いた、だと!
「いや、待て待て、デミウルゴス!
いったい何の話をしている?オレはそんなことをした覚えは……」
「御冗談を、父上。統計上もはっきり現れております。
ナザリックの顕現以来、さきほどもご報告申し上げました通り、当地の人間の産業構造はほとんど変化しておりませんが、一方で、人間どもの
とパンドラズ・アクター。
大慌てでアインズは切り返す。
「それとオレに、何の関係がある!」
やはり、うふふ、と微笑みを絶やさぬアルベド。
「アインズ様が好んで悪人をお狩りあそばし続けた結果、
すべて、御身の成せる
「ふぁーーーーー?」
なお増して激しく神々しくペカるアインズを
「なるほど、そういうことで御座いますね、アインズ様!」
既にアインズには反応を返す余裕もない。
「……
「わからないかね、パンドラズ・アクター?
すべてはアインズ様の思惑通りだったのだよ。当地の人間社会に闘争が見られなくなったことをつまらなく感じていた自身を恥じ入るばかりだ。」
「あら、もちろん
このデミウルゴスとアルベドの鞘当てに、本質的に外界にあまり強い関心を持たないパンドラズ・アクターは大きく首を傾げて説明を求める。雄弁に応じるのはもちろんデミウルゴスだ。
「そもそもユグドラシルにおける
「無論、それは承知しておりますが。」
「では、所与の秩序、とは何だ?
ユグドラシルにおいては、
たとえば、とある王国を救え、とされたそれにおいては、王族を助力する行動が
さる帝国の支配から民草を解放せよ、が
絶対的な善、絶対的な悪、は存在しない。善悪は、所与の秩序の
「でもこの世界には、所与の秩序、は存在しない。」
と涼やかなアルベドの声が割り込む。
「まさにそこだよ、アルベド!」
デミウルゴスの声が踊る。
「アインズ様は、当地の人間、亜人どもが、総体として
連中は皆、自身望むと望まざるとにかかわらず、アインズ様の巧みなご計略によって、この世にありもしない秩序を、明に暗に希求する存在へと成り果てたのだ!」
「なんと……では、彼らが求めて
パンドラズ・アクターも、言われんとするところに思い至った様子。
「「我らが至高の主、アインズ・ウール・ゴウン様!」」
アルベドとデミウルゴスが
「よもや……よもやこれほどまでの深慮遠謀を寡黙にお続けになられてきたとは!
まさに、端倪すべからざる、という言葉がお似合いで御座います。
言われるアインズはさきほど
不意に「よ、よくぞ見抜いたデミウルゴス!」と横柄に応じてひとまずこの場を切り抜けたい、とする誘惑がアインズを襲うも、彼はこれを
それをやってしまえば。
自分は本当に世界征服に乗り出さざるを得なくなってしまうではないか!
そんな面倒臭いことは真っ平御免だ!
だがしかし。
……いったいどうやってこの場を切り抜ければいいんだーーー?
「……違う。」
ぽそり、とアインズが言う。
「「「はっ?」」」
遂に我らが
「そんなことを……オレはやってない。」
「またまた、ご謙遜を!」
「いや、違うんだ!」
改めて、アインズは強くそう言い切った。
が、アルベド、デミウルゴス、パンドラズ・アクター、いずれも
アインズは、腹を括ってたどたどしく語り始めた。
「まず、
「「「?」」」
「仮に、だ。仮におまえたちの言ったことが正しいとして、だ。
オレがこの世界の人間たちが求める秩序になる?
おかしいだろ!
オレ自身、
「ですが。」
と応じたのは愛妃アルベド。
「アインズ様は、我らがナザリック地下大墳墓に秩序をもたらしておいでです。
その範囲がこの世界全域に拡がることが、それほどおかしなことでしょうか?」
うーむ、流石に一筋縄ではいかないな、とアインズは
が、逆にアルベドのこの言葉は、アインズの中に
「あぁ、そうだな。アルベドの言はある意味において正しい。」
「では!」
「いや、待て待て。最後まで聞いてくれ。」
アインズは、骨の手の平を声を踊らせる愛妃に差し出して制した。
「ユグドラシル時代のオレ、ギルド、アインズ・ウール・ゴウンのモモンガは、至高の四十一人のまとめ役だった。」
ギルド黄金期の記憶が語られ始めると、自然と三人の知の
「ユグドラシルにおいて、大規模なギルドを維持運営することは、決して容易なことではなかった。一方で、至高の四十一人はお世辞にも協調性なんてものとは縁のない碌でもない連中で、一つ踏み間違えれば敵対ギルドにその隙を突かれたり、あるいは自滅してしまう恐れも常にあったんだ、わかるか?」
こくこく、と三人が素直に頷く。
「だが、それを取りまとめていたオレ、ギルド長モモンガは、決して至高の四十一人に対し、ギルド維持のためにあーしろ、こーしろ、などということはしなかった。それは何故だ?」
三人の
アインズは続ける。
「オレにとって、ギルドの存続とあいつらの好き勝手は、どちらも同じくらい
オレにとって重要だったのは、ギルド、アインズ・ウール・ゴウンそのものではなく、至高の四十一人が好き勝手をやって、それでも存続が揺るがないアインズ・ウール・ゴウンだったからだ。ギルド維持のためにあいつらが汲々とする、なんてことは、オレの望むところではなかった。
そしてそれは今も同じだ。
ユグドラシル時代以上に、この世界においてギルドを維持していくことは難しい。」
「
すかさずデミウルゴスが称賛の声を上げたが、これをアインズは押し
「それは無用な世辞だ、デミウルゴス。
確かに、オレは……オレたちは幾千年の
この
「アルベドは、さっき図らずも守護者統括の役目を、ナザリック地下大墳墓に本来あるはずもない秩序を日夜生み出すもの、と言ったな。まったくもってその通りだ。
おまえたちを含め、ナザリックの仲間たちの多くは生来の
「「「な、何ともったいないお言葉!」」」
「事実だ!」
恐縮する
「オレの唯一の望みは、かつての至高の四十一人がそうであったように、おまえたちが勝手気儘に活躍する
記憶の続かぬ言っている本人は、いや、実のところいろいろ
「そして!」
と、アインズ。
ここまで語って、自身の思考の中でもやもやとしていた何かが、明確な輪郭を得た感を彼は覚えていた。
「漸くオレにも、何故今回の議論をしよう、という気になったのかわかってきた。
これに先立って人間の街を視察してきたのは最初に話した通りだが、そこには、かつてのオレがそうであったように、行きたくもない戦場に駆り出されるかのように生気なく職場へ向かう
「父上、それはご謙遜が過ぎましょう!」
思わずパンドラズ・アクターが割って入るが、
「いや、すまん。
正しくはオレの前身、人間鈴木悟の話だ。」
とアインズは
「とにかく、おれは街の人間たちの覇気のない
嗚呼!この世界も、<
この辺りは、ナザリックの知性を司る三賢者と言えども、<
「だが……一人だけ。
一人だけ印象に残った女があった。」
「……おんな?」
「いや、待て待てアルベド!そういう意味じゃない!
これを見ろ!」
とアインズは、再び
「これは?」
「写真……このようなものがこちらの世界に?」
「写っているのは……
「街で出会った女が撮って、譲ってくれたものだ。
あー、いや待て待て、不敬だ!誅殺だ!とかいうのはなしだ!オレも了解してのことなんだから!
面白いやつでな。ギルド拠点遺構を背景に街の高層建築を見上げるオレの姿に何か感じたところがあったらしく、自分が
「オレは……こういう何の益体もないことに、熱中するやつが……好きなんだよ。
あ、いや、待て待てアルベド、そういう意味じゃない!姿も名前も思い出せん女に妬いてくれるな!
いいか?
アインズ・ウール・ゴウンのモモンガは、好き勝手なことをしてしばしばギルド自体を存続の危機にすら陥れる至高の四十一人を愛して
同様に今のオレ、アインズ・ウール・ゴウンは、隙あらば禄でもないことをしでかしてくれるおまえたちの、その禄でもなさに常に頭を悩ませつつも、でありながら、おまえらの禄でもなさが大好きだ。ナザリック地下大墳墓は何を以てしても守り抜かねばならん我らが拠点、ではあるが、それを守ることだけに汲々とし、銘々の碌でもなさの発露を
はて、我らは
ぽかん、とした三人をそのままにアインズは続ける。
「オレ自身、今の今まで気づいていなかったが、いつの間にか、オレは同じことをこの世界のすべての存在に求めるようになっていたんだよ。思えば、ツアーとその一族も、これまた禄でもない連中だ。が、オレはあいつらのそんな禄でもなさも好きなんだよ。
同様に、ナザリックの皆とは比べるべくもないが、それでも、この世界の有象無象の存在たちにも、秩序に汲々とする
だからオレは、死んだ魚のような目をして職場へ向かう人間たちに失望すると同時に、写真を熱く語りこれで天下を取るんだと気宇壮大な夢を嘯く女に出会って……ちょっとホッとしたんだ。」
我ながら無茶苦茶なことを言っているような気がしないでもないが。
皆……わかってくれるだろうか?
「正直なところ、よもやそんなことをお考えであられたとは驚きを隠せませんが……」
とパンドラズ・アクター。
「さりながら、承ってしまえば、
息子は父の救いようのないややこしい性癖に得心した様子。
一方アルベドは、無言のまま潤んだ瞳でアインズをみつめていた。
あぁ、普くすべてを包み込むアインズ様の愛!
そして、その宇宙大の愛をただ一人独占する栄を得たる我が身の幸せよ!
その精神は、この場を離れてどこかへお出かけしてしまった模様。
「なるほどアインズ様、そういうことで御座いますね!」
デミウルゴスは、アインズからすると嫌な予感しかしない歓喜の声を高々と上げる。
「……デミウルゴス。
嫌な予感がするから、おまえの言うそういうこと、をちょっと話してみてくれるか?」
骨の相貌をにゅっと突き出してアインズは問う。
「アインズ様の真意に思い至らなかった私をどうかお許しください。
狩りの獲物に捧げるべきは、穀潰し、ではなく、死んだ魚のような目をした
……はぁー。
っつーか、おまえ。
わかってて
「んなわけあるか!」
アインズは言下に否定した。
「たとえば、だ。」
とアインズは語る。
語る本人に自覚はないが、実のところ以下の喩え話は、至高の四十一人の一人、<
「言うなれば、オレは自宅の庭を近所の子どもたちに開放している好々爺だ。
オレは縁側で茶をすすりながら、子どもたちが無邪気に走り回って遊んでいるのを眺めて楽しんでいる。もしそこに中途半端に頭の回るやつがいて、騒ぐな、
逆に、もしその庭にダンプカーが飛び込んでくれば、オレは子どもたちを守るだろう。オレにはそれをするに十分な力がある。が、子どもたちに守ってやったから感謝しろ、なんて恥ずかしいことを言うつもりは毛頭ない。これも、オレが好きで勝手にやっていることなんだからな。」
図らずもアインズの語るそれは、アーグランド評議国に君臨する
「つまるところこれはオレの……」
アインズは両の骨の手を高く掲げる。
「……我儘、なんだよ。」
嗚呼、なんともはや……!
三人の知の
「父上の我儘に、どこまでもお
「そういうことで御座いますね、アインズ様!流石で御座います!」
「あぁ、素敵だわ、アインズ!」
抱きつこうと飛び出したアルベドの腰の翼左右それぞれにデミウルゴスとパンドラズ・アクターの手がかかり、彼女は豊満な胸からアインズの前に置かれていた
「わっはっは、何をやっているアルベド!」
アインズはすこぶる上機嫌だ。
「流石はナザリックの知を司る
おまえたちに相談してよかった。お陰で頭の中のもやもやがスッキリしたぞ!」
「「「お褒めに預かり、ありがたき幸せ!」」」
と、このような具合にこの日の三賢者会議は終了した。
後になって考えれば。
この日の議論が、遠からずアインズがこの世界に引き起こす大災厄を予兆していた、と言えなくもないのであるが、そんなことにはアインズを含め、心底能天気にできているナザリックの連中は誰一人として思い至ることがなかったのである。