「
目前に広がるまったく予想していなかった光景に、
少なからず感じられる
知恵袋ルーシェンからの<
濃厚な
一方で、これが真にギルド拠点であったならばあって然りの拠点防衛NPCとの邂逅も、
そして、最奥の大広間、もしこれがギルド拠点であるなら玉座の間、あるいは円卓の間と思われる
「
それ自体は彼にとっては決して驚くべき存在ではなかったが、その数が尋常ではない。
何かを取り囲むようにぐるりと肩を組んで円陣を造り、それ自身は外へ向かって屹立している。これが更に数段
中に……何かあるのか?
<
知恵袋からの指示を期待するもやはりこれはなく、さりとてこのまま立ち尽くしていたとて意味もないし、たとえ襲い掛かられたとしても抗する
が。
やはり、
「……これじゃ、埒が明かんな。」
ぽそり、そう呟いてみるも応じる者はおろかそれを聞く者もない。
短気を起こさぬよう自身を戒めながら、今しばらくブルーは目下の状況に思いを巡らせた。
明らかにこの束になった
一方で、こうして自身が屈強な姿を目前に晒してみても、何かの守護を命じられているはずの
かなりの時間を黙考に費やしたものの何も思い浮かばず、実のところ指示を期待して待っていた知恵袋からの<
「
三組六本の腕先の指がそれぞれに
ブルーはこの様子を漫然と眺めていたが、やがて、
「……ん?」
と首を傾げた。
光の粒は霧散したにもかかわらず、その中央からまだ光が放たれていたからだ。
「な……これは!」
ブルーは息を呑んだ。
そこにあったのは……。
安らかな寝息を立てて眠る、妖しげな輝きを放つ
*
「お呼び立てして申し訳ない。まぁ、掛けてください。」
トブの大森林から移民団を率いてきた仮面の魔法使い、先生、である。
到着した二百二十人の移民団には、元から空き家だったものに加え、ジョウン指揮の
決して暗愚ではないジョウンは、元からの住民と移民の間に分断が生じることのないよう、敢えて移民向けの住居を一区画にまとめることなく、村全体に分散するよう差配していた。移民たちは消費せずに残った携行食料を森からの土産として銘々近所に配って歩いた。逆に住民たちは、移民たちが久々に口にする温かい料理で彼らをもてなし、遠路の到来を労った。
また、村人はふんだんに湯を沸かして、移民たちが長旅の汚れを落とす便宜を図った。こういったもてなしは、はるか昔から地方の村落において、相手が移入者であるか
その順調な滑り出しを見届けて先生はそそくさと立ち去ろうとしたのだが、ジョウンに「一席設けておりますので是非に」と引き止められ、しぶしぶこれに付き合わされた。
「まずは一献。」
ジョウンが
「
と制された。
では食事だけでも、と家禽を丸焼きにしたものを取り分けようとすると、
「食べないんだ、もったいないから村の連中にでも配ってくれ。」
と応じられ、ジョウンはいささか困惑した。
「……無理にはお勧めしないが。」
「本題を。」
仮面の魔法使いが浮世離れしているのはさもありなん、とは思いつつも、あまりに社交辞令を欠くその人柄にジョウンはどう話を切り出したものか、と戸惑う。
「とまれ、長旅お疲れ様でした。」
「好き勝手でやっていることだ。」
……どうにも会話が成立しない。
こちらも無遠慮に本音をぶつけるべきか、とジョウンは腹を括る。
「では、単刀直入に申し上げよう。
私と……組まないか?」
「……はぁ?」
心底
「貴殿とて、含むところがあってこの帰還事業を始められたのではないのか?」
先生は思う。
なんでオレがこんなことをやる羽目になったのか、聞けばおまえは卒倒するし、そもそも理解できんぞ。
「エンリネから聞いているか、とは思うが、私はこの村で、形ばかりのこととは言え
「あっそ。」
「……先生は随分とおとぼけなのだな。
ご自身出御して来られたのはてっきりその気がおありだから、と思ったのだが。」
うーむ、どうにもこの男は気宇壮大な勘違いをしているようだ、と先生も気づき始めている。
「貴殿の望むすべての待遇を用意しよう。
共に大陸に覇を唱えようじゃないか、悪い話ではないと思うのだが。」
「ま、頑張ってくれ。」
「それとも、貴殿ご自身が
ジル……って……何だっけ?
なんか……引っかかるな。
あ、そうか。
あの手があったか!
「<
「ジルクニフはそんなじゃなかった。」
「……はっ?」
「ジルクニフ・エル・ニクスは、おまえみたいな安っぽい男じゃなかった、と言っている。」
「……え?……はぃ?」
「おまえらが何をしようがオレの知ったことじゃない、好きにしてくれ。
そして、おまえにはオレの帰還事業にノってくれた恩義があるから一つだけ忠告しておいてやろう。」
「……?」
「糞にはなるなよ、オレに殺されるぞ。
オレは……我儘なんだ!」
そのとき!
ガバッ、と唐突に先生が立ち上がったので、ジョウンは思わず身を翻し、恐怖に頭を抱え込んだまま後ろに椅子ごと倒れ込んだ。
が、先生はその様子をまったく気にすることなく、南東の方角をジッと睨んで佇んでいた。
「よもや……そこに
怒っているのか喜んでいるのか、俄に判別しがたい気勢を上げて、ひっくり返ったままのジョウンを
そして扉をバンッと
「セバス、ユリ!
*
「こ……こいつは!」
ブルーは、
ユグドラシルの
しかもこの騒ぎにも関わらず眠ったままとは、いったい全体どういうことなんだ?
疑問ばかりが山程に脳裏に浮かび、たちまちにどうすればよいか考えがまとまらない。
しかも、疎ましくもあるギルドの知恵袋が、こんなときに限ってだんまりとはどういうことだ!
だが。
改めてブルーの視線は、舐め回すように眠れる竜を検分する。
<
問題はこれをどうやってギルド拠点へ運ぶかだ。
いやむしろ。
これを口実にすれば、必ずしも必要なわけではないが、漸くのギルド拠点への
そのとき!
「な!
……<
後背に突如禍々しい気配を覚えて振り返れば、そこに出現したのは紛うことなき<転移門>。
目下、自身のギルドに任意地点に対してそれを
ブルーは大慌てで六本の腕それぞれに
「馬鹿なっ!」
そして。
その人物が、バラバラと捕らえた
こうして第九位階魔法を行使している以上、相手がレベル七十未満、ということはないはずだが、どうしたことかブルーは、先に現れた二人を含め、相手から強さを読み取ることがまったく叶わない。逆説的ではあるが、力量がまったく予測できないほどの徹底された欺瞞措置が施されていることは、すなわち強さの
「な、な、何なんだ、おまえらは!」
自身が怖気ていることを悟られまい、と発した台詞が
「……あぁ、そうか。この格好じゃわからんわな。」
何に納得したのか、仮面の人物はそう呟くと、道服に隠れた両腕を左右に大きく開いた。
攻撃か?とブルーは身構えたが、
「刮目して見るがいい!」
途端の閃光!
その眩しさに一瞬ブルーは視線をその人物から
金糸銀糸に
そして、骨盤の上の中腹に妖しい光を放って浮かぶ禍々しげな
「あ、あ、あ、あんたは!」
「オレを知っているなら話は早い。
無駄に先制してきたのは見逃してやるから降伏しろ。」
よもやの展開にブルーは
「へ……へへへ。
あ、あんたもお目当てはこの
「……はぁ?」
「折半といこうじゃないか!
見つけたのは俺が先だが、
言っている本人としては相手に
「こいつは退散だ!
<
「セバス、殺すな!」
ドスッ!
ほんの一瞬、
勢いで
「心得ておりますとも。」
ぐはぁ!と苦悶の声を漏らして膝を折るブルーを見下ろしつつ、セバスが
命じた側としては、あー、セバスがコニーとの情事を失念してくれててよかった、憶えてたらこいつ即死だわ!などと思っているのだが、それはセバスには伝わらない。
「おまえ、たかだかレベル七十七でオレに単騎で挑んでくるなんて、どうかしてるぞ。」
ブルーの
それでもブルーは、最後の手段に望みを賭けて脱出を図った。
計三十本もある手の指のいずれかに嵌めていた指輪が、器用に操作される。
「あばよっ!」
ブルーの眼の前に<
彼はそこへ飛び込む。
飛び込んだ……つもりだった。
が。
一旦は出現した<転移門>は、ブルーの身体がそこに達するよりも前に、四散して消え去っていた。
「<
い、いったい、いつの間に?」
これに応えたのは、意外なことに、骸骨姿の
「<
……
「あぁ、来てくれたか。」
と、骸骨が骨の片手を挙げて挨拶を送る。
「
おまえ……
常ならばそんなことはしないが、念のためにと数体に意識を繋いでいた
加えて、共にあった
命じといてなんだが……無茶苦茶だな。
そのユリも、ツアーの後に少し遅れて中に入って来た。
「詰み……だと思うが、まだやるか?」
膝をついたままのブルーに歩み寄りつつ、骸骨が問う。
「あんた……ほんとにあの、アインズ・ウール・ゴウンの……モモンガ、なのか?」
「この
ユグドラシルにおいては、目前にあるプレイヤー名を敬称無しで呼ぶことは敵意の表明と
このやりとりを、ツアーは興味深げに眺めていた。
「いや、すまない!他意はないんだ!
うちのギルド長
六つの手の平を大慌てではらはらと振りながら取り繕うブルーを見て、戦意は
「そいつは、来てないのか?」
相手の口が軽くなれば、得られる情報を得られるだけ得るのは、既にアインズにとっては常套手段の一つになっている。自然と発せられたこの問いに対するブルーの答えは意外なものだった。
「死んだ。」
「……はぁ?」
いつものように、パカリとアインズの骨の口が
「誰に
これにブルーは憮然とした態度で応じる。
「モモンガ……さん、と言えど、それは悪い冗談で胸糞悪いぞ!」
「……はぁ?」
「クリフが死んだのはユグドラシルのサービス終了半年前のことだ。急な
「な……!」
思いも寄らぬ話に、アインズの口はさらに大きくあんぐりと開かれ、神々しい緑色の光がペカペカと放たれた。
「クリフは、一度あんたと差しでやりあいたい、と常々言ってたよ。随分と熱心にあんたらのことを研究もしてたし、その話を聞いてたから、あんたを見てすぐにモモンガ……さんだとわかったんだ。
あいつは……さぞ無念だったろう、と思う。」
「ごめんなさい。」
「……えっ?」
急に、誰の声だかわからない声に詫びられて、ブルーはきょろきょろと周囲を見回したが、そこには変わらず骸骨姿の魔法詠唱者、執事、
「知らなかったとは言え悪いことを言った、許してくれ。クリフさんは……残念だったな。」
漸くブルーは、それがモモンガから発せられた声であることに気づいた。
「謹んでお悔やみを。オレも、やりあってみたかったよ。クリフさん、とやらと……な。」
人間、鈴木悟の
「あ……あぁ。ありがとう、モモンガさん。
こんな形であんたと巡り合うことになろうとは夢にも思ってなかったが、あんたにそう言ってもらえて、クリフも草葉の陰で微笑んでんじゃねーか、と思うよ。」
自然とアインズは骨の手をブルーに差し出し、ブルーがそれを取って立ち上がろうとした……。
まさにそのとき!
「アインズ。」
(
ツアーがアインズの名を呼んだのと、ナザリックの目ニグレドの急報が届いたのはほぼ同時だった。
(御身の近傍で超位魔法の準備
「胸騒ぎがする、恐らくは超位魔法だ。」
委細が告げられたのもほぼ同時。
「おまえの転移避けは任意に解除できるか?」
アインズのこの簡潔な問いにツアーもまた簡潔に答える。
「時限性なので無理だ。」
「頼めるか?」
「任せておけ、娘を頼む。」
「オレの友だ、任せておけ。」
既に背を向けて走り去ろうとしていたツアーは、アインズのこの返しに右手の親指を挙げて応じ、そのまま宮殿の壁を突き破って見えなくなった。
「ど、ど、どういうことだ!」
狼狽えるブルーにアインズは言う。
「おまえに他に仲間がいることには気づいてたんだが。
どうやらおまえは、捨て駒にされたようだな。」
「な!」
唖然として固まったままのブルーを
この状況で仕掛けてくるとすると、相手の
「<
ふわりと空中に浮かんだアインズは、眠れる
直上からの魔法攻撃を、我が身で受け
「セバス、ユリを守れ!
おまえは余計なことをしてくれるなよ!」
大魔王然とした声色に戻ったアインズに
セバスは、スッとユリを抱き寄せ、天に突き刺さるような視線を向けて
ユリの頬が、ぽっ、と赤く染まる。
「この顛末をアルベドに知られたら、えっらい怒られるだろうな。
デミウルゴスに口止めしとかないと。」
この状況下でも、アインズの心配事は存外能天気だ。
そして……ニグレドに告げられた時間が経過しても、何も起こらなかった。
(
当然の帰結がニグレドから
「ニグレド、ありがとう。助かったよ。」
(恐れ入ります。
あちゃ!もうバレてんじゃねーか!
「なんで……なんでこんなことになってるんだ!」
ブルーは座り込んで三組六本の腕に立膝を抱え込み、どんより落ち込んでいる様子。
しばらくして、繰り返される雷鳴が近づいてくる。
「
見れば、
赤い甲殻を
「まさかとは思ったが……やっぱりおまえか、ピンク!」
「ブルー?なんでてめぇがこんなところにいる?アタイを嵌めやがったのかぃ!」
どうやら同じギルドの者らしいな……見苦しい、とアインズは嘆息する。
「さて、ピンク……さん、とやら。」
とアインズ。
蟹女は剣に貫かれたままの身を
「てめぇがラスボスか!」
と唾、ならぬ泡を吐いた。
正直なところどうでもいい、と思いつつ、アインズは尋ねる。
「大人しく降伏するならひとまずは身の安全は保証しよう。
どうする?」
「アタイがこのゲームの主人公だぞ!
何、つまんねーこと言ってんだよ、糞が!」
「……」
「モブはモブらしく引き立て役やってろよ、糞が!」
あー、こいつは駄目なヤツだ。
アインズは無意識のうちに<絶望のオーラ>を全開させた。
見ればツアーも「この
やおらぶら下がったままの蟹女に歩み寄ったアインズは、骨の手で優しく触れた。
「悪夢を終わらせてやろう。
<
じたばた、と暴れていた蟹女の
ユグドラシル非公式ラスボスたるこのオレに仕掛けるに際し、即死対策すら怠っているとは間抜けにもほどがある!と、アインズは深い溜め息を吐く。
「な!……あ!……えぇ!」
目前にギルドの仲間の消滅を見せつけられたブルーは、声にならない声を漏らしている。
漸く口にした意味のある言葉はこれだ。
「……強制ログオフ、させることができるのか?」
薄れて消えてゆく光の粒を名残惜しそうに眺めていたアインズは、ブルーの言葉にそちらを振り返り、
「さあな。実際のところ、どうなるのかはオレも知らん。
敗北したことがないんでね。」
と応じた。
「では、ブルー……さん。」
その傍らにはセバスが立って、妙な真似をすればただではおかぬ、と凄んでいる。
「お喋りの時間だ。」
「……指図、を受けるのは好きじゃないんだがな。」
この
「
「それは……どういう意味、なんだ?」
「おまえの行動すべてが、おまえが指示待ち人間であることを示している。何も決められないヤツに限って、人から指図されるのは好まない、なんてことを口にするもんだ。本当にそう思っているヤツは、そんなことを言う前に決断し、行動するものだ。違うか?」
「ぐっ!」
ブルーは図星を突かれて言葉を詰まらせる。
「あ、あんたに、俺の何がわかるんだって言うんだよ!」
それでも敢えてそう言い返してみれば、返って来たのは驚愕の指摘だった。
「じゃぁ言ってやろう。
おまえ……拠点NPCの言いなりになってるだろ?」
「……な!」
どうして!
今さっき初めて邂逅したばかりのこいつは、何故そんなことを知っているんだ!
「フハハハハッ!
非公式ラスボスは、すべてお見通しなのだ!」
両腕を左右に大きく
が。
ツアー、そして、こともあろうにセバスとユリまでもの、しらー、とした冷たい視線を感じ……
「……と言いたいところだが!」
ブルーが目を点のようにしてアインズを見つめている。
「実はうちにも居るんだよ。
似たようなのがな!」
……何言ってんだ、こいつ?
とブルーは固まる。
*
ここで時間を遡り、前話終劇間近、ナザリック地下大墳墓玉座の間において、アインズが言うところの
「本百年紀の
「……ほぅ。それは……重畳じゃないか。
もっと近くへ来い。ゆっくり聞かせてもらおうか!」
「ははっ!」
すすすっ、とデミウルゴスは玉座のすぐ
そして、誰を憚ってか小声で、アインズがツアーの居城に引き籠もってその
「我らがナザリックから見て東方、かつてバハルス帝国と称した領域の城塞都市廃墟にて、繰り返し
アインズが引き起こした大災厄、<
「……なんでプレイヤーだと断言できる?
NPCかも知れんじゃないか?」
この至極当然の
「行動から一目瞭然で御座います!」
曰く、NPCは知性の
目下継続監視している存在は、城塞都市廃墟を探索するに際し、まったく無意味な
「過去の
「なるほど。」
ちなみに。
気まぐれの外出を除き、ナザリック外で作戦行動するに際し事前に練り上げた戦略、戦術を
「確認されているプレイヤーは二名。一方は隠密能力に優れた
これは舐めてはかかれない相手だな、とアインズは判断する。
ユグドラシルの戦術理論的にいえば、デミウルゴスが報告するプレイヤーの行動は、
「つまり……そいつらは難敵との邂逅可能性を前提に行動している、ということだな?」
「流石はアインズ様!ご推察の通りかと愚考する次第です!」
オレが居ない間にそこまで詰めてるおまえの方がよっぽど流石だよ、とアインズは思う。
「そいつらは……アレの前にやって来ていて、アレを目撃した、ってことか?」
アインズの言うアレとは、自身が引き起こした<
「ほぼ間違い御座いますまい。
つまり連中は、アインズ様……無論、彼らがそれがアインズ様であることを知ることはなかったはずで御座いますが、アインズ様相当の強敵があることを前提に慎重に行動しているもの、と考えるのが妥当で御座いましょう。」
随分な
「廃墟巡りをやってる目的は、換金可能な廃材集めか?」
「左様で御座います。これも中々手が込んで御座いまして、
「……拠点の位置を特定されないよう配慮している、ということか。
いよいよもってキレる連中だな。まぁ、廃材集めだけやってるのなら実害もなかろうが。」
というか、そいつらが暴れたとて、それで困りそうなこの世界の住人はあらかたオレが屠っちまった直後なんだから、何の騒ぎの起こしようもないわな。
「面白いのはここからなので御座います!」
……ほんっと、楽しそうだな。お・ま・え・は!
「おそらく、拠点に残ってこのプレイヤーたちを指揮しておるのはNPCである、と推測されます。」
「……はぁ?」
ここに至っていつものように、アインズの骨の口がパカリと
ここまでの話の流れから、当然アインズは三人目、もしくはそれ以上のプレイヤーが、デミウルゴスの探索に対して巧みに位置特定を避けている拠点にあることを想定はしていたが、それでもデミウルゴスの発言は想像の埒外だった。
「……どういう理路でそういう話になるんだ?」
「アインズ様におかれては……」
もう、そのオレにはわかってて当然、ってのは飽きたよ!
「あー、時間の無駄だからそれは
ズバリ、おまえの考えるところを聞かせてくれ!」
「ははっ!」
かくして語られたところはこうである。
問題のプレイヤーがどの廃墟に訪問するか、そこに法則性を見出だせればギルド拠点位置を割り出せる、と考えたデミウルゴスはそれを試みたが、これがうまくいかない。それは一見まったくの
これにある疑念を抱いたデミウルゴスは、このプレイヤーたちがギルド維持のみに専念したちまちに剣呑な動きを見せることはない、と確信した上で、敢えて半年ほどの間この案件にかかずらうのを
半年後、彼は自身に宛てた手紙をパンドラズ・アクターから受け取ることになる。思考密度があまりに濃厚なデミウルゴスは、二ヶ月ほどで
その手紙には、背景をまったく抜きにある課題が記されていた。この領域内にある城塞都市廃墟から、敵対勢力の監視の目が光っている前提で、こちらの拠点位置を気取られない探索順序を考え、追ってパンドラズ・アクターに預けた回答と照合せよ、というものだ。
その時点のデミウルゴスは「何のこっちゃ?」と訝しく思いながらも、明らかに自身の筆跡で書かれた手紙の課題に素直に従った。こんなものは簡単だ。賽の目のそれを超えて数学的に
「そして、
語られるアインズは、目の届かないところにこいつを放置するのは物騒極まりない、と深く反省していた。
何をやらかしてくれるか、考えるだに
「意味するところはひとつ。彼らのギルド拠点には
本当に……これで、済んでいるのだろうか?
「加えまして、同じ廃墟を
つまり、この者は自身の記憶能力の問題にまったく気づいていないか、気づいていても何の対策もしておりません。一方で、拠点からこれを差配しておると思われるNPCの方針には一切ブレがなく、おそらくは
「……なんでそいつは、自身の
「
ペカーーー!
「NPCがプレイヤーを顎で使っているとは……それはまた。
ちょっと……考えてなかった
いや……オレ、がそうなのか?」
思わずアインズは漏らす。
対するデミウルゴスは常と変わらぬ様子で楽し
「またまたアインズ様、ご冗談を!」
だよな!
ナザリック地下大墳墓の
「悲しいかなこの者は、自身を遥かに凌駕する叡智に溢れ、
やべ……自信なくなってきたわ!
とまれ。
この
かくしてアインズが毎朝の行動開始に先立ち読み返して確認する