月明かりのない
意外なことに、待ち人は徒歩で現れた。
「豪奢な
そう呟く相手は、一見して人間種。目立った武装はなく、
だが、聞いていたのとは異なり、
「残念至極……と言うほかありませんな。」
迎えた骸骨の第一声はこうだ。
「残念至極と言うほかない、と?
……何が残念なのか。」
女が問う。
「左様。ルーシェンなる知性値最大のNPCと
「ルーシェンと会える、と期待していた、と?
……そういうおまえはアインズ・ウール・ゴウンのモモンガ、本人ではあるまい。」
「
さらりと骸骨は断言した。
「
……腹に
「
「モモンガ玉を除装することもある、と?
……ブルーさんと対峙した折と随分と口調が異なるが、これ
突如として骸骨の声色が大魔王
「口調などどうとでもなるわ、馬鹿者め!
それに……あまりオレをがっかりさせないでくれるか?
こちらからもお返ししてやろう。
先程来、オレの言い様を逐一復唱するのは、<
俄に女の表情が歪み、
「……ルーシェン、モモンガにこちらが代理であることは見抜かれている。」
としばしの沈黙。
ややあって。
「わかった。代理を向けた非礼は詫びよう。」
と女は軽く一礼を骸骨に捧げたが、応じる骸骨は再び口調を転じてにべもなく応じる。
「非礼とは思いませんぞ。もはやギルドの命脈と
ですが、こちらもそうであろう、と
この指摘に女は応じず、簡潔にこう言った。
「本題を。」
「ですな。
骸骨は軽口でおどけて見せる。
執筆もまた、無暗な文字数稼ぎは目指すところではないので、彼に倣って以降は女の復唱を省くこととしよう。
「では!」
と、骸骨は口火を切った。
「単刀直入に申し上げましょう。
あなたの目論むところを試みた、その結果が知りたい。
つまり報酬のユグドラシル金貨五億枚は……」
何故か骸骨がその場でくるくるとつま先立ちに回転。
ピタリ、と
「必要経費でもある……ということになりますな。」
たちまちに女の顔に動揺が浮かぶ。
おや?と骸骨は思うが自身はその情動を
鉄則だ。
「どうやって結果を報せる?」
興味深い関心の順序だ、と骸骨は思う。
「強いて報せていただく必要もないでしょう。
企てがうまく運べば、当人から一言
逆に、企てがうまくいかないのだとすれば、ただ、あなたは失意に沈んでおればよろしい。報せがない、すなわち失敗、ということで御座いますな。」
なお増して女の表情に動揺が広がる。
骸骨から見るとそれは、女が、自身を操る声の認識と、自分自身本来の認識の不一致に引き裂かれているかのようだ。
なるほど……。
「何故、そんなことを知りたい?」
「ただただそんなことが叶うのか、に興味があるから。
……ではいけませんかな?」
「
と問う女の声は震えている。
「本意とは思えませんな。ルーシェンとて、試みんとするそれが、ユグドラシルにおける通常のそれそのものではない、ことは承知の上……ではないのですかな?」
「……」
「我らギルド、アインズ・ウール・ゴウンは武運に恵まれ、こちらの世界に渡り来る以前、すなわちユグドラシル時代には、死亡したプレイヤーがありませんのでね。」
「……」
「つまり我らには、これを試す機会がなかったのですよ。
ブルー氏との邂逅を経てあなたの目論みが知れるところとなり、便乗させていただこうと思った次第で。
念のために申し添えますれば、ブルー氏、ピンク氏いずれかの復活を試みるのは無しで御座いますよ。それが可能であることは、我らは既に承知しております。もっともあなたが、彼らのような役立たずになけなしの金貨を
「ルーシェン!
これはいったいどういうことなの!」
突如として女が片耳に手を当ててそう叫んだ。
それはすなわちこの女が、ルーシェンの傀儡、としてではなく、自分自身としてルーシェンに問うていることを意味している。
思った通り!
と骸骨はほくそ笑む。
ルーシェンは先に捨て駒としたプレイヤーに対してばかりでなく、
そして、この対話の最中にこの局面に至ったことは、とりもなおさず、アインズ・ウール・ゴウンからの呼び掛けに応じたルーシェンが、よもやこんな話を振られるとは予想もしていなかったことを意味している。
ようやくにして先手を取ったり!
しばし女は骸骨の前で、俄に分裂症状を患ったかの如く小声で一人議論を演じた。
仔細に聞き耳立てずとも、この
女はルーシェンに言葉巧みに丸め込まれるに違いない。
我らがナザリックにおいて、
「……金貨を。」
突然落ち着きを取り戻した女が、右手を差し出して骸骨にそう告げた。
「それは、依頼を受諾する……ということでよろしいので?」
と骸骨が念押しする。
女は黙ったまま頷いた。
「では、こちらを。」
骸骨は金貨五億枚を詰めた<
「
寸分の狂いなく五億枚あることは、
女は骸骨の言葉を素直に信じたものか、あるいは、
開かれた<
これも、前以て予想されていたことであるので、骸骨は殊更驚きはしなかった。
ルーシェンは、ブルーを使嗾してギルド維持資金を獲得するに際し、収集した資材を
この戦術は、その様子を傍から覗き見る者に対し拠点所在を欺瞞すると同時に、ブルーを遠征のままに置いてギルド拠点への帰参を封じ、プレイヤーから直接命じられれば
果たして。
正しく履行されるか
そもそも、件の試みの成否を問うのは、本作戦の目的全体からすればほんの一部でしかない。
むしろ只今骸骨の脳裏を占めるのは、はて、退路を断たれた目前の女はこれからどうするのだろう、という疑問だ。もちろん、
が、それは、少なからぬナザリック勢を、未だその位置が知れぬ彼女らの拠点<
つまるところ先のプレイヤー、ブルー同様に。
この女もまた捨て駒にされた、ということだ。
「ルーシェン、とやらからの<
骸骨は、自身の言が女に対して威圧にならないよう、極力優しい声色でそう尋ねた。
女はしばし呻吟する様子を見せたが、ややあって無言のまま頷く。
「では、改めてご挨拶をば。
女は反応しない。
「……名乗ってはいただけないのですな。
まぁ、それはそれで構いません。時間も御座いませんので単刀直入にお伺いしますが、
彼女の背後に、
やはり、女から会話に応じる様子はない。
「
そう言いながらパンドラズ・アクターは、自身もまた縛られるところのギルドへの忠誠は、こんな言葉で容易に覆されるものでないことはもちろん承知している。
が、形ばかりとは言え、創造主アインズ・ウール・ゴウンを演じている今なればこそ、我が
「ジュリー。」
と女が一言。
「?」
「パンドラズ・アクターが名乗ってくれたので、私も。」
「ジュリーさんとおっしゃる!良い名だ!」
「私と戦って下さる?」
「……生憎と今回は、殲滅せよ、の
「そう……残念だわ。
では、パンドラズ・アクター。ご機嫌よう、さようなら。」
嗚呼、こうなることはわかりきっていたのに!
「さようなら、ジュリー。」
「ありがとう、パンドラズ・アクター。」
やおら背を向けたジュリーはそのままゆっくりと歩み去り、やがて視界の彼方で生じた
自身の創造主クリフが傭兵として他ゲーム世界から招いたに過ぎないプレイヤーを捨て駒としたのは、常には口にこそせぬものの、アルベドではないが、創造主モモンガを残して去って行った至高の四十一人に対しわだかまりがなくもない彼にはまだ辛うじて理解できなくもない。
ギルドへの忠誠は、NPCに何にも代えてギルドを守り通すことを強いるが、ここで言うギルドには、当然のことながらギルドに所属するすべての者が含まれて然りであろう。ギルド拠点は城に
ルーシェンが同じギルドの忠誠の鍵を共有するNPCまでをも捨て駒とし、のみならず、言葉巧みに自刃へと追いやった……拠点の所在を敵に知られぬために云々と白々しくも言い含めたものだろうか……ことに、パンドラズ・アクターは空寒い気分を覚えた。
愛されキャラとして創造されつつも勇猛果敢な軍人キャラでもある
すなわちそれは。
「<
無言のパンドラズ・アクターの姿が<
*
「おや、御曹司の御帰還ぞな?
今回は……」
とここで、アインズに扮したままのパンドラズ・アクターが
「あぁ、そうじゃったの。」
と、無駄口を叩いた者はその意を察する。
「で……
こくこく、と骨の頭が縦に振られた。
「されば!」
ゴゥッ!
金糸銀糸に
「あー、パンドラ。ご苦労だったな。
「はい、父上。稀有な……体験をさせていただきましたァ!」
只今は瓜二つの姿をしたこの
もっとも、自身の生命に執着を持たない
ここへの帰投に際し、よもや
<
結果、もちろん
「ようやく会見叶ったようだな?」
実のところ、<
「ご覧になっておられたのでしょう?
生憎と相手は
「パンドラ。」
「……はぃ?」
突然、常ならぬ真摯な口調で名を呼ばれて、パンドラズ・アクターは素っ頓狂な声を発した。
彼の創造主は、そのままの口ぶりでこう続ける。
「おまえの気持ちはわかっている。
なぜなら、オレもまったく同感だからだ。」
ぶるる、とパンドラズ・アクターは身を震わせた。
「父上……。」
「だが、今しばらくその発露は押さえておけ。こちらの判断を狂わせるべく計算
「ハッ!そこはまったくもって仰せの通りで御座います!」
「だがァ!」
アインズの骸骨頭に穿たれた両の眼窩が、燃えるかの如く真っ赤にギラリと光る。
「アレに対するオレのムカつき具合は……。
おまえの比じゃない、ということは、オレの代わりに憶えておけ!」
「た、確かに……」
いつの
「
敬礼!
「して……父上の首尾はいかがですかな?」
アインズの隣には恐怖公があって、<
「……いきなり
あー、ゴホンッ。わかっていたことだが<
中継地点は割り出せたが、今から駆け付けたとて
「そなたらはいつも
パンドラズ・アクター同様に、いつの
「ボケ!
「嗚呼、コニー。今もお美しいとは存じますが、
「パンドラはキラキラするものが好きなだけじゃねーか!」
「今回の作戦成功を記念して、一枚、鱗を頂けませんか?」
「御曹司が……
「コニーッ!」
「本気にしよったか、アインズさん?
そなたの大好きな冗談じゃ、ほっほっほ!」
「冗談なのですか!お求めとあれば
「おまえら!邪魔するなら出て行け!」
「アインズさんよ。」
やおら、コニーの口調が真面目になる。
「御曹司を諫めつつも、先程来、ご自身
「……な!」
慌ててアインズはそれを
「アインズさんの気持ちはわかる。
さればこそ、今少し鷹揚に構えては
ふふ……参ったな、これは。
「あぁ、コニーの言う通りだな。攻勢に転じたはいいが、今度は勢い余って前のめりになったようだ。おまえの助言には感謝しておこう。」
改めて居住まいを正したアインズは、大魔王
対してエイヴァーシャーの魔女、コニーはニマリッ、と妖艶な笑みを浮かべ、
「されば、御曹司をしばし拝借しても……」
「それは
*
「皆の者、謹んで忠誠の儀を!」
「「「アインズ・ウール・ゴウン様万歳!
ナザリック地下大墳墓第十階層玉座の間。
主だった階層守護者、
ユグドラシル時代から、ギルド、アインズ・ウール・ゴウンでは、対外的な作戦が一段落するとそれへの参加不参加を問わず、その時点でログインしているギルメンすべてが円卓の間に
この感想戦はもちろん、作戦の論功行賞を明らかにするとともに今後の作戦への
アインズ、当時のモモンガを含めて、至高の四十一人にとってそれもまた、楽しい
こちらの世界に渡り来て以降も、開催場所こそ玉座の間に移ったが、彼らの性向を色濃く引き継いだアインズとナザリックの
「
鷹揚にアインズがそう告げると、
「今回の来訪者、
そしてこれまで、相手方にこちらの存在を認知された状態で睨み合う、などということはなく、先制一気殲滅を常としてきたオレたちにとって、不利でこそないが決して呑気に構えてはいられない状況ではあるが、おまえたちの献身的な協力を得て、作戦の第一段階を無事終えることが出来たことに感謝したい。
皆、本当にありがとう!」
「「おぉ!」」
と場がどよめくも、たちまちに骨の片手を差し出したアインズがこれを制する。
「今日は、これを振り返ってこれからの対
「「ハハッ!」」
「まず、今回の作戦はパンドラズ・アクターの活躍するところ、極めて大であった!」
「父上、ありがたき幸せ!」
すっと、パンドラズ・アクターが立ち上がり、これに
これに応えてパンドラズ・アクターは、
「あー、いや。そういうのはいいから。
ゴホンッ。僅かな邂逅ではあったが、パンドラの機転で
アインズがこのように言葉を切って
「このNPCが……孤独だ、という点だ。」
この力強い断言に、再び
「こいつは、自身の真意を仲間に明かすことなく詭弁による使嗾でギルドを差配し、しかも、最初の邂逅においてそうであったように、プレイヤーのみならず、自身と同じ、同僚であるはずのNPCを捨て駒とし、あろうことかギルド拠点位置秘匿のため……自刃を強いることまでした!」
コニーに諫められてもなお、これについて考えるとアインズの声色はやや強張る。
これを
「これをおまえたちがどう感じるか、など先刻承知だ。
何故なら、オレ自身がそうだからだ……が、むしろこれは喜ばしいことでもある。」
ん?とそれぞれに不思議そうな顔をする
だが、既にその真意に気づいているアルベド、デミウルゴスは歓喜の笑みを浮かべている。
「仲間に支えられることも、仲間を信じることも出来ない者など!」
アインズの両の手が力強く天に向かって振り上げられる。
「我らナザリックの敵ではないからだ!」
そう言い切ったアインズに、一斉に立ち上がった
「「「アインズ・ウール・ゴウン様万歳!
と歓呼するを繰り返した。
「では、デミウルゴス。」
あえて平静な口調に戻してアインズが問う。
「今回の作戦の成果の詳細報告を……頼む。」
「ハハッ!」
狡知の
「まず、敵戦力分析ですが、今回、毎月場所を転じての我らからの布告に対し、
これを、先にギルド拠点維持資金獲得を主に担っていたプレイヤーが敗死したことにより彼らが資金難に陥り……それ以外に考えようも御座いませんが……そこからの体制立て直しに要した時間、と仮定して、これに種々の不確定要素を加味し、シズ・デルタの演算能力を以て
実際にはさらにこれを下回るものか、と愚考する次第です。」
「重畳だ!」
デミウルゴスの報告に、アインズは満足
「シャルティア、コキュートス、ナーベラルには地味な仕事をさせてしまったが、大手柄だぞ!」
この言葉に、称揚された
「彼らの為しましたところはそれだけでは御座いません。」
と、デミウルゴスは続ける。
「ここまでの経緯から、敵方は最上位の<
「つまり、自刃した憐れなNPCとパンドラが会見した地点から、半径いくばくかの円内に敵のギルド拠点がある……ということか?」
この下問に、デミウルゴスは後ろ頭を掻きながら何やら言葉を濁す。
「残念ながら、そう
「その円内にあるのは、彼らが物資回収に際し拠点位置秘匿に用いている中継基地でも構わない、ということね?」
と割り込んだのは守護者統括アルベド。
むむっ、とそこに自ら思い至れなかったアインズが悔しそうにしている。
「その通りだよ、アルベド。
だが、その中継基地を設けるにしても、そこへの最初の移動は徒歩でおこなわれるもの、と考えられる。これに、先に触れた体制立て直しに七ヶ月を要した事実を加味すれば、結局のところそれは、彼らの拠点が存在し得る一定の領域に至るわけさ、彼らの無駄な欺瞞の努力にもかかわらずね!」
やはりデミウルゴスはシズ・デルタを使って、不確定要素を順列組み合わせした
これは、当所から
領域が特定されてさえしまえば、ほぼ永続、ほぼ無限の
「加えまして、以下はここまでと比しますと確度をやや欠きますが。」
と慎重な断りを入れてデミウルゴスは続ける。
「ルーシェン、なるNPCは、パンドラズ・アクターとの会見に及ぶに当たり、自身の真意を見抜かれまいとかなり
「ほぅ……聞かせてもらおうじゃないか。」
アインズのみならず、居並ぶ
「第一に、かの者は開口一番パンドラズ・アクターに、アインズ様……かの者は只今の御身のご尊名を承知せぬので、モモンガ様、と申しておりましたが、モモンガ様ではない、と詰め寄っておりますが、これはどうしてなかなかに不自然な発言と評さざるを得ません。」
もうこの時点で、悲しいかなアインズは振り落とされ気味であることに自覚があった。
さきほどは、意図してか
「そもそもアインズ様は、ご自身が会見に臨むことを約されていたわけでは御座いませんから、先方もそんなことは期待はしていなかったことでしょう。そこへ、外見はアインズ様であるかのように見えるパンドラズ・アクターが現れたから、と言えばそうなので御座いますが、この場合、それがアインズ様ご本人であるかを敢えて確認する必要があるのは、
無論、アインズも含め会見に際し奇襲があることは想定していて、ゆえにアルベドがどうしても譲らなかったことを受けてパンドラズ・アクターが赴いたのであるし、加えて、いつでも介入できるように現場近くにはコキュートス、セバス、ナザリック側ではシャルティアが稼働準備まで済ませたルベドを侍らせて待ち受けていたのであるが、敵方が本人確認を試みる、というのは正直なところ考えてはいなかった要素だった。
「実際には狙撃も奇襲もなく、にもかかわらず、ルーシェンは開口一番それをおこないました。
これが何を意味するか……」
「あー、デミウルゴス!」
アインズは先手を打った。
「……はっ?」
「あー、なんだ。皆、話の続きを期待しているから……聡明なアインズ様はお気づきのことと存じますが、は今日はなしだ、というか禁止だ!サクサク、と続けてくれ!」
「……はぁ。」
デミウルゴスは一瞬拍子抜けした様子を見せたが、気を取り直して話を進める。
「これは、パンドラズ・アクターが、初見からおまえはルーシェンではない、と断言してみせたことを受けて、と考えるのが妥当、と愚考する次第で御座います。」
「そこに
と、いささか揶揄気味のアルベド。
アインズを含め、他の皆は含意がわからずに、ぽかーん、としている。
「ふふ、言ってくれるね、守護者統括殿は!
その通りだよ!かの者は、私同様に随分と負けず嫌いな性向を有していると見える!」
おぉ!とどよめきがあがり、一緒になって声をあげて腰を浮かせていたアインズは、慌てて玉座に深く座り直した。
「これは今後かの者と対するに当たり、重要な情報となるものか、と存じます。
加えますれば、パンドラズ・アクターが、目前の相手が傀儡であるを見抜いたのは、傀儡が復唱によって彼の言葉を<
発言から察するにルーシェンは八割方パンドラズ・アクターをアインズ様本人と判じたようで御座いますが、一切の奇襲これなく、傀儡に仕立てたNPCを始末するにもその者自身に敷設させた地雷を用いました。すなわち、当の本人については未確定では御座いますが、敵方には単騎で一撃必殺の攻撃力を有した戦力は、プレイヤーにせよNPCにせよ、既にない、と断定して差し支え御座いますまい。」
ルーシェンの性格はともかく、
おそらく打倒アインズ・ウール・ゴウンを目指していたというギルド長クリフの関心と
ブルーがレベル七十七であったことから、彼らがユグドラシルの歴史の中では後発組であったことに疑いはなく、新参かつ拠点レベルが五百に届かない弱小ギルドをユグドラシル末期に敢えて狙う者もそうはいなかったであろうから、これは納得のいく話になる。
「さらには!」
とデミウルゴスが声高に言うのを見て、アインズは内心、え!まだあるの?などと思っている。
「ルーシェンが、ユグドラシル終了以前に病死したと伝わる創造主の復活を目論んでいるのではないか、というのは、本作戦実施まではあくまでもアルベドが慧眼を以て喝破した仮説、に過ぎませんでした。が、パンドラズ・アクターの巧みな話術により、ほぼこれが真実であることが明らかとなったので御座います。」
ここで再びパンドラズ・アクターが、すっ、と立ち上がってくるくると回り、ピタと止まって軍帽を斜に構えるが……誰も見ていなかった。
「パンドラズ・アクターは、終始ルーシェンに対し、あなたの目論むところを試みた結果が知りたい、としか申しておらず、その目論見が具体的に何であるのか、についてはすべて遠回しに仄めかしてしかおりませんでした。
にもかかわらずルーシェンは、どうやってその結果をアインズ・ウール・ゴウンに報せるのか、という方法論にいきなり踏み込んでおります。しかも続けて、自身の真意を伏せていた傀儡に知れることを承知の上で自ら、金貨五億枚を積めば復活叶うは自明ではないか、などと問いました。平静を装って連絡の方法論を問うてはみたものの、よほど真を衝かれたことに
この時点でアインズは、決戦に及ぶか
「そしてもっとも愉快なことは!」
デミウルゴスが感極まって両手を高々と振り上げる。
「我らが悉くかの者の思考を先読みして見せたのに対し、かの者は我々の実力を悉く読み損ねた!
……ことに尽きるので御座います!」
と、ここに至って。
勝利を確信して沸き上がる
デミウルゴスの言うことはもっとも至極でまさにその通りだが、一気殲滅を目的としない邂逅を果たしたことにより、我々は敵方に、我々がそれだけの能力を有する存在だ、ということを見せつけてしまった。
パンドラズ・アクターの煽りがルーシェンの負けず嫌いな性格を衝いたからだ、とデミウルゴスは
デミウルゴスがそうしたように、ルーシェンにもまた、こちらのさらに裏の裏をかく強い動機を与えてしまったのではないか……と。
まぁ……。
細かいことは追々考えるか。
と、アインズは頭を切り替える。
「アウラ、マーレも、よく恙無く森を守り通してくれた。おまえたちが森の実りを守ってくれるからこそ、ナザリックは後顧の憂いなく戦い続けることが出来る。
たちまちに
と、前線に立たなかったものへの心遣いも忘れはしない。
「「「ア、アインズ様ァ!」」」
一族計八人、十六のつぶらな瞳がアインズに向かい喜色を浮かべた。
「セバスも、幸いすぐにコニーが<永い眠り>から醒めてくれたお陰で助かったが、気を使わせて悪かったな。ツアーも恩義に感じてくれるだろう、よくやった。」
続けてアインズはセバスにも労いの言葉を送ったが、送られた当人は何やらはにかんで当惑している。
「……どうした、セバス?」
それに気づいたアインズが真意を問うとセバスは頬を赤らめ、珍しく目を
「お褒めの言葉をいただくほどのことでは御座いません。
「……ふぁ?」
敢えてアインズは、その詳細を問い糾しはしなかった。
と言うか、考えたくもなかった。