「実は……なくはないんだ。」
躊躇いがちにそう言いながら、奇縁の
「それが……何なのさ?」
「まぁ見ていてくれ。」
キーノは、自身にとっては既に食べ物と言えないそれを、そっと床の上に置く。
*
世界
今、キーノ・インベルン率いる<黒の百合>は、彼女たちにカルサナス平原中央に出現した空飛ぶ船の調査を依頼した
先に双子忍者がユグドラシル
「「……ぶはっ!」」
と、
「なんで
クレマンティーヌは開口一番抗議の声を上げるも、
「大は小を兼ねる……だろ?」
と応じられ、大き過ぎるだろ!と突っ込む気力も起きなかった。
辺りは一面の焼け野原で、クゥイアもクゥイナもきょろきょろすることがなくなり、よもやこれを生き延びた虫はいまい、と、すっかり機嫌を直したキーノは大手を振ってオークネイスへ凱旋した。
その夜は
もっとも、議論するのはキーノとクレマンティーヌの二人だけ、ではあるのだが。
クレマンティーヌが空飛ぶ船の
キーノは、クレマンティーヌがクリフを利用してアインズに一泡吹かせようと目論んでいるのではないか、との疑いを払拭しきれない様子だったが、クレマンティーヌは、あれはあくまでもあの場を切り抜けるための方便だから、と言い張った。未だキーノの疑念は晴れ切ってはいないが、その疑念は決してまったく的外れなものでもない。
とまれ。
目下喫緊の課題は、苦し紛れとは言え、クリフから大魔王アインズ・ウール・ゴウン、彼の物言いに従えばアインズ・ウール・ゴウンのモモンガの所在究明を請け負ったことについて、どう対応するか、だ。
「以前さぁ。」
とクレマンティーヌ。
「自分の
「……あぁ、アセナーラ子爵領の鉱山で出会ったスプリンターのパランザム、だったか?」
キーノたち自身、すべてを自身で確認したわけではないが、その
「あのとき、ワタシらは連中に先んじてパランザムちゃんに辿り着いたけどさ。
……あいつら、すぐ後ろから追って来てたじゃん?」
「クレマンティーヌが言わんとするのは、山奥
既に盗聴はない、と踏んでいる二人ではあったが、自然とアインズ・ウール・ゴウン、ナザリックの
「そゆこと。」
「だが、今回……連中は現れなかった。
そして、クリフたちが存在し続けている、ということは、少なくとも連中にはクリフたちを殲滅するつもりがない……ってことだろうか?」
「そこは何とも。
あいつら、こちらの世界に対して積極的に何か仕出かすでもない
だが、クレマンティーヌはもとより、キーノもまた、一見害がなさそうに見え、言動も理知的で、当人自身もこちらの世界の住人に害を及ぼすつもりはないと語るクリフを、でありながら、不気味で剣呑な存在だ、と感じていることを否定できない。
しかもクリフは、アインズ・ウール・ゴウン……未だそれがキーノたちの知るアインズ・ウール・ゴウンそのものであるのかについても確信がないのではあるが……に対する敵意だけは明確に宣言し、キーノやクレマンティーヌにもかくあれ、と使嗾を試みているのは明白だ。
そんな存在を、あのアインズ・ウール・ゴウンが見逃すだろうか?
「まぁ……当人に訊いて見るのが話が早いんだろうけど。
クリフちゃんにも言ったように、出会うのはいつも突然で、こっちからあいつらに呼び掛ける手段ねーもんな。」
「……」
ここでしばし呻吟するキーノ。
そして場面は冒頭のそれに遡る。
「呼び掛ける手段だが。
実は……なくはないんだ。」
そう言いながら取り出した
「まぁ見ていてくれ。
少し身を隠した方がいいかも知れない。」
キーノはそう言うと、クレマンティーヌ、クゥイア、クゥイナを床の
やがて。
姿を現したのは……一匹のゴキブリ。
「あーん?」
クレマンティーヌはわけがわからず首を傾げるが、キーノから<そっと囲め>の
対するゴキブリは夢中になって
「恐怖公の眷属の
ゴキブリに敬語で話し掛ける
「いかにも。キーノの心尽くし、ありがたく頂戴いたしました。」
言葉遣いこそ丁寧だが、キーノ、と呼び捨てることを含め、ゴキブリの物言いとは思えない。
「いつから?」
思わずクレマンティーヌが問う。
「……
ゴ……ゴキブリに名を問われるとは!
しかも、このゴキブリはキーノを名で認知しているのに、その第一の眷属の名を把握していない、というのも、クレマンティーヌとしては、それがナザリックが自身の名を記録に
そんな彼女の思いを知ってか知らずか、さらりとキーノが間に入って執り成した。
「彼女は私の眷属だ。
それはともかく、クレマンティーヌも問うたが、あなたはいつから私たちを?」
クレマンティーヌの名などにそもそも関心のないゴキブリはさらりと答える。
「無論、空中戦艦からずっと、で御座いますとも。」
なんと!
意味するところは、ナザリック地下大墳墓はかの空飛ぶ船、
しかし……。
キーノはこのゴキブリの監視者が平気であるようだが。
だとしたら……あの、どじゃーーーん!も要らなかったんじゃね?
「いや、待って待って!」
とクレマンティーヌが割って入る。
「あんた、あの雷撃を喰らって平気だったの?」
クリフを訪ねた帰路、送り狼として随伴した羽虫にキレて自らに<
だが、この問いに対するゴキブリの態度はこれまた横柄なものだ。
「疑問に思うのですが。」
何が?
「
問い糺すのは、むしろこちらで御座いますのに。」
な!
「ですが……疑問はごもっともかと存じますのでお答えしますと、前以て
あぁ!
クレマンティーヌは思う。
わかってはいたことだが、ナザリックの連中はクリフなんかよりも何枚も
こいつらに意趣返しを試みるなんて、自殺行為以外の何ものでもない……と。
だが。
続くゴキブリの発言は、クレマンティーヌが既にその自殺行為に踏み込んでしまっている、と告げていた。
「今回の
すーーーっ、と血の気が引くのをクレマンティーヌは感じる。
今更、あれは方便だった、などという言い訳は、キーノに対してはともかく、大魔王アインズ・ウール・ゴウンには通じまい。今の
「……ですが。」
とゴキブリ。
「慈悲あまねく慈愛深き至高の主は、
「「!」」
クレマンティーヌ、そしてキーノも、思わず身を乗り出した。
ゴキブリの慈悲に縋る、というのも馬鹿げた話ではあるが、今この瞬間は、疑う余地なくこのゴキブリが、かの比類なき大魔王アインズ・ウール・ゴウンの
「……仔細を、承ろう。」
キーノがゴキブリに続きを促した。
ゴキブリはすっと立ち上がり、恭しく手……脚?を折って形ばかりの礼を執って告げる。
「されば……」
ゴキブリから示された免責の条件は、これまた彼女らを困惑の底へと突き落とすものであった。
「……正直なところわけがわからないのだが。
ともかく、言われた通りにすれば今回の一件に関する私たちの行動を不問に付してくれる……ということでいいんだろうか?」
と、キーノは追認を試みるも、
「
むしろ、至高の主より
ゴキブリの返しはにべもない。
「わかった、わかった!
仰せの通りにしよう。恐怖公にはキーノ・インベルンからくれぐれも
「……」
「……まだ、何か……あるのか?」
今なお感謝の思いのある恐怖公への言伝にゴキブリが沈黙したのを受けて、キーノは恐る恐るそう尋ねる。
が、応答は拍子抜けするそれだった。
「さきほどの
「どうにもわけがわからないが、言われた通りにする他ないだろう。」
恐怖公眷属が再び供されたおやつのお裾分けに満足して姿を晦ました
「まぁ、やむを得なかった、とは言え……身から出た錆だわさ。」
クリフに話を合わせてアインズ・ウール・ゴウンへの敵意を
「<
キーノは、遥か昔の
「これがあって良かった。なかったら裕に一ヶ月はかかるからな。」
そう溜息交じりに呟くキーノは、自身が大きな見落としをしていることに気づいていない。
恐怖公眷属に出来たことが……。
クリフの羽虫に出来ない理屈はない、ということに!
キーノが
*
「皆の者、忠誠の儀を!」
「「「アインズ・ウール・ゴウン様万歳!
ナザリック地下大墳墓第十階層玉座の間。
狡知の参謀デミウルゴスから招集がかかり、主だった顔触れが
「デミウルゴス、報告を。」
守護者統括アルベドに促され、すっと跪礼から立ち上がって至高の主に一礼を捧げたデミウルゴスは、
「諸君!
空中戦艦<
「待て待て!いつの話だ?」
が、問われたデミウルゴスは涼しい様子でこう返す。
「
「父上、ご懸念には及びません!
と呆れた様子のパンドラズ・アクター。
「……はぁ?」
これまた飽きもせず、パカリ、と大きく開かれる骨の口。
「かの空中戦艦の進路は東、こちらから見て真逆で御座います。」
と補足したのはアルベド。
「ナザリック急襲の恐れもないものにアインズ様のお耳を汚すも如何なものか、と考え、
ニコリ、と笑ったアルベドにそう言われ、アインズはパンドラズ・アクターの言う
「そいつらは……」
と鮮血の戦乙女シャルティア。
「何処へいったのでありんしょう?」
「大陸
そして、更に東には広い干潟とどこまで続くやわからぬ海があるのみだ。おそらくは、どこぞの海上に着水して投錨、機関停止したものだろうね。彼らにはアレを動かし続ける余裕などないのだから。」
デミウルゴスがその問いに応える。
「それって……意味あります?」
と続いたのは当代のマーレ。
「兵法ノ理カラ言エバ。」
意外にも応じるのは、
「既ニ遠間ニアル者ガ更ニ退クハ愚カナ振舞イ。
サレド、カノ者タチニ我ラガ
「で……そ、そ、その意味って……何ですか?」
当代のアウラが
それが彼にわかっているものであれば、既に彼の口から語られていて然りである。
「コキュートスの言う通りだな。」
と割って入ったのは、他ならぬ大魔王アインズ・ウール・ゴウン、その人であった。
「連中にとって、あの空中戦艦には二つの意味合いがある。」
「第一には、連中にとっての最大の火力だ。
あの主砲は、正しく扱えばナザリックの第三乃至第四階層までは貫通する威力がある。」
おぉ!とどよめく
対してアインズは、ハハハッと笑って「そう色めき立つな」と骨の手の平を振った。
「実際にはそんなことは不可能だ。アレの航行速度は最大でも時速五十キロほどで、ニグレドが検知してからナザリックを射程に収めるまで随分な時間がある。その間に、オレ、コキュートス、セバス、おまけにシャルティアが立ちはだかれば、連中には為す
同時に狙える
「第二には、オレたちにとってナザリックがそうであるように、自分たちと命運を共にするギルド拠点だ、ということだな。だから、よほど勝利に確信があるか破れかぶれの特攻でもない限り、アレがナザリックに突進してくる、などということはあり得ない。
それがこうしてさらに距離を取り、大陸の果て、オレたち自身どうなっているか知らない海の彼方に退避した、ということは、連中はその拠点を絶対に死守する必要のある何かに着手したことを意味している。」
ここまで一息に語って、アインズの視線は最も頼りとする参謀へと向かった。
「どうだ、デミウルゴス?
オレの読みに何か過不足はあるか?」
デミウルゴスは法悦の表情で至高の主を称賛した。
「まさにアインズ様の仰せの通りかと。
うーん、そこまで大袈裟な言い方をされると返って不安になるな、とアインズは
「して、父上はそれは何だ、とお考えなのでしょうか?」
アインズは楽しそうに続ける。
「連中がギルド拠点をどうしても守らねばならない理由は、まさにそれがギルド拠点だから、と言ってしまえばそれまでだが、連中の手元にまだ辛うじて五億枚のユグドラシル金貨が残っているとして、それを投じる理由は失ったギルドの一員の復活しかないが、それをするには言うまでもなくギルド拠点が健在でなければならない。
つまり、ギルドの一員、しかもここまでプレイヤーすら捨て駒にしてきた連中が、失うわけにはいかないそれが死を賭した戦いに挑むからこそ万が一にもギルド拠点は失えない……とまぁ、そんなところだろう。
どうかな、アルベド?」
「まさに仰せの通りでよろしゅう御座いましょう、よろしいのではないでしょうか!」
アルベドもまた、歓喜の声でそう応じる。
「要するに、だ。」
これまた飽きもせず、大魔王アインズ・ウール・ゴウンは、言葉を一旦切って溜めを設けた。
そして言う。
「いよいよ……ルーシェン、とやらが出て来るんだろうよ。」
アインズの眼窩がギラリ、と赤く輝き、口許が不敵に歪んだ。
「アウラ、マーレ!」
アインズが玉座の間に
「「「ははっ!」」」
と呼応する。
「連中がオレたちとトブの森の関係に気づいている、とは俄には思えんが、トブの森はオレたちの拠って立つ最重要防衛線だ。常に鉄壁の態勢を採ってくれているとは承知しているが、なお増して心掛けよ。」
「「「承知しました、アインズ様ァ!」」」
八人の明るい復唱が玉座の間に響き渡る。
「コキュートスはシニョーラ・フィオーラ、シニョーレ・フィオーレについて遊撃に備えよ。」
「ハハッ、仰セノママニ。」
「セバス、エイヴァーシャーの森に赴きコニーを警護せよ。よもやあいつが狙われることはないだろうし一人でも大丈夫かとは思うが念のためだ。」
「ははっ、承知いたしました。」
「シャルティア、しばしナザリック地上部を常時哨戒し、怪しい者は問答無用に叩き潰せ。難敵と見た場合は、第一手で自らセバスを呼び戻し共闘せよ。」
「承知いたしましたのでありんす!」
「パンドラズ・アクター、ルベドを最強形態で起動し待機だ。よもや出すこともあるまい、とは思うが、ナザリック近傍で使う分には遠慮も必要あるまい。」
「承知……致しましたぁーーーんーーーアインズ様ぁ!」
……そのくるりんぱ敬礼、は要らん!
「アルベドは玉座の間で全体を統括せよ。
恐怖公に全域の
「御下命とあらば、追っての出血大
おまえ、我が愛妃ながら……抜け目ないなぁ。
いや、オレの愛妃だからこそそうなのか?
「そしてデミウルゴス!」
最後にアインズは、最も頼りにする……できればそうしたくないがそうせざるを得ない狡知の参謀を指差してこう言った。
「頼むから……余計なことはしてくれるな!」
これに対し、やはりデミウルゴスは飽きもせず歓喜の声でこう叫ぶ。
「そういうことで御座いますね!流石はアインズ様で御座います!」
……あー、駄目だ。早速嫌な予感がしてきた。
*
「わらしがエンリネじゃがね。」
歯のない老婆にそう応じられて、キーノは深い溜息をついた。
いったいこれで何人目だ?
「いや、私が探しているのは冒険者のエンリネで……」
「失敬なことを言うもんじゃないよ、お嬢さん。
こう見えても若い頃は
どーれ、<
すっ飛んでいく
トブの大森林南端、かつてカルネ村、あるいはド・クロサマー王国、と呼ばれた、今はただ、村、と呼ばれる人口三千人ほどの、人間、
キーノたち<黒の百合>はエンリネを探して村の中を歩き回っているが、一向に目当てのエンリネに行き着くことはない。
何人目かのエンリネに、
「エンリネ、という名は大昔の森の英雄に由来するもので、同名の者が
と聞かされて頭を抱えている。
クレマンティーヌは
無理もない。
キーノはともかく、これをやり遂げないと、数千年ぶり七度目の鯖折りが待っている、とクレマンティーヌは本気で思い込んでいるのだから。
「至高の主は、
に続いて、馬々鹿々しくも
「トブの森に、エンリネ、という冒険者の少女がおります。これは至高の御方のお気に入りで、
「「……はぁ?」」
わけがわからずに、キーノ、クレマンティーヌは並んで口を、ぽかん、と
「おわかりになりませんかな?
烏滸がましくも我らが至高の主との対決を望む
んなわけあるかい!と突っ込みたいのは山々だが、これを言っているゴキブリは確信をもって語っている様子なのでそれも憚られ、二人はただただ了解を示すしかなかった。
が、よくよく考えてみれば心当たりがないでもない。
旧バハルス帝国南東端、城塞都市カイゼルシュタットの遺構で偶然出会った、
そして。
その時点では、キーノ、クレマンティーヌともに、彼女が「先生」と呼んだ帰還事業を裏で糸引く人物を、かつてド・クロサマー王国で教師をやっていた
思えば、デイバーノックがあの村に住み着くことになったのは、彼が村の住人から
しかし。
仮にそうだとすると、更に深まる謎がある。
彼女の言うアインズ・ウール・ゴウンのモモンガと、キーノたちの知るナザリックのアインズ・ウール・ゴウンは本当に同一人物なのか、という疑問を棚上げしたとしても、少なくともクリフは本気で<
これを信じるとすると、アインズ・ウール・ゴウンは、自分で世界を滅茶苦茶に壊しておいて、それで生じた難民の帰還事業に、トブの森の住民と協力して当たっていたことになる。
そんな馬鹿な話……あるかぁ?
まぁ、キーノがどう思おうと実際そういう馬鹿な話なのだからそこはどうしようもないのではあるが、そんなことは彼女には知る由もない。クレマンティーヌはともかく、キーノは秘中の秘、アインズの記憶が極短期間しか維持できず、次から次へとあらゆることを忘れ去ってしまうことを承知している。
何かの拍子に世界を滅ぼし、それをすっかり忘れ、何かの拍子で自分が滅ぼした世界の民を憐れんで救いの手を差し伸べる……と想像するに馬々鹿々しい真似を、アレは実際にやりかねない存在なのだ。
そう、それが真相だ、キーノ!
いや実際のアインズは、自分が世界を滅ぼしたことを百も承知の上で、それでもエンリネたちとの帰還事業を存外楽しんだのであるから、キーノ目線からすればより一層
「お
十代末の女の子が駆け寄って来て、さきほど自身も冒険者であったことを証明すべく魔法を放った老婆を窘めた。発言からすれば孫なのだろう。この村の
「何を言うか!この人たちがわらしの魔法を見たいと言ったからでボケてなんぞおらんわ!
あ!孫のエンリネですじゃ、可愛いですじゃろー?」
こいつもエンリネかよ!
だが、そのエンリネが、キーノたちにとってはまさかの救世主であった。
「みなさんは
孫エンリネが問う。
「そうだな。何処から来た、と問われると答えに窮するんだが。」
うんざり気分でキーノはそう応じたが、孫エンリネの関心はそこではない様子。
「お
「……おぉ、そうじゃの!
流石はわらしの孫じゃ、いい子じゃのう!」
老婆は上機嫌で孫の頭を撫でる。
「いやいや待ってくれ、話の理路が見えないんだが!」
慌てて食い下がると、孫エンリネが「何を言ってるんだ」と言いたげな呆れた表情を浮かべてこういった。
「おばさんたちが探してるエンリネは、血塗れ将軍閣下以外ありえないじゃない!」
……はぁ?
お……お、
クゥイアがそう煽ったでもなくさらりとそう呼ぶ孫エンリネの言葉にキーノはがくりと膝をつき、そのまま茫然自失となって動かなくなった。
もちろん、孫エンリネがおばさん、と呼んだのは、頭ひとつ抜きんでて目立っていたクレマンティーヌであって、
とまれ。
こうしたいきさつを経て、漸く<黒の百合>は目当てのエンリネへと繋がる手掛かりを得たのであるが、これを双子忍者の索敵範囲外からじっと見つめる羽蟻の存在にもまた、