クソ雑魚サイヤ人は原作通りに進めたい 作:DB原作無印勢
<孫悟空>
オラの名前は孫悟空だ。
赤ん坊の頃にじっちゃんに拾われて、山奥で二人で暮らしてたんだけど、育ての親である爺ちゃんは満月の夜に大猿に殺されてしまう。
その時は、とても悲しくて大泣きした。
けれど、代わりにオラに新しい家族ができた。
ミズナの姉ちゃんと、ブロリーの兄ちゃんだ。
通りがかったのは偶然らしいが、自分と同じ尻尾を生やしていて、一緒に爺ちゃんの墓を作ってくれた。
その後、姉ちゃんは積極的にオラの世話を焼いたり、生活の面倒を見てくれる。
さらには様々な知識や技術を、丁寧に教えてくれた。
そして兄ちゃんは、強くなるための修行をつけてくれてる。
何かと頼りになって、凄く尊敬している二人だ。
そして今日も朝の畑仕事を終えて、修行場として使っている広場で兄ちゃんと模擬戦を行う。
正面から突進したオラは、肉薄して怒涛のラッシュを叩き込む。
「だだだだだっ!!!」
「……甘いっ!」
しかし兄ちゃんは落ち着いており、最低限の動作で受け流していく。
(流石は兄ちゃんだ! とんでもなく強えや!)
姉ちゃんに重い服を作成してもらい、自分と同程度に抑えているが、それでも兄ちゃんの余裕の態度は崩せそうにない。
パワーやスピードが大きく低下しても動き自体は見えているので、オラの攻撃は兄ちゃんにはスローに映るのだろう。
結果、余裕の態度で全てのラッシュを捌ききられてしまった。
「今度は俺の番だ! 悟空! 防いでみろ!」
しかもこちらの攻撃が、ほんの一瞬途切れたのを見逃さない。
今度は兄ちゃんから、重くて速い一撃を打ち込んでくる。
パワーもスピードも落ちているはずなのに、防御に切り替えるのが間に合わない。
「……がっ! いってえええっ!」
腹に重い一撃をもらってしまった。
咄嗟のことで踏ん張りが効かずに、成す術なく吹き飛ばされる。
だがオラもやられっぱなしではなく、大岩にぶつかる前に地面に手をついて、体勢を立て直そうとした。
しかし、その前に兄ちゃんが素早く追撃し、後ろに回り込まれた挙げ句に今度は背中から蹴りを入れられてしまう。
「がはっ!?」
何とか動き自体は見えていたので体に力を入れて耐えるが、今度は前方に吹き飛んで地面をゴロゴロと転がる。
それでも諦めないオラは、飛ばされた勢いを逆に利用して、前転宙返りして起き上がって構える。
何とか兄ちゃんと向かい合えたが、全身が滅茶苦茶痛い。
しかしまだ勝負はついていないし、強い相手と戦うほどワクワクしてくる。
「今の起き上がりはなかなかだ」
「へへっ! サンキュー!」
殴られたり蹴られたりした部位がズキズキする。
それでも兄ちゃんに褒められるのは嬉しい。
しかし何年も修行をしているのに、未だに一度も勝てないのは悔しかった。
昔と比べて強くなってはいるが、まだまだ追いつけそうにない。
(でもやっぱり強え奴と戦うと! オラ、ワクワクすっぞ!)
そして勝負がついたわけではなく、仕切り直してもう一度だ。
呼吸を整えて、互いに一歩踏み込む。
だがそこで、頭の中に聞き覚えのある声が響いた。
『二人共、お昼ですよ。
一旦休憩して、食事にしましょう』
そう言えば、修行に夢中になって気づかなかった。
いつの間にか太陽が真上に登っている。
そして昼飯の時間だと気づいたからか、兄ちゃんとオラの腹から同時に音が出た。
自然に双方が構えを解き、頭の中に再び彼女の声が響く。
『では私は、食事の準備をして待ってますので』
その言葉を最後に、姉ちゃんの念話が聞こえなくなった。
ドラゴンボールの願いで髪を水色に染めても、のんびりマイペースな性格は変わっていない。
「姉ちゃんは相変わらずだなー」
「……ミズナ姉だからな」
兄ちゃんの強さもとんでもないが、姉ちゃんも別の意味で色々おかしい。
多種多様な技だけでなく、知識量もかなりのものだ。
肉体的には弱いので、たまにオラと組み手をすると、自分が勝つことが多い。
しかし姉が一度手段を選ばずに本気を出せば、こっちが手も足も出ずに完封負けするのだ。
「姉ちゃんは強えんだし、一緒に修行すればいいのになー」
「ミズナ姉は、戦いは好きではないからな」
確かにオラと兄ちゃんは修行や戦闘は好きだが、姉ちゃんは強い奴を見ても戦ってもワクワクしないらしい。
性格的な問題なのだろうけど、事務や家事をしているほうが良いとのことだ。
「でも、兄ちゃんは違うよな?」
「俺は悟空と同じで、体を動かすのが好きだからな」
外の世界を旅したときにも戦いを好む奴は多かったが、姉ちゃんのようにそういうのが苦手な人間もいた。
なので、別におかしなことではないと知れたのは、ドラゴンボール探しの旅に出て良かったことだろう。
「だがミズナ姉は、体のほうは鍛えてもあまり成長しない。
あれでも昔は、色々と無茶な修行をしていたんだ」
「へえー、姉ちゃんがなー」
今の姉ちゃんを見る限り、とても信じられない。
だが付き合いが長い兄ちゃんが言うなら、きっとそうなのだろう。
「それよりも、今は飯だ」
「そうだった! オラ、腹減っちまったよ!」
自分たちが、とても空腹だったことを思い出す。
すぐに家まで駆け足で向かい始めると、口数の少ない兄ちゃんから珍しく話しかけてきた。
「悟空は、亀仙人に弟子入りするのか?」
それに関して、オラはどうしたものかと迷った。
ぶっちゃけて言えば亀仙人のじっちゃんに教わるよりも、姉ちゃんや兄ちゃんに指導してもらったほうが、強くなれると思ったのだ。
なのでこういうことに詳しそうな専門家に相談したのだけど、意外な答えが返ってきた。
「亀仙人のじっちゃんに弟子入りしたほうが、悟空は強くなれるって姉ちゃんが言ってさー」
「そうか」
兄ちゃんは走りながら静かに頷いた。
表情には出ないので何を考えているかはわからないが、いつものことなので気にしない。
「それと兄ちゃんや姉ちゃんとの修行ばかりだと、強くなった成長を実感しにくいってさ」
「そっ、そうか」
この発言を聞いた兄ちゃんは、明らかに動揺していた。心当たりがあるのだろう。
確かにオラと兄ちゃんは、一緒に修行をすることがとても多い。
お互いに成長するし、一向に縮まらない差で強さを実感することは少なかった。
まあオラは強者との戦いが好きで、ワクワクするので別に良い。
けど修業を続けても、あまり強くなっている気がしないのも事実だ。
きっと姉ちゃんは、そのことを言っているのだろう。
そして亀仙人の弟子になれば、必然的に外の世界の強者と戦う機会が増えて、オラがどれだけ強いのかが良くわかると言っていた。
姉の言葉の全てを、理解できたわけではない。
しかしやっぱり姉ちゃんはオラや兄ちゃん以上に賢くて、色々考えてくれていることはわかる。
「だから今日は、家に荷物を取りに来たんだ。
久しぶりに兄ちゃんと修行もしたかったし、亀仙人のじっちゃんに弟子入りすると、しばらく会えねえだろうしさ」
筋斗雲でいつでも帰れるが、姉が言うには本格的な修行は住み込みでやるものらしい。
「別にいつでも会えるだろう?」
姉ちゃんは瞬間移動できるし、兄ちゃんなら地球を一周するぐらい容易いだろう。
しかし、オラでは少し時間がかかるのだ。
「兄ちゃんたちなら、そりゃそうだけどさ」
例外である二人と比べてはいけないが、オラは苦笑しながら続きを話す。
「そういうわけで、しばらく帰れねえんだ」
「ああ、わかった。気をつけてな」
兄ちゃんは納得したように頷き、そこで会話が終わる。
すると、ちょうど家に到着した。
食事の準備を終えた姉ちゃんが玄関に出てきて、オラたちを出迎えてくれる。
この和やかで優しい雰囲気は大好きで、しばらく帰れないと思うと、少し寂しくなる。
しかし、これも修行だ。
強え奴と戦うのはワクワクするし、オラは今よりもっともっと強くなりたかった。
姉ちゃんと兄ちゃんも、各々で修行して日々成長しているのだ。
だったらオラも負けてられねえと、今から気合を入れるのだった。