クソ雑魚サイヤ人は原作通りに進めたい   作:DB原作無印勢

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第二十一回天下一武道会(1)

 私はドラゴンボール探しの旅から帰ってきた悟空から、相談を持ちかけられた。

 

 弟は亀仙人から、弟子にならないかと誘われたようだ。

 自分としては、原作通りの流れなので当然賛成である。

 

 しかし武天老師はブロリーよりも弱く、技の数は姉のほうが多い。

 

 なので悟空は実家で修行したほうが強くなれるのではと考え、弟子入りを断ろうと思っているようだ。

 

 確かにその通りだが、このままでは本来の流れからズレてしまう。

 私は弟を必死に説得し、おかげで何とか軌道修正できて、無事に亀仙人の弟子になる決意を固めたので一安心なのだった。

 

 

 

 そして出発する少し前、家族三人で集まる。

 しばらく会えなくなるので一緒に昼食を食べようと誘い、そこでドラゴンボール探しの旅の話を聞かせてもらう。

 

 なお悟空は基本的に重い服を脱がず、大体原作通りに進んでいることがわかる。

 未来が変わり、前世の知識が役に立たなくならなくて何よりだ。

 やはり大雑把でも先の展開がわかっている方が、色々と対処しやすい。

 

 それに今のところは、無抵抗な一般人が殺される展開は殆どない。

 被害を抑えるために駆け回らなくていいので、気楽なものである。

 

 

 

 やがて話も一区切りつき、三人は食事を終える。

 なので私はあらかじめまとめておいた荷物を、大きなカバンに入れて悟空に渡した。

 

「必要な物は一通り入ってると思いますが、念のために確認をお願いします」

「サンキュー! 姉ちゃん!」

 

 ドラゴンボール探しの旅のときにも、私が同じように悟空に荷物を持たせたのだ。

 本当は自分でやらせたほうが良いのだろうが、弟は天然なのかうっかりミスすることがある。

 姉である私が用意したほうが確実だし、別に世話を焼きたいわけではない。

 ただ、放っておけないだけなのだった。

 

 

 

 

 

 

 荷物に問題はないとわかって準備が整ったので、瞬間移動を使ってカメハウスに飛んだ。

 地球上で強者の気は限られているし、武天老師は千里眼で覗いて知っている。

 

 なので位置を微調整し、砂浜に転移した。

 確認のために辺りを見回すと、周囲は大海原で目の前に赤い屋根の家がある。

 ここがカメハウスで間違いなさそうだ。

 

 相変わらず満潮や津波が来たら海に沈みそうな家だと思いつつ、弟二人に声をかける。

 

「悟空とブロリーは、少し待ってください。

 まずは私が挨拶します」

 

 私は年長者で、二人の保護者だ。

 なので先に挨拶をするのが礼儀だと思い、ブロリーと悟空を待たせて玄関に移動する。

 二人は問題ないようで頷き、しばらく待機してもらう。

 

 取りあえず扉の前に立って、すみませんと大きな声で呼びかけた。

 だが反応はなく、家の中からテレビの音が聞こえてくる。

 

 はてと首を傾げて、千里眼で内部の様子を伺う。

 

 すると亀仙人は、レオタード姿の女性が体操をしている番組を、鼻の下を伸ばしながら視聴していた。

 

(そう言えばこの人、スケベだったわ)

 

 ほんの一瞬だが、大切な弟をこんな人に任せて大丈夫かしらと不安になる。

 だが人生経験は豊富で教え慣れてそうだし、私とブロリーが稽古をつけて天下一武道会に出場させるより、原作が崩壊する割合は少なくなる。

 

 ならばやはりこのルート以外あり得ないと考えて、コホンと咳払いをして大きな声を出す。

 

「悟空の姉ですが! 亀仙人さんはご在宅でしょうか!

 弟を連れて、ご挨拶に来たのですが!」

 

 私がかなり大きな声を出して、ようやく気づいたようだ。

 慌てた様子でテレビを消して、身だしなみを整えだした。

 

 これが悟空だったら、雑に対応するだろう。

 

 しかし相手は見た目は幼女だが、一応は女性である。

 そういう者には有名な武道家らしく、割りと真面目に接してくれるのだろう。

 

「はいはい、どちらさんかのう」

 

 簡単に身だしなみを整えて玄関にやって来た彼は、家の中から扉を開ける。

 そして対面したので、私はにっこりと微笑みながら亀仙人に頭を下げた。

 

「こんにちは。亀仙人さん。

 私は悟空の姉で、ミズナと申します」

 

 彼は少し驚いた顔をして、こっちの体を上から下までを熱心に観察している。

 しかし私は気づかないフリをして、弟たちを紹介していく。

 

「こちらがブロリーです。ええと、悟空のことは知っていますよね?」

「おお、知っておるぞ」

 

 そしてもう一度、私の顔をマジマジと見つめる。

 続いてサングラスのズレを直しつつ、真面目な表情で口を開く。

 

「話には聞いておったが。

 悟空にまさか、こんなめんこい姉さんがおったとはのう。

 ちと若すぎるが幼くても聡明で気遣いもでき、将来はボン・キュッ・ボンの美人さんは確実じゃな」

 

 小声でブツブツ呟いているが、全部聞こえている。

 この人がこういう人なのは原作で良く知っているし、気にしないことにして話を先に進める。

 

「これ、お近づきの印です」

 

 まずは最近購入したお菓子を詰めた、紙袋を渡す。

 

「それと悟空はたくさん食べるので、ホイポイカプセルに食材を入れてきました」

 

 さらにホイポイカプセルの入ったケースを、そっと渡しておく。

 すると亀仙人は特に問題なく受け取ってくれて、ほっほっほっと笑いながら返事をする。

 

「おお、それはご丁寧にすまんのう。

 しかし、悟空はそんなに食べるのか?」

 

 私は何も答えずに、無言でにっこりと笑った。

 その嘘偽りのない笑顔を見て、亀仙人は察してくれたようだ。

 冷や汗をかきながら、信じられないという顔で悟空のほうをチラ見する。

 

 とにかく当たり障りのない挨拶が終わったので、次はブロリーに顔を向けた。

 

「ブロリーは何か伝えておくことはありますか?」

 

 しばらく会えなくなるのだから、何か言うことがあるかも知れない。

 そう思ったら、ブロリーは亀仙人をじっと見つめてポツリと呟く。

 

「……悟空を、よろしく頼む」

「うむ、任せておくと良い」

 

 地球人を刺激しないように気を抑えているが、亀仙人は武術の神様と呼ばれている男だ。

 何かを感じ取ったらしく、真面目な顔で返事をした。

 

 とにかく挨拶は終わったので、悟空とはここでお別れだ。

 

「それじゃ、悟空。私たちは行くけど、亀仙人さんに迷惑をかけないようにね」

「おう、オラ、迷惑かけないぞ!」

「それならいいのです」

 

 世間知らずで純粋なので、十中八九で迷惑をかけるだろう。

 だが相変わらず、返事だけは元気いっぱいだ。

 

 それでも顔見せは済んだし、最後にもう一度だけ亀仙人に顔を向ける。

 

「では、亀仙人さん。私たちは、これで失礼します」

 

 ペコリと軽く頭を下げて、瞬間移動を使ってその場から消える。

 直前に海の向こうからクリリンが小舟を漕いでいるのが見えて、そっちの原作キャラにも挨拶しておきたい欲が出たが、カメハウスに来るまで待つのも不自然だ。

 

 なので今回は諦めて、次の天下一武道会を見物に行くまで待つことに決めた。

 私とブロリーは、大人しく家に帰ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 悟空を亀仙人に預けてからは、特に事件が起きることもなく平和な日々が続く。

 

 私は家事や仕事をしながら自主トレを行いつつ、ブロリーは朝の農作業や修行を真面目に頑張っている。

 

 そんな平和な日常を過ごすていると、あっという間に八ヶ月が過ぎた。

 いよいよ原作の重要イベントである天下一武道会が開かれることになったのだ。

 

 

 

 朝食を終えてのんびり一服しつつ、私はブロリーに一緒に見物に行こうと誘う。

 すると彼は何を思ったのか、自分も出場したいと言い出した。

 

「悟空が出場するんだ。兄の俺も」

「確かに一理ありますけど。……う~ん」

 

 ブロリーは悟空以上の実力がある武道家だし、天下一武道会に参加しても不自然ではない。

 しかし弟と地球人には、圧倒的な差があるのだ。

 

 

 

 今の悟空も原作よりもパワーアップしているので、服を脱げば全ての選手を苦もなく倒せてしまうだろう。

 当然ブロリーも同じくだが、彼はさらに気を抑えた状態でも滅茶苦茶強い。

 

 私はそのことを、お茶をちびちび飲みながら彼に伝えていく。

 

「悟空は重い道着を着用すれば、地球人と良い勝負ができます。

 しかしブロリー、貴方はさらに気を抑制してもあまりにも強すぎます」

 

 ブロリーを倒せる選手が現れるとは思えず、彼の優勝はほぼ確実だろう。

 

「ブロリーは悟空と修行をして、何回ぐらい負けましたか?」

「一度も負けてない」

 

 私も二人の修行を見学したが、悟空はブロリーに一度も勝てていない。

 つまり天下一武道会もストレート勝ちしてしまう可能性が高く、確実に原作が崩壊するのだ。

 

(ブロリーの好きにやらせてあげたい気持ちもあるけど、ちょっとなぁ)

 

 弟がせっかく、外の世界に興味を持ってくれたのだ。

 姉としては応援してあげたい気持ちもあるが、それでは原作が崩壊してしまう。

 なので今回は心を鬼にして、はっきりと告げる。

 

「ブロリーと悟空の戦歴は、地球人との戦力差でもあります。

 現時点で貴方と良い勝負ができる者は、天下一武道会には現れないでしょう」

「……そうか」

 

 彼は残念そうに肩を落として、心底ガッカリとして溜息を吐く。

 だが私は別に、ブロリーを苛めたいわけではない。

 

 少しだけ微笑みながら、慰めるように続けて声をかける。

 

「ですが、それは今の話です。

 悟空もいずれは、ブロリーと良い勝負ができるようになるでしょう。

 地球人も成長はするでしょうし、希望はありますよ」

 

 するとブロリーも嬉しそうな表情に変わり、励まされて少しは元気になったようだ。

 

 原作では、地球がヤバい事態がこれから何度も起きる。

 天下一武道会に参加しなくても、強者との戦いには不自由しないはずだ。

 

 ただしブロリーは、色んな意味でぶっ飛んだ強さである。

 今の悟空の気を物差しにして考えると、彼と手加減ありでも互角に戦える者が現れるのは、当分先になりそうだった。

 

「とにかく、今回は天下一武道会は見物だけにしましょう。

 地球人の武道家が戦う様子も見られますし、選手として参加しなくても楽しめると思いますよ」

 

 今回の天下一武道会は、ギャグと真面目な戦いが半々ぐらいだ。

 ブロリーが楽しめるかどうかはわからないが、完全に無駄足にはならないだろう。

 

「それにブロリーも、久しぶりに弟の顔を見たいでしょう?」

「ああ、悟空がどのぐらい強くなったのか。気になる」

 

 悟空とは、もう八ヶ月も会っていない。

 私も久しぶりに顔を合わせて話をしたいし、ブロリーも同じだろう。

 彼は弟の成長も気になっているようで、やっぱりサイヤ人だなと思った。

 

(取りあえず天下一武道会を、この目で見るチャンスだね)

 

 千里眼で覗き見るのも良いが、やっぱりこういうお祭りイベントは現地に行ってこそだ。

 テレビ中継でも盛り上がるけど、会場での一体感はそこにいなければわからない。

 

 原作は無印の漫画しか読んでいないとはいえ、世界観は自分が巻き込まれない限りは好きだし、名シーンの数々に立ち会えるのだ。

 

 前世に引っ張られてサイヤ人らしくないワクワク感ではあるが、今からとても楽しみなのだった。

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