クソ雑魚サイヤ人は原作通りに進めたい   作:DB原作無印勢

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第二十一回天下一武道会(3)

 天下一武道会の代表選手八人が出揃い、私とブロリーは悟空の仲間たちと一緒に見物させてもらう。

 

 プロの格闘家がジュニア部門を見て楽しんだり感動するように、戦闘力の低い地球人の試合も同じようなもので、普通に見られる。

 

 それにブロリーは、彼らの努力や研鑽を決して笑ったり見下したりはしない。

 悟空と同じで、心優しいサイヤ人なのだ。

 

 ちなみに亀仙人は、いつの間にか観客席から離れてジャッキー・チュンに変装していた。

 途中でブロリーが気を感知して、何か言いたそうにしている。

 彼には考えあってのことなので、黙っておくようにと耳打ちしておく。

 

 

 

 そんなこんなで、第一試合が始まった。

 対戦するのは、クリリンとバクテリアンだ。

 

 悪臭が酷いので、私は観客席に水色の薄いバリアを張る。

 ここまで女神として広く知られているなら、もういちいち気を抑えて正体を隠すのも馬鹿らしくなったのだ。

 それでも非常時以外は使うつもりはないが、これぐらいなら良いだろう。

 

 そしてこの試合の勝利者が変わらなければ、原作に大きな影響はでないと、楽観的に考えている。

 

 すると控室の壁によじ登って親友の応援をしている悟空が、鼻を押さえながら大声で呼びかけてきた。

 

「姉ちゃーん! こっちにも張ってくれよー!」

「試合に出ていないとはいえ、貴方は選手です。

 私が手を貸すと、あとで反則負けになるかも知れませんよ」

「ちぇーっ! じゃあ、我慢すっか!」

 

 私だって悪臭から悟空を守ってやりたい。

 だが彼は選手なので、あとになって問題になりそうな行為は止めておいたほうが無難だ。

 

 ちなみにバリアはかなり薄く、悪臭をフローラルな香りに変換する以外の効果はない。

 その気になれば簡単に破壊できるが、今の状況でこんなモノをわざわざ壊そうという人はいないだろう。

 

(しかし、毎度演出だけは派手だね)

 

 気を放出すると、水色で半透明な輪っかと翼が出る。

 確かに一見すると神様っぽくはあるが、幼女体格でこれでは威厳もへったくれもなく、ただ可愛いだけであった。

 

(自分で願ったにせよ、威厳溢れる神っぽい想像図とかなり違うなぁ)

 

 私が少々重い溜息を吐いている間にも試合は進み、悟空の応援を受けたクリリンが起き上がった。

 

 どうやら鼻がないことに気づいたようで、バクテリアンをやっつけて勝利に終わるのだった。

 

 

 

 

 

 

 次の第二試合は、ヤムチャとジャッキー・チュンだ。

 先程と違ってブロリーの目は真剣で、心なしかワクワクしている。

 試合はすぐに終わったけれど、正々堂々の格闘戦だった。

 なのできっと、サイヤ人の血が騒ぐのだろう。

 

 勝ったのはジャッキー・チュンで、原作通りであった。

 

 

 

 第三試合はナムとランファンだが、これに関しては特に言うことはない。

 女の色香は侮れないけど、それを破ったナムは純情だけど凄いということぐらいだ。

 

 

 

 第四試合は、いよいよ悟空の出番だ。

 相手は人間ではなく、怪獣のギランが相手である。

 

 彼は投げ飛ばされて場外負けになりそうなところを、翼で飛んで戻ってきた。

 

 それだけではなく、さらにはグルグルガムを吐き出して悟空を拘束する。

 今度は逆に、遠くに投げ飛ばしたのだ。

 

 その時は筋斗雲を使って何とか武舞台に戻ってこれた。

 しかし、次に使うと反則負けだと言い渡されてしまう。

 

「悟空は、気のコントロールが下手ですからね」

「ミズナ姉が、気の制御を教えないからじゃないか?」

「うぐっ! そっ……それはですね!」

 

 原作の流れを変えたくないのもあるが、悟空が気のコントロールが下手なのは本当だ。

 ブロリーは感覚派で天才なので、気づいたら修得していた。

 そして物を教えるには、あまり向いていない。

 

 なので私が教師役を務めるのだが、悟空には基礎訓練や基礎学力以外は特に教えていない。

 気に関しては焦らなくてもいつか自然に身につくからと、わざわざ自分が指導する必要はないと言っておいた。

 

(原作の流れが変わるのは不味いし、親はなくとも子は育つはず)

 

 実際に悟空は、この八ヶ月で大きく成長したのだ。

 

「最近はかめはめ波も覚えましたし、確実に成長しています!

 なので、悟空はこのままで良いのです!」

 

 ブロリーのような天才ではないが、悟空の努力は確実に実を結んでいる。

 一歩ずつ着実に前進しているので、いつかは空を飛べるようになるだろう。

 

「修行方法も成長速度も、個人差があるのです!」

「ミズナ姉がそう言うなら」

 

 兄弟でそんな呑気な会話をしていると、悟空に尻尾が生えてグルグルガムを引きちぎった。

 そして驚いたギランは、白旗をあげて降参するのだった。

 

 

 

 

 

 

 ギランとの試合の後、悟空とクリリンがインタビューを受けることになる。

 そこで弟の年齢が十二歳だと告げられて、次の質問に移った。

 

「ところで孫くん、その尻尾のことだけど、本物の尻尾なのですか?」

 

 これに関して、隣の親友は心当たりがあるようだ。

 私たちに視線を向けて、首を傾げながら口を開く。

 

「そうだよな。急に生えて来たなんて、おかしいもんな。

 ボクもこの目で見るまでは疑ってましたけど、悟空の尻尾は本物ですよ」

 

 すると審判や話を聞いていた人たちは、私とブロリーのことに気づいたようだ。

 自然と視線や注目が集まるので、取りあえず曖昧に微笑んでおく。

 

「孫くん、あの人たちは?」

「オラの姉ちゃんと兄ちゃんだ!」

 

 周りで話を聞いている人たちが、私たちのことを知りたがっている。

 一応軽く頭を下げて、自己紹介をしておく。

 

「姉のミズナと申します。

 そしてこちらが、弟のブロリーです」

 

 そのあとは根掘り葉掘り聞かれることもなく、話が進む。

 亀仙人の別名である武天老師の修業を受けたことに告白して、大いに驚かれたりと色々あった。

 

 私はサイヤ人について誤魔化したり説明しないで済んで、ホッと安堵の息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 

 それはともかく、第五試合が始まった。

 戦うのは。クリリンとジャッキー・チュンだ。

 

 今回もブロリーは真面目に観戦している。

 攻守が入れ替わるたびに一喜一憂したりと、天下一武道会を純粋に楽しんでいた。

 

 途中でクリリンが投げたギャルのパンティに釣られて、亀仙人が場外負けしそうになったときは、何とも言えない顔になる。

 

 だがまあ、最後は実力でジャッキー・チュンが勝利した。

 なので、終わり良ければ全て良しだ。

 

 

 

 第六試合は悟空とナムだが、両選手ともなかなかやる。

 天空×字拳が決まった時は一瞬もう駄目かと思ったけれど、良く考えたら彼は常日頃からブロリーと修行をしているのだ。

 サイヤ人特有の肉体の頑丈さもあるだろうが、とにかくタフで打たれ強い。

 

 結果、ナムは超天空×字拳の隙を突かれて、先に地上に降りた悟空に、場外に蹴り飛ばされたのだった。

 

 

 

 

 

 

 そして、いよいよ決勝戦が始まった。

 私もブロリーも固唾を呑んで見守る中、悟空とジャッキー・チュンが激突する。

 

 かめはめ波の撃ち合いや二重残像拳、さらには酔拳や萬國驚天掌(ばんこくびっくりしょう)など、多彩な技が繰り出されて手に汗握る展開の連続だ。

 

 しかしいよいよ決着かと思われたその時、拘束されていた悟空が満月を見てしまう。

 原作漫画でもあった展開だが、大猿化はかなり不味い。

 

(ピラフ一味のときと違って、周りには大勢の人が居る。

 それに道着も引きちぎられたし、被害規模は想像がつかないなぁ)

 

 前回も千里眼で様子を伺い、危うくなったら助けに入るつもりだった。

 何事もなかったので良しとしたが、悟空にとっての拘束具が外れた状態での大猿化は、かなりヤバい状態だ。

 

 私はブロリーに月を見ないようにと声をかけて、突然の大猿化で混乱が広がる観客席を離れて、空高く飛びあがる。

 

「天下一武道会が台無しになりますが、やむを得ませんね」

 

 私も満月に気をつけつつ、天に向かって両手を大きく掲げた。

 舞空術のときから輪っかと翼が現れていてとても目立つが、気にせずに叫ぶ。

 

「大地よ! 海よ! 空よ! そしてこの世に生きている全ての皆!

 私にほんの少しずつだけ、元気を分けてください!」

 

 自分が扱える技の中で、現時点でもっとも威力があるのが元気玉だ。

 戦闘力はクソ雑魚な私ではあるが、皆から気をもらえばその限りではない。

 

 ただし、集中力が切れると霧散してしまう。

 おまけに肉体が貧弱なので、受け止める器が保たずに自らの力には変えられない。

 それでも、強力なことには違いなかった。

 

「ブロリーは技が完成するまでの間、悟空を押さえておいてください!

 ただし、くれぐれもやり過ぎないように!」

「……わかった!」

 

 善の心を持つ者にしか使えずに、しかも気の制御が困難な大技だ。

 自分は取りあえず悪人ではないし、転生チートのおかげで気のコントロールは天才的である。

 

 おかげで原作の悟空よりも遥かに早く、元気玉は完成した。

 

「さて、……次は」

 

 私が次の段階に移行しようとしていると、重い服を脱ぎ捨てたブロリーが少しだけ気を解放した。

 そして大猿に目にも留まらぬ速さで突進し、腹に重い一撃を撃ち込んで吹き飛ばす。

 

 ちょうど選手控室の真上に落ちて、巻き添えで潰れてしまう。

 人は誰もいないのが幸いで、悟空はかなりの大ダメージを受けたようだ。

 

 苦しそうに呻いて、起き上がれない。

 ブロリーはさらに接近し、大きな尻尾を両腕で軽く握る。

 

「……やはり尻尾は鍛えてないか」

「尻尾は私も鍛えてませんけど?」

「ミズナ姉は、戦わないから問題ない」

 

 ブロリーはそう言って悟空の尻尾をさらに握り、大猿を完全に無力化する。

 

「だが、悟空は必須だ」

「まあ、その辺は追々ですね」

 

 原作でも尻尾を鍛えていたが、やがて引っこ抜いて生えないようにしていた。

 

 そしてブロリーも私も、満月のたびに地面を見ながら歩くのは不便極まりない。

 

 だからと言って、尻尾を切断するのも痛いし嫌だ。

 なので良い機会だと判断し、別の手段を実行に移すことにした。

 

「いきます!」

 

 私は目を閉じて感覚を研ぎ澄ませ、その状態で月をしっかりと捉える。

 

 ベジータは、満月からはブルーツ波というものが出ており、それを直接見た尻尾の生えたサイヤ人は、大猿化すると言っていた。

 

 つまり逆に言えば、肉眼で直視しなければ変身しないのだ。

 

 

 

 私はベジータ戦でクリリンがやったように、心眼で周囲の様子を伺う。

 そして元気玉を、満月に向かって放り投げた。

 

 星は強大なエネルギーの塊なので、それを感知すれば狙いを定めるのは簡単だ。

 やがて元気玉が月に十分に近づき、右手をギュッと握る。

 

「弾けて混ざりなさい!」

 

 すると元気玉が弾けて、キラキラと煌く粒子に変わる。

 月の地表に降り注いでいくので、それを制御して全体を隙間なく覆うように散らばらせていった。

 

「上手くいけば良いのですが」

 

 しばらく気の制御を続けて、やがて全てが終わった。

 目には見えない薄い膜のようなものが、月の地表を覆う。

 

 静かに息を吐いて、倒れている悟空に視線を向ける。

 

 どうやら私の目論見通り、大猿化が解除されたようだ。

 弟はいつの間にか、元の大きさに戻っていた。

 

「あれは!」

「あの尻尾!」

「ごっ、悟空だ! 元に戻ったぞ!」

 

 クリリンや、他の仲間たちも大喜びしている。

 ぶっつけ本番だが、一先ずは成功したようだ。

 

 そして私のやったことだが、質問責めを受ける前に簡単に説明しておく。

 

「私たちは満月から発せられるブルーツ波を浴びると、大猿に変身してしまいます。

 なので月の表面に、特殊な電磁波を遮断するフィールドを形成しました」

 

 一部のサイヤ人は、人工的に小さな満月を作り出すことができる。

 私は元気玉を変換してベジータより大きなパワーボールを作り、わざと失敗して月にばら撒いたのだ。

 

 悪い言い方をすれば汚染物質を撒き散らして、月本来の働きを阻害した。

 だがサイヤ人以外には、ただちに影響はないので問題はないだろう。

 

 スピリットの強制分離の応用で、バリアにパワーボールの効果を持たせて永続化した。

 使ったのは初めてだが、上手くいったのでヨシだ。

 

 これも転生チートと、ヤードラット星での修行のおかげだろう。

 

「でっ、では先程、両手を掲げていたのは?」

 

 審判の人が、マイクを向けて尋ねてきた。

 私は、そちらに関しても答えていく。

 

「あれは、元気玉の予備動作です。

 生き物や星々から、ほんの少しずつ元気を分けてもらい、収束して邪悪な敵にぶつける。

 それが本来の使い方ですが──」

 

 私がやったのは、その応用だ。

 そこまで詳しく説明することもないと、途中で咳払いをして話題を変える。

 

「とにかく、これで十年は満月を見て大猿に変身しません」

 

 ただし元気玉の本来の使い方ではなく、無理やり仕様を変更したのだ。

 何かしらの不具合が起きないとも限らないし、月の働きを阻害する効果が永久に続くわけではない。

 

 バリアは時間経過でどんどん消耗していくので、いつかは完全に消えてしまう。

 しかし最低でも十年は、ブルーツ波を阻害できるはずだ。

 

 

 

 とにかく、私の役目は終わった。

 ブロリーをこちらに呼び戻して、観客席に移動する。

 その際に弟が脱ぎ捨てた重い上着も、気で浮かせて回収しておく。

 

 選手に手を貸したので、試合がどうなるかと不安だったが、審判の様子を見る限り、中断や決着はなさそうだ。

 

 しかし選手や審判や観客その他諸々が、私を見たまま揃って動きを止めている。

 何となく居た堪れなくなり、コホンと咳払いをした。

 

「あの! 悟空がダウンしていますし! カウントを数えなくていいんですか!」

「あっ! そうですね!」

 

 腹に重い一撃を叩き込まれたとはいえ、致命傷ではない。

 そして悟空は素っ裸で転がっている。

 

 審判はそんな彼に今気づいたのか、慌ててカウントを数え始めるのだった。




この話から一時間ごとに予約投稿します。
レッドリボン軍編が終わった辺りから文章が乱れますが、そこはもう仕方ないと諦めてください。
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