クソ雑魚サイヤ人は原作通りに進めたい   作:DB原作無印勢

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レッドリボン軍(3)

 私は皆の傷を癒やしたあとに、焚き火を囲んで食事をしながら桃白白の件について簡単に説明を行う。

 悟空もボラも先程まで重症だったにも関わらず、今は普通に飯を食べている。

 

 そして私は、嘘偽りなく桃白白の件を二人に伝えた。

 気持ちを落ち着かせるために温かいお茶を飲み、乾いた喉を潤す。

 そんな自分に、悟空が食事をしながら話しかけてくる。

 

「姉ちゃんが、オラを殺そうとしてるって聞かされたとき! 凄え驚いたぞ!」

 

 酷いことをした自覚はあるので、精神的に大ダメージを受ける。

 それでも顔には出さないようにして、正直に説明していく。

 

「悟空がレッドリボン軍と戦っていることは、知ってました。

 なので、先に桃白白に依頼をしておいたのです。

 もし負けても、せめて命は助かるようにと」

 

 何処でその情報を得たのかまでは言わない。

 だが今の説明には、一つも嘘は含まれていなかった。

 

 取りあえず気を探れるので、悟空の身に何かあったのではと考えて瞬間移動で助けに入った。

 千里眼はプライバシーの侵害なので伏せておき、そういうことにしておく。

 

 

 

 続いて私は、ボラとウパに顔を向ける。

 そして深々と頭を下げて、謝罪させてもらう。

 

「巻き込んでしまったボラさんとウパさんには、本当に申し訳ありませんでした」

 

 とにかく今は、頭を下げる以外は何もできない。

 謝罪の品として持ってきた、畑で取れた野菜で何とか許してもられば良いけどと内心で震えていると、結果的には何とかなった。

 

 彼らが良い人で本当に良かったと、安堵の息を吐く。

 

「私も悟空も、ミズナ殿のおかげで命が救われたのだ。気にしなくていい」

「そう言ってくれると、助かります」

 

 レッドリボン軍の依頼は、邪魔者は全て殺せだった。

 しかし私は瀕死にしろと命令を上書きしており、さらに桃白白が去ってすぐに助けに入る。

 

 おかげで二人は死なずに済んだので、終わり良ければ全て良しなのだろう。

 

 しかし、まだ危機は去っていないことを私は知っている。

 なので悟空に顔を向けて改めて説明を始める前に、これだけは言っておきたいことを堂々と口に出す。

 

「私が悟空を殺そうとするなど、絶対にあり得ません!

 ブロリーも含めて、私たち三人は家族ですから!」

 

 にっこりと笑いかけて、力強く断言する。

 それを聞いた悟空は気にしていないフリをしていたが、実はかなり精神的なダメージを受けていたようで、涙を流して私の薄い胸に飛び込んできた。

 

「うわーん! 姉ちゃーん!」

「不安にさせて、ごめんなさい」

 

 まだ彼は十二、いや十三だったか、とにかく子供だ。

 私のように前世も含めれば、成人しているわけではない。

 

 いくらサイヤ人は戦闘民族で親離れが早いとはいえ、ブロリーも含めて地球人に比較的近い育て方をしてきたのだ。

 たまには家族に甘えたいときも、あるだろう。

 

 私は悟空を優しく抱きしめながら、今後について伝えていく。

 

「桃白白は、もう一度ここに来るでしょう。

 貴方の命と、ドラゴンボールを奪いに」

 

 すると、くっついている弟の手に力が入る。

 自分は非力で弱いのでちょっと痛いが、なるべく顔には出さずに続きを話していく。

 

「今度は瀕死ではなく、確実にトドメを刺すでしょう。

 なので悟空は桃白白を倒し、二人を守らなければなりません」

 

 悟空は、私の言葉を黙って聞いている。

 姉の言うことは疑わずに信じる良い子だが、信頼や尊敬が半端ない。

 今のように結果的には騙していた時には、それがちょっと重くて辛いなと思うこともあった。

 

 自分はそんな偉大な人間ではない。

 女神と呼ばれていても、中身は平凡な一般女子で肉体もクソ雑魚だからだ。

 

 前世の知識があって色々な技が使えるが、リーダーシップや参謀的な技能はない。

 せいぜいアヒルのバタ足のように、必死に裏方から支えるのが精一杯である。

 

 

 

 とにかく今は悟空の道標として、桃白白に勝つ方法を説明する。

 

「今の悟空では、桃白白には勝てません。

 しかし大きく成長する方法は、ボラさんとウパさんが知っています」

 

 そう言って二人に視線を向けると、私の発言を聞いてハッとした顔になったので、どうやら気づいたようだ。

 

 これで、原作通りに進行するはずである。

 大雑把だが軌道修正して、自分の役目は終わりだ。

 

 そろそろ瞬間移動で自宅に帰ろうかなと思っていると、くっついたままの悟空が声をかけてきた。

 

「なあ、姉ちゃん」

「何ですか?」

「今日は一緒に寝ていいか?」

 

 昔は悟空とブロリーと私で、川の字になって仲良く眠っていた。

 何故か自分の定位置は中央で変更は許されず、二人に抱き枕代わりにされていたのが懐かしい。

 

 そして冬はいいが、夏とか暑くてしんどかった。

 なのである程度の年齢になったら、一人部屋で寝るようにと言って強引に親及び姉離れさせたのだ。

 

「……仕方ありませんね。今日だけですよ」

 

 だが今は悟空を深く傷つけてしまったし、今日ぐらいは良いだろう。

 もう姉離れしたと思ったのだが、まだ子供のようだ。

 

 取りあえず明日の朝に帰ることを念話でブロリーに伝えて、ホイポイカプセルを投げて仮設住宅を出現させるのだった。

 

 

 

 

 

 

 次の日の早朝になり、悟空はスッキリした目覚めでしっかり食事も取る。

 昨晩はボラから、カリン塔の天辺には力を何倍にもする薬があると聞いているので、準備が終わったら彼に全力で上に向かって放り投げてもらう。

 

 小さくなっていく悟空を見送りながら、あとは私が手を貸さなくても何とかなるだろうと思った。

 

 そしてボラとウパにお別れの挨拶をしてから、舞空術で飛び去った。

 

 

 

 途中で街に寄って美味しそうな物をまとめて購入していると、また事件に遭遇していつものように解決した。

 

 最初は人目を気にして目立たないようにコソコソしていたけれど、女神の噂が広がったからか、何もしなくても注目の的だ。

 視線が集まることはあっても、離れることはない。

 

 なのでもう人前でも、平気で飛んだり跳ねたりをするようになる。

 どうしても正体がバレたくないときは変装して誤魔化すが、自然と堂々と振る舞うようになったのだった。

 

 

 

 とにかく買い出しを済ませた私は、食材をホイポイカプセルに収納する。

 そして自宅に向かって飛び去り、しばらく進むと実家が見えてきた。

 

 ブロリーの気を探して、修行している場所に降りつつ声をかける。

 

「ただいま。ブロリー」

「おかえり。ミズナ姉」

 

 何年も一緒に暮らしているから、空から降りてくるのも慣れたものだ。

 

 彼は修行の手を止めずに対応し、私も邪魔をしたいわけではない。

 少し離れて、簡単に昨日のことを説明していく。

 

「悟空と会ってきました」

「元気だったか?」

「ええ、元気でやってました。

 ちょっとホームシック気味でしたが」

 

 あれは私がやらかしたせいで、悟空が姉に裏切られたと錯覚したのだ。

 ほんの僅かでも不安に思ってしまい、安心するために久しぶりに甘えたくなったのだろう。

 

「なら、家に帰ってくるのか?」

「いえ、まだレッドリボン軍は健在です。

 しかし、壊滅させたあとなら多分」

 

 悟空が帰ってくる保証はないが、近況報告や荷物の整理に実家に立ち寄る可能性はある。

 

 ブロリーも弟に会いたいなら、気を探って飛んでいけばすぐに会える。

 離れていても、割と気楽なものなのだった。

 

 

 

 

 

 

 私が我が家に帰ってから数日が経ち、仕事の合間に悟空を見守る。

 すると、どうやら無事に桃白白に勝利したようだ。

 

 こうなることは原作を読んで知っていたが、ここは紙に描いた漫画ではない。

 私にとっては、紛れもない現実だ。

 

 なので、やはりこの目で確認しないと原作通りに進んでいるのかがわからない。

 

 そして桃白白は、自分が直接関わった人物だ。

 お金を払って殺しを依頼し、仕事を果たすために悟空に挑んで負けた。

 

 全てが私のせいとは言わないが、重症を負った彼に申し訳ない気持ちが湧いてくる。

 

「……困りましたね」

 

 かなり迷ったが私は修行しているブロリーに、少し出かけてくると念話で伝えて席を立つ。

 そして事務仕事を分身体に任せて、瞬間移動で瀕死の桃白白の元まで飛んだ。

 

 

 

 彼は悟空が蹴り上げた爆弾の直撃を受けて、今にも死にそうになっている。

 世界一の殺し屋は全身が傷だらけでボロ雑巾のようになり、茂みに隠れるように横たわっていた。

 

 原作では辛うじて命は助かっても、体の殆どを機械化することになる。

 その間に何があったのかは、サラッとしか語られてはいない。

 せいぜい生きるか死ぬかの重症で、貯金の殆どを使い果たしたぐらいだったはずだ。

 

(でも彼は原作で生きるし、私が治療しても機械から生身の体になるだけだしね。

 本筋に、そこまで影響はないはず)

 

 私はそのように心の中で言い訳して、瀕死の重症を負っているの桃白白に手をかざす。

 

 依頼した私のせいで死にかけているという、後ろめたい気持ちを誤魔化したいのもある。

 でも殺しは辞めて欲しいけど彼の人生だしと、そういう色んな矛盾を抱えながらも放っておくことはできない。

 

 なので迷いながらも、彼の傷を癒やすのだった。

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