クソ雑魚サイヤ人は原作通りに進めたい   作:DB原作無印勢

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レッドリボン軍(4)

<桃白白>

 私は桃白白。世界一の殺し屋だ。

 鶴仙人の弟で、その実力は兄を越えている。

 裏社会に進出して殺し屋になり、この世の富と名声を欲しいままにするぐらいだ。

 

 しかし私は人生の絶頂期だったにも関わらず、孫悟空という少年に敗れ去ってしまう。

 

 一度は倒したのだが、どういうわけか奇跡的に息を吹き返した。

 

 おまけに数日会わないうちに、とんでもなく強くなっていた。

 実力では勝てないと判断し、油断させて爆弾で吹き飛ばそうとしたが、まさか蹴り返されるとは思わなかった。

 

 防御も回避も間に合わずに爆発に巻き込まれたことは覚えているが、きっと私は死んだのだろう。

 痛みを感じる前に、あの世に逝けたのは幸運と言える。

 

 おかげで長く苦しまずに済んだ。

 今はカラダへの不調や痛みもなく、冷静に頭が働くということは死後の世界以外、考えられなかった。

 

「……そうか。私は死んだのだな」

 

 あの爆弾を受けては無事に済むわけがなく、たとえ生き長らえても肉体の殆どを失い、奇跡的に目覚めても病院のベッドで激痛に苛まれるに違いない。

 

 しかし、今は痛みはなかった。

 逆にとても心が落ち着いて、安らかな気分だ。

 

 そんな状況の把握に努めている私に、何処かで聞いたような声が聞こえてくる。

 

「いいえ、貴方は死んでいませんよ」

 

 どうやら私の独り言が聞こえていたらしい。

 聞き馴染みのあり、天女のような美しい声色だった。

 

 ゆっくりと目を開けて、目的の人物に視線を合わせる。

 

「おはようございます。桃白白さん」

 

 私の目の前には、幼く美しい女神がいた。

 水色の長い髪、半透明の輪と翼が特徴的だ。

 

 こちらに手をかざして、優しく微笑んでくれている。

 

「完治はさせたのですが、貴方はかなりの重症でした。

 何か体に異常があったら、遠慮せず言ってくださいね」

 

 彼女が何を言っているのか、良くわからなかった。

 

(爆弾で吹き飛ばされた私を、……治療したと言うのか?)

 

 あり得ない。

 爆弾を至近距離で受けて、無事で済むわけがないのだ。

 

 しかし彼女の発言が事実かどうかを確かめるべく、私は試しに両手足を少し動かすと、特に問題はない。

 それに顔をあげて全身に視線を向けても、何処にも怪我はなかった。

 

 股間部にはタオルがかけられていて、それ以外は全裸というのもおかしい。

 

 私としては、ただただ戸惑うばかりだが、ここであることを思い出す。

 

(そう言えば、あのガキも──)

 

 孫悟空は、姉ちゃんのおかげで助かったと言っていた。

 

 そしてヤツの姉はミズナで、艷やかな水色の長髪と幼くても美しい容姿はとても目立つ。

 殺しの依頼をされたこともあり、私も良く覚えていた。

 

 もしガキの発言が事実なら、私の怪我を治せても不思議ではない。

 

 しかし、私は殺し屋だ。

 そして彼女は人々を助ける女神で、実の弟を殺すようにと依頼したとは言え、自分を助ける義理はないはずだった。

 

 なのでそのことがどうにも気になり、静かに彼女の尋ねる。

 

「何故、私を助けた」

 

 自分に恨みを持つ者は、大勢いる。

 命を狙われることはあっても、助けようとする奴などいない。

 ただ全くいないわけではないが、鶴仙流の同門にも恐れられるほどだ。

 

 

 

 とにかく女神と呼ばれる存在に命を救われるとは、予想外にも程があった。

 どうにも腑に落ちずに聞いておきたかった質問に、彼女はにっこりと微笑みながら答える。

 

「誰かを助けるのに、理由がいりますか?」

 

 あまりにも堂々と言いきったので、何も返すことができない。

 そして心だけでなく容姿も美しい彼女に惹かれて、見惚れてしまう。

 

 思えば私は、今まで金のために大勢の人々を殺してきた。

 だが彼女は、極悪人の自分にも救いの手を差し伸べようというのだ。

 

 しかも、何の見返りも求めずにである。

 

 地獄に仏という言葉があるが、死の間際に本物の女神が降臨するのは、流石に予想していなかった。

 

 それは自分の価値観を、根底から破壊するには十分である。

 心優しい慈愛の女神に命を救われた私が、感極まってむせび泣いていると、彼女が心配そうに覗き込んできた。

 

「あの? 大丈夫ですか?

 もしかして、何処か痛いのでしょうか?」

「……女神」

「はい?」

「貴女は、本物の女神だった」

 

 私の言葉が理解できないのか、困惑する彼女の両手を握る。

 極悪人だった自分が、神聖な存在に触れるのは恐れ多いことだ。

 しかし、今だけは許して欲しい。

 

 願いが通じたのか、彼女は微笑みながら優しく握り返してくれた。

 

 これで完全に、心の迷いが晴れた。

 自分は一度死んだ身ならば、これからは女神ためにこの命を捧げよう。

 

 私は真剣な表情で、彼女に忠誠を誓うのだった。

 

 

 

 

 

 

<ミズナ>

 桃白白を治療したら、女神と崇められて忠誠を誓われた。

 助けた理由を聞かれて放っておけないからでは、呆れられるかも知れない。

 なので何処かで聞いたような台詞を、使わせてもらった凄く感動された。

 

 

 

 何が何だかわからないが、悟空や他の人を瀕死の重傷に追い込んだ理由を聞かれずに済んだ。

 私のことを女神だと勘違いしている今なら、笑って誤魔化せば何か深い考えがあると勘違いされて、根掘り葉掘り尋ねられずに済むのだった。

 

 

 

 それはそれとして念のために確認を取ってもらい、彼の傷は完全に癒えていることを知る。

 何処にもおかしなところはなく、命は助かったようだ。

 

 私がここに来た目的も果たせた。

 ついでに何故か光落ちしてる彼なら、殺しを自重してくれるかも知れない。

 

 現場猫のようなガバガバ感ではあるが、未来がどうなるかは全くの不明だ。

 

 取りあえず原作での登場が近くなったら声をかけて、天下一武道会への参加を促せば良いだろう。

 女神と勘違いしている今なら、こちらの要求も聞いてくれそうだ。

 

 私はそんなことを考えつつ、彼が握っていた手を離してゆっくり立ち上がった。

 

「では、私はそろそろ失礼しますね」

「待ってくれ!」

 

 怪我の治療具合を確認するために、股間部にバスタオル一枚という格好だが、しっかり巻いてあるので少し動いてもずり落ちることはない。

 

 なので私に続いて立ち上がっても平気ではあるけど、何故か桃白白はその後に姿勢を正して、地面に両手をついた。

 

「女神様! 頼む! この通りだ!」

 

 まさか私に向けて、いきなり土下座するとは思わなかった。

 確か彼は、悟空を油断させるために同じようなことをしていた。

 

 けれど、今の桃白白からは邪気を全く感じない。

 

「もう二度と悪いことはしないっ!」

 

 いきなり何を言い出すのかと困惑していると、彼は顔を上げて私を真っ直ぐに見つめてくる。

 

「だから私に! どうか女神様を守らせてくださいっ!」

「……ええ~?」

 

 ドン引きであった。

 さっきまで女神に様をつけるのも大概だが、わざわざ私を守ろうと言うのだ。

 もう桃白白が何を考えているのか、全くわからなくなる。

 

(ううん、……こういう時は)

 

 普段はプライバシーの侵害になるので、絶対にやらないことだ。

 しかし今は非常時であり、こっそり心を読ませてもらう。

 だがやったあとに、すぐに後悔した。

 

(うわぁ、読むんじゃなかった)

 

 彼は私のことを、本物の女神だと信じ込んでいる。

 命を救われたことに、とても感謝していた。

 そして命に変えても守りたいと思っていて、嘘偽りのない本心を口に出しているのだ。

 

(どっ、どうしてこうなった!)

 

 だがいくら嘆いても彼の決心を変えるのは難しいし、光落ちするのは良いことだ。

 しかしここで私が断れば、また闇に傾きそうだ。

 

(逆に考えれば、桃白白が悪さをしないように見張れるかな)

 

 本当に殺しを止めてくれるかは、まだわからないのだ。

 それに原作のシーンを再現するためにも、近くに居てくれたほうが都合が良いのは確かである。

 

(ブロリーの修行相手にもなるし、悪くはないかな)

 

 色々と行き当たりばったりで穴だらけではあるが、色々考えて結論が出た。

 なので真面目な表情で土下座をしている桃白白に、堂々と声をかける。

 

「わかりました。私を守っても構いません」

「おおっ! ありがとうございますっ!」

 

 本当に私への信仰心が、色々とおかしいことになっている。

 だが悪の道に進むよりはマシで、しばらく面倒を見るぐらい良いだろう。

 

「ただし、きちんと指示に従ってください」

「もちろんです! 全ては女神様の御心のままにっ!」

 

 完全に女神扱いされることへの小っ恥ずかしさを感じつつも、私は彼を連れて瞬間移動する。

 そして、ブロリーに新しい従業員を紹介した。

 

 流石の弟も最初は少し戸惑ったが、やがてミズナ姉のすることだしと苦笑気味に受け入れてくれた。

 

 姉である私が突拍子もない行動をするのはいつものことだし、弟も慣れたものだ。

 

 闇落ちしたままなら拒否するだろうが、光落ちしているので問題なしだ。

 

 ちなみに桃白白は、屋敷への住み込みではない。

 少し離れた場所に新しい家を建て、そこで暮らしてもらう。

 特技に極振りしている私なら、このぐらい容易いことである。

 

 ただし職人ではないので、良く見ると粗があった。

 けど喜んでくれたし、足りないものは週末にでも街に行って買い足してもらうとして、とにかく良しとするのだった。

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