クソ雑魚サイヤ人は原作通りに進めたい 作:DB原作無印勢
天下一武道会の第一試合は、ヤムチャが負けて天津飯の勝利になった。
文字だけ見れば原作通りなのでヨシではあるが、私にとっては早くも先行きが不安になるスタートである。
しかし、泣き言をいっても状況が好転するわけではない。
自分にできるのはせいぜい神頼みぐらいで、下手に干渉して裏で糸を引いているのがバレたら目も当てられなかった。
ついでに界王拳についても悟空が熱心に聞いてくるし、将来的に彼の持ち技になるのだが、修得するのは当分先だ。
なので何処で聞いたかは覚えてないが界王様の噂を耳にして、それをヒントに独自に編み出した技だと答えておいた。
ある意味では間違ってはいないし、界王様は宇宙の各方面を管理している。
神様も知ってるぐらいの有名人だ。
つまり何らかの偶然で、噂を聞くことぐらいあっても不思議ではない。
私はそのことは全然覚えていないけどと、そういうことなのだった。
それはともかく、第二試合になる。
ジャッキー・チュンと、覆面レスラーのグリーンが武舞台に出てくる。
片方は亀仙人で、もう片方はブロリーが変装した姿だ。
ちなみに桃白白はピンクであり、二人の名前から適当に色を決めて、偽名も覆面グリーンと覆面ピンクとそのまんまだった。
「お主、……まさか」
「よろしく頼む」
ブロリーは言葉少なくても、地球の選手に敬い静かに礼をする。
すると亀仙人も理由はわからなくも、彼のように姿勢を正す。
「いや、何も言うまい。
今は一人の武道家として、相手になろう」
「感謝する」
ジャッキー・チュンは真面目な顔になり、構えを取った。
ブロリーも呼吸を整えて油断なく相手を見据えると、審判がマイクを手に大きな声を出す。
「では、第二試合! 始めてください!」
掛け声と同時に、まずはブロリーが真っ直ぐ突っ込む。
超重量の服を着用して気を抑えているおかげで、力を殆ど出せていない。
それでも地球人が相手なら、十分に戦える。
「せいっ! はあっ!」
「むっ! だっ! とりゃっ!」
武舞台の中央で、高速のパンチとキックの応酬が行われる。
駆け引きによって攻守がコロコロと入れ替わるが、実力や素質はブロリーのほうが圧倒的に上だ。
しかし亀仙人は地球で武道の神と呼ばれるだけはあり、長年の戦闘経験があった。
それに戦闘力は極限まで抑えているので、地球人と殆ど互角だ。
外から見る限り、どちらが勝ってもおかしくない。
「むうっ! こりゃいかんっ!」
しかし亀仙人は経験はあっても、かなりの高齢だ。
スタミナはどうしてもブロリーに負けるし、おまけに弟は天才的な戦闘センスを持っている。
具体的には強敵と戦うたびに、凄まじい速さで急成長していく。
「逃さんっ! せいっ! はぁっ!」
「ぐぬぬっ! 少しは年寄りを労らんか!」
少しずつジャッキー・チュンの戦い方にも対応していき、基礎ステータスが底上げされて彼を追い詰め始めていく。
何とか凌いでいるが後退を余儀なくされた亀仙人は、やがて武舞台の端まで来てしまう。
「ここだっ!」
「むうっ!」
ブロリーの一撃は辛くも防ぎきったが、亀仙人は吹き飛ばされて場外に落ちてしまう。
激戦だったのは確かだが、少々呆気ない決着に審判や観客は戸惑っていた。
「ワシの負けじゃ。お主、強いのう」
激しい運動をして汗をかいている亀仙人を見て、ブロリーは何とも言えない表情で声をかける。
「俺はもっと、貴方と戦いたかった。
何故、わざと負けた?」
確かに双方は真剣ではあった。
だが互いに、まだ様子見の段階で本気ではない。
気功波の一つも飛ばしていないのに、探り合いで場外への押し出しで決着だ。
ブロリーにとっては消化不良で、訳がわからないだろう。
するとジャッキー・チュンはニヤリと笑って、髭を弄りながら口を開く。
「こういう若者たちが現れるのを、楽しみに待っておったのじゃ。
これでワシはまた、のんびりと暮らせるわい」
亀仙人はブロリーに嬉しそうに笑いかける。
そして武舞台によっこらしょと上がり、控室に歩いていく。
けれど弟は、彼の言葉を聞いても良くわからなかったようだ。
チラチラと観客席で観戦している私を見てくる。
こういうのは互いの関係がバレるから、控えて欲しい。
だが困っているブロリーは放っておくことも、またできなかった。
私は一回だけなら気づかへんやろと諦めて、彼に説明するために口を開く。
「高齢のジャッキー・チュンさんは、自分を超える新世代が次々と現れたことを知りました。
これ以上は若者を導くために自ら戦う必要はなく、隠居する良い機会だと思ったのでしょう」
「……そうか」
これで合ってるかはわからないが、一応はブロリーは納得したようだ。
静かに息を吐いて警戒を解き、それでも少々名残惜しいのか残念そうな顔をして控室へと歩いて行くのだった。
第三試合はクリリン対チャオズで、大体原作通りだったので特に語ることはない。
しかし空中からどどん波を撃ったときに、悟空の口から桃白白の名前が出て、状況に変化が起きる。
鶴仙人の弟を、悟空が殺したことを知ったのだ。
これには師匠だけでなく、門下生も怒り出した。
そして亀仙流の弟子たちを皆殺しにするために、最大出力のどどん波を放とうとする。
その光景を見た私は本日、またもや頭を抱えて思い悩む。
やがて結論が出たので、控室で我関せずを貫いている覆面レスラーのピンクに念話を送った。
『桃白白さん』
『何でしょうか、女神様』
頻度はそこまで多くないが、私はたまに念話を使う。
なので外からは気づかれないように、桃白白は驚かずに冷静に対応してくれた。
『鶴仙人さんに、生きていることを伝えていないんですか?
それに関しては、別に禁じてはいないはずですけど』
原作が変わるので、できれば次の天下一武道会の直前までは控えて欲しい。
しかしいつまでも死んだと誤解されて深い傷を負うのも、申し訳ない気持ちを抱いてしまう。
なので最終的には場所は伏せて安否の連絡ぐらいは出しても良いと、許可していたのだ。
『世界一の殺し屋である桃白白は、死にました。
今ここに居るのは、女神様を御守りする一人の武道家に過ぎませぬ』
ようは裏社会と密接に関わっている鶴仙流に、戻るつもりはない。
もし生きていると知られると面倒になるから、あえて黙っていたということだ。
(私も綺麗な鶴仙人は、ちょっと想像できないけど。何だかなぁ)
それを言ったら綺麗な桃白白も想像できないが、現実は何故か光落ちしている。
しかしもう一人の兄は真っ黒で、現時点での意識改革はできる気がしない。
桃白白も光の道を歩ませるのは無理だと判断したから、三年前から連絡一つ取らなかったのだろう。
『ですが、あとでこっそり天津飯とチャオズには、伝えておいてくださいね』
私は頭を抱えながらも、大切なことを桃白白に伝える。
『何故でしょうか?』
『彼らは鶴仙流ですが、闇に染まりきってはいません。
いずれは、光の道を歩む武道家になるからです』
原作で仲間になったからとは言わないし、言えなかった。
なのでそれとなく誤魔化しつつ、適当な言い訳を口にする。
『流石は女神様。何でもお見通しなのですな。
ますます感服致しました』
『何でもは知りませんよ。知っていることだけです』
何処かで聞いたような台詞を返して、桃白白との念話を切る。
ちょうどクリリンとチャオズの決着が、ついたところだ。
最後は算数勝負の隙をついて場外にふっ飛ばし、亀仙流の弟子が勝利したのだった。