クソ雑魚サイヤ人は原作通りに進めたい   作:DB原作無印勢

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第二十二回天下一武道会(4)

 激戦が繰り広げられている天下一武道会も、第四試合まで進んだ。

 次は悟空対覆面ピンクが戦うことになる。

 

 正体は桃白白だが、変装して香水で匂いを誤魔化している。

 バレることはないだろう。

 

「何かおっちゃん、前に何処かで会わなかったか?」

「知らんな。気のせいだろう」

「そっかなー?」

 

 しかし悟空は相変わらず勘が鋭いようで、どうにも納得できないのか首を傾げている。

 

「ではいよいよ、第四試合を始めたいと思います!」

 

 審判の一声で試合が始まり、正体について気にする余裕はなくなった。

 最初に動いたのは桃白白で、素早く悟空に接近して怒涛の連打を叩き込む。

 

(舞空術は私も使えるから良いけど、どどん波を使うと流石にバレそうだしなぁ)

 

 重い服以外にも縛りを余儀なくされるため、桃白白は実力の全てを発揮できない。

 だが流石は、世界一の殺し屋だった男である。

 

 心を落ち着かせて冷静に動きを見て、あの悟空と殆ど互角に打ち合っている。

 現在の気を感じ取る限りでは、重りがついた状態ならやや弟が有利に思えた。

 

 

 

 しばらく打ち合いを続けていたが、やがて桃白白も実力差を覆すのは難しいと思ったのか、一旦後方に飛んで距離を取った。

 

「やはり今のままでは勝てぬか。……ならばっ!」

 

 彼が何をしようとしたのか察しがついた私は、嫌な汗をかく。

 しかし周囲に悟られると不味いので、何とか平静を装って試合を見物しているフリをする。

 

「受けてみよ! 界王拳ーっ!」

「それは、姉ちゃんの技っ!?」

「行くぞっ!」

 

 悟空の疑問には答えずに、一時的に戦闘力を倍加させた桃白白が襲いかかる。

 ちなみに正体を隠して天下一武道会に出場することを許可したが、技に関しては何の縛りもしていなかった。

 

 だが彼が使える技は、殆どが鶴仙流が関わっている。

 もし使ったら、さてはオメー桃白白だなと一発でバレかねない。

 

 何しろ世界一の殺し屋に憧れる天津飯と、彼の兄である鶴仙人、門下生であるチャオズがすぐ近くで観戦しているのだ。

 迂闊な技は使えなかった。

 

(でも、いくら何でも界王拳はないでしょ!)

 

 彼を指導しているときに何か技を教えて欲しいと頼まれたので、舞空術や気功砲は鶴仙流で教わっただろうし、元気玉は取り扱いに気をつけないと星を破壊しかねない。

 

 ならばと消去法で界王拳を教えたのだが、やはりそう簡単に使いこなせない。

 最初は悟空を圧倒できても、すぐに限界が来たようだ。

 

 彼は気を急激に消耗して、全身汗だくで疲労が色濃く出てきた。

 それでも守ったら押し切られると理解しているのか、決して攻撃の手は緩めない。

 

 しかし、とうとう集中力が切れて界王拳が強制的に解除されてしまう。

 そこに悟空の強烈なパンチが腹部に叩き込まれて、ヨロヨロと後退して場外に背中から落ちてしまう。

 

「みっ……見事だ!」

 

 気を使い果たした桃白白はマスク越しだとわからないが、何となく全力を出し切ったと言わんばかりの清々しい顔に見える。

 制限付きとはいえ悟空もほぼ同じ条件で、今持てる力を全て出しきって負けたのだ。

 

 しかし彼は満足かも知れないが、同じ技を使われた私としては困ったものである。

 審判が悟空の勝利を堂々と宣言している最中に、悟空はじっとこっちに視線を向けて口を開く。

 

「姉ちゃん。この人は一体?」

「……ええと」

 

 どう言い訳したものかと考えたが、良い案が思い浮かばない。

 悩んだ末に私は、結局正直に話すことにした。

 

「行き倒れていたところを拾って面倒を見てたら、いつの間にかうちの従業員になりました」

「姉ちゃんらしいな」

 

 少し言葉をぼかしたが、嘘は言ってない。

 そしてどうやら悟空は、姉がしょっちゅう世話を焼いたり面倒を見るので、そういうことがあってもおかしくないと思っているようだ。

 

「私らしいとは何ですか。

 ただ、放っておけないだけです」

 

 桃白白は、うちの農場の従業員として雇用している。

 だが彼が辞めて何処かへ行きたいと言うなら、闇落ちしない限りは素直に受理するつもりだ。

 

 しかし今のところはそんな気配は毛頭ないので、ブロリーの修行相手を引き受けてもらっていた。

 

「まあ、そういうことです。

 正体は理由があって伏せていますが、悪い人ではないですよ」

「そっか、まあ姉ちゃんが言うなら、そうなんだろうな」

 

 普通は弟に信頼されて嬉しい。

 だが今は、本当のことを隠している後ろめたさで少し苦しい。

 

 なので気づかれないように、桃白白に念話を送っておく。

 

『試合が終わったら、悟空にも正体を明かしてください』

『良いのか?』

『あの子は純粋で、善性の塊です。心を入れ替えた者を、責めたりはしません。ただし、事情の説明は貴方に任せます』

『わかった。あとで伝えよう』

 

 あのフリーザでさえも、一度はトドメを刺さずに見逃したのだ。

 光落ちしたことを正直に話せば、普通に受け入れてくれるだろう。

 

 

 

 色々と納得できなかったり説明不足ではあるが、私の口から話す気はない。

 それに天下一武道会はまだ続いていて、いつまでも試合を中断するわけにはいかない。

 

 

 

 そういうわけで第五試合が始まり、天津飯とブロリーがぶつかり合う。

 皆の興味は完全にそちらに持っていかれて、あれこれ詮索されずに済んだ。

 私としては願ったり叶ったりであったので、自分ものんびり試合を観戦することにする。

 

(しかし天津飯もブロリーも、同じ緑同士だね)

 

 片方は緑色の道着を着用し、もう片方は緑の覆面レスラーだ。

 だからと言って別に何もないのだが、色が同じだと今頃気づいた。

 

「ちいっ! やるな!」

「……お前こそ!」

 

 二人の武道家が、真剣勝負で拳を合わせている。

 何かしら、通じるものがあったのかも知れない。

 天津飯もブロリーも不敵に笑い、武舞台の上で殴り合う。

 

 高速で行われる激闘に、観客は固唾を飲んで成り行きを見つめる。

 審判が状況を解説するよりも早くに攻守が入れ替わり、喋る暇もない。

 

 だが、しばらくしてブロリーが後方に跳躍して距離を取る。

 

「悪いが、次で終わらせてもらう!」

「ほう、ならば俺も、面白いものを見せてやるぜ!」

 

 そう言って天津飯は両手を合わせて構えを取り、気を集中させ始めた。

 

「か…め…は…め」

「かめはめ波!?」

「まっ、まさか!?」

 

 悟空やクリリンや亀仙人、ついでにヤムチャも含む大勢が動揺する。

 やがて、天津飯の技が完成した。

 

「波!!!」

「でかいっ! 観客に死人がでるぞ!」

 

 天津飯はわざとブロリーから狙いを外して、大勢の観客に向けて放つ。

 どうせ避けるか防ぐかされるだろうし、強引に庇ってダメージを受けたり、隙ができたら儲けものだと思っているのかも知れない。

 

 それに私が界王拳を使い、またギリギリで軌道を変えれば済むことだ。

 

 しかしここで、誰もが予想しなかったことが起きた。

 何とピンクの覆面レスラーが観客の前に立って、飛んできたかめはめ波を空に向けて弾いたのだ。

 

「何っ!?」

 

 動揺する天津飯に対して、桃白白は真面目な顔で大声を出す。

 

「それ程の技を、何故正しき道に使わんのだ!

 何故悪に走る! 技が泣いているぞ!」

 

 いきなり謎の覆面レスラーに説教されて、天津飯は困惑していた。

 

「鶴仙人とは縁を切るのだ!

 安易な影の道から抜け出し、陽の光に満ちた世界を走ってみよ!

 兄弟子の桃白白も! きっとそれを望んでいるはずだ!」

 

 そもそも桃白白は彼だし、変装しているだけだ。

 しかし天津飯は、そのことに気づけない。

 

「黙れっ! お前に桃白白さんの何がわかる!

 さっきから、くさいことばかり言いやがって!

 試合中じゃなけりゃ、その減らず口を二度と叩けなくしてやるところだぜっ!」

 

 完全にブチ切れているが、同時に迷ってもいる。

 今の発言が効いているのは間違いなく、桃白白は鶴仙人の視線に気づいて大きく息を吐く。

 

「本当はもう少しお前と話したいが、これ以上は邪魔が入りそうだ」

「待てっ! まだ話は──」

 

 どうやら身バレの危険を感じ取ったようだ。

 桃白白は軽く跳躍し、無言で選手控室に戻っていく。

 

 しばらく試合が止まったものの、やがて天津飯とブロリーは仕切り直して互いの視線を交差させる。

 その様子を見た私は、嫌な予感をヒシヒシと感じた。

 

 彼との付き合いは長いので、どんな技を修得しているかは良く知っている。

 

(まさかブロリーは、気を解放するんじゃ?)

 

 実際にブロリーの気が急激に高まっていき、同時に髪がざわついている。

 私はこれは不味いと思い、恥も外聞もなく大声で呼びかけた。

 

「それは駄目です! 許可できません!」

 

 空から私を見下ろすだけでなく、大きな声が響き渡ったのでこの場の全員の注目が集まる。

 だが今は形振りに構っていられる状況ではない。

 

「それをすれば、覆面が破れますよ!」

「……確かに」

 

 ブロリーが気を全開放すると、何故か髪が逆立つのだ。

 理由は良くわかっていないが、多分中途半端に超化しているからだと思われる。

 髪色はそのままだし、放出するオーラも黄緑なので間違いはないだろう。

 

 ついでに筋肉モリモリになるしで、とにかくブロリーの高まった気は霧散して、落ち着きを取り戻す。

 そして状況が飲み込めずに戸惑う天津飯に、堂々と宣言する。

 

「参った。俺の負けだ」

「……は?」

「俺は約束を破ってしまった。

 だから、降参する」

 

 ブロリーは気を抑えて戦うのと、覆面で正体を隠すことを参加条件にしていた。

 なのでつい天津飯との勝負が楽しくなり、ギアを一段あげようとしたのだろう。

 彼は冷静になってその行いを、私との約束を破ったと判断したらしい。

 

 そんなあまりの急展開に戸惑っているのは、天津飯だけでなく審判や観客も同じだ。

 なかなかブロリーの負けだとは言い出せずに、しばらく誰も喋らなかった。

 

「ちょっ、ちょっと待て! お前はそれでいいのか!」

 

 やがて対戦相手の天津飯が、戸惑ったように声をかける。

 

「ああ、今回は負けたが、次は勝つ」

 

 ブロリーの純真すぎる返事に、天津飯は完全に言葉を失っていた。

 弟にとって、天下一武道会の優勝はそこまで重要ではない。

 

 強い奴と戦えればそれで良く、彼との試合は十分に楽しめて満足していた。

 なのでギブアップしても、次の機会に天津飯と勝負できればそれで良いのだ。

 

 次回までに気を抑えても、互角以上に戦えるように鍛えるという目標もできた。

 私はブロリーとは長い付き合いなので、何となくだが考えていることがわかるのだ。

 

 間違いなく弟は、とてもワクワクしていた。

 天津飯との再戦がいつになるかは不明でも、遅くとも三年経てば機会は巡ってくるだろう。

 その時までに、より過酷な修行で己を鍛えるつもりなのだった。

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