クソ雑魚サイヤ人は原作通りに進めたい 作:DB原作無印勢
<シロナ>
私の名前はシロナ。ミズナの分身体だ。
しかし今は髪を白く染めてツインテールにし、カラーコンタクトをつけて変装している。
ただし気を使うと即正体がバレるので、人前では殴る蹴るしかできない普通の武道家として活動していた。
最初はピッコロ大魔王が封印されている電子ジャーを探していたが、あいにく私は何処にあるのか知らなかった。
なので千里眼でピラフ一味を監視して、場所を突き止めることにする。
幸い原作通りにことは進み、彼らが海辺で発見したところを瞬間移動を使って接近し、彼らが気づくよりも早く気弾を飛ばして気絶させた。
だが残念ながら先に開けられてしまい、個人的に心の準備が全くできてない状態で対面せざるを得なくなる。
咄嗟に誤魔化したが、髪は白いし尻尾が生えている。
おまけにピラフ一味が目を回して気絶しているので、怪しまれるに決まっていた。
それ以外にも色々とテンパってしまい、正直何を話したのか良く覚えていない。
封印を解いたあとに原作通りに配下になれるによう、わざわざ台本を考えてきたのに殆ど行き当たりばったりだ。
しかしピッコロ大魔王は意外と心が広いようで、特に問題なく部下になれた。
そこからは言いたい放題に意見を口にしたが、どうせ分身体だ。
消されても本体が無事なら復活できるし、見た目は人間そっくりでも実際には気で活動しているので、痛覚もその気になれば全カットできるし割りと気楽である。
なので被害を減らすために、忌憚のない意見っすとまではいかないが、割とズケズケ言ったような気がする。
それが何故か良い方に作用したらしく、私は原作のピラフ一味よりは嫌われてない。
結構通るし、真面目に聞いてくれるのだ。
ただし老人扱いすると怒られるので注意だが、本気で私を消そうとはしない。
良い言い方をするなら、ちょっと頑固なお爺さんという感じだ。
実際には大勢の人間を躊躇いなく殺す大魔王だが、私個人に対しては何か違うような気がした。
そしてタマゴを生んで魔族を増やすのが、原作の流れだ。
しかし今のピッコロ大魔王は弱っていて、ピアノを生んだときも凄く辛そうだった。
本当に寿命を削っているんだと本能的に理解できたので、自分が頑張るから寿命を削るのは止めるようにと真面目に訴える。
いくら原作通りとはいえ、目の前で苦しんでいるのに手を差し伸べないのは私にはできなかった。
完全に行き当たりばったりの行動だったが、おかげでタンバリンが生まれず、自分が天下一武道会の会場までやって来ることができた。
結果良ければ全て良しとは言うものの、本番はこれからだ。
舞空術で飛ぶと、輪っかと翼が出て一発で正体がバレる。
ピッコロ大魔王も私のことを殴る蹴るしかできな人間の武道家だと思ってるし、現在人間たちの世界でもっともホットな女神だと明かすわけにはいかない。
とにかく乗ってきた小型のジェット機をホイポイカプセルに収納して、本体と頻繁に連絡を取りつつ、頃合いを見計らって選手控室に入る。
ちゃんと尻尾を隠して、気をゼロまで抑えているので対策は万全だ。
そしてどうやら中にいるのは、クリリンと審判のおじさんの二人だけらしい。
目撃者が少ない今がチャンスだし、細心の注意を払っているので私の接近に全く気づいてない。
こんな絶好の機会を、逃す気はない。
不意打ち上等とばかりに界王拳を一瞬だけ発動して加速し、クリリンを背後から強襲する。
「ぎゃあああああっ!!!」
さらに人体の急所を狙っての拳に、インパクトの瞬間だけさらに界王拳を上乗せする。
そんな不意打ちを無防備な状態で受けては、いくらクリリンだとしても致命傷だろう。
その証拠に想像を絶する苦痛に襲われ、選手控室の外に響くほどの大声で絶叫した。
彼の役目は終わったので、すぐさま治療を施して全快させる。
たった今気を失ったばかりの彼は、簡単には目覚めない。
そしてこれらは一連の行動は、ほんの一瞬のうちに行われたのだ。
気を感知できる者たちも違和感を覚えないし、審判の人はすぐ近くにいるのに、ようやく私の存在に気づいて顔を向ける。
私は見られる前に急いで気を抑えて、輪っかと翼を消して自分の姿を印象づける。
わざとらしく近づいていくが、外の悟空たちが駆け込んでくるのも時間の問題だ。
そろそろ恐怖で顔を歪める彼の記憶に強く残ったかなと判断し、あまり傷つけないように気をつけて急接近して、軽く小突いて地面にコッテンと倒れてもらった。
(あとは魔の紙を置いて、ドラゴンボールと名簿を回収すれば終わりだね)
そして誰にも見つからないように、小型のジェット機で帰還すれば任務完了だ。
あとはピッコロ大魔王の元に急いで帰るだけなのだが、これっぽっちも気が抜けないのが怖いところなのだった。
ピッコロ大魔王と雑談しながら小型のジェット機を操縦していると、悟空が筋斗雲で追いついてくる。
タンバリンはいないので私が代役を務めるのだが、ある意味では原作通りと言えた。
「見つけたぞ!」
怒り心頭の悟空の大声が後ろから聞こえてくるので、正直生きた心地がしない。
ぶっちゃけ原作を壊さずに私が生き残って被害も減らすとか、はっきり言って無理ゲーが過ぎるのだ。
自分がサイヤ人でなければ、とっくに胃がやられている。
「待てーっ!」
気が重いなと鬱になっていると、悟空が追いついてきた。
このままだとジェット機を落とされかねないので、速度を落として筋斗雲と並走するように自動操縦に切り替える。
そしてコックピットの窓を開いて、弟の姿が良く見えるようにした。
「何ですか? 貴方は」
長年の付き合いで悟空のことは良く知っているが、まるで初対面の方に装う。
すると彼は座席にわざと見えるように置かれている四星球に気づいて、両拳を握りしめて怒りをあらわにする。
「やっぱりおめえかーっ!
オラのドラゴンボールと、クリリンの命を返せっ!!!」
怒りを爆発させる悟空に、内心では戦々恐々する。
けれど態度には一切出さず、落ち着いて返答していく。
「クリリンさんは、ドラゴンボールを手に入れるのに邪魔なので排除しました。
もし亡くなられたのなら、お気の毒です」
「何だとーっ!」
悟空は親友が殺されたことで頭に血が上り、冷静さを完全に失っていた。
かなり近くで話しているのに、変装した私の正体に気づかないのがその証拠だろう。
「おめえはクリリンの仇だ! オラがぶっ殺してやる!」
当然そうなるとは予想はしていたが、ジェット機の上で戦うのは不利すぎる。
せめて何処かに降りなければ勝負にすらならずに、一方的に撃墜されてしまう。
私は目を凝らして急ぎ周りに着陸できる場所を探していると、進行方向から別の気が真っ直ぐこっちに近づいていることに気がついた。
そして悟空も、新たな敵の接近に気づいたようだ。
(あれはタンバリン? 生まれてないはずなのに、何故?)
弟はタンバリンに注意を向けて、警戒を強める。
とにかく私も何が起きているか正確には把握できないため、両者は動きを止めて並走を続けた。
やがてタンバリンは私たちのすぐ近くまで来て、不敵に笑って口を開いた。
「お前がシロナで間違いないか?」
「ええ、私がシロナですけど、貴方は?」
名前は想像がつくが、こうして会うのは初対面だ。
なので初めて会ったかのように振る舞い、質問させてもらう。
「俺の名前はタンバリンだ。
ピッコロ大魔王様から、お前の護衛を命じられた」
「それはどうも、お疲れ様です」
取りあえず社交辞令として労っておくと、タンバリンは悟空に視線を向ける。
「ああ、本当に退屈な仕事だとうんざりしていた。
だが実際に来てみると、予想外に楽しめそうじゃないか」
タンバリンは怒りに震える悟空を見て、意地悪そうに笑った。
寿命を削ってタマゴを生んだのは私の忠告を無視したようで悲しいが、今はとても困っているのでナイスタイミングと言える。
なので帰ってピッコロ大魔王に会ったら、褒めれば良いのか悲しめば良いのか良くわからない。
「取りあえず、彼の相手はお願いできますか?」
「ああ、きっちり殺してやるよ」
「お願いします。私は他に、やることがあるので」
私が小型ジェット機の速度を上げると、逃げようとしていることに気づいた悟空が大声を出す。
「待てーっ!」
しかし、待てと言われて待つ私ではない。
それに今はタンバリンもいるので、こっちに注意を向けては他が疎かになる。
「お前の相手は俺だっ!」
今の悟空はクリリンの仇しか目に入っていないし、天下一武道会で力を使いすぎた。
視界の外からタンバリンが強襲し、飛び蹴りをまともに受けてしまう。
その間にジェット機はどんどん遠ざかっていき、やがて悟空の姿は完全に見えなくなる。
そして少し時間が経つと、弟の気が小さくなって地上に落ちていくのを感じ取るのだった。