クソ雑魚サイヤ人は原作通りに進めたい 作:DB原作無印勢
クリリンの死亡確認をして悟空が飛び出していったとき、ブロリーと桃白白は全く動じずに冷静だった。
そして私の顔をじっと見てたので気になって理由を聞いてみると、ミズナ姉が慌ててないので大丈夫だと言い切られた。
本当に私のことを一体何だと思ってるやらで、相変わらず信頼感が半端ない。
だが今回は実際にその通りであり、下手な言い訳をする余裕もなく黙るしかなかった。
しばらくすると、気絶したクリリンが目覚めた。
死亡に関しては誤認だったと謝罪したが、魔と書かれた紙を見た亀仙人が、ピッコロ大魔王が復活したかも知れないと語り出す。
その後、念のために皆でカメハウスに避難することに決める。
私たちも誘われて、特に断る理由もなかった。
大農場の管理は分身体に任せれば良いし、ここで別れるほうが不自然だ。
取りあえず、せっかくなのでお邪魔させてもらうのだった。
ちなみに出場した武道家には、私が念話でピッコロ大魔王に狙われる可能性があるので気をつけるように伝えた。
流れで悟空と連絡を取ることになるが、カメハウスのソファーに腰かけて意識を集中させる。
そして心の中で、また原作が壊れるなぁと思いつつ、弟に呼びかけた。
しかし、しばらく念話を送っても一向に応じてくれない。
「どうやら悟空は、意識がないようです」
「だっ、大丈夫なの? ……それ?」
ブルマがギョッとした表情になり、私に尋ねてきたので静かに微笑む。
「小さいですが、気は感じ取れます。なので、生きてはいるので大丈夫ですよ」
「そっ、そう。良かったわ」
ブルマたちや他の皆も、ホッとしたようだ。
さらにここであることを思いついたようで、彼女はポンと手を打って大きな声を出す。
「そうだわ! ミズナって瞬間移動ができるわよね!
それで孫くんを連れ帰って、治療すればいいのよ!」
「その手があったか!」
ヤムチャも同意して、私に皆の視線が集まる。
だがこっちは表情は平静を装いつつも、内心では大いに頭を抱えた。
確かに現状は、それが最善だろう。
しかし、そんなことをしたら原作が完全に崩壊する。
これから仲間に出会ったり成長をすることもなく、将来的に戦力が足りずにラスボスに負けて地球が滅びましたでは、後悔してもしきれない。
なので原作を知っている私として、心を鬼にして首を横に振る。
「せっかくですが、お断りします」
「どうしてよ! 孫くんが危ないのよ!」
ブルマだけでなく、他の仲間の人たちも同じ意見なようだ。
しかし私は意見を曲げずに、静かに息を吐いく。
「私の弟は、この程度でやられるほど弱くはありません」
ただし舐めプしたり力が足りなかったり、重い服を着たまま戦い続ければ別だが、それは口に出さない。
「親友のクリリンさんを、殺されかけたんです。
誤解を解いたとしても、悟空は止まらないでしょう」
この場の全員が私の答えを完全には否定できないのか、納得こそしていないが押し黙る。
しかし別に私は、悟空を見捨てるわけではない。
今はまだ、その時ではないだけだ。
「それに悟空が本当に危うくなったら、私が助けますので大丈夫ですよ」
基本的に主人公が死亡したら原作終了のお知らせなので、それだけは何としても避けなければいけない。
だからと言ってサイヤ人襲来で殺させる気もないが、取りあえず目先のピッコロ大魔王への対処が先だ。
そういうわけで、悟空はしばらくは好きなようにやらせることになった。
「今はそれよりも、ドラゴンボールです。
ピッコロ大魔王に、願いを叶えさせるわけにはいきません」
「うむ、そうじゃな。
ブルマ、新たにレーダーを作るのにどれぐらい時間がかかる?」
亀仙人が冷や汗をかきながらブルマに質問すると、彼女は急いでも半日はかかると答える。
なので私たちは、レーダーが完成次第ボール集めに向かうことに決まるのだった。
<シロナ>
ピッコロ大魔王の元に帰ってきた私は、タンバリンが来てくれて助かったことを伝えた。
だがそれはそれとして、タマゴを生んで寿命を縮めたことで説教する。
何しろ飛行船に戻ると、実はもう一体の魔族であるシンバルも増やしていたことが発覚したのだ。
彼は今はドラゴンボールの探索で不在らしいが、これはもうおかげで助かりましたとお礼を言うことはできない。
「私、言いましたよね?
ピッコロ大魔王様の寿命が縮むから、タマゴだけは絶対生まないくださいって」
タンバリンは助かったが、もう一つ増やす必要はないはずだ。
「確かに言われたがな、今は非常時だ。シロナもわかるであろう?」
「まあ、人手は足りてませんけど」
玉座に座りながら、ピッコロ大魔王が言い訳を口にする。
それを言われると辛いものがあり、確かに彼が言うことも一理あった。
我が陣営は慢性的な人手不足で、戦力に関してはクソ雑魚武道家の私と、ヨボヨボのご老人のナメック星人、ピアノは参謀なので期待するだけ無駄だ。
(戦闘タイプを増員したくなる気持ちはわかるけど、先行き不安だなぁ)
ちなみに本体がブロリーを上手いこと押さえてくれないと、原作が一瞬で崩壊しかねない。
これから先も、かなりの綱渡りを強いられるのは間違いなさそうだ。
あとは悟空が重い服を脱いでも以下略なため、正直いつ我が陣営が敗北するかわかったものではない。
私がそんなことを考えていると、ピッコロ大魔王が急に苦しみだした。
「うっ……くっ、はぁっ……はぁっ! ばっ、馬鹿なっ!」
ピアノは全盛期の力を取り戻してからの抹殺リストとして、天下一武道会の選手の写真を飛行船の周りに張らせていたが、彼は驚いた顔をして作業を中断して駆け寄ってくる。
「ピッコロ大魔王様!? 急にどうされましたか!?」
ピッコロ大魔王に持病の発作はないので、考えられることはそう多くはない。
そしてすぐに、私の予想は正しかったことを知る。
「しっ、シンバルが死んだ。かっ……考えられん。どういうことだ。
まっまさかこの世に、我が魔族の戦士を倒すほどの奴がおると言うのか」
気を感じると仕留めたのはヤジロベーだと推測できて、原作通りに進んだことに私は静かに頷く。
「大昔にも優れた武道家が、魔封波を使っていました。
不覚を取れば、そういうこともあるでしょうね」
「シロナの想定通り、というわけか」
ピッコロ大魔王は人間を警戒はしていても、容易く殺せるのだと心の何処かで見下していた。
「それと、ドラゴンボールを探しているのは、私たちだけではありません。
いつか必ず、ぶつかるでしょう」
飛行船の大画面のドラゴンレーダーには、本体が所有しているボールが動いていることを知らせていた。
「決戦に備えて、ピッコロ大魔王様にはできる限り力を温存していて欲しかったのですが──」
タマゴ生んじゃったし、倒されちゃったしなーと言わんばかりのジト目でピッコロ大魔王を見つめる。
すると彼は、少し気まずそうにして露骨に視線をそらした。
「でもまあ、ピッコロ大魔王様のおかげで助かったのは事実です。
それにまだ、タンバリンが残っていますしね」
「そうだな。タンバリンを向かわせ、片付けさせてやる」
ピッコロ大魔王の子供たちを、むざむざ死なせるのは申し訳ない気持ちがある。
しかし原作通りに進めるためには、ここで悟空の経験値になってもらわないといけない。
そして本来のタンバリンは、世界中の武道家を殺して回っている。
だが今は殺意マシマシで人間殺してーなーという顔をしつつ、何故か私の護衛として飛行船の中で待機していた。
おかげで人が死なずに済むのは良い。
しかし元々破壊と殺戮を好む性格をしているので、遅かれ早かれだろう。
ここで退場してくれたほうが、被害が少なくなる。
(我ながら酷いことしてるなぁ。私)
両陣営を引っ掻き回している自覚はあるが、止まる気はない。
原作というレールを外れた先の見えない未来に飛び込みたくはないし、ただでさえこれから地球が何度も滅ぶ瀬戸際になるのだ。
予期せぬ不意打ち一発食らうだけで、人類滅亡も十分あり得た。
少なくとも魔人ブウ編が終わるまでは、上手いこと調整していなければいけない。
きっとその先は、争いのない平和な世界になるはずだ。
(ピッコロ大魔王は、原作では酷い奴だったけど。
話してみると、意外とそうでもないね)
だが彼が根っからの悪人ではないとわかると、このまま原作通りに退場させて良いものかと悩んでしまう。
(しかし、ピッコロ大魔王が死なないと、マジュニアが生まれないし)
正直、彼の死は予定調和というか、避けられない気がする。
今は飛行船からタンバリンが飛び立ち、悟空の元に向かっていた。
原作通りに進むかは、この目で見るまでは確定していない。
だが両者の気を感じると満腹になった弟のほうが上なので、取りあえず心配はないかと安堵しつつも、ピッコロ大魔王の今後のことを考えると微妙にモヤモヤするのだった。